MCカートリッジ用昇圧トランス
 山水のトランジスタ用インプットトランスのST-12を使う記事があったので手持ちのトランスを物色した。使えそうなものは、ST-27が3個、出所不明のドライバートランスと思しきトランスが10個ぐらい、ONKYOの球用アウトプットトランスが6個。まあ、そんなところ。それらはもちろん1次2次を逆にして使う。以降、1次と言えばMCカートリッジのつながる入力側(巻数少)2次と言えば出力側(巻数多)ということにする。
出力電圧は、入力電圧に比べて、ST-27で6倍、出所不明トランスで5倍であった。ST-27の1次と2次を直列につないでやれば7倍まで電圧をあげられた。まあまあだけど、しかーし、本当はアンプと同レベルか最低でも10倍昇圧して欲しいし、それに、昔からトランス巻いたりするのに興味があったし、好奇心でトランスを巻き直して改造することにした。
とりあえず出所不明トランスを分解。EIコアは1枚ずつ交互に重なっているのでカッターの刃を丁寧に入れていってはがす。ロウのようなものでかためてある。E、I型の板は18組だった。
次は何回巻いてあるかを調べる。これは最も興味のあるところ。これさえ調べればトランスの巻き直しは可能だ。
外側に巻いてあったのは長い方。昇圧トランスとして使う場合の2次巻き線。これに巻足せばいちばん速く形になるけれども、それでは探究心が満足しない。どうせなら全てほどいて全容を明らかにしたい。

●出所不明トランス
低インピーダンス側(白黄緑)バイファイラ250回(500回相当)
高インピーダンス側(赤緑)1200回
Lメータで低インピーダンス側の中点と端点のみ測定可能で60mH
●ST―27
低インピーダンス側(白黒緑)バイファイラ560回(1120回相当)
高インピーダンス側(赤緑)3500回
Lメータでどの箇所も測定不能
● ONKYO真空管用OPT
低インピーダンス側(8Ω)85回
高インピーダンス側(12Kタップは7K)推定3230回
Lメータで低インピーダンス側のみ測定可能で5.3mH

これがトランス分解で得られたデータである。
実際巻き直しをするにはある程度の大きさがないと作業が困難なので、ONKYOの真空管用OPTを使うことにする。
低インピーダンス側が8Ωなのでこれをほどいて350回に巻きなおす。
インピーダンスは巻数の2乗に比例する。巻数が350/85=4.12倍だから、インピーダンスは8×(4.12)2=136ΩとなりDL-103の推奨する負荷インピーダンス100Ω以上を満足する。
昇圧は巻数に比例するので、9.2倍だが1次2次を直列につないげば10.2倍になる。
1次インダクタンスは計算で90mH、2次インダクタンスは7.6H、直列で9.4Hになる。市販されているPLT-1というMCトランスは1次290mH、2次50Hである。
ところで、全く不思議な実験結果。1次巻線の350回を初めソレノイドに使われている比較的太い線で巻いたところ実に良い結果だったが、かさばってコアに入れにくかったので2次巻線と同じ細い線で巻きなおしたら、何と低域特性が悪くなった。100Hzぐらいから落ち始めて、45Hzで半値となった。こりゃだめだ。
違うのは直流抵抗である。350回巻で太い線は10Ω、細い線は70Ωである。しかし、この抵抗の差がこれほどまで低域に影響するとは思っていなかったが、現実の結果である。低インピーダンスの回路は太い線を用いるべきである。トランジスタのヘッドアンプのときに入力のコンデンサの値を大きくとらなければならなかったのと同じような意味合いだ。

分解開始。

これ、意外と簡単。EIコアが互い違いになっているわけではなく、同じ方向でまとまっていたから、パカッとはずれた。こういうのも珍しい。

巻く道具を作らないとダメ。といっても大した事はなく、コイルにはまる木の角材に穴を空けドライバのビットを通して回転できるようにした。それをクランプで固定。針金のレバーをつければクルクル回せる。
MCカートリッジヘッドアンプとともにケースに組み込んだ。
しかし、どうも誘導ハムの影響を受けやすいみたいで、このトランスにつなぐとハムが出る。対策を考えないといけない。そのうち。

最終更新:2010年12月21日 13:45