ネタバレ考察 > 台詞集 > 各話別第11話

キュゥべえ「時間遡行者・暁美ほむら」
キュゥべえ「過去の可能性を切り替えることで、幾多の並行世界を横断し、君が望む結末を求めて、この一ヶ月間を繰り返してきたんだね」
キュゥべえ「君の存在が、一つの疑問に答えを出してくれた――『何故、鹿目まどかが、魔法少女として、あれほど破格の素質を備えていたのか』」
キュゥべえ「今なら納得いく仮説が立てられる」
ほむら「…?」
キュゥべえ「魔法少女としての潜在力はね、背負い込んだ因果の量で決まってくる」
キュゥべえ「一国の女王や救世主なら兎も角、ごく平凡な人生だけを与えられてきたまどかに、どうしてあれほど膨大な因果の糸が集中してしまったのか不可解だった」
キュゥべえ「だが――ねえ、ほむら」
キュゥべえ「ひょっとしてまどかは、君が同じ時間を繰り返す毎に、強力な魔法少女になっていったんじゃないのかい」
ほむら「…ッ」
キュゥべえ「やっぱりね」
キュゥべえ「原因は君にあったんだ」
キュゥべえ「正しくは、君の魔法の副作用――と言うべきかな」
ほむら「…どういうことよ?」
キュゥべえ「君が時間を巻き戻してきた理由はただ一つ――鹿目まどかの安否だ」
キュゥべえ「同じ理由と目的で、何度も時間を遡るうちに、君は幾つもの並行世界を、螺旋状に束ねてしまったんだろう――鹿目まどかの存在を中心軸にしてね」
キュゥべえ「その結果、決して絡まるはずのなかった平行世界の因果線が、全て今の時間軸のまどかに連結されてしまったとしたら、彼女の、あの途方もない魔力係数にも納得がいく」
キュゥべえ「君が繰り返してきた時間――その中で循環した因果の全てが、巡り巡って、鹿目まどかに繋がってしまったんだ」
キュゥべえ「あらゆる出来事の元凶としてね」
キュゥべえ「お手柄だよ、ほむら」
キュゥべえ「君がまどかを最強の魔女に育ててくれたんだ」

キャスター「12日より行方が分からなくなっていた、市立見滝原中学校2年生の美樹さやかさんが、本日未明、市内のホテルで遺体となって発見されました」
キャスター「発見現場にも争った痕跡が無いことから、警察では、事件と事故の両面で捜査を進めています」
キャスター「続いて、天気予報です。今夜は北西の風がやや強く、雨――」

詢子「おかえり」
詢子「なぁまどか」
まどか「ん…」
詢子「さやかちゃんの件、本当に何も知らないんだな?」
まどか「うん」

まどか「さやかちゃんも杏子ちゃんも死んじゃった」
キュゥべえ「意外な展開ではないよ」
キュゥべえ「予兆は随分前からあった」
まどか「どうでもいいって言うの?みんなあなたのせいで死んだようなものなのに」
キュゥべえ「はあ」
キュゥべえ「例えば君は、家畜に対して引け目を感じたりするかい?」
キュゥべえ「彼らがどういうプロセスで、君たちの食卓に並ぶのか」
まどか「あっ…やめてよ!」
キュゥべえ「その反応は理不尽だ」
キュゥべえ「この光景を残酷と思うなら、君には本質が全く見えていない」
まどか「…ッ?」
キュゥべえ「彼らは人間の糧になることを前提に、生存競争から保護され、淘汰されることなく繁殖している」
キュゥべえ「牛も豚も鶏(とり)も、他の野生動物に比べれば、種としての繁殖ぶりは圧倒的だ」
キュゥべえ「君たちは皆(みな)、理想的な共栄関係にあるじゃないか」
まどか「同じだって言いたいの?」
キュゥべえ「寧ろ僕らは、人類が家畜を扱うよりも、ずっと君たちに対して譲歩しているよ?」
キュゥべえ「曲がりなりにも、知的生命体と認めた上で交渉しているんだしね」
キュゥべえ「信じられないのかい?」
キュゥべえ「それなら、見せてあげようか――インキュベイターと人類が、共に歩んできた歴史を」
まどか「ハッ」
キュゥべえ「僕たちはね、有史以前から君たちの文明に干渉してきた」
キュゥべえ「数え切れないほど大勢の少女が、インキュベイターと契約し、希望を叶え、そして絶望に身を委ねていった」
まどか「ハッ」
キュゥべえ「祈りから始まり、呪いで終わる――これまで、数多の魔法少女たちが繰り返してきたサイクルだ」
キュゥべえ「中には、歴史に転機をもたらし、社会を新しいステージへと導いた娘(こ)もいた」
まどか「もうやめて…!みんな、みんな信じてたの。信じてたのに裏切られたの」
キュゥべえ「彼女たちを裏切ったのは僕たちではなく、寧ろ自分自身の祈りだよ」
キュゥべえ「どんな希望も、それが条理にそぐわないものである限り、必ず何らかの歪みを生み出すことになる」
キュゥべえ「やがてそこから災厄が生じるのは当然の節理だ」
キュゥべえ「そんな当たり前の結末を裏切りだと言うなら、そもそも、願い事なんてすること自体が間違いなのさ」
キュゥべえ「でも、愚かとは言わないよ」
キュゥべえ「彼女たちの犠牲によって、人の歴史が紡がれてきたことも、また事実だし」
キュゥべえ「そうやって過去に流された全ての涙を礎にして、今の君たちの暮らしは成り立っているんだよ」
キュゥべえ「それを正しく認識するなら、どうして今更、たかだか数人の運命だけを特別視できるんだい?」
まどか「ずっとあの子たちを見守りながら、あなたは何も感じなかったの?みんながどんなに辛かったか、わかってあげようとしなかったの?」
キュゥべえ「それが僕たちに理解できたなら、わざわざこんな惑星(ほし)まで来なくても済んだんだけどね」
キュゥべえ「僕たちの文明では、感情という現象は、極めて稀な精神疾患でしかなかった」
キュゥべえ「だから君たち人類を発見した時は驚いたよ」
キュゥべえ「全ての個体が、別個に感情を持ちながら共存している世界なんて、想像だにしなかったからね」
まどか「もしも…あなたたちがこの星に来てなかったら」
キュゥべえ「君たちは今でも、裸で洞穴(ほらあな)に住んでたんじゃないかな」

和子「やっぱねぇ…教え子とこういう別れ方っていうのは、ツライわよ」
詢子「…だよな」
和子「事情がはっきりしないっていうのもまたね」
和子「三年生にも一人、行方不明の子がいるし、職員会議はしっちゃかめっちゃかよ」
詢子「何もわからないのか、やっぱり?」
和子「さやかちゃんね、友達と恋愛絡みでちょっといろいろあったらしいの。その子もかなりダメージ背負っちゃってね」
和子「普通なら、甘酸っぱい思い出で済むとこなんだけど、こういう結末になっちゃうとね」
和子「警察は家出の挙句に、衰弱死って線で決着つけちゃうみたい」
和子「手掛かり、何もないしね」
和子「まどかちゃんはどう?」
詢子「わっかんねぇ」
詢子「アタシの勘じゃ何か知ってる様子ではあるんだ…。でも嘘をついてるようにも見えねぇ」
詢子「初めてなんだよ、アイツの本音を見抜けないなんて。情けねぇよな、自分の娘だってのに」
和子「詢子が弱音を吐くなんてね」
詢子「近頃、妙だなとは思ってたんだ。何か一人で背負い込んでるって察してはいたけど、いつまで経ってもアタシに相談してこねえ」
詢子「ちったぁ頼りにされてるって思ってたのにさぁ」
和子「あの年頃の子供はね、ある日いきなり大人になっちゃったりするものよ。親にとってはショックだろうけど」
詢子「そういうもんか?」
和子「信じてあげるしかないわね。今まどかちゃんに必要なのは、気持ちを整理する時間だろうから、しばらくは待ってあげないと」
詢子「キツいなぁ、何もできねぇのって」
和子「そういうところで要領悪いの、相変わらずよね、詢子は」

まどか「入っていいかな?」
まどか「これが…『ワルプルギスの夜』?杏子ちゃんが言ってた」
まどか「一人で倒せないほど強い魔女をやっつけるために、ほむらちゃんと二人で戦うんだって。ずっとここで準備してたのね」
まどか「街中が危ないの?」
ほむら「今までの魔女と違って、コイツは結界に隠れて身を守る必要なんてない。ただ一度具現しただけでも、何千人という人が犠牲になるわ」
ほむら「相変わらず普通の人には見えないから、被害は地震とか竜巻とか、そういった大災害として誤解されるだけ」
まどか「なら、絶対にやっつけなきゃダメだよね」
まどか「杏子ちゃんも、死んじゃって…戦える魔法少女は、もうほむらちゃんだけしか残ってない。だったら…!」
ほむら「一人で十分よ!」
ほむら「佐倉杏子には無理でも、私なら一人でワルプルギスの夜を撃退できる。杏子の援護も、本当は必要なかったの。ただ彼女の顔を立ててあげただけ」
まどか「ホントに?」
まどか「何でだろ、私、ほむらちゃんのこと信じたいのに、嘘つきだなんて思いたくないのに」
まどか「全然大丈夫だって気持ちになれない。ほむらちゃんの言ってることが本当だって思えない」
ほむら「本当の気持ちなんて、伝えられるわけないのよ」
まどか「ほむらちゃん?」
ほむら「だって、私は…私はまどかとは、違う時間を生きてるんだもの!!」
まどか「えっ…?」
ほむら「…私ね、未来から来たんだよ。何度も何度もまどかと出会って、それと同じ回数だけ、あなたが死ぬところを見てきたの」
ほむら「どうすればあなたが助かるのか、どうすれば運命を変えられるのか、その答えだけを探して、何度も始めからやり直して」
まどか「それって…え?」
ほむら「ごめんね。わけわかんないよね…気持ち悪いよね」
ほむら「まどかにとっての私は、出会ってからまだ1ヶ月も経ってない転校生でしかないものね」
ほむら「だけど私は…私にとってのあなたは…」
ほむら「繰り返せば繰り返すほど、あなたと私が過ごした時間はずれていく。気持ちもずれて、言葉も通じなくなっていく。たぶん私は、もうとっくに迷子になっちゃってたんだと思う」
まどか「ほむら…ちゃん…」
ほむら「あなたを救う。それが私の最初の気持ち。今となっては…たった一つだけ最後に残った道しるべ」
ほむら「わからなくてもいい。何も伝わらなくてもいい。それでもどうか、お願いだから、あなたを私に守らせて」

研究員「雷雲がとんでもない勢いで分裂と回転を起こしています。明らかにスーパーセルの前兆です。直ちに避難指示の発令を」
広報車「本日午前7時、突発的異常気象に伴い避難指示が発令されました。付近にお住いの皆さんは、速やかに最寄りの避難場所への移動をお願いします。こちらは見滝原市役所広報車です」

タツヤ「今日はお泊り~?キャンプなの~?」
知久「ああ、そうだよ。今日はみんなで一緒にキャンプだぁ~」
タツヤ「やったぁ、キャンプ~お肉焼くの~?」
まどか「ほむらちゃん…」

ほむら「来る!!」
ほむら「今度こそ…」
ほむら「決着をつけてやる!!」

詢子「ん?どうしたまどか?」
まどか「…ちょっとトイレ」

まどか「ほむらちゃんが一人でも勝てるっていうのは、ホント?」
キュゥべえ「それを否定したとして、君は僕の言葉を信じるかい?」
キュゥべえ「今更言葉にして説くまでもない」
キュゥべえ「その目で見届けてあげるといい――『ワルプルギス』を前にして、暁美ほむらがどこまでやれるか」
まどか「どうしてそうまでして戦うの?」
キュゥべえ「彼女がまだ、希望を求めているからさ」
キュゥべえ「いざとなれば、この時間軸もまた無為にして、ほむらは戦い続けるだろう」
キュゥべえ「何度でも性懲りもなく、この無意味な連鎖を繰り返すんだろうね」
キュゥべえ「最早今の彼女にとって、立ち止まることと、諦めることは同義だ」
キュゥべえ「何もかもが無駄だった、と――決してまどかの運命を変えられないと確信したその瞬間に、暁美ほむらは絶望に負けて、グリーフシードへと変わるだろう」
キュゥべえ「彼女自身も分かってるんだ」
キュゥべえ「だから選択肢なんてない」
キュゥべえ「勝ち目のあるなしにかかわらず、ほむらは戦うしかないんだよ」
まどか「希望を持つ限り、救われないって言うの?」
キュゥべえ「そうさ」
キュゥべえ「過去の全ての魔法少女たちと同じだよ」
キュゥべえ「まどか、君だって一緒に視(み)ただろう?」
まどか「うぅ…」
まどか「…でも、でも。でも!」

詢子「どこ行こうってんだ?オイ」
まどか「ママ…」
まどか「私、友達を助けに行かないと」
詢子「消防署に任せろ。素人が動くな」
まどか「私でなきゃダメなの!」
詢子「テメェ一人のための命じゃねぇんだ!あのなぁ、そういう勝手やらかして、周りがどれだけ…ッ」
まどか「わかってる。私にもよくわかる」
まどか「私だってママのことパパのこと、大好きだから。どんなに大切にしてもらってるか知ってるから。自分を粗末にしちゃいけないの、わかる」
まどか「だから違うの。みんな大事で、絶対に守らなきゃいけないから。そのためにも、私今すぐ行かなきゃいけないところがあるの!」
詢子「理由は説明できねぇってか」
詢子「なら、アタシも連れていけ」
まどか「ダメ。ママはパパやタツヤの傍にいて、二人を安心させてあげて」
まどか「ママはさ、私がいい子に育ったって、言ってくれたよね。嘘もつかない、悪いこともしないって」
まどか「今でもそう信じてくれる?私を正しいと思ってくれる?」
詢子「絶対に下手打ったりしないな?誰かの嘘に踊らされてねぇな?」
まどか「うん」
まどか「ありがとう、ママ」

ほむら「これ以上先に進まれたら、避難所を襲われる…」
ほむら「どうにかして…ここで食い止めないと…」
ほむら「そんな…ハッ」
ほむら「どうして?…どうしてなの?何度やっても、アイツに勝てないッ」
ほむら「繰り返せば…それだけまどかの因果が増える。私のやってきたこと、結局…」
ほむら「…!?」
まどか「もういい。もういいんだよ、ほむらちゃん」
ほむら「まどか…?」
ほむら「まどか…まさか…!?」
まどか「ほむらちゃん、ごめんね」

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最終更新:2015年08月08日 20:46