多岐川佑華@たけきの藩国様からのご依頼品



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快晴。
佑華の隣で小カトーは、手を広げてぶーんと言ってる。
佑華はワンピースにレギンスをあわせた、フェミニンな装いで、小カトーを見た。
「うにゃ?」
そう言って佑華は小カトーの顔を見た。「イメージトレーニング」
体に、広げた腕に風を受けながら、小カトーはそういった。
太陽の光に、小カトーのピンクの髪がきらきらしている。
佑華はそんな様子を眩しく見つめながら、
「えっと、航空部隊に入るから?」
小カトーはうなずいて、
「あ。うん。なぜか俺にどうかって話がきてさ」
へへ、と照れたように笑い、
「この世界で就職してもいいかなって」佑華は、どこの航空部隊に入ったのだろう、と思いながら、
「そっかー」
と笑い、
「就職おめでとう」と優しく微笑んだ。
小カトーもまんざらではなさそうに、
「サンクス。へへ」と、鼻の下を右手の人差し指でちょっとこすった。
佑華はその様子を幸せそうに見て、素直に疑問をぶつけることにした。
「どこの航空部隊に入ったの?」
小カトーは少し得意気に西方有翼騎士団の紋章を見せた。
佑華は、すごいところに入ったんだね、おめでとう、と小カトーに笑って見せた。
小カトーも嬉しそうに微笑む。
「ショウ君来月誕生日でしょう? 就職祝いと誕生祝いしないとねえ」
佑華はにこにこと、小カトーに、
「何か欲しいものある?」
小カトーは、突然尋ねられて、
「俺が欲しいもの?」
悩みつつ腕を組む小カトー。
真剣そう。
「んーと」
佑華は、小カトーが悩む様子を楽しげに見ながら、
「うん」
とうなずいた。
小カトーはかなり悩んでいる。
と、突然、いやー。と何故か照れた。
佑華はそんな様を不思議に思いながら小カトーを見ている。
「?」
照れ笑いを浮かべながら、小カトーは佑華に、
「なんでもない」
と言った。
佑華はにっこり笑って、
「一応ね、用意はしてるんだ。ショウ君好きなもの。多分びっくりする」
そして、
「何で照れるの?」
と顔をのぞきこんだ。
小カトーは誤魔化そうとして上手く誤魔化せないまま、結局、
「男には色々あるんだよ」
とひとりうなずいた。
本当のところ、小カトー、おもちゃの名前言おうとして恥ずかしくなっただけなのだが、それは彼の心の中だけの秘密になった。
佑華は、なんとなく察しながら、別に格好つけなくてもいいのになと、こっそり微笑んで、
「んとね。だから来月までに頑張るね。えっとね、その時に、友達紹介してもいい?」
かんじんの話題に触れた。
「私がずっとショウ君の事相談してた友達がいるの。私とショウ君がうまくいくよう励ましてくれた子。誕生日の時に会ってもらっていいかな?」
佑華が大切な友達の顔を思い出しながら言うと、小カトーはそれくらいのことはなんでもないというように笑って佑華を見て、
「?別にいいけど」
佑華はわずかに不安だったため、胸をなでおろし、
「よかったぁ」
にこにこ笑った後、小カトーに抱きついた。
小カトーは佑華に抱きしめられ、ちょっと頬を赤らめた。
「?」
そしてその頬を指一本でぽりぽりかいて、
「ま、いいか。ぶーん」
小カトーは嬉しそうに手のひらをひらひらさせた。
光が手のひら越しにみえた。
まばゆい光だ。
佑華はそんな小カトーに抱きついている。
佑華自身も、実はちょっと顔が赤い。
が、もしそれを指摘されたら今日の日差しのせいにしようと思いながら、
「ショウ君嬉しい? 航空部隊入れて」赤い顔を見られないように、小カトーの胸に顔を埋めたまま尋ねた。
「まあ、いや・・・まあうん」
小カトーはにこーと笑った。
佑華はそれを聞いて顔を上げ、小カトーの笑顔を見て一緒に笑った。
「えーと」
小カトーは、照れている。
佑華は再び小カトーの胸に顔を埋め、
「よかったぁ……」と涙をこぼした。
小カトーは、佑華を抱き締めるか迷いながら、
「なくなって。えーと。あー。まだ見習いなんだけど」
佑華が泣き止んで、喜んでくれるかどうかと言葉を選んだ。
「見てみる?俺の働いてるところ」
佑華は、泣き止んで顔を上げた。
「うん。見たい」
そして気が済んでようやく小カトーから離れた。
小カトーは嬉しそうに笑って、元気よく、
「よし。じゃあ、明日集合な!」
佑華はそれに負けないくらい元気に、
「うん!!」
とうなずいて笑った。
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翌日。
今日も快晴であった。
佑華は宰相府までやってきた。
ここは飛行場だ。
見学とか言うと簡単にはいることができる。
佑華は、中に入って、小カトーの姿をきょろきょろと探す。
と、見えた。
遠くに国民戦闘機が見える。
複座だ。
佑華は、その広さや戦闘機や、小カトーの就職先を改めて目の当たりにして、
「ふえー」
とあちこち見てまわした。
「ショウ君っ」
そしてひとしきり感心し終えると、小カトーの元に走って行った。
小カトーの髪が、柔らかく風に揺れている。
佑華に大きく、手を振った。
「こっちこっちー」走り寄る佑華に、嬉しそうに笑ってみせた。
「へへ」
小カトーの傍らにある大きな国民戦闘機は、白く塗られている。
まばゆい光りの中、機体は、格好よく見えた。
佑華は小カトーのもとにたどり着いて、国民戦闘機を見て、
「格好いいねえ」
と言ってにこにこしながら小カトーと機体を交互に見た。
小カトーは、少し得意気に、そして自信ありげに、
「朝食、ぬいてきた?」
と佑華に尋ねた。
佑華は、
「うん」
と頷く。
小カトーは輝くように笑って、
「じゃ。きまりな。乗れよ」
と、自分の後ろにある国民戦闘機を親指で示した。
佑華は、かつてした約束を思い出しながら、
「約束、覚えててくれたんだ……」
素直に感動して、よっと言って国民戦闘機の後ろに乗った。
シートに深く腰を下ろす。
同じく、前に座った小カトーから、
「よおし」
の声と共に、エンジンの起動装置、かかった。
機体が揺れ始めた。
チョークが払われる。
佑華は振動している機体に、シートベルトを着けながら、
「おー」
と、小カトーが動かしてるのに純粋に感動した。
予告なしに、機体が進み始めた。
まだ滑走路にのってないのに速度がはやい。
浮いた。
佑華は機体の浮上感に身を任せる。
小カトーの操る機体は、なんと滑走路ではなく誘導路でとんでしまった。
無線から、管制官がどやしてるのが聞こえる。
が、小カトーは、ただ笑った。
コックピットに座った自分は、まさに無敵とでもいうような、自信に満ちた笑み。
30mの高度から背面飛行で飛んでいる。
佑華は、
「おーすごーい」
前方の小カトーから感じる余裕に、感動している。
「ショウ君すごーいすごーい」
と、喜びながら手を叩いている。
小カトーは不敵に笑って、機体を上昇にいれた。
どんどん昇っていく上昇力はすばらしい。
太陽の光さえもが、小カトーの操る機体を祝福しているかに見える、裏打ちされた小カトーの自信。
佑華はただただ、
「すごーい」
と窓や空や地上を見て、感動した。
小カトーは歌でも歌うかのように、佑華に、
「ジェットコースターとか、大丈夫なほう?」
と聞いた。
佑華は、小カトーの操縦に期待しながら、
「うん大丈夫」
と答えた。
小カトーはそれを聞いて、自信に溢れた笑みを浮かべて機体を上昇させた。
ほとんど90度だ。
不意に、機体の速度が落ちていく。
「う?」
身構えながら佑華は、前方コックピットのシートごしに見えるピンクの髪を見つめた。
機体が、止まった。
真上を向いたままだ。
そして機体は、落ち始めた。
小カトーは口笛でも吹く気軽さで、明るく、
「ひゅー」
と言った。
落ちていく機体に佑華が、
「きゃー!!」
と歓声をあげる。
それを聞いた小カトーは機体を捻りこんでくるりと向きを変えた。
その表情を佑華は見ることが出来なかったが、見ることができたなら惚れ直していただろう、コックピットに収まったならば、機体の全性能を、呼吸でもするかのごとく容易く引き出す、少年の輝く瞳だった。
機体、落下開始。
「きゃー!!」
佑華は落下してく感覚に身を任せ、叫んだ。
小カトーは、エンジン再起動開始。
航空機は速度落ちるとエンジンが止まる。
エンジンは綺麗にかかった。
エンジンが、機体が、部品のひとつひとつまでもが小カトーを寵愛している。
機体は鮮やかに引き起こされた。
日差しに、閃く機体。
ターン。
まるで生きた鳥が宙で踊っている様。
地上で管制官達が感動してその様を見ている。
怒るのすら忘れている。
佑華は笑いながら叫んでいた。
佑華ははじめて小カトーが格好いい事をしってしまったのだった。
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作品への一言コメント

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  • ありがとうございます!! 小カトー好きそうなの選んだかいありました!! -- 多岐川佑華@たけきの藩国 (2008-06-18 15:48:21)
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引渡し日:2008/06/17


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最終更新:2008年06月18日 15:48