【とあるアフォしぃのお話】


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【とあるアフォしぃのお話】

著者 もすきぃと 氏     (第1回フラコレ文化祭提出作品)



 * 注意! つまんないです(爆)



   Prologue

彼らは、「AA」と呼ばれる者たち。
いくつもの種族が混在しながらも、みんなが協力し合って文明を築き上げた者たち。
そんな彼らがいるのは、よくある中世ファンタジーのような世界。
幾人もの冒険者AA達が財宝を求めて遺跡を探索し、「荒らし」と呼ばれるモンスターと戦う世界。
これはそんな世界にいた、一人の荒らしの物語……



     1

 私はいつも悩んでいた。
 私がアフォしぃと呼ばれる荒らしなのにもかかわらず、こうやって悩んだりすることができるということに。
 アフォしぃとは、AAの一種であるしぃに似ていることから付けられた名前だそうだ。
 その似ていると言われるアフォしぃとしぃの違いは、知能と体力。
 進化の過程において、体力を捨てて知能を強化し、他種族と共に文明を築き上げたAA。それがしぃ。
 知能を犠牲にし、体力を強化して生きる道を選んだ愚かな荒らし。それがアフォしぃ。
 かく言う私はアフォしぃだ。だから、しぃと同じく細い外見でも、かなりの体力を持っている。
 でも。
 でも私は仲間達とは違い、生まれながらに「知能」を持っていた。
 だから、私は悩んでいた。
 アフォしぃとして生まれたはずなのに、しぃの知能を持っている私は、本当に「アフォしぃ」なのだろうかと。
 私の住むこの広大な森の中。
 秘密の隠し場所のそばに生えているナラの木の上で、私はいつも、悩んでいた。

     2

 こんな悩みを持つようになったのは、三年ほど前のことだろうか。
 以前から群れのみんなを「要領が悪い」と思っていた私は、一人だけで獲物を狩ることがたまにあった。
 その日も、みんなの無駄な行動に辟易し、一人でこっそりと狩りに出かけていた。
 まず秘密の隠し場所へと向かい、以前獲物から奪った弓と矢を装備する。
 それから、小さな獣道を通ってその近くにある細い街道へと向かう。
 そして、その街道の脇の森に潜んで、じっと獲物を待ち構えるのだ。
 此処を通る獲物とは、すなわちAA。
 荒らしの多く生息するこの森を貫く、唯一の街道であるこの道を通る、無防備な旅人を狙うのだ。
 群れのみんなには、こんなこと――待ち伏せなんて絶対にできない。
 だから、そのころの私は群れのみんなをとても不思議に思っていた。
 「なんでこんな簡単なこともできないんだろう」と。
 そう……みんなにはこの程度のこともできない。
 それが分かっていたから、私はこうやって旅人相手の狩りを行う時には、絶対に仲間を連れてこなかった。



     3

 その日しとめた獲物は、貧弱なモララー種だった。
 贅肉も筋肉も少ない、一目で外れと分かる不味そうな男だったが、私はあえてこの男を狩った。
 彼の背負っていた荷物に、興味があったからだ。
 その荷物とは、大量の本。

 私も何度か本を読んだことがある。
 群れでも文字はたまに使っていたが、本なんてモノは全くなかった。
 そもそも、みんな字は使えても、意味を理解できていなかったから。
 だから、私は初めて本を見たとき、それにとても興味を持った。
 そうして初めて私が読んだ本は、弓矢の使い方について記されたものだった。
 その本を持っていた女は実物の弓矢も持っていたから、私は以降、狩りにそれを使うようになる。
 それ以降、私は様々な情報を手に入れるため、本を持っている者は優先的に狩るようにしていた。
 食べるためのものなら、群れのみんなと狩った分だけで十分だったから。

     4

 そうして私はいくつもの本を手に入れ、それを読むことで知識を蓄えていった。
 それがアフォしぃとしてありえない行為だと気付いたのは、皮肉にも本からの知識によるものだった。
 貧弱な男。先ほど狩ったこの男の持っていた大量の本の中に、
 しぃとアフォしぃの違いについて詳しく記してあるものがあった。
 私はそれを読んだ。読んで、酷く恐ろしくなった。
 「私は何なのか」と。
 しぃとアフォしぃの見分け方はズバリ、知能の有無だそうだ。
 だが、私は明らかに知能を持っている。私はアフォしぃのはずなのに。
「どうして……?」
 その問いに答えてくれるものは、誰もいなかった。
 私はさらに恐ろしくなり、その本を捨てた。
 森の中を駆け抜け、東にある崖から投げ捨てた。
 しかしそれ以降、私は毎日悩むようになったのだった。



     5

 悩みながら生活していくうちに、次第に群れから離れる時間が増えていった。
 一人で秘密の隠し場所にこもり、悩む時間が増えていった。
 だが、毎日悩んでもその答えは一向に見つからなかった。
 新たに旅人を殺して、本を漁ってみても、やっぱり答えはどこにもなかった。

 そんなふうに生活しているうちに、ついに私が生まれてから十度目の夏が来た。
 既に、群れには一週間に一度顔を出す程度になっていた。
 ……同年代の仲間が、ほとんど死んでしまっていたからだ。
 みんなは面白いほど罠にはまるし、絶対に勝てないような相手とも喧嘩をする。
 バカだから、勝てないことも分からないのか。
 最初の頃はそう冷ややかな目で死んでゆくみんなを見ていた。
 しかし、気付けばもう、年の近いの仲間はみんな消えていた。
 一番年が近い子でも、三歳も離れていた。

     6

 それでも群れに顔を出すのは、怖いからだった。
 私がアフォしぃでないと言われてしまうのが、怖いからだった。
 昔からこの群れで生活してきた私にとって、
 もし、私がアフォしぃでなかったらと考えると、とても怖かった。
 アフォしぃとして生きてきた過去を、全て否定されてしまうような気さえした。
 もし私がアフォしぃでないのなら、群れにいてはいけないように思えた。
 この群れでずっと過ごしてきた私にとって、それはとても恐ろしいことだった。
 だから、私はアフォしぃなんだ。ここにいてもいいんだ。
 ……そういう自己暗示も込めて、私は結局、いつまでもずるずると群れと接触することをやめなかった。

 ひとりで生活しているようなものなのに、群れから拒絶されることを恐れていたのだろうか。
 私のそんな気持ちは、私自身でも理解することができずにいた。
 群れと一緒にいても、もう楽しいこともないというのに。



     7

 そんな生活を続けていたある日。
 私は狩りに疲れて動きが鈍った体を引きずり、秘密の隠し場所へと続く獣道を歩いていた。
 昔なら、こんな風に酷く疲れることもなかったのだが、最近はすぐに疲れが溜まるようになっていた。
 今日も、結局一人も捕まえられずにいた。
 隠し場所にはまだいくつかの食料を保管してある。
 だから食べるものには困らないものの、何故だか酷く憂鬱だった。
 すでに太陽は沈みかけていて、森の中は不気味に薄暗い。
 そんな中で隠し場所へと帰ってきた私は、目の前の光景に硬直してしまった。
「ズルーイ!シィチャンタチニダマッテコンナニイッパイアツメテルナンテー!」
 群れのみんなが、隠し場所を荒らした手を止めて、こちらを睨んでいた……。

 私は、逃げ出した。
 すぐ後ろから、罵声と足音が聞こえた。

     8

 疲れていた体を無理やり動かし、必死にかつての仲間から逃げようとする私。
 既に群れのみんなは、私を敵と認識しているのだろう。
 目を見れば、そのくらいのことはわかった。
 隠し場所にあったものを全て見られたのだとすれば、そう認識されてもおかしくない。
 だってそこにあったのは、私が狩りに使うために旅人から奪ったもの。
 荒らしを討伐するAA用の装備だって、あったのだから。
「マチナサイーイ!」
 後ろから甲高い声が響いてくる。
 やはり疲れているからだろうか。私はすぐに追いつかれそうになっていた。
 必死になって木々の間を走っていると、少し開けた場所に出た。
 ここは、荒らしを狩るための罠が多数仕掛けられた場所。
「シィィィ!!」
 その罠の位置を正確に把握していないと、悲鳴を上げることになる場所だった。



     9

 そのような小細工で、少しは時間を稼いだ私だったが、結局追いつかれそうになっていた。
「はあっ、はあっ……っく」
 喉が焼けるように熱い。
 息を乱しながら下りの斜面を走るも、足は遅くなるばかりだった。
「エーイ!」
「っ!」
 叫び声が聞こえたかと思うと、背中に激痛が走った。
 私はそのまま前に倒れ、斜面をごろごろと落ちていった。
「ぐうっ!」
 体を地面に打ち付ける度、背中に痛みを感じた。恐らく、さっき爪でやられたのだろう。
「あうぅっ!」
 一際強い衝撃を受け、私はうつ伏せに倒れた。
 そして同時に、自分の体が止まったことを理解した。

     10

 斜面を落ち切り、うつ伏せに倒れた私だったが、そのまま寝ているわけにはいかなかった。
 力を振り絞り、顔を上げる。
「――!?」
 しかし、目の前にいたのは一人のギコ――その身なりから、冒険者であることが推測できた。
 私は顔から血の気が引いていくのを感じた。
 冒険者とは、財宝やレアアイテムを求めて遺跡やここのような危険な森を探索する者たちのことだ。
 かれらは、荒らしと戦うことを日常茶飯事としている。
 そして、それに打ち勝つだけの実力を備えており、簡単に荒らしたちを殺してしまうのだ。
(……私、ここで死ぬんだ)
 目の前の彼に殺されるのか、それとも後ろの群れのみんなに殺されるのか。
 それは分からないが、私はきっと、ここで死ぬんだろう。
「あうっ!」



     11

(火……?)
 私が目覚めたとき、はじめに見えたのは火だった。
 それが焚き火であることは分かったが、私は火を焚いた覚えはない。
(それよりも、なんて危ない……火を焚いたまま、寝てしまったの?)
 私は慌てて、うつ伏せに寝ていた体を起こそうとした。
「痛っ!?」
 ひじを曲げ、立ち上がろうとした直後、体中に鋭い痛みを感じて、私は再び地面に突っ伏した。
「ん? おいおい。まだ傷が癒えてないんだから大人しくしてろ」
 そして、いきなり上から聞こえた言葉に驚き、思わず力んでしまい、また体中に痛みを感じたのだった。
 苦悶の表情を浮かべる私に、またさっきの声が話しかけてきた。
「あ、と、悪い。驚かしたみたいだな」
 そう言って、私の顔を覗き込んできたのは、ギコ種の男。
 その顔を見た瞬間、私は全てを思い出した。

     12

 顔と目線だけを動かして、私は周りの様子を調べる。
 そこは、先ほど私が気絶した場所とはさほど離れていないらしかった。
 比較的新しい血の臭いを、微かに感じることができた。
 目の前には小さな焚き火。私の体には、一枚の毛布がかけられていた。
 そして、私の傍にいるのは、先ほどのギコ種の男一人。
 ……彼が、私を助けてくれた、のだろうか。
「……どうして?」
 恐る恐る、小さな声で彼に尋ねる。
「どうして……助けてくれたの?」
「だって、アフォしぃに追われてただろう」
「私だって、アフォしぃよ……」
「そうか」
 私の言葉に対して、彼はごく普通にそう返した。



     13

 何故だろう。
 どうして彼は、私がアフォしぃだと言っても驚かないのだろうか。
「……驚かないの?」
「いや、驚いてるさ。知能を持ったアフォしぃがいるなんてな」
「……なんで?」
「ん?」
「なんで私がアフォしぃだと……荒らしだとわかっているのに、殺さないの?」
 私がそう聞くと、今度は彼はかなり驚いたようだった。
 しかし、すぐに元の顔に戻るとこう言った。
「いや、アフォしぃだろうがしぃだろうが、関係ないだろ」
「え……?」
 この答えは、とても意外だった。
 アフォしぃでもしぃでも、関係ない?

     14

「君が追われていたから、俺は君を助けたんだ。誰かを助けるのに種族は関係ないだろう?」
 私は一瞬、彼の言葉が理解できなかった。
 種族は、関係ない?
 なぜ、こんなことが言えるのだろうか。
 私が自分はアフォしぃなのかしぃなのか散々悩んでいたけど、そんな答えはまったく出てこなかった。
「でも……私は」
「はぁ。あのな。種族がなんだろうが、君は君だろう? そんなに種族って気にすることか?」
「っ!!」
 衝撃だった。
 私は今までの人生の半分以上を自分の種族についての悩みで消費してきた。
 だが、目の前の彼はそれを一言で解決してしまったような気がした。

 種族は関係ない。例えしぃだろうがアフォしぃだろうが……私は、私だ。
 今までの私の悩みが、とてもちっぽけなものだと思えた。


     15

「あは……アハハハハっ!」
 声をあげて笑う、私。
「ど、どうした?」
「ハハハハっ……はぁ。ごめんなさいね。なんだか、凄くいい気分なの」
「……?」
 よく分からない、と、顔全体にクエスチョンマークを出している彼。
「私ね……ずっと悩んでたの。私って本当にアフォしぃなのかな。って。
 ……でも、そうよね。関係ないわよね。そんなこと。私は私。アフォしぃじゃなくても、それは変わらないわ」
 相変わらず、彼はよく分からないという顔をしていたけど、私はとても気持ちよかった。
 長年の悩みが晴れて、とても嬉しかった。
「種族なんて関係ないわ。貴方の言うとおりよ」
 そう。種族なんて関係ない。
 だからこれからは、私は私として生きていこう……。

     16

 私が生まれてから、十度目の夏。
 その夏に、私の人生は大きなターニング・ポイントを迎えた。
 もう、種族なんてどうでもいい。
 種族なんかには、縛られない。
 これからは、もっと自由に、もっと気ままに……

  私らしく、生きていこう。



       ―――――END...