籠の中外伝『トニィ君奮闘記』

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**籠の中外伝『トニィ君奮闘記』 著者 夜 氏 籠の中外伝『トニィ君奮闘記』~その1~ 俺の名前はトニィ。そこらへんに居そうなごくごく普通のハツカネズミだ。 唯一、他の奴とは違うところは鋭く尖った大きな歯くらいかな。 今からする話は俺の初めての武勇伝だ。 やっと、歯もだいたい尖ってきた頃。 俺は、母さんや他の兄弟と引き離されて別の小さなペットショップに移された・・・・。 -------------------------------------------------------------------------------- 籠の中外伝『トニィ君奮闘記』~その2~ 「小汚い店。」それが、俺が移されて初めて思った事だ。 「あ~あ・・・母さんとは離されちまうし・・・。これからどうなるんだろ・・・。」 ガラリーンゴロリーン ドアベルが店内に鳴り響く。 「いらっしゃいませぇ!」 太った店員が言った。 客は、7歳くらいの元気な男の子とその子の母親らしい。薄暗くてよく見えなかったが。 「ママー!早く早く!」 「マイム!待ちなさい!」 どうやら男の子はマイムと言うらしい。 (だせぇ名前だな、オイ・・・・。)俺は思った。 そのガキは、真っ直ぐ俺の所に走ってきた。 (まじかよ・・・。勘弁してくれよ!頼むから・・・。) 俺の願いもむなしくマイムは俺を指差して、「このネズミが欲しい!」と言った・・・。 -------------------------------------------------------------------------------- 籠の中外伝『トニィ君奮闘記』~その3~ マイムの部屋は、普通の子供部屋にしては結構広かった。 真新しいゲージに移され、トニィはそわそわしていた。 気になることがある。 (部屋の隅に置いてあるあれって・・・亀の餌?) ビニルパックに入れられた赤や緑のカラフルな粒。 確かに、『かめのえさ』と書かれていた。まだ、半分くらい残っている。 (最近死んだのかな・・・?ってことは、俺はその代わりって事か・・・。) それだけではない。部屋の隅の暗がりやベットの下に見える物は、鳥籠や金魚用の酸素ポンプ。 (なんか、いやーな予感が・・・・) トニィの予感は見事に当たった。 1ヶ月~2ヶ月は問題はなかった。 が、トニィが飼われて約3ヶ月もたったころ・・・。 -------------------------------------------------------------------------------- 籠の中外伝『トニィ君奮闘記』~その4~ 「あ~二日ぶりの飯だ。萎びているが・・・まあいいや。」 トニィは早速ゲージの中から逃げ出して、台所の隅に転がっていた人参のしっぽを齧っていた。 「これからどうするも何も・・・もう決まってるな。」 かれこれ一週間、マイムからは餌を貰っていない。 「俺を飼ってるって事も忘れてんじゃねぇか・・・。」 小さな机の上に置かれていたトニィのゲージも今はベットの脇・・・。 「ちっ、とりあえずゲージの中に戻・・・」 「あれー??チュー太ー??」 振り向くと其処には学校からちょうど帰ってきたマイムがいた。 -------------------------------------------------------------------------------- 籠の中外伝『トニィ君奮闘記』~その5~ (俺の名前はチュー太じゃねぇ!ちゃんとトニィっていう立派な名前があるんだよ!) と言いたいのを堪えた。 「チュー太~逃げ出しちゃダメでしょ~。」 マイムはトニィの体をギュッと握った。 「捕まえた~。」何処か嬉しそうなマイムの顔。 しかし、トニィは・・・・・・。 (ぎゃあああああ!潰れる!潰れるううう!!!) マイムは手加減ナシでトニィを握ったらしい。 マイムはニコニコした顔でトニィを放そうとしない。 (こ・・・こうなったらっ・・・!) ガブリ。トニィはマイムの手に自慢の歯で思いっきり噛み付いた。 「きゃーー!痛いーー!ママぁーー!」 後はもう大混乱。 -------------------------------------------------------------------------------- 籠の中外伝『トニィ君奮闘記』~その6~ まず、マイムの母親が悲鳴を聞いて吹っ飛んできた。 マイムの手から逃げた俺は次の瞬間、はえたたきで潰されそうになる。 (どわあああああ!!)間一髪。何とか潰されずにすんだ。 「待ちなさい!このネズミ!」母親は鬼の形相。 (えー!俺ペットだよね!仮にも三ヶ月は飼われてたのに、何!この仕打ち!) 俺はひょいとテーブルの上に飛び乗った。ブォン。はえたたきが唸る。 俺は、フォークやナイフを蹴散らし、 マーマレードやマグカップを右に左に避けながら、台所の裏口にダッシュ。 立ちはだかる母親の足の間をすり抜け、夕焼けで真っ赤になった通りを駆け抜けた。 母親もマイムも追いかけてこなかった。 どこまで走ったのだろうか。いつのまにか其処は元のペットショップだった。 何時間も走ったようだったが、日はまだ沈んでいない。 裏口が開いていたので体をねじ込み店内に入ると、ケージが見えた。 中のネズミたちは寝ていた。俺が入ってくるとびっくりしたようだが、また寝始めた。 (まったく・・・とんでもない三ヶ月だったぜ・・・。) 俺は体を丸めるとおがくずの中に潜り込んだ・・・。 -------------------------------------------------------------------------------- 籠の中外伝『トニィ君奮闘記』~その7~ 以上が俺の初めての武勇伝さ。久しぶりに動いたから筋肉痛で三日は動けなかったね。 まだまだ俺の話は有るけど、その話はまた今度。次の機会に話してやるよ。じゃあな。 END ==この作品に感想を残すことができます。 #comment_num2(size=30,nsize=15,vsize=3,num=20,logpage=10,above)
**籠の中外伝『トニィ君奮闘記』 著者 夜 氏 籠の中外伝『トニィ君奮闘記』~その1~ 俺の名前はトニィ。そこらへんに居そうなごくごく普通のハツカネズミだ。 唯一、他の奴とは違うところは鋭く尖った大きな歯くらいかな。 今からする話は俺の初めての武勇伝だ。 やっと、歯もだいたい尖ってきた頃。 俺は、母さんや他の兄弟と引き離されて別の小さなペットショップに移された・・・・。 -------------------------------------------------------------------------------- 籠の中外伝『トニィ君奮闘記』~その2~ 「小汚い店。」それが、俺が移されて初めて思った事だ。 「あ~あ・・・母さんとは離されちまうし・・・。これからどうなるんだろ・・・。」 ガラリーンゴロリーン ドアベルが店内に鳴り響く。 「いらっしゃいませぇ!」 太った店員が言った。 客は、7歳くらいの元気な男の子とその子の母親らしい。薄暗くてよく見えなかったが。 「ママー!早く早く!」 「マイム!待ちなさい!」 どうやら男の子はマイムと言うらしい。 (だせぇ名前だな、オイ・・・・。)俺は思った。 そのガキは、真っ直ぐ俺の所に走ってきた。 (まじかよ・・・。勘弁してくれよ!頼むから・・・。) 俺の願いもむなしくマイムは俺を指差して、「このネズミが欲しい!」と言った・・・。 -------------------------------------------------------------------------------- 籠の中外伝『トニィ君奮闘記』~その3~ マイムの部屋は、普通の子供部屋にしては結構広かった。 真新しいゲージに移され、トニィはそわそわしていた。 気になることがある。 (部屋の隅に置いてあるあれって・・・亀の餌?) ビニルパックに入れられた赤や緑のカラフルな粒。 確かに、『かめのえさ』と書かれていた。まだ、半分くらい残っている。 (最近死んだのかな・・・?ってことは、俺はその代わりって事か・・・。) それだけではない。部屋の隅の暗がりやベットの下に見える物は、鳥籠や金魚用の酸素ポンプ。 (なんか、いやーな予感が・・・・) トニィの予感は見事に当たった。 1ヶ月~2ヶ月は問題はなかった。 が、トニィが飼われて約3ヶ月もたったころ・・・。 -------------------------------------------------------------------------------- 籠の中外伝『トニィ君奮闘記』~その4~ 「あ~二日ぶりの飯だ。萎びているが・・・まあいいや。」 トニィは早速ゲージの中から逃げ出して、台所の隅に転がっていた人参のしっぽを齧っていた。 「これからどうするも何も・・・もう決まってるな。」 かれこれ一週間、マイムからは餌を貰っていない。 「俺を飼ってるって事も忘れてんじゃねぇか・・・。」 小さな机の上に置かれていたトニィのゲージも今はベットの脇・・・。 「ちっ、とりあえずゲージの中に戻・・・」 「あれー??チュー太ー??」 振り向くと其処には学校からちょうど帰ってきたマイムがいた。 -------------------------------------------------------------------------------- 籠の中外伝『トニィ君奮闘記』~その5~ (俺の名前はチュー太じゃねぇ!ちゃんとトニィっていう立派な名前があるんだよ!) と言いたいのを堪えた。 「チュー太~逃げ出しちゃダメでしょ~。」 マイムはトニィの体をギュッと握った。 「捕まえた~。」何処か嬉しそうなマイムの顔。 しかし、トニィは・・・・・・。 (ぎゃあああああ!潰れる!潰れるううう!!!) マイムは手加減ナシでトニィを握ったらしい。 マイムはニコニコした顔でトニィを放そうとしない。 (こ・・・こうなったらっ・・・!) ガブリ。トニィはマイムの手に自慢の歯で思いっきり噛み付いた。 「きゃーー!痛いーー!ママぁーー!」 後はもう大混乱。 -------------------------------------------------------------------------------- 籠の中外伝『トニィ君奮闘記』~その6~ まず、マイムの母親が悲鳴を聞いて吹っ飛んできた。 マイムの手から逃げた俺は次の瞬間、はえたたきで潰されそうになる。 (どわあああああ!!)間一髪。何とか潰されずにすんだ。 「待ちなさい!このネズミ!」母親は鬼の形相。 (えー!俺ペットだよね!仮にも三ヶ月は飼われてたのに、何!この仕打ち!) 俺はひょいとテーブルの上に飛び乗った。ブォン。はえたたきが唸る。 俺は、フォークやナイフを蹴散らし、 マーマレードやマグカップを右に左に避けながら、台所の裏口にダッシュ。 立ちはだかる母親の足の間をすり抜け、夕焼けで真っ赤になった通りを駆け抜けた。 母親もマイムも追いかけてこなかった。 どこまで走ったのだろうか。いつのまにか其処は元のペットショップだった。 何時間も走ったようだったが、日はまだ沈んでいない。 裏口が開いていたので体をねじ込み店内に入ると、ケージが見えた。 中のネズミたちは寝ていた。俺が入ってくるとびっくりしたようだが、また寝始めた。 (まったく・・・とんでもない三ヶ月だったぜ・・・。) 俺は体を丸めるとおがくずの中に潜り込んだ・・・。 -------------------------------------------------------------------------------- 籠の中外伝『トニィ君奮闘記』~その7~ 以上が俺の初めての武勇伝さ。久しぶりに動いたから筋肉痛で三日は動けなかったね。 まだまだ俺の話は有るけど、その話はまた今度。次の機会に話してやるよ。じゃあな。 END

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