無題

無題

著者 Dr.通り縋り 氏

 コンビニの自動ドアが開く。空は既に薄暗かった。目の前にとおりすがる車はライトが明るい。ふと、おれを呼ぶ声が聞こえる、
「おいギコ、金貸してくんねぇ?」
ギコ「…仕方ねぇな。お前なら店ン中はいって盗っちまえばいいだろ。モラ。」
モララー「おれは善人だからな。」
 モララーは隣の店のブロックに座っていた。自分もモララーの隣にゆっくり腰かけた。
ギコ「・・・おい!!ミートソースにパルメザンチーズついてねぇよ!!!どうしてくれんだよ!!」
モララー「チーズなんてただの飾りさ。どうせチーズなんてあれだよ。劇中の村人Aだよ。」
ギコ「やべぇよ!!!チーズねぇとおれ不快!!チーズでもチーズなりにいきてんだぜ!!」
モララー「うるせぇな!だったらレアチーズでものせとけ!!ほら、」
 何気ない会話がかなり続いた、・・・パスタを食べ終わったあと、しばらく沈黙がつづく・・・。
ギコ「・・・じゃ、おれ帰るぞ。」
モララー「じゃぁな。」
 ・・・帰る時、空は真っ暗だった。長く、細い路地を歩く、電柱についている電灯が道を薄暗く照らす。
ギコ(今日はなにかと寒いな・・・)
 突然、電灯に人影がたった。
ギコ「・・・!?」
 一瞬頭によぎる・・・。・・・UMA・・・。



UMA+AA ギコ編

 真っ青な空、いつものように細く、長い路地をギコは歩いていた。
「おいまて」
 突然後ろから聞こえた。いやにダミ声だ。
ギコ「・・・なんかおれをよんだか?」
 振り返り、後ろをみた。いかにも生意気そうな小太りの男が胸を張り、つったっていた。
男「氏ね。」
突如としていった彼の言葉にギコはとまどった。
ギコ「ハァ? なんだよいきなり・・・。っつかだれだよ。」
男「うるさい氏ね。だれだと思ってんだ。」
 その生意気なダミ声でギコは腹を立てた。
ギコ「さっきから聞いてりゃ・・・、喧嘩なら買ってやるぞゴルァ!!!」
 一瞬、背中に重みを感じた。鈍い音が耳に聞こえた。なにかの力で強く地面に叩きつけられた感じが背筋に伝わる。
ギコ「ぐぁっ・・・!」
男「けけけぶざまな姿だな。」
ギコ「おめぇ・・・。何しやがる・・・。」
男「まぁ、お前等画面でしかなにもできないクズはこのUMAにひざまずくんだな。ケケケケ」
 UMA。背中に押さえつけられている重さに気付く。
ギコ(動けねぇ・・・)
UMA「いいか、きさまが栄光の第一部下だ。忠誠を誓え馬鹿猫。」
ギコ「・・・やめれ。」
 ミシミシ・・・。自分の体が悲鳴をあげそうになる。
ギコ「・・・わかった・・・。俺は・・・誓う・・・。」
 体が軽くなる。あとの痛さが体中に駆け巡る。動けない・・・。
UMA「ケケケケ。」
 突然のできごとだった。真っ青な空、いつもと同じ日におこった事件。低い声が聞こえる。
――新時代の始まりだ。



UMA+AA つー編

フサ「えーと、おしるこおしるこ。」
のー「フサやん、自販でおしるこ買うのはやめといて・・・。」
 車の全く通らない、田んぼと住宅地の間でフサとのーはポツンといた。田んぼの向こうには高速道路と繁華街がみえる。
ガコンッ
フサ「おー、あったけぇ。あ、当たりだぜ。のー、おまえにやるよ。」
のー「そんな缶の中に入った外道なおしるこいらへん。あ、コーンスープは別やで。」
 フサは自販の隣にある塀に座り、繁華街を眺めた。
フサ「最近、AA狩りとかいうもんがおるそうだな。」
のー「…数日前、ギコが狩られたっていう話をきいとる。」
 のーはそういいながらフサの横に座り、温かいおしるこをいやいや口にあてる。
のー「・・・なんや、ヘドロみたいな味するのう。」
フサ「なにいってんだ。うめぇよ。ロースカツみてぇな味じゃねぇか。」
のー「おしるこがロースカツみたいな味やったら人生後悔するわ。・・・あ、ほんまや。」
フサ「つー、・・・あいつなら大丈夫だよな。」


 フサの目が少しうつむく。
のー「先輩なら大丈夫や。・・・なんや、先輩を気にするんか?」
フサ「は?んなわけないだろ。」
ドボボ・・・
のー「フサやん。なにおしるここぼしとるん。」
フサ「ああ。・・・地球におしるこ飲ませただけだよ。」
 じょじょに空が赤くそまっていく。フサは空の缶を田んぼに投げつける。
のー「ゴミはゴミ箱へすてぇや。」
フサ「じゃぁ、おれぁぃょぅの家で遊んでくらぁ。」
のー「シカトすんじゃねぇよボケ。」
 フサは住宅街に入り込んだ。しばらく、のーは座ったままだった。
「UMA様だぞ。」
 顔をあげる。道路から人影が近づく。



UMA+AA つー編

空も赤く色付き始める。それとともにカラスが鳴く。
UMA「つーはどこだ。」
のー「・・・・先輩を探しとるんか? それより、だれやねん。」
UMA「つーはどこだ。おしえろ。」
のー「しらへんわ。」
 まだなまぬるい缶をゴミ箱へ持ち運ぶ。
のー「お前さん、言い方にはきぃつけぇや。先輩は荒いからのう。」
UMA「生意気だな。」
のー「?」
UMA「AAの分際で、俺に命令するのか?ギコを捕まえたんだぞ。」
 のーの顔がこわばる。
のー「・・・AA狩りやと?」
UMA「お前も狩る。」
 彼が青く、短いGパンからなにかを取り出す。
のー「外見で見ちゃあかんで厨房。」
 身の危険を感じた。逃げた方がよかったかもしれない。しかし、先輩に危険がせまってることがさきに頭に浮かんだ。
 AA狩りめがけて腕を振りかざす。頭には先輩の身の危険さしか考えられず、加減を忘れてしまった。
UMA「のー、力は非常に弱いAA。」
 聞こえたとたん、体中から生気を吸いとられるような感じがした。いつのまにかUMAという男のまえで座りこんでいた。
のー「ぅあう・・・・。」
 全てをとられたような気がした。浮かびあがった言葉を彼にいう。
のー「UMA様・・・。」
UMA「おまえは、UMA+Ⅱだ。おれに作られた。そうだろう。」
のー「ゥァァ・・・。・・・はい。」
 なにも感じなくなった。UMAが近づく。
UMA「ハァ・・・ハァ・・・。初めての♀だ・・・ケケケケ・・・。」
 目の前が薄暗くなる。太陽の光は雲によって遮られていた。繁華街はネオンの光で彩られる。

UMA+AA つー編

UMA「ハァ…ぼくにも♀ができたんだ。ハァ…この♀の香りを独り占めできるんだ…。」
 生温かい汗が垂れる。のーの体を優しく触る。顔を近づけ、息を吸う。
UMA「もう、ぼくは他とちがうんだ・・・。」
 息の荒さが増す。耐え続けたあるものが彼の興奮を絶頂まで昇らせた。優しく包み込む。
「離れろ。豚野郎。」

 電灯があちこちに点く。鮮やかな黄色もあれば消えかけの電灯もある。街は昼の姿から夜の姿へと変えてゆく。
つー「おい、まて。タヌキ。」
 つーの足取りが止まる。のーと何者かが道路をたたずんでいる。
モナー「もう夜になっちゃうモナ。早く帰らないとご飯が冷めちゃうモナァ。」
つー「てめぇはポケットン中にむしキングが入ってる小学一年生か。とりあえずついてこいタヌチンコ。」
モナー「コノヤロー。この小説打ち切りにさせたいのか?あ、すみませんいまの寝言です。」
 正直驚いた。滅多に見ぬ光景であったのである。しかも自販の前で照らされ、ポツンとたたずんでいる。はっきりと見えた。
つー「おい離れろ。この豚野郎。」
 すぐに声をかけた。彼はゆっくり立ち、後ろに振り向く。青く短いGパン。ベルトは茶色く太い。シャツをしっかりしまい、真っ白なTシャツを着こなしている。
つー「失せろや豚。」
UMA「うほ、おれの欲しいものがふたつも揃うなんて。」
 彼はつーの言葉にひるみもせず、ふたりの顔をみてにやつく。
UMA「狩るよかるよカルカル・・・キャハァハハハハ!!!!」
 突然の奇声に体が反応する。すぐさまモナーに命令をする。
つー「タヌキ!!後輩を頼むぞ!!!」
モナー「ハッ!!ア、アイアイサーだモナ!!!」
 瞬時にのーの居場所をみつけ、駆け寄る。AA狩りはモナーを察した。なにかをとりだす。
UMA「まずはモナーをとるぜぇぇぇぇ!!!ttttttt!!!」
 つぎに動いたのはつーだった。同時に自慢の包丁を手首をひねらせて取り出す。標的はAA狩りののどもと。
つー「アヒャヒャヒャヒャ!!!」
UMA「!?」
 AA狩りはとっさによける。モナーはそれにあわせ力いっぱい走る。のーを抱きかかえ、住宅街へと突っ走っていく。

つー「アヒャ・・・。」
 ナイスモナー!!口にださず、モナーめがけて親指をたてる。そのまま薄暗い中走り去っていった。
UMA「お前・・・!!このおれのものを・・・。」
つー「なにいってんだ。てめぇみてぇな体中ローション塗ったようなばっちぃ野郎に後輩あげた覚えねぇよ。」
 AA狩りはさっきより落ち着きをたもちはじめた。
UMA「このおれをだれだとおもっている・・・。UMA様だぞ!!」
 UMA…。つーは苦笑した。
つー「馬だか馬糞だかしらねぇが。その脂のった肉切り落として馬刺しにしてやらぁ。アヒャヒャ。」
 つーはゆっくりと構える。UMAはさっきの黒い機器にブツブツとなにかを言う。
つー「いまさら泣き言いったっておせぇんだよぉ!!!」
 手首をひねらせた。包丁をなげつける。しかし、鋭く尖った凶器はでない。普段よりもうまくいかない。ぎこちない。
つー「アヒャ?ちょまてよ!!コノヤロー!!!」
 言葉につまる。思い出せない。気力がみるみるなくなってゆく。
UMA「俺の勝ちだ。さっきの気迫はどうしたのかな。クソ猫」
つー「そんな・・・俺は……。…許してください・・・私の負けです…ごめんなさい・・・UMA様。」
 崩れてゆく。失ってゆく。後輩も、タヌキも、イヌ公も、自分さえも、ガラスが割れるように・・・。
UMA「いまさら泣き言いったっておそいんだぞ・・・・ケケケ。」

つー編 end



UMA+AA モナー編

モララー「それで、そのAA狩りを報告するために俺をよんだっつーのか。」
しぃ「・・・それで、つーちゃんは・・・。」
 狭い部屋の中、3人は小さな机をはさんで座っている。その上に置かれているラーメンの残り汁が湯気と豚骨の香りを漂わせる。
モナー「つーちゃんならあんなやつなんかすぐにやっつけちゃうモナ。・・・それよりも、のーちゃんの様子が変モナ・・・。」
 モナーの顔が少しうつむく。
モララー「さて、ラーメンも食ったし、帰るぞ。」
しぃ「? ・・・まだなにも・・・。」
モララー「なんだ、おれはそんなAA狩りなんざ興味ねぇよ。それともなんだ。楽しくモナのつまらねぇ武勇伝を聞き続けるってのか?」
しぃ「モナーくんはそんなことで呼んだんじゃないよ!!」
モララー「だったらよ。さっさと話せ。何回黙り込んでんだよ。」
 モララーの言葉は鋭かった。モナーの重い口がひらく。
モナー「それが、・・・ぜんぜんしゃべんなくて、・・・ときどき、独りでブツブツと・・・。」
 玄関に音がした。廊下が慌しくなる。
ガナー「みんな早く来て!!」

しぃ「・・・ギコ君・・・!」
 玄関でたたずんでいた。体には傷ひとつない。しかし、ここまで辿りつくのにどれだけ走ってきたのか、4人をみたとたん、前に倒れ掛かる。
 モララーが瞬時に感づいた、素早く受け止める。
モララー「・・・・モナ、寝かせてやれ。」
 4人はなにも言わず、朝まで彼をみとどけた。



UMA+AA モナー編

モナー「じゃがバターできたよー!のーちゃぁん♪」
ガチャッ・・・
 モナーはのーがいるガナーの部屋をあけた。電気をつける。
ガナー「あんまし見ないでよ・・・。」
 モナーの耳元でガナーがつぶやく。
モナー「ハハハ・・・のーちゃぁんじゃがバターモナよ。食べればあったかくなるモナ。」
 のーはだまって下をうつむいている。モナーはのそのそとガナーの部屋にはいる。
モナー「どうしたの? ・・・ジャガイモ嫌いモナ?好き嫌いはダメモナよ~。」
 突然足の裏に激痛がはしる。モナーは立ち止り、顔が青ざめる。
モナー「ふんぎぃゃぁぁぁぁ!!!!」
ガシャァン・・・!!
 あまりの激痛ゆえ、モナーは両手で足をもつ。それと同時に皿を落としてしまった。
モナー「アイチチチ・・・。・・・アァ!!ジャガバターがおじゃんモナァ・・・!」
ガナー「ちょっとぉ!! なにおとしてんのよ!! サイテー!!」
 ガナーはそういったあと、洗面所へ直行する。モナーは頭をかきながら笑っていた。 床のマットはバターでべっとりしみついてしまっている。
モナー「アハハ・・・。ごめんねのーちゃん。また作り直すモナァ。」
 モナーは笑い続け、のーに背を向けた。おなじく洗面所へむかう。
のー「・・・せ・・・・。」
モナー「・・・・?」
 モナーの笑いが止まる。
 ゆっくり振り向く。それと同時にモララーがドアの前にくる。
モナー「・・・なにか、・・・いったモナ?」
のー「自分はUMA・・・忠実なる・・・。」
 小さくなにかをつぶやく。ジャガバターのにおいが部屋に漂う。
・・・ガバッ!!
 突然のーはモナーにとびかかる。モナーと倒れ掛かり、首に手をやる。
モナー「あがっ・・・。」
モララー「・・・・っ!!!」
 モララーが駆け寄り、のーを振り払う。のーは倒れ掛かったあと、すぐに起き上がりそのまま窓ガラスを割って外へ飛び降りる。
モナー「ハァ・・・のーちゃん・・・!!」
 モナーは窓めがけ走る。モララーはそれを引き止める。
モララー「落ち着けバカ野郎ッ!!ここは2階だぞ!!」
 間一髪窓際で手をひっぱる。モナーは暴れる。
モナー「はなすモナ!!早くしないとどっかいっちゃうモナァ!!」
 モナーを強引に引き戻す。モナーは倒れ、床にしみついたジャガバターが散らかる。
モララー「・・・じゃがバターで頭冷せ。おれが追うからな。」
 そういいながら、モララーは部屋を後にする。モナーは倒れたまま、息を荒あげる。部屋のまえにはしぃとガナーが立ちすくんでいた。のーのためにつくったジャガバターは廊下までにおっていた。



UMA+AA モナー編
 モララーは部屋をあとにし、玄関にむかっていった。
モナー「・・・モラ。イダダ・・・。」
 我にかえり、足に痛みがつたわる。ガナーがモナーの異変に気付き、モナーの後ろにまわる。
ガナー「どうしたの? あぁ、ごめんね。多分このまえ、針なくしちゃったの。それ踏んだんじゃない?大丈夫?」
 モナーは足の痛みをおさえながら立ち、妹のまえでコサックダンスを踊る。
モナー「大丈夫モナ。兄ちゃんロボットの足よりかったいモナ!ナハハハ・・・!!」
ツルン・・・ドテェッ!
 部屋に散乱したジャガイモをふみ、美しい円をえがきながら横にぶったおれた。
ガナー「ちょっとぉ!!暴れるとまた部屋が汚れるじゃない!!」
しぃ「そ、それよりモラ君を追わなくていいの!?」
 しぃの焦る声がふたりに伝わる。一瞬部屋に沈黙がはしる。
モナー「そ、そうモナ!!モラを追わないと!!」
 そういいながらふたりは部屋を出る。同じ兄妹、焦り方もそっくりである。
ガナー「・・・アレ?しぃちゃんは追わないの?」
 立ちすくむしぃにガナーは振り向き、声をかける。
しぃ「わたしはギコ君をみてる。もしかしたらUMAに追われてるかもしれないし。」
ガナー「・・・AA狩りね・・・・。わかった。すぐ帰るから。」
 そういってガナーは玄関へとむかった。しぃはギコのいるモナーの部屋へ入った。

モナー「モラ、どこいったモナ?」
 さきに外へ出たのはモナーだった。辺りを見回し、適当にはしる。あとにでてきたガナーも兄を追うが、なかなか追いつかない。
ガナー「ちょ、まってよぉ・・・。」
 モナーは走った。とにかく自分のカンでメチャクチャに走った。途中、タクシーに轢かれた。アイヨー!!
モナー「どこいったんだ?モラのやつ・・・。」
 息をとぎらせながら狭い十字路にさしかかる。
ドスゥッ!!
「てめぇ!!どこみて歩いてやがる!!」
モナー「いたた・・・。・・・へ?」
 モナーは彼を見た。緊張がはしる・・・。


ガナー「・・・・。迷ったけど・・・。」



UMA+AA モナー編

モララー「ハァ・・・ハァ」
 息を荒上げながらのーを追う。体力には自信があった。しかし、いっこうに追いつかない。
モララー「くそっ!!」
 ついにのーを見失う。息が乱れ、走りをやめ、ゆっくりちいさく歩いた。
 気付けば見知らぬ町に辿り着いていた。細く寂しい路地、まわりには古く汚れた家が連なっている。
モララー「・・・・。」
 とまどう。自分が知らない道などほとんどなかった。改造しまくったバイクでそこらじゅうを走り回り、通りすがりのサツに罵声をあびせて追われまくり、小さな路地に隠れることもあった。
 そこらじゅうで暴れまくった自分でさえ、知らない。
モララー「ちっ・・・。見失っちまった。」
 舌打ちしたあと、そばにある電柱に手をやる。
モララー(・・・・やっぱおかしいよな。)
 さっきののーの異変を、落ち着いて考えはじめた。息を整える。自分の足を見つめる。
 最初から気付いておけばよかった。そうすれば、いまの状況を防げたのかもしれない。
 訳の分からない後悔が、頭の中を駆け回る。自分がなにを考えてるのかわからなくなってきた。
・・・・つかれた。
 そう考えた後、もう一度路地を走る。
モララー「・・・・!?」
 崩れた廃工場が目にうつる。薄汚れた壁に、壊れた自動車の山。工場からくる冷えた風に、少し寒気を感じた。曇った空のなか、ゆっくりと工場の敷地に入っていく。


「・・・だれだ」
一瞬、後ろからダミ声がきこえた。耳に強く響く。



UMA+AA モナー編

・・・・コトッ
しぃ「最初、まさかギコ君が狩られちゃうなんて・・・。わたし、ビックリした・・・。」
ギコ「そうか。たしかに、おれもなにがなんだかわかんねぇ。」
 小さな部屋のなか、しぃは傷だらけの椅子に腰かけている。持っていたニラ茶を隣の机に置く。漫画だらけで、汚い机に。
 ギコは少し軽くなった体を動かして、机の側にある透明な窓にひじをつかせていた。窓の縁はホコリだらけ。
ギコ「・・・なんかよ。かっこわりぃな。おれ・・・。」
 少し濁った白色に染まった空を眺めながら。落ち着いた表情でつぶやく。
しぃ「そんなことないよ。わたしは、かっこわるいなんて思ってないよ・・・。」
 しぃはギコを見つめる。ギコの顔は空の色に薄く染まっていた。
 ・・・少しの間沈黙がつづく。途中で、ギコの口が開く。
ギコ「・・・寒そうだな、今日・・・。」
しぃ「・・・そう。」
 白い雲が空を覆っている。雨になるような感じだった。
ギコ「おれ、もしな。しぃがよ、あんなAA狩りに捕まったらよ。ぜってぇ、ぜってぇだぞ!・・・助けてやるよ。」
 いつの間にかギコから目をそらしていた。はっとした瞬間、ギコはしぃの目をみつめていた。
ギコ「そんときは、真っ先に駆けつけて、そのAA狩りをボッコボコにしてやるよ!おれはしぃの・・・。」
 赤くなる。ギコはすぐに窓の外を見つめなおした。
しぃ「・・・クスッ」
 なぜだか、おかしい。ギコの妙な慌てっぷりと、いつもとちがう雰囲気を出すからだ。ギコはさらにおかしくなる。
しぃ「じゃぁ、こうしよ。」
ギコ「ンア?」
 しぃは小指を差し出す。
しぃ「約束・・・だよ。」
ギコ「あ、ああ!男の約束だ!!」
 ますます笑える。ギコは小指をしぃの指に重ねる。
しぃ「・・・嘘ついたら、ラーメン1年分おごってね!」
ギコ「破るわけねぇだろ!!」
 そういって勢いよく腕を振る。ギコの顔ははっきりとみえた。

 一瞬、空気が乱れる。
ギコ「グアゥァァァアァァ・・・・!!!!」
しぃ「・・・!?」
 ギコは床に倒れる。頭を抱えながらもがきくるしむ。
しぃ「ギコ君!?どうしたの!!?」
      • パリィンッ!!
 ニラ茶の入ったコップが落ち、痛い音を放ちながら割れた。



UMA+AA モナー編

 空がいっそう灰色になる。豪雨がふってもおかしくない。巨大な雲が空を覆っている。
ポツリ、ポツリ・・・
 工場の方から雨の音が鳴る。モララーの体にも冷たい雨が落ち、肌がすこしぬれる。
モララー「おまえか。AA狩りは・・・。」
UMA「そうだ。丁度いい、お前も狩る。・・・いや、少し試してみるか・・・。」
 工場の方から足音がきこえた。2人・・・いや、3人はいる。振り返り、工場の入口まえを見る。
モララー「のーに、つーに、・・・アン?クックル・・・?」
 少し驚いたが、表情は変えない。身も引かない。その時点で、恐れたくない。もう一度AA狩りをみる。
モララー「随分と愉快な連中とつきあってんだな。テメェ・・・。」
UMA「おもしろいな。目の前でAAが死ぬなんて。こんなこと、PCでしか見れないんだから・・・。」
 3人はモララーの目の前にたつ。モララーは身を構える。モララーの強力な威圧感が周りを包む。表情ひとつ変えない。予測不能な顔。
 威圧感はAA狩りには感じなかった。全く鈍い奴だ。
モララー「・・・。」
 元に戻す。きこえたのである。
モララー「その前に、俺たちも3人あつまらねぇとな。」
UMA「・・・なにをいってるんだ?」
 耳をひそませる・・・。・・・雨の音のなか、ドタドタと走る、アイツの音が・・・。
「モララー!!!そこにいるだろー!!!」
 いつも寝ている、飯のことしか考えないアイツ。あどけない声が町から響く。モララーは少し息をはく。
モララー「ば~か・・・。もっと上品に走れっつーの。」
 モナー、それと、フサ。AA狩りを通り越し、モララーに近づく。どうやらAA狩りがすぐそこにいることを気付いてない。
モナー「ったく!フサがいなかったらボク迷子になってたモナよ!!」
フサ「ったく、モナーの話きいたぜ。毎回おれを驚かせてくれるじゃねぇか。」
モララー「おめぇら、まわりみろ・・・。」
 相変わらずである。すでに周りは3人に囲まれていた。せっかくの助っ人が、この2人だとは・・・。
モナー「あ!!またモララーわるい事したモナね!!だからこんな目にあうモナ!!罰当たりモナ!!」
フサ「お、つー。久しぶりー。」
モララー「さぁて、モナーのいうおれの天罰に、おめぇら付き合えよ!」
 UMAが命令をくだす。雨は予想どおり、つよさを増しつつある。



UMA+AA UMA編
 雨が降る。空はいっそう黒さを増し、強い雨が工場の屋根にふりそそぐ。
モナー「ぎゃぁぁぁぁ!!!来たモナァァァァ!!!!」
 3人は工場の入口へとつっこむ。それをつーは包丁を投げる。
モナー「きぃぃぃやぁぁぁぁぁ!!!!」
モララー「モナー!!階段に駆け上れ!!」
 モララーは落ち着いていた。目の前の階段の上に、オイルの詰った缶を発見したのだ。先頭のモナーはいうとおり、階段へ駆け上る。あせっているのか、妙に足が速い。
モララー「よぉし!モナー!!となりにある缶を階段にぶちまけろ!!」
モナー「おk!!」
 モナーはすぐさま缶を持ち、見事に手がすべってモララーのいうようぶちまけた。
モラ,房「ばかぁぁぁぁ!!!俺たちいるだろぉぉぉぉ!!!」
 モナーの後ろを走っていたモララーとフサは、華麗に滑り、ドタドタとおちる。
フサ「・・・モナーめ。いつかブチのめす・・・。」
 ふと目の前からつー達がやってくる。つーは高く跳び、包丁を投げまくる。
モラ,房「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」
 ふたりは右に転がりまわり、包丁をかわしまくる。そして起き上がり、再び走る。そのあとをのー、クックルが追う。
モナー「わちゃー。ゴメンモナー・・・。」
 突然、目の前に影がよぎる。頭上にはつーがモナーめがけて包丁をかざす。
モナー「きぃぃぃやぁぁぁぁ!!!」
 モナーは反射的にそばにあったオイル缶を投げつける。
バシャァッ!!
 つーはキレイに缶を切りあげる。しかし、そこにはすでにモナーはいなかった。

モナー「ハァ・・・ハァ。」
 モナーは床が透き通った廊下を走る。下にはなにが入っているかわからない大きな木箱がずらりとならんでいる。
モナー「ハヒ・・・ハヒ・・・。もだめぽ・・・。」
 慌てていたモナーは、メチャクチャに走り回っていた。気付けば、薄暗い、倉庫のようなところへ逃れていた。
モナー「・・・フゥ。」
 少し落ち着き、辺りを見回す。周りにはビンが丁寧に並んでおり、中には粉や部品など、わけのわからないものがおいてある。
モナー「それにしても、暗いモナ・・・。」
ジャリッ・・・
 何かを踏む。どうやら粉のようだ。
バリィンッ!!
モナー「・・・・っ!!」
 包丁がモナーを横切る。ビンを破壊しつづけ、モナーまで届く。
モナー(つ、つーちゃんがいるモナ・・・!!)
 冷汗が額に流れる。息を潜める。
モナー「・・・・ふぇ、ぶぇっくしょん!!!」
 さっきの粉でくしゃみがでた。
バリリィン!!!
モナー「っ・・・・!!!」
 今度はわずか数cmをよぎる。今度音をだしたら・・・・。
モナーはもう一度いきを潜めた。
モナー「・・・・。」
 外から雨音が聴こえる。・・・ちいさく、モナーは動く。向こう側を少しずつ、汗を垂らし、見る。
モナー(つーちゃん・・・)
 赤い、そして、鋭い凶器を持ちながら、こちらに近寄る。モナーは、さらに息を殺す。



UMA+AA UMA編

ゴトッ
フサ「どうだ?」
モララー「大丈夫。あいつら気付かずに通っていったぜ。」
 モララーが外にでる。工場のすみにおいてあったバケツに隠れていた。つづいてフサもバケツからでてくる。
モララー「そもそも、なんであいつら、操られてんだよ・・・。」
フサ「それはここに隠されてるんじゃね?」
 モララーはフサの顔をみる。
フサ「ぃょぅがな、UMAを追い回してたんだよ。それで、あることに気が付いたんだ。」
モララー「なんだ?そのあることって・・・。」
フサ「あいつは毎日この工場ン中に入り込んでる。で、この奥のある部屋に別世界の入口があるらしい。」
モララー「はぁ?」
 モララーの顔がニヤつく。別世界の入口?なにを言ってんだか・・・。
フサ「そもそもアレだろ?姿形でおかしいじゃねぇか。あんなAAみたことねぇぞ。・・・おそらく、AAじゃねぇってことはたしかだぜ。」
モララー「せ、その入口っつーのはどこだよ。」
フサ「えーと、たしか・・・。」
ドゴォン!!!
フサ,モラ「!!!?」
 クックルが壁を破り、モララーとフサのまえに立ちふさがる。
フサ「ッカァ!!! もう逃げてばっかじゃ我慢ならねぇ!!」
 フサが前にでようとする。モララーはフサの腕をつかみ、走る。
モララー「少しは冷静になれや。ヴォケ!」
 モララーは細い廊下を走る。曲がり角にさしかかったとき、前にのーが立ちふさがる。後ろにはクックルがむかっている。クックルはモララーたちめがけて跳ぶ。
モララー「伏せろ!!!」
フサ「ぅお!!?」
 伏せる。見事にモララーの予想通りであった。クックルの体は華麗に外れ、のーにぶち当たる。
モララー「いまのうちだ!」
フサ「すげー!!!なんかすげー!!!!」
 フサが関心してるなか、モララーはつぶやく。

モララー「さがすぞ。その入口っつうやつ・・・。」



UMA+AA UMA編

モナー「・・・・。」
 つーがいる。薄暗い部屋の中、たしかにはっきりと見えたのだ。緊張がたかまる。
モナー(どうしよう・・・。)
 ふと、薄暗い部屋のなか、ほんの少し光をだしているところをみつける。カーテンで光を遮っていた。その光のさきに、消化器をみつけた。
モナー(・・・・そうだ。)

ヒタッ・・・ヒタッ
 つーはモナーを狩るため、両手には包丁をもっていた。薄暗い部屋の中、ゆっくり歩いている。
 突然、光があたる。風がほんの少しふき、体にあたる。その方向を見ると、窓が開いていた。つーは窓の方へと歩いてゆく。窓の前に立つ。
モナー「ゴメン!!つーちゃん!!!」
バシュゥゥゥゥゥッ!!!!
 つーに消化器の煙がふりかかる。辺りは白い煙で染まっていた。
モナー「いまのうちに・・・!!」
ビシュウッ!!
 包丁がモナーを襲う。腕をかすめた。
モナー「うぁ・・・!!」
 その衝撃で再び恐怖感がぶりかえす。モナーはとっさに、床が壊れた方へ走り出す。
ガラガラドシャァン・・・!!
モナー「ぎゃぁぁぁっぁす!!!」
 おもいっきり地面に叩きつけられた。全身に衝撃がはしる。
モナー「あだだ・・・。」
 運よく体はかすり傷のみですんだ。深く息を吸い、辺りを見回す。
モナー「・・・・?」
 部屋の真ん中に不自然な扉がたっている。部屋は湿っており、雨漏りがしている。
UMA「そこまでだ。」
 うしろからダミ声が聞こえた。その声は、モナーの耳に強く響いた。



UMA+AA UMA編

モララー「ハァ・・・ハァ。」
 モララーとフサは限界に達していた。あれからずっと走り続けている。UMAの部下たちは疲れをしらないのか、いつまでも追い続けている。
フサ「ハァ・・・おいモララー。ハァ」
モララー「あぁ?」
フサ「おれがあいつらをとめる。」
モララー「は?おま----」
 フサはモララーの言葉をきかず、後ろを向く。
フサ「ラーメンおごれよ!!」
モララー「なっ!?」
 自分も止まろうとした。しかし、フサの決めた事を裏切ることはできない。フサはモララーを信じた。モララーにすべてを託したのかもしれない。
モララー「くっ・・・!!」
 モララーは一気に走る。どこに向かえばいいかわからない。でも、止まるよりかはましだ。

モナー「・・・おまえ、ここの住民じゃぁないモナね。」
UMA「そうだ。おれは神様だぞ。お前等下等種族と同類にするな。」
モナー「じゃぁ、どこからきたモナ。」
UMA「おれに指図するのか?」
モナー「・・・・みんなを元に戻すモナ。」
UMA「うるさいぞ。」
 UMAはポケットから、黒いマイクを取り出す。
モナー「それで、AAを洗脳するモナね。」
UMA「モナーはUMAが作った・・・。」
 小声だが、そう聞こえた。突然、目の前がゆらぐ。
モナー「ぐぅぁぁぁぁ!!!」
 頭が割れる。強くバットで叩きつけられたような激痛が、モナーを襲う。
UMA「どうだ。おれに忠誠を誓え。」
モナー「・・・やだモナ。」
 意識が飛びそうな程、痛い。
UMA「誓え。じゃないともっとヒドイぞ。」
モナー「・・・・。」
 モナーは大きく息を吸う。
モナー「取り消しィィィィィ!!!!」
 その声は大きく響いた。UMAは驚き、一歩退く。
モナー「はぁ・・・。二度みたんだから、もうさせないモナよ。」
 モナーは後ろへ振り向き、扉を開けようとした。
UMA「まて!!!こいつがどうなってもいいのか?」

 UMAが叫ぶ。モナーは振り返る。
 そこには、ギコがいた。ギコは、しぃを抱えている。
モナー「ギコ・・・?」
ギコ「・・・・。」
UMA「変な行動をしてみろ。おれがこいつに殺せと命令すれば、こいつは氏ぬ。」
 モナーはUMAを無視し、ギコをみつめる。
モナー「・・・ギコ。」
 ギコはうつろな目をしていた。しかし、その目はどことなく、哀しい色をだしていた。しぃは、深く眠っている。
モナー「UMA・・・。」
UMA「動くと殺すぞ。ケケケ」
モナー「お前はどこから来たのかしらない。その機器が、どんな仕組みで僕達を洗脳してるかわからない。」
UMA「なにわけわからんこといってる。殺すぞ。」
モナー「だけどな、どんなに洗脳しようが、お前には決してできないことがある。」
UMA「殺す。」
 そういって、UMAはギコに命令した。
UMA「そいつを殺せ。」
ギコ「・・・・。」
 ギコは動かなかった。
UMA「殺せ!」
 UMAは強くいう。しかし、ギコは動じない。
ギコ「・・・・。」
 ギコの目に涙があふれる。その涙はしぃの体に音もなくおちる。
モナー「どんなに頭空っぽにしようが、洗脳しようが、僕達AAの信念は、絶対消えないんだよ。」
UMA「くっ・・・!!」
 UMAはギコにとびかかろうとした。
モララー「させるかクソ野郎!!!」
 タイミングよくモララーが来ていた。そのままUMAにとび蹴りをする。
モナー「モララー!!」
モララー「さっさとどうにかしやがれモナー!!フサが殺されちまう!!」
 モナーはハッとし、扉を開ける。
UMA「あ!!」
 UMAは短く叫んだ。扉を全開にする。
 雨の音が、いつのまにかなくなっていた。窓には、光が差し込み、そこから鳥の鳴き声がきこえる。

 あれから数日、なにもなかったかのようにみんな元気だった。



 ギコはモナーたちと遊ぶとき、毎回この細く薄暗い道をとおる。そのとき、ふとあのダミ声が聞こえてくる。あの事件いらい、あの工場も取り壊されていた。
モナー「ギコ。」
ギコ「うぉ!なんだよ・・・モナーかよ・・・びびらせんじゃねぇぞ。」
モナー「・・・今日モララーとなにやったモナ?」
ギコ「んー?なんだゴルァ・・・。」
モナー「まぁたカラオケモナか~?金があっていいモナねぇ・・・。」
ギコ「ちげぇよ。」
 ギコは空を見上げる。
ギコ「チーズの無いミートソース食っただけだよ。」
最終更新:2008年01月24日 22:32