キミの願い事はなんだい?

白の妖精は世界を俯瞰する。人の生きる世界を見下ろす。上位者としての傲慢からではない
彼が生きる場所など存在しないからだ、生きている自分が存在しないからだ
並び立って共に生きる者がいない世界に、自分自身すら規定できない自我に、世界など必要ない。
人の存在価値を収束する異界の存在、たったひとりのキュウべいは
ただ、そこに在り続ける・・・・。

「貴方がいてくれたおかげで、わたしは自分を取り戻せたんだよ」

ボクに感謝する少女がいた。
自分自身を押し殺し、他人に強要された人生を送るのその少女は笑う
己独りで生きていく力を得て、残酷な戦いの運命すら喜びと感じ
戦いの末の死すら自分の選択として喜んで受け入れた少女
キュウべいは彼女を嘲笑う。
彼女が強要された世界と、選択した世界は、
全く同じでしかない、他人によってさだめられた自由意志の無いものであったのだと。

「お前のせいで全部無くした・・・・返しなさい!私から奪ったものを全部!!」

ボクを非難する少女がいた。
何もかも充足しながら、それでも飢餓感を抑えられず、世界全てを欲しがった少女
ありとあらゆる事に満ち足りた末に、満足する事に飽きてしまう
何かを欲しがり嫉妬と渇望を感じるという事そのものに悦楽を感じる破綻者
キュウべいは彼女を冷笑する。
彼女が欲しがったものと、欲しがるために捨てたものは
どちらも等しく、彼女にとって何の価値もないものだったのだと。

「誰かの幸せは、私の幸せ。誰かが笑ってくれたら、自分も笑顔になるでしょ♪」

ボクを愛する少女がいた。
自分が生きていることに不満も満足も無い少女は、出会った人すべてに幸福をふりまく
彼女は誰も嫌いにならなかった、彼女は誰も好きにならなかった
自分を利用していると理解しているボクにすら、幸せを与えようとした
彼女は誰にも興味が無かったのだ。彼女の世界には何も無い
自分が生きていることを実感できないから、同時に他者も存在できない。
キュウべいは彼女に対して何も語らない
そんな「人間」は、最初から何処にもいやしなかったのだから。

「願いなんてないよ、だって願う必要ないもの。わたしは今ここにいて、それだけでいいの」

ボクが理解できない少女がいた
彼女は何も不足していない変わりに、何にも満たされていなかった
それでも彼女は困った顔で笑う。願う事など何もないと
そんなはずはなかった、出会ったばかりのボクから見ても、
願うに値するだけの理由を彼女は持っていた
それでも彼女は最後まで魔法には頼らず、己の力だけで足掻き
結局何も守れないまま終わってしまった
キュウベイは彼女を理解できない
人は願いを持たずには生きられず、それをかなえようとする存在のはずなのだ。


キュウべいはひとり疑問に沈む、生きる意味のない、ただ魔法少女を生むだけの彼に生まれた疑問
人は願いを胸に秘め、それを達成するために手段を選ばす足掻くはずなのだ
それなら何故人は願うのか、人が生きるために何故そんなものが必要なのか
最後まで魔法に頼らなかった少女の事が忘れられない
そのときふと、生きる意味のない自分に芽生えた欲求を自覚して、キュウべいは異形の笑みを顔面に刻む
生まれて初めて感じるその「願い」は、彼の心を一瞬で灼き尽くす
知りたい、是非とも知りたい、是が非でも知りたい
失敗した、もっとよく観察するべきだった、あの少女はボクが出会った「生きる意味」だったのだ

キュウべいは己の心に刻み込む。彼がはじめて見つけた己の存在理由
「人は何故願いを胸に抱くのか」
それを知ること、知り尽くすこと、暴き立てること、晒し揚げること
もし心の底から願う事がないなどという少女がいたら、絶対に逃がしてはならない
どんな方法を使おうとも、どんな下劣な策謀を用いても、どんな冷酷な状況に追い込んでも
必ずや命と引き換えにするほどの願いを引きずり出し、魔法少女にしてみせる!!

魔物が現れる時刻と呼ばれる逢魔ヶ刻の夕焼けが、街を優しく包み込む
都市の明かりが夕闇に沈んでゆき、世界はゆるやかに眠りに落ちる
その中で一匹の獣が、目覚めの産声を轟かせた・・・・。









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最終更新:2011年02月27日 01:47