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「兵士」(2008/01/24 (木) 22:29:24) の最新版変更点
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**兵士
著者 ジーク 氏
兵士~その1~
我々は兵士である。
唯一人の女王のためにその身を捧げる兵士である。
我々は、常に黒き鎧を纏い、土を運び、食料を手にし、女王のために社を作る。
時には、女王のために戦うこともある。我らは先代より体躯が小さいため、一人では敵にとても敵わない。敵は全て我らの3,4倍の体躯を誇るからだ。
だが、我らには大勢の仲間がいる。皆がその漆黒の腕を振るえば、敵わない相手などいない。
否。いないはずだったのだ……。
この世界には、万物を手中に収める最強の種族が存在する。その巨躯の程度は計り知れず、我らではその頂点を見ることすらできない。
奴らは無敵だった。その指を軽く動かすだけで、我らの同胞は瞬く間にその命を失っていく。
グシャリ。
グシャリ。
グシャリ。
鎧が砕けていく音が、我らが社の中に響く。我々の社でさえ、奴らは簡単に壊すことができる。私は女王の無事、唯それだけを願いながら、地上で果てていく友の悲鳴を聞いていた。
--------------------------------------------------------------------------------
兵士~その2~
奴らは我々にとって脅威でしかないのだが、奴らの中にも危険度の違いはあった。中でも最も恐ろしいのが、黒い箱を背負った奴らだった。奴らは、我々にはない言語を使うが、その内容は大方予測できた。
我々の命を愚弄する言葉、
それに他ならない。奴らは狂っている。弱者の中の弱者をいたぶり、挙句の果てに自らが失わせた命を愚弄するのだから。
何故笑う? 何故殺す? その疑問は奴らには届かない。
そしてある日、私にもその時が訪れた。
死を覚悟する時が来たのだ。
幾度か見たその姿は、やはり闇の権化そのものだった。
大きく、大きく、ただ、恐ろしかった。
私は戦った。女王のために、その全力を振るった。
その牙を、その腕を、必死で振り上げた。振り下ろした。だが、届かなかった。
逃げるしかなかった。ただ今は逃げることしかできない。それしか考えられない自分が、憎かった。
うっそうと生い茂る森に逃げ込んだが、奴らにはそんなものなど存在しないというように、森を破壊していく。命を蹂躙していく。
許せない。許したくない。だが何もできない。
いつの間にか、涙がこぼれていた。
そして、ついに私の、死の瞬間が訪れた。
奴らの指の一本が当たっているのだろう。ぎりぎりと、信じられない力で体が押し潰されていく。
奴らの声が聞こえる。命を愚弄する言葉が聞こえる。
聞こえる。
聞こえる。
聞こえ…………。
グシャリ。
「げ、手が汚れちまった」
「バーカ。蟻なんか手で触るからだよ。さっさと洗えよ」
「そうだな。あー、気持ちわりぃ」
The end
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**兵士
著者 ジーク 氏
兵士~その1~
我々は兵士である。
唯一人の女王のためにその身を捧げる兵士である。
我々は、常に黒き鎧を纏い、土を運び、食料を手にし、女王のために社を作る。
時には、女王のために戦うこともある。我らは先代より体躯が小さいため、一人では敵にとても敵わない。敵は全て我らの3,4倍の体躯を誇るからだ。
だが、我らには大勢の仲間がいる。皆がその漆黒の腕を振るえば、敵わない相手などいない。
否。いないはずだったのだ……。
この世界には、万物を手中に収める最強の種族が存在する。その巨躯の程度は計り知れず、我らではその頂点を見ることすらできない。
奴らは無敵だった。その指を軽く動かすだけで、我らの同胞は瞬く間にその命を失っていく。
グシャリ。
グシャリ。
グシャリ。
鎧が砕けていく音が、我らが社の中に響く。我々の社でさえ、奴らは簡単に壊すことができる。私は女王の無事、唯それだけを願いながら、地上で果てていく友の悲鳴を聞いていた。
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兵士~その2~
奴らは我々にとって脅威でしかないのだが、奴らの中にも危険度の違いはあった。中でも最も恐ろしいのが、黒い箱を背負った奴らだった。奴らは、我々にはない言語を使うが、その内容は大方予測できた。
我々の命を愚弄する言葉、
それに他ならない。奴らは狂っている。弱者の中の弱者をいたぶり、挙句の果てに自らが失わせた命を愚弄するのだから。
何故笑う? 何故殺す? その疑問は奴らには届かない。
そしてある日、私にもその時が訪れた。
死を覚悟する時が来たのだ。
幾度か見たその姿は、やはり闇の権化そのものだった。
大きく、大きく、ただ、恐ろしかった。
私は戦った。女王のために、その全力を振るった。
その牙を、その腕を、必死で振り上げた。振り下ろした。だが、届かなかった。
逃げるしかなかった。ただ今は逃げることしかできない。それしか考えられない自分が、憎かった。
うっそうと生い茂る森に逃げ込んだが、奴らにはそんなものなど存在しないというように、森を破壊していく。命を蹂躙していく。
許せない。許したくない。だが何もできない。
いつの間にか、涙がこぼれていた。
そして、ついに私の、死の瞬間が訪れた。
奴らの指の一本が当たっているのだろう。ぎりぎりと、信じられない力で体が押し潰されていく。
奴らの声が聞こえる。命を愚弄する言葉が聞こえる。
聞こえる。
聞こえる。
聞こえ…………。
グシャリ。
「げ、手が汚れちまった」
「バーカ。蟻なんか手で触るからだよ。さっさと洗えよ」
「そうだな。あー、気持ちわりぃ」
The end