「奥まであたる…」
息を吐きながら、今度は腰をグラインドさせはじめた。
「どう?鳴海さん」

「リードされるのも悪くない…」
洸至の声にはまだ余裕がある。
美鈴は眩暈がする程の快楽に震えそうになっているのに。

「君はいじらしいな」
洸至が不意打ちに言った。
「えっ…」
虚をつかれた美鈴の動きが止まる。
まるで女王のように振舞っていた美鈴を洸至はいじらしいと言った。
その言葉の真意を図りかね、美鈴は戸惑った。
「これくらいで、俺がどうになかると…?本当にかわいいよ」
洸至が美鈴の腰を掴むとゆっくりと揺り動かし始める。

「妹さんの復讐をしたいんだろ…君は…」
「あっ…」
腰を動かしながら洸至が美鈴の乳房の頂きを親指で弄くりまわす。
「君なりの方法の復讐だ…。俺が最も苦しむ方法を…遼子を誰か別の男のものにして…そして俺が苦しむ様を
 見るために…」
「んんっ…違う…彼女が幸せになるように…」
「君はそんな殊勝な女じゃないだろ。あの夜俺が誰を想いながら君を抱いていたか知っていたのか…道理で熱心に
二人を結びつけたがったわけだ…」
ぶつかり合う腰が乾いた音を、繋がりあう粘膜が湿った音を立てる。

「ああっ…すご…い!」
美鈴の躰全体が揺れる程、洸至が下から突き上げる。
「もし遼子を利用して…傷つけて俺に復讐する気だったら…」
突然、洸至が動きを止め、美鈴の首を右手で掴んだ。
美鈴が息をのむ。哀しげな眼でに洸至を見つめ返した。
それを見る洸至の眼に昏い炎が宿っているように見えた。
「いいのよ、別に」
洸至が少し手に力を籠めれば、美鈴の細い首など一瞬で縊ることができるだろう。
快楽で火照った躰が、また別の期待で燃え上がっていた。

強がりではなかった。今この時、そしてこの男になら―――美鈴は一瞬そう思った。

縊られることを覚悟した時、洸至が力を抜いた。
「血も流れない復讐か。君らしい」
洸至が手を離す。

「だがな、俺が奪われたままだと思うか」
冷たい目が美鈴を見据えていた。
「…奪えないのがわかっているからよ…んんんんっ…」
洸至がまたゆっくりと腰を動かし始めた。
「あなたが…遼子を腕づくで奪って…やん…そうしたら遼子は光を失うの…あなたの愛した妹じゃなくなる
…だからあなたは…黙って見ているよりほかないのよ…やあっ」
美鈴と繋がったまま身を起すと、洸至はそのまま上になり激しく腰を使い始めた。
「やんっ…あああああっ」
洸至が射るように美鈴を見る。その眼は快楽からなのか、苦悩からなのか切なそうに細められていた。
「出来ないと?」
洸至の動きが蹂躙する動きに変わる。
「やああっ…」
「出来るさ。出来るとも。遼子を俺のものに…」
苦しげに洸至が囁いた。
美鈴の全身に汗が浮く。快楽に理性が溶けそうだ。今この口は真実しか紡がない。

「駄目よ…あなた…愛しすぎたの…、あっ…だから触れられない…」
「違う…!」
洸至の額から汗が滴り落ち、美鈴の頬を濡らした。
「あなたは…ずっと孤独に…妹の幸せな姿を覗き見ることしかできないの…あなたは…かわいそうなひと…」
憐れむ美鈴の唇を洸至の唇が塞いだ。

洸至が更なる激しさで美鈴を責め立てる。怒りと憎悪も―――それに妹への永久に叶わぬ思いも籠っているのだろうか。
復讐したいと願い続け、憎しみそして焦がれていた相手の首を美鈴は強く抱いた。
「ああっいいの…」
二人の合わせ目から快楽が溢れる。
「いいのっ…洸至…さん!」
美鈴の脳髄が快楽で白熱する。
「あっ…やっ…いく…いっちゃううう!」
絶頂に向け美鈴の躰が浮き上がるような感覚に包まれた時、耳元で洸至が何かを呟いた。
きっと悦楽のなか意図せずに漏れ出た言葉だろう。
意識を手放す寸前、美鈴の眼から涙が一筋零れ落ちた。



美鈴が眼醒めた時、洸至は部屋に居なかった。
用心深い男のことだから、部屋に残る指紋も全て拭き取ったあとだろう。

けだるい躰をゆっくりと起こすと、美鈴は窓の外の夜景をぼんやりと見ていた。
ホテルの大振りの窓ガラスに、あどけないとも言える表情を浮かべた自分が映っている。

洸至がこの部屋に居た痕跡は美鈴の躰に残る快楽の残滓だけだった。
――わたしを消さなかったのは…通報などしないと。
それを洸至は知っていた。

警察の手を借りずとも、美鈴の復讐は完成していたからだ。
復讐と言っても、妹を奪われた美鈴が今度は洸至の手の届かぬところに遼子を行かせる手助けをしただけだが。
一度は洸至の手で闇に落ちかけた遼子を、鷹藤と共に手を取り光溢れる未来へと歩ませる―――。

塀の中に入れるよりも、自由に動き回らせて妹の幸せになっていく姿を見続ける方があの男には辛いはずだ。
死よりも辛い想いを抱えて、あの男はまた闇の中を這いまわることになるだろう。
永久に届かぬ想いとともに。
洸至は復讐と言ったが、…こんな甘い復讐などない。
美鈴のしたことは、亡き妹への弔いのためというよりも、振り向いてはくれぬ男への意趣返しに似ていた。

―――憎い相手の苦悶する様を見て目的を果たしたはずなのに…。
洸至が最後に呟いた言葉が美鈴の胸を抉っていた。

「りょうこ…」

それが美鈴を抱きながら洸至が呟いた言葉。
ひどく空しかった。
膝をかかえて顔をうずめると、美鈴はベッドの中で静かに泣いた。




利用する相手と、自分がメロメロになった相手と、見せる顔が違うかな、と思ったらこんな感じの
美鈴さんになっちゃいました。しおらしいですね。すいません。
しかも、遼子を婚約させてちゃいました。それに長すぎたりと色々すいません。


兄×美鈴さん、GJです。
エロい!w
テクニック豊富な二人の絡みは、R25ぐらいでしょうか?w
最終更新:2011年06月18日 19:54