無題2

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**無題 著者 もすきぃと氏  林の中に丁度良い窪みを見つけ、俺たちはそこに隠れた。木々の外からは相変わらず悲鳴と轟音が響いてきやがる。  くそっ。足の傷にガンガン響きやがるぜ。あー痛てぇ。 「なあ。モナーク」  そんな中で、俺は戦友の名を呼ぶ。 「何?」  すぐに返事が聞こえた。……そりゃそうだ。背中合わせで座ってるんだから。 「レーション、分けてくれ」 「嫌」  間髪入れずに即答しやがった。けっ。 「まあそう言わずによ。ちょっとでいいから。な?」 「嫌だよ。そもそもギルの分はどうしたの?」  相変わらず背中合わせのまま、逆に俺に問いかけてきやがった。 「仕方ねぇだろ。もう食っちまったんだから」  無いものは無いんだから仕方ない。ならあるものを分けてもらうしかないじゃねぇか。 「な。だからちょっとだけでいいから俺に」 「自己責任」  うぐっ……こいつめ、俺の意見を一言で切り捨ててきやがる。 「そもそも、なんで勝手に食べてるのさ?」 「し、仕方ねぇだろ」  外からは相変わらず轟音が響いてくる。そしてその度に、俺たちの傷が疼きやがる。糞痛ぇぞ畜生。 「……もとより生存率はゼロだ。もう刑罰を受けることもねーんだ。いつ食おうが、俺の勝手じゃねぇか」 「……」  黙りこくる戦友。  背中合わせに座っている今ではこいつがどんな顔をしているのかなんてわからねぇが、感情だけはひしひしと伝わってきやがるぜ。 「そういえば……どうして隊長は、僕らにレーションをくれたんだろう?」  ふと、モナークがそんなことを言い出しやがった。  どうしてと言っても、今までもそうだったんだし、別に気にすること……。 「死ぬことを前提とした作戦だよ。なら、レーションだって必要ないはず」  なるほど。たしかにそうだ。どうせすぐに死ぬことが決まっているのに、食料なんて必要ないはずだ。 「嫌味だったりしてな」 「……案外、そうかもしれないね」  二人で、背中合わせのまま苦笑する。  ……足がだんだん、痺れてきやがった。 「死ぬことを前提とした作戦、か」  煙で曇った夜空を見上げて、そんなことを呟いたりしてみる俺。  なんとなく、今までの人生が思い浮かんできやがった。  生まれてからずっと訓練を受けてきて、辛いことばっかだったっけなぁ。 「神様も酷いよね。こんな人生、来世では勘弁したいよ」 「へっ。そうだな。地味でつまらなくて、最低の人生だったからな」  どうやら、こいつも同じことを考えていたらしい。  けっこう、俺たちって似てるのかもしれねぇな。 「どうせ、すぐに死ぬことになる」 「そうだな」  適当に相槌を打つ俺。足の痛みも、痺れてよく分からなくなってきやがった。  直後、いきなり立ち上がる戦友……モナーク。  だがこいつも足の怪我が酷いのか、だいぶふらついてるぜ。 「……なら最後ぐらい、派手に面白く散ってみるのも悪くないと思わない?」 「へっ。奇遇だな。俺も今同じことを考えてたとこだ、ぜ! っと……」  答えながら、足に力を込める。爆音が傷に響いて、かなり疼いてやがる。  痛みは大したことねぇけど、畜生。まっすぐ立てねぇぞ。 「それじゃ決まりだね」  俺のほうを向いて、笑いながらそう言うモナーク。手にはしっかりと得物が握られていた。 「ああ。んじゃ、俺が先に行くから、お前は」 「ダーメ」  俺も笑いながら言うが、途中で遮られちまった。 「特攻は同時にやるほうが華がある」  さらりとそんなことを言いやがる。  けっ。おもしれぇじゃねぇか。 「ふん。じゃ……逝くぜっ!」 「応っ!」  まあ、最期くらいは、俺らの好きにやってもいいだろう? なあ。神様よぅ……。      * 「というシナリオを考えてみたんだが」 「無理だよ。僕は右膝から下がもうないもの」 「……俺は左膝だな。ごっそり持っていかれちまった」 「なんで現実って」           「「こうも厳しいのかねぇ」」 ちなみにこの後、彼らは跡形もなく空爆によって吹き飛んだそうな。

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