宰相府帝國軍兵器開発コンペ 

宇宙空母の開発応募作品

2008/05/28版

プロダクトネーム ビーハイヴ級航宙母艦
全長 2㎞(リニアカタパルト長に依る)
乾質量 不明
搭載戦力 6機編成1個飛行小隊を1ハンガーデッキに格納×16区画



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 星が瞬く宇宙にぽっかり空いた黒いスリット。
 それは星の光を遮る何者かがそこに存在していることを表している。
 間近まで近寄ってみれば解るその威容。
 船外作業にでているI=Dがまるで箱庭に載せた人形、というよりも小石ほどにしか感じられない。
 島を丸ごと宇宙に浮かべたような、いやこの場合は小型天体といっても良い。
 それは大宇宙を行く漆黒の船である。

 帝国宇宙軍での採用を企図してデザインされた新造空母。
 開発コードをビーハイヴ級航宙空母という。
 ビーハイヴ級の外観を端的に表すならば、黒く塗られた十字架というのが相応しい。
 十字の縦棒の短い方が艦尾で長い方が艦首。観測室とレーダーサイトを兼ねた構造物が十字の横棒、張り出した艦体上下面に集約されている。
 この極端にのっぺりとした艦型は前面投影面積を最小にし、空母として最大の役目である艦載機の展開能力を最大限に発揮するというコンセプトによる。
 無重力の宇宙では当然上下はない。そこで縦棒の両面に当たる両舷甲板を全て長大なリニアカタパルトとしたのである。
 その全長たるや2㎞にも及び、それが為に艦体表面には自衛用の武器となる物は一切無い。その代わりにカタパルト滑走面以外の飛行甲板や艦体側面にはI=Dの足場となる砲座や電磁吸着グリップが無数に設けられており、敵機の接近を許した場合には艦載機そのものが迎撃のための武装となる。

 艦体表面に目を移してみよう。
 ハニカム構造の分厚いブロックで区切られたのが表面装甲板である。
 この装甲板は衝撃を加えると液化する特殊金属を新開発の衝撃透過型金属板でサンドイッチしたような三層一体型になっており、熱衝撃変換装甲板と呼ばれている。
 その名の通り外部から加えられた衝撃を液化金属の移動による摩擦熱に変換、内部へ放熱し、逆に熱を加えると固化し衝撃として外部に反射する。 
 発生した熱は装甲板下を流れる冷却剤に伝えられ発電システムへ送られる。巡航時には衝撃透過率を変化させることで恒星の放射熱を発電に転用でき、その為に艦体表面が黒く塗られているのである。
 装甲板と発電機のタービンを回すのにも用いられる冷却剤のセットが装甲一層分で、これを三層重ねた下が外骨格、更に三層下がようやく艦内に当たる。

 次は艦内部を順に紹介していこう。
 艦体両舷を飛行甲板としている関係上、基本的に外縁及び艦尾に近付くほど機関やハン
ガーなど重要構造物が集中しており、中心及び艦首方向が生活区画及び艦橋に割り振られている。

【艦体側面よりの模式図】 全長約2㎞
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ABBBBCDCEF  
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 艦尾には大推力のスラスターが4基とその直前に同数の主機関が配されている。
 基本的には主機関2基の交互稼働だけで艦内のエネルギー消費及び主推力を賄っており、4基を同時に稼働するのはよほどの緊急時のみとされている。
 その隣はダメージコントロールルーム及び発電室となっており艦体 構造的にはこの辺りが艦の心臓部分となる。
 それだけに防護対策が何重にも取られ、最悪艦体がバラバラになってもこの区画は残るとさえ言われている。

 ここから艦の中央付近までは格納区画となる。
 ハンガーデッキと飛行甲板へのエレベーターが艦体中心に走る竜骨に沿って両舷に複数ブロック存在する。
 I=Dなどの艦載戦力は竜骨に沿って上下に走る大動脈通路で互いに行き来することが出来る。艦載機用の燃料や武器弾薬は各ブロックで小分けにされており、万一艦内火災発生の際はブロックごとにパージ、それも間に合わない場合は爆圧が隔壁に遮られエレベーターへ抜けるように設計されている。
 なにぶん艦体構造の基礎に近いので危険物の扱いにも注意がいる。

 艦体中央は居住区及び生産区画となっている。
位置的には艦首方向中央よりにあり、閉鎖系でも快適に生活出来るように生鮮食品の自給をはじめ最大限配慮がなされている。
 航宙艦艇の常としてスペース節約のため上下の別はなく、上を見上げると逆さまに歩く人が見えたりするので慣れないと宇宙酔いを起こしやすい。

 ここがようやく艦橋となる。
 当然のことながら艦体中心に設けられた艦橋に窓などはない。全データは全て両舷に備えられた観測室を経由して送られる。
 自動化が進んだ艦内において、展開した艦載機の管制のため例外的に多くの人手を割かれている場所であり、艦の頭脳と言うべき場所である。

 艦首側の端にあるのが艦尾と同様のダメージコントロールルームである。
 この二極のダメージコントロールルームによって制御される緩衝装置及び特殊装甲板によって戦闘時の艦体動揺は最小限に抑えられ、着弾しても乗員はそれと気付かないことすらある。

 こちらはシールド区画と呼ばれ、何層にも重ねられた装甲板と緩衝材が分厚く層をなし緩衝装置の出力が最も割り振られる。

 最後は艦体上下に備えられた観測室である。
 艦体各所に設けられた各センサーの情報を統合・分析して艦橋へ送るのが主な役割となる。
 その為密閉された艦体構造において艦載機の搬出エレベーターと並んで外部に接する場であり、例外的に光学観測用の窓を持つ。
 両室ともに高い情報収集能力と管制能力を持ち、艦橋が何らかの理由で使えなくなった場合には第2、第3の艦橋としても機能する。
 艦内部の主要施設は以上だが、いずれの区画へも最低限の移動で済みその場で仕事が完結するように配慮がされている。
 その為に大型貨物の移動用とは別に乗組員用の環状線が設けられており、こちらは静脈に例えられる。

臨戦時の形態
 基本的には前線の後方にあって前線への機動戦力の速やかな投入と、その管制支援・補給及び整備を任務とする。
 艦載機の展開はハンガーデッキ至近の大型エレベーターからI=Dを始めとする艦載機を飛行甲板に搬出、長大なリニアカタパルトに搭載後大加速をかけて射出する。
 複列設けられたカタパルトは最大展開時には両舷で1分あたりに2個飛行小隊を射出できる。
 敵軍が艦載機群の防衛戦を突破した際には艦内各所に設けられた無数の迎撃砲座及びグリップにI=Dが取り付き、これを迎え撃つ。
 迎撃時の速やかな展開のため飛行甲板とは別に移動経路が設定されており、至る所から浸出してくるI=Dの姿はその名の通り蜂の巣をつつかれた蜂のようである。
 大量に抱えた艦載機こそがこの艦の盾であり、矛である。

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最終更新:2008年06月08日 03:45