竹上木乃@たけきの藩国様からの依頼より



―始―

「そういえば、私ほとんどひわみさんと話してない・・・?」
――金城美姫の感想

「肉くわせろ肉」
――ヤガミ、弁当を見て

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ひわみ
(今日の小笠原で、金城さんとの仲を進展させるぞ!!)
と小笠原へと向かう道、一人気合を入れるその横で
同行するたけきのこの、ぎりぎり聞こえるか聞こえないかの声
「今日こそ・・・ヤガミと・・・お弁当・・・ッ」
風呂敷包みを抱え、暗い表情でぼやいているのを耳にしてしまった

(金城さんすみません。今日は藩王なんだか怖いですっ)
恐れおののくひわみ
どうか今日が平穏無事に終わりますように

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たけきのこ
(どうしよう、結局眠れなかったよ)
もうすぐ小笠原、あの人にまた会える
(あーでも、なんで今日余計なのが・・・)
となりのひわみをちらりと覗く
見ると、一人気合を入れているようだ
よし、私も気合を入れよう
「今日こそ・・・ヤガミと・・・お弁当・・・ッ」

ひわみがビクついているがそんなこと気にしてられない
今日の私は一味違うんだから

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さまざまな思いを抱え、二人は学校へ
校舎に入るとタイミングよくチャイムが鳴る
これからお昼休みのようだ
(ヤガミ・・・ あいつどこ行った)
「金城さんいないかなー」
そろそろとたけきのこから離れるひわみ
「ひわみさん、ちょっとヤガミ探してきていい?」
「どうぞ、行ってきてください」

妙な緊張感から開放されたひわみは教室を覗いて回る
ちょっと不審者ちっくな男は、二つ目の教室で編み物をしている金城を見つけた
「あ、金城さん。お昼ですけど、一緒に昼食食べませんか?」
「うん。いいよ」
「よかった、じゃあ食堂に行きましょう」
ちょっと不審者ちっくな男の誘いはあっさりOKされた
(うっし!!)
小さくガッツポーズを決めこれから何を食べようか考える
今日は楽しい日になりそうだ

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(ヤガミー)
昼休みの、人のあふれた校舎を探索
人に当たった弁当が、ごつごつとゆすられる
(お弁当くずれてなければいいけど・・・ ってぇなこの野郎)
人の波に流されながら玄関へとたどり着く
ふと顔をあげると、校門にヤガミの姿が
(ヤガミだっ)

大きな風呂敷を抱いて走る
自分の小さな体がもどかしい
早くあの人と話したい
近づきたい
抱きしめたい
ちゅーしたい
弁当、食わす
「ヤガミ、お昼一緒に食べませんかー?私、お弁当作ってきたんです」
http://www27.atwiki.jp/takekino/pages/141.html
「弁当か。弁当ねえ・・・ まあいいか。腹をこわすか」
「え、お弁当なにかまずかったですか!?」
(この野郎ぬかしやがったな)
「いや、別に」
くすくす笑うヤガミを見て、たけきのこは言う
「今日は塩と砂糖はちゃんとまちがえないようにしたんで大丈夫ですよ!」
「新しい失敗を見るわけだ」
「失敗してません!・・・たぶん とりあえず食堂行きましょうか」
「美人が多いといいが」
「・・・目移りしたらだめですからね」
急に元気になったヤガミを見て、たけきのこは思う
(・・・腐りやすいもの入れくればよかったカナー?)

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「うわー、うわーっ」
「き、金城さん? どうしま・・・ってうおっ」
急に外を見て興奮し始めた金城の視線をたどると、
そこにはヤガミに抱きしめられたたけきのこの姿があった
金城は顔を染めて、うわーうわーとうわごとのようにしゃべっている
(顔を赤くした金城さんもなかなか・・・ ってこのままじゃ駄目だ)
「と、ところで私ご飯とって来ますけど、金城さんは何を食べます?」
(よし。これであの二人から目を離させれば・・・)
そんなひわみの心叶わず、金城は呆然としたようにつぶやく
「仲、いいんだねー」
「えぇ、すごく仲が良いですよ。見てると、ひじょーに楽しいです」
金城はその言葉が聞こえているのかいないのか、
顔から湯気がでそうなくらい赤くなっている
ひわみは苦笑しながらランチセットを取りに行き、一つを金城さんの前に置く
「もう、このまま観戦しながら昼食食べちゃいましょうか?」
「そ、そうだね。見ながら食べよう」
ようやくひわみの言葉が耳に入ったのか、あわてて答える
(あぁ、やっぱり金城さんかわいいなー・・・)

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腕の中で暴れるたけきのこを抱きとめ楽しんでいると、ふと校舎から視線を感じた
顔をあげると二人でランチをとりながらこちらを見る金城とひわみの姿が
片手でたけきのこを抱え笑顔で二人に手を振る
するとひわみは全身を使ってエールを送ってくれた
そのやり取りに気が付いたのか、たけきのこが抗議しだす
「ちょ、人見てるの気づいてるんじゃないですか!人目を考えてってあれほどー」
「分かった。やめる。もう二度としない」
「ああああ、そうじゃなくてー!」
「なに?」
やっぱり小動物チックでかわいい
これは生涯をかけていじる甲斐がありそうだ

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そんな二人を見て金城は思う
「ねえ、あの人、いじわるなの?」
「えぇ、そうですね。藩王様(たけきのこ)をからかうのが大好きのようです」
「反応を色々楽しんでるんでしょうねー」
「そっかー」
その答えを聞き、金城は、思う
「あんなの好きなんだ」

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急に優しい声で尋ねるヤガミにドキッとする
(うあー!! 反則っ反則っ)
「えーと、人前でなければいいんじゃないかというかなんというか」
「見てないところで、どんなこと?」
「一緒にいるとか。」
ヤガミが手をひらひらさせて去ってゆく
「うわーん、待ってくださいってー!」
急いで追いかけようとするとふと立ち止まり、こちらに向けて手を広げる
「へ?」

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「あー、これ以上は見るの止めておきますか?」
金城美姫の耳に、ひわみの言葉はもう入ってこない
女の敵め。あそこまで慕う女に対して、なんでもっと素直にならない!!
「どうしました?」
金城は急に立ち上がり、自らの上靴をヤガミに向かって投げつける
「いじめっ子! 好きなら好きでもっと優しくしてあげなさい!」

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頭に上靴がぶち当たり、ふとよろめく
「え、あ、えと、だ、大丈夫ですか!?」
当たった箇所を押さえ、ヤガミは金城を見て微笑む
たけきのこを見た
「いじわるだったか?」
「・・・こっちがなに考えてるかわかってて言ってそうなところが、多少」
「悪かった」
すっと、ヤガミはたけきのこに近づく
「あなたは・・・人前とか気にしないんですね・・・」
「他人を気にしたほうがいいか?」
「うー、いやもうすごい今更。いいですよ、もうその辺は諦めました」
「俺はお前だけ見る。それでいいと俺は思ってる」
「じゃあ私はあなただけ見てます。えーと、かまいませんか?」
ヤガミは勝手に緩みだす頬を押さえきれない表情で顔を近づけた

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ひわみは苦笑いしながら食堂のカーテンを閉める
その姿に金城は問う
「あの、ねえ。見たいとか思わない?」
「見たいですけど、それは無粋じゃないですかね」
これも臣下の勤めの一つ。と返す
「そっかー。そうだよねー」
「さ、昼休み終わってしまいます。食べましょう」
「うん」
そうだ、あの場面で立ち上がってくれた
キラキラ輝いてる彼女に、まだ伝えてない言葉が――

「あと、イジメられてるように見えますけど、多分藩王様本人も楽しんでると思いますよ」
「複雑なんだね」
そう答え、パックジュースを吸い込む
ちょっと憮然とした表情の金城を見つめ、ひわみは思う
(私も頑張ろう)

―終―

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引き渡し日:2008/06/17

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最終更新:2008年06月17日 16:35