久珂あゆみ@FEG様からのご依頼品


 夢の時間の後のまどろみ


 その夜、久珂あゆみは幸せいっぱいに笑っていた。
 今日はいい日だった。何故なら結婚式があったからだ。
 私と、大事な人との結婚式。
 あゆみは幸せを噛み締めていた。
「あゆみ、どうしたの?」
 横には、一番大事な人がいた。
「今日の事がね、夢みたいだったなって、そう思ったんです」
 あゆみは顔いっぱい満面の笑みを浮かべる。
 それを見て大事な人も一緒に笑った。
「夢じゃないよ?」
「分かってます」
「もう夜も遅い。そろそろ眠ろうか」
「はいっ」
 あゆみの返事に、大事な人は微笑んだ。
 二人はいつものように手を繋ぐ。
 二人はいつものように手を繋いだまま寝室に入っていった。


 二人はおそろいのパジャマを着て、一緒の布団の中でまどろんでいた。
 あゆみがごろんごろんと何度も寝返りをうつのを大事な人が見ていた。
「眠れない?」
 大事な人の言葉に、あゆみはこくんと頷いた。
「今日が幸せすぎたから、眠っちゃったら夢が終わっちゃうんじゃないかなって思ったんです」
「夢じゃないよ?」
「分かってます。でもそれだけすごーく幸せだったんですよ」
 ふいにあゆみの手を大事な人が絡め取った。
 手と手が重なる。
 触れた手は、あったかい。
「夢じゃない証拠だよ。これで眠れると思うよ」
 あゆみは大事な人の顔を見た。
 いつものように大事な人は微笑んでいた。
 手を繋ぎ、微笑みながら、あゆみは天井を見た。
今日の出来事を反芻する。


 真っ白なドレスを着て、たくさんの人に祝福されて、そして晋太郎さんがいて。
 ハトが飛んでいた。パイプオルガンが響いていた。ステンドグラスから光がきらきらと差し込んでいた。
 歌と拍手に包まれて、ライスシャワーを浴びて、二人で門を出た。
 その時最初に見たものは何だったっけか。
 あゆみは目を瞑った。
 ぎゅっと手を握ると、大事な人の大きい手が自分の手をぎゅっと握り返してくれた。


 その日見た夢は幸せなものだった。
 私がいて、大事な人がいて、たくさんの人に囲まれて、そして誓ったのだ。必ず幸せになると。
 その夢は夢なんかじゃない。本当にあったのだ。
 夢の中でもあゆみは幸せいっぱいに笑った。


 何度も何度も繰り返す夢。
 その中であゆみは何度も何度も笑っていた。
 手を握ると、握り返してくれる手がある。
 この手の温かさが、いつまでも続くといい。あゆみは夢の中でもそう思った。


 貴方が死んで、宇宙がいくつも崩壊しても
 天が落ちるまで、地が裂け海が割れるまで
 死が二人を分け隔てても
 共に歩む事を誓おう


 永遠に、愛していると


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引渡し日:2008/07/16


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最終更新:2008年07月16日 14:51