抗鬱剤について

歴史


1940年代――抗鬱剤の開発が始まる。
1950年代――第1世代欝薬(3環形抗鬱薬やMAO阻害薬)の使用開始
1970年代――第2世代欝薬(新タイプの3環形抗鬱薬、4環形抗鬱薬)の使用開始。
1980年代――第3世代欝薬(SSRI・SNRIなど)の発売。

 80年代の抗鬱剤のなかでも、88年にアメリカで発売され、人気を博したのが「フルオキセチン(商品名:プロザック)」だった。「夢のクスリ」「魔法のクスリ」とメディアで大々的に紹介された。
 90年代にはSSRIの後続であるSNRIや、MAO阻害薬の後続であるRIMAも開発された。
 98年には、抗鬱薬の市場でのSSRIのシェアは51.4%まで上がっている。日本では99年にルボックス1種類が認可されており、欧米には遅れている。

アメリカにおけるSSRIの処方数
年度 抗鬱薬の総処方数 SSRIの割合 3環形抗鬱薬などの割合
95年 8591万 40.7% 44.8%
96年 9618万 49.9% 44.6%
97年 1億571万 51.8% 44.6%
98年 1億2136万 51.4% 40.4%
(薬ミシュランp57より)

 抗鬱剤には効用があるのはもちろんだが、副作用も当然ながらあり、さらには併用禁忌として絶対に併用してはいけない薬もある。


仕組み(作用機序)


 そもそも欝の症状が起こるのは、神経伝達物質(脳の神経を伝わる物質)が正常に流れていないからだと考えられている。その物質の主なものには、ノルアドレナリン・ドーパミン・セロトニン・アドレナリン・ギャバなどがあり、総称してモノアミンと呼ばれる。このモノアミンのなかでも欝に深い関係があると見られているのが、セロトニンとノルアドレナリンである。
 鬱病の患者は、こういった物質がなんらかの理由で少なくなっている。その治療として、セロトニンなどを減らさないように工夫する薬が、抗鬱剤である。
 また薬である以上、副作用は必ずある。軽減したり、自分に合わない副作用を切り捨てるなどはできても、副作用を皆無にすることは理論的に無理である。

 作用機序とは、薬理学で薬剤がどのようにして生化学的に作用するか、ということ。


3環形抗鬱薬(TCA)

 脳のシナプスでノルアドレナリンやセロトニンが再吸収されるのを防ぐ。
 名前は、薬の分子構造に連なった環状構造が3つあることから。Tricyclic Antidepressantsを略してTCAとも呼ぶ。
 最初期の抗鬱剤だが、欝を抑える効果が高く、2008年現在でも使われている。

種類

  • 第1世代
    • 塩酸アミトリプチリン (トリプタノール、ラントロン)
    • 塩酸イミプラミン (イミドール、トフラニール)
    • 塩酸クロミプラミン (アナフラニール)
    • マレイン酸トリミプラミン (スルモンチール)
    • 塩酸ノルトリプチリン(ノリトレン)
  • 第2世代
    • アモキサピン (アモキサン)
    • 塩酸ドスレピン (プロチアデン)
    • 塩酸ロフェプラミン (アンプリット)


MAO阻害薬

 モノアミン酸化酵素(MAO)と呼ばれるノルアドレナリン・セロトニンを分解する酵素の、働きを阻害(邪魔)する薬。3環形・4環形やSSRIなどの「伝達物質の再取り込みを防ぐ」というシステムとは異なる。
 Monoamine oxidase inhibitorsを略して「MAOI」とも呼ばれる。
 副作用が激しく、現在では抗鬱剤としてよりパーキンソン病の治療薬として使われる。

種類

  • セレギリン(デプレニル)(現在はパーキンソン病にのみ認可)


4環形抗鬱薬

 3環形と同じく、神経伝達物質が再吸収されるのを防ぐ。
 薬の分子構造に連なった環状構造が4つある抗鬱剤。Tetracyclic antidepressantを略してTeCAとも呼ぶ。
 3環形やSSRIと比べると即効性があり、3環形よりも副作用が軽いとされる。

種類

  • 塩酸マプロチリン(ルジオミール)
  • 塩酸ミアンセリン(テトラミド)
  • マレイン酸セチプチリン(テシプール)
  • ミルタザピン(リフレックス、レメロン)(NaSSAに分類されることもある)


SSRI

 3環形と同じく、神経伝達物質が再吸収されるのを防ぐ。しかし3環形の副作用を起こす機能を取り除いて、よりSRI(セロトニン再取り込み抑制)に特化している。
 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitors)の略。

種類

  • 日本で承認済み
    • フルボキサミン(デプロメール、ルボックス)
    • パロキセチン(パキシル)
    • セルトラリン(ジェイゾロフト、ゾロフト)
    • エスシタロプラム(レクサプロ)(2011年4月に承認<参考>)
  • 日本で未承認
    • フルオキセチン(プロザック)
    • シタロプラム(セレクサ)


SNRI

 NNRIの機能に加え、ノルアドレナリンの再吸収も阻む。結果的にセロトニン・ノルアドレナリンの再吸収を防ぐ。
 セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(Serotonin & Norepinephrine Reuptake Inhibitors)の略。

  • 日本で承認済み
    • ミルナシプラン(トレドミン)
    • デュロキセチン(サインバルタ、シンバルタ)
  • 日本で未承認
    • ヴェンラファキシン(エフェクサー)
    • ネファゾドン(サーゾーン)


RIMA

 新型のMAO阻害薬。副作用が少ないとされる。

種類

  • 日本で未承認
    • モクロベミド(オーロリックス)


NaSSA

 ノルアドレナリンとセロトニンの増強を図りつつ、特定の受容体を活性化させる。
 ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗欝薬(Noradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressant)の略。
 4環形と似ているとも云われる。

種類

  • ミルタザピン(リフレックス、レメロン)








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最終更新:2011年12月30日 21:40
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