街角にて

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街角にて」(2008/01/24 (木) 22:30:43) の最新版変更点

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**街角にて 著者 夜 氏 街角にて~その1~ やぁ、こんにちは。見かけない顔だね。え?何でわかるかって? そりゃあ、もう20年ちかくこの街を見てきたから・・・。 へえ、旅人さんか。いろんな国を旅して回ってるんだ。心底、うらやましいね。 は?あなたも旅すれば良いって? あはは、そりゃあ、無理だ。あははは・・・・。 -------------------------------------------------------------------------------- 街角にて~その2~ 旅人さん、俺がなにに見えるかい? 見たところ、古い街角にはありそうな古ぼけた姿。俺のはちょっと古すぎるかな。 広告だよ。ただのチラシ。もっと簡単にいえば紙切れ。 しかも数十年前の映画の広告。もうあちこち絵の具も剥げてボロボロだ。 え?何の映画の広告かって?いや・・・それは・・・。 題名は知ってるよ。なんせ自分の事だもんな。 そのぅ・・・・・ラブロマンス系なんだよ。 笑わないでくれよぅ、旅人さん。自分でも嫌だったんだ。本当だよ! 一昔前はすっごく流行ってて、俺も鼻高々だったんだけどね・・・。 流行はやっぱり廃れるもんだよ。今は何ていうの・・・ほら・・・アクション系とかあるから。 今更、ラブロマンスって・・・笑っちゃうよ。ホント。 -------------------------------------------------------------------------------- 街角にて~その3~ いや・・・、もっと笑えることがあるんだけどさ・・・。 旅人さん時間があるならちょっと聴いてくれないか? ああ、聴いてくれるか・・・。ありがとう。 じゃあ早速だが、あそこを歩いているあの毛皮のコートの女が見えるかい? 実は・・・、恋しちゃったんだよあの子に。 あはははは、笑えるだろう。こんなボロボロの廃れたB級映画の広告が、 あーんな綺麗な女に惚れちまうなんてさ。 俺は見ての通りラブロマンスの映画広告なんだが生まれてこのかた恋愛なんてした事がないんだ。 まあ、広告なんだから当たり前なんだけどね。 でも俺は、恋をしてみたいんだ・・・。 -------------------------------------------------------------------------------- 街角にて~その4~ あの子の事か・・・。ちょっとは知ってるぜ。街のカラス共に聞いたからな。 あいつらは本当に噂話好きだよ・・・。あんたも、注意した方がいい。 もし、ジッと見られてたら・・・・あんた次の日にはあられもない噂が飛び交ってるぜ。 ちょっと話がずれたな。何の話をしてたっけ・・・・? ああ!あの子の事だったな。あの子は今をときめく大スターだ。・・・言い方が古いか。 この街に最近できた大きな劇場の看板娘なんだどさ。 ああそうさ、俺とは全く釣り合わねぇよ。 -------------------------------------------------------------------------------- 街角にて~その5~ え?その子の名前?リリア・コルネリオっていうんだ・・・。 素敵な名前だよな・・・・。 住んでいる場所はって?聞いて驚くなよ・・・なんと俺の裏側さ! 何のことか分からないって顔してるな。俺の貼られている場所・・・アパートなんだけど、 そこの1階!つまり俺の壁越しに住んでたってワケだ。 …でもさ、その子には彼氏が居るんだ~・・・。 相手?同じ劇場の支配人の息子かなんかだって。 広告は喋れないから、告白をするのも無理だし。あははは・・・初めてこの体を恨んだよ。 まぁ、恨んだって今更どうにもなんないよな。 -------------------------------------------------------------------------------- 街角にて~その6~ 「では、自分ができる事をやってみれば良い。」 旅人はアパートの路地裏の暗闇に声をかけた。 そこには誰も居ない。 なにかパーティがあったのか酔っ払った男が脇を通っていく。 それに続いて派手な毛皮のコートを着た女がアパートの中に入っていった。 それを確かめた旅人はコートの中から一つの葉巻を取り出しそれに火をつける。 その動作を見ているものはいない。 「君は確かにただの広告、そこらへんにある紙だ。」 旅人は再び暗闇に話しかけた。 「だったら・・・、紙にできることをすれば良い。この方法ならもしかすると・・・・ 彼女に思いを告げることができるかもしれないぞ。痛いかもしれないがな。」 旅人は葉巻を広告に押し付けた・・・・。 -------------------------------------------------------------------------------- 街角にて~その7~ パチパチパチ・・・・・。 あれ・・・・?なんで俺・・・燃えてるんだっけ・・・? ああ、そっか旅人さんが俺の告白を手伝ってくれるって言って・・・、良い香りのするものを 俺に押し付けて・・・。 俺は生まれて初めて路地から動き出した。今の体は昔とは全然違う。 今は・・・とても綺麗なまるで赤いルビーのように輝いている。 アパートの壁の蔦に俺はしっかり摑まった。 目指すは、彼女の部屋。 彼女の部屋の窓は開いていた。部屋の中に降り立つと中は・・・とても散らかっていた。 カクテルドレスや毛皮のコートが散乱している。転がっているビンはお酒だろう。 気化したアルコールを吸って俺はもっと大きくなった。 彼女は・・・ベットで眠っている。 ベットの傍に近寄ってみるけれど、彼女は起きない。 起きてくれればよかったのに。折角、綺麗な姿になったのに。 『好きだよ。』 俺は彼女の耳元で囁いた。 -------------------------------------------------------------------------------- 街角にて~その8~ 街の交番で。 「おい!その報告書片付けとけよ!」 「はい!分かりました。」 新米刑事が先輩刑事に言われて動き出す。 「え~と・・・これか・・・?。」 【報告書】 昨夜午前1時ごろ○○地区25番街にて火災が発生。 火は××アパートの1階102号室を全焼。被害者はリリ ア・コルネリオ(23歳)さん。 病院に運ばれたが、煙を多量にすっていたのが原因で午前3時ごろに運ばれた先の病院で死亡。 火元は被害者の家のちょうど真裏の路地。 火の気がないことから放火と見て、目下捜索中。 【追加報告】 目撃者を発見。同じく昨夜事件の30分前、パーティ帰りのサラリーマンが出火元で 怪しげな黒いコートを着た男を見たという。 警察はこの男が放火事件に関与していると見て、行方を追っているが、 未 だ 発 見 で き ず 。                         END ==この作品に感想を残すことができます。 #comment_num2(size=30,nsize=15,vsize=3,num=20,logpage=10,above)
**街角にて 著者 夜 氏 街角にて~その1~ やぁ、こんにちは。見かけない顔だね。え?何でわかるかって? そりゃあ、もう20年ちかくこの街を見てきたから・・・。 へえ、旅人さんか。いろんな国を旅して回ってるんだ。心底、うらやましいね。 は?あなたも旅すれば良いって? あはは、そりゃあ、無理だ。あははは・・・・。 -------------------------------------------------------------------------------- 街角にて~その2~ 旅人さん、俺がなにに見えるかい? 見たところ、古い街角にはありそうな古ぼけた姿。俺のはちょっと古すぎるかな。 広告だよ。ただのチラシ。もっと簡単にいえば紙切れ。 しかも数十年前の映画の広告。もうあちこち絵の具も剥げてボロボロだ。 え?何の映画の広告かって?いや・・・それは・・・。 題名は知ってるよ。なんせ自分の事だもんな。 そのぅ・・・・・ラブロマンス系なんだよ。 笑わないでくれよぅ、旅人さん。自分でも嫌だったんだ。本当だよ! 一昔前はすっごく流行ってて、俺も鼻高々だったんだけどね・・・。 流行はやっぱり廃れるもんだよ。今は何ていうの・・・ほら・・・アクション系とかあるから。 今更、ラブロマンスって・・・笑っちゃうよ。ホント。 -------------------------------------------------------------------------------- 街角にて~その3~ いや・・・、もっと笑えることがあるんだけどさ・・・。 旅人さん時間があるならちょっと聴いてくれないか? ああ、聴いてくれるか・・・。ありがとう。 じゃあ早速だが、あそこを歩いているあの毛皮のコートの女が見えるかい? 実は・・・、恋しちゃったんだよあの子に。 あはははは、笑えるだろう。こんなボロボロの廃れたB級映画の広告が、 あーんな綺麗な女に惚れちまうなんてさ。 俺は見ての通りラブロマンスの映画広告なんだが生まれてこのかた恋愛なんてした事がないんだ。 まあ、広告なんだから当たり前なんだけどね。 でも俺は、恋をしてみたいんだ・・・。 -------------------------------------------------------------------------------- 街角にて~その4~ あの子の事か・・・。ちょっとは知ってるぜ。街のカラス共に聞いたからな。 あいつらは本当に噂話好きだよ・・・。あんたも、注意した方がいい。 もし、ジッと見られてたら・・・・あんた次の日にはあられもない噂が飛び交ってるぜ。 ちょっと話がずれたな。何の話をしてたっけ・・・・? ああ!あの子の事だったな。あの子は今をときめく大スターだ。・・・言い方が古いか。 この街に最近できた大きな劇場の看板娘なんだどさ。 ああそうさ、俺とは全く釣り合わねぇよ。 -------------------------------------------------------------------------------- 街角にて~その5~ え?その子の名前?リリア・コルネリオっていうんだ・・・。 素敵な名前だよな・・・・。 住んでいる場所はって?聞いて驚くなよ・・・なんと俺の裏側さ! 何のことか分からないって顔してるな。俺の貼られている場所・・・アパートなんだけど、 そこの1階!つまり俺の壁越しに住んでたってワケだ。 …でもさ、その子には彼氏が居るんだ~・・・。 相手?同じ劇場の支配人の息子かなんかだって。 広告は喋れないから、告白をするのも無理だし。あははは・・・初めてこの体を恨んだよ。 まぁ、恨んだって今更どうにもなんないよな。 -------------------------------------------------------------------------------- 街角にて~その6~ 「では、自分ができる事をやってみれば良い。」 旅人はアパートの路地裏の暗闇に声をかけた。 そこには誰も居ない。 なにかパーティがあったのか酔っ払った男が脇を通っていく。 それに続いて派手な毛皮のコートを着た女がアパートの中に入っていった。 それを確かめた旅人はコートの中から一つの葉巻を取り出しそれに火をつける。 その動作を見ているものはいない。 「君は確かにただの広告、そこらへんにある紙だ。」 旅人は再び暗闇に話しかけた。 「だったら・・・、紙にできることをすれば良い。この方法ならもしかすると・・・・ 彼女に思いを告げることができるかもしれないぞ。痛いかもしれないがな。」 旅人は葉巻を広告に押し付けた・・・・。 -------------------------------------------------------------------------------- 街角にて~その7~ パチパチパチ・・・・・。 あれ・・・・?なんで俺・・・燃えてるんだっけ・・・? ああ、そっか旅人さんが俺の告白を手伝ってくれるって言って・・・、良い香りのするものを 俺に押し付けて・・・。 俺は生まれて初めて路地から動き出した。今の体は昔とは全然違う。 今は・・・とても綺麗なまるで赤いルビーのように輝いている。 アパートの壁の蔦に俺はしっかり摑まった。 目指すは、彼女の部屋。 彼女の部屋の窓は開いていた。部屋の中に降り立つと中は・・・とても散らかっていた。 カクテルドレスや毛皮のコートが散乱している。転がっているビンはお酒だろう。 気化したアルコールを吸って俺はもっと大きくなった。 彼女は・・・ベットで眠っている。 ベットの傍に近寄ってみるけれど、彼女は起きない。 起きてくれればよかったのに。折角、綺麗な姿になったのに。 『好きだよ。』 俺は彼女の耳元で囁いた。 -------------------------------------------------------------------------------- 街角にて~その8~ 街の交番で。 「おい!その報告書片付けとけよ!」 「はい!分かりました。」 新米刑事が先輩刑事に言われて動き出す。 「え~と・・・これか・・・?。」 【報告書】 昨夜午前1時ごろ○○地区25番街にて火災が発生。 火は××アパートの1階102号室を全焼。被害者はリリ ア・コルネリオ(23歳)さん。 病院に運ばれたが、煙を多量にすっていたのが原因で午前3時ごろに運ばれた先の病院で死亡。 火元は被害者の家のちょうど真裏の路地。 火の気がないことから放火と見て、目下捜索中。 【追加報告】 目撃者を発見。同じく昨夜事件の30分前、パーティ帰りのサラリーマンが出火元で 怪しげな黒いコートを着た男を見たという。 警察はこの男が放火事件に関与していると見て、行方を追っているが、 未 だ 発 見 で き ず 。                         END

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