ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

歩き出す使い魔-6

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匿名ユーザー

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食堂に入るとすでに昼食の用意がされていた。
ジョニィは目の前の貧乏臭いスープとパンを見てため息をつく。
(食事だけは…ジャイロ。レース中より貧しくなってるんだぜ…)
そう思いながら皿に手を伸ばす──が、その皿がルイズにひょいと取り上げられた。
「何だ!?何をするんだルイズ!?おいッ!!それは僕の食事だぞッ!」
「か、勘違いするんじゃないわよ。これはあんたのじゃないわ」
そう言ってルイズは近くにいたメイドを呼ぶと自分の食事と同じものを持ってこさせた。
食事を運んできたメイドはスープやサラダなどの皿を慣れた手つきでジョニィの前に並べていく。
「君は一体なにをしてるんだッ!?」
「そ、それは…そ、その…そう!ご褒美よ!一人で教室を片付けたことに対するご褒美!だから感謝して食べなさい!」
もちろん自分を励ましてくれたジョニィに対するお礼のつもりであるが素直に言えるはずがない。
捲くし立てるように言うとルイズは耳まで赤くして「ふん!」と明後日の方向を向いた。

一方、ジョニィはかなり間抜けな顔をしていた。
今までビッチばっか相手にしてきたジョニィにルイズのツンデレな行動が理解できるわけがない。
精一杯考えた結果、
(…毒とか入ってるんじゃあないか?…使い魔が死ぬと次の使い魔が召喚できるとか言ってたよね…?)
という結論に至ったのである。


正直、怪しすぎて食べたくはなかったがルイズがちらちらと見てくるので食べないわけにもいかないようだ。
(『覚悟』を決めろジョニィ・ジョースター!『覚悟』は『幸福』なんだッ!…まさかルイズもそこまではしないだろ)
「いただきま…」
そう言いいかけてジョニィは固まった。

…目の前の料理は確かに僕のものだ。この料理は『僕のために用意された料理』だ。
でもこの『サラダ』はそういうんじゃあないッ!違う皿だ!どうなってるんだッ!?

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

『増えている』んだッ!僕のサラダがいつの間にかもう一皿『増えている』ッ!


別に多いに越したことはないんだけどね。

特に気にせずにサラダを平らげていくジョニィを見てルイズは思わず呟いた。
「あんた…よくはしばみ草のサラダなんか食べれるわね…」
「…?おいしいじゃあないか」

そのとき、どこからか風に乗って「仲間」という声が聞こえた気がした。

──そしてジョニィは知らない。『はしばみ草使い』同士は引かれあう。その運命的なルールを…。


昼食後、こっちの世界に一緒に召喚された愛馬の様子を見るためジョニィは厩舎に向かった。
ルイズは「馬の世話なんて使用人がやってくれるわよ」と言っていたが、ジョニィは愛馬の世話はできるだけ自分でしたかった。
スローダンサーもジャイロと同じように過酷なレースを一緒に走ってきた『仲間』なのだから。

厩舎の近くまで来ると丁度一人のメイドがスローダンサーの手綱を引いて厩舎から出てきた。
ジョニィは驚いた。スローダンサーは気性が荒い。
元天才ジョッキーのジョニィでも一晩かけてやっと乗れるようになった馬である。
そんな馬が大人しくメイドの少女に手綱を引かれているのだ。
(まさか、僕の馬…君は…)
ジョニィは愛馬の目を見て確信する。
(間違いない…これで間違いない。『スローダンサー』。『この馬』は…)


『女の子が好き』


「あの、どうなさいました?」
そんなくだらない事を考えているといつのまにかメイドとスローダンサーが目の前に立っていた。


手綱を引いていたメイドはジョニィの左手のルーンを見て「まあ」と声をあげる。
「あなたもしかしてミス・ヴァリエールに召喚されたっていう平民の…」
「…知ってるって事は君も魔法使いなのかい?」
「いえ、私は違います。あなたと同じ平民です。貴族の方々をお世話するために、ここでご奉公させていただいてるんです。あ、申し遅れました。私はシエスタっていいます。あなたは?」
「僕はジョニィ。ジョニィ・ジョースター」
「変わったお名前ですね…。それでジョニィさん。どうなさいました?厩舎に何か用事ですか?」
そこでジョニィは厩舎まで来た目的をやっと思い出す。
「そう、その馬。一緒に召喚された僕の馬なんだ」
「あら、そうなんですか。その、ちょっと馬体が汚れていたので洗ってあげようかと思ったんですが…」
「無茶苦茶な友達のせいで湖に入ったり砂漠の真ん中を走ったりしたからね…。僕も洗ってやろうと思ってて…水場を教えて欲しいんだ」
「まあ。わかりました。あちらです」
ジョニィの言葉にくすくすと笑いながらシエスタは歩き出した。

水場へと向かう道すがら聞いたところではどうやら平民の使い魔の噂は学院中に知れ渡ってるらしい。
(あんまりいい噂じゃあないみたいだけど…)
そんなことを考えていると、前を歩いていたシエスタが二人の貴族に呼び止められた。

一人は茶色のマントを来た栗色の髪の少女、
もう一人はなんと言うか…金色の巻き髪にフリルのシャツ、胸には薔薇をさしたキザな少年だった。
マウンテン・ティムほどではないがルックスもそこそこイケメンだ。
少年はシエスタの前まで来ると髪をかきあげて、スローダンサーを見た。
「君。丁度よかった。少し遠乗りに出かけようと思ってね。その馬を借りるよ。おいで、ケティ」
「は、はい。ギーシュさま」
そう言ってギーシュと呼ばれた少年は芝居がかった仕草でスローダンサーの手綱をとろうとする。
だが、見慣れない男を嫌がったスローダンサーが突然立ち上がって暴れだした。
貴族用に調教された大人しい馬と違いスローダンサーは『性格のいじけた暴れ馬』である。
そんな馬など扱ったことのないギーシュは「うひゃあ!?」と悲鳴をあげて尻餅をついた。
「な、なんだこの馬!危ないじゃないか!」
尻餅をついたままの間抜けな格好でギーシュが怒鳴る。
ジョニィはどうどうと愛馬を宥めながらギーシュを見てため息をついた。
「勝手に近づくからだろ。君みたいなお坊ちゃんじゃあ僕の馬に乗るのは無理だぜ」
「…君は確か、あのゼロのルイズが呼び出した平民だったな。平民が僕を侮辱する気か?」
ギーシュの顔が怒りで歪む。自分が侮辱されていることに気付いたようだ。


そこでケティと呼ばれていた少女がギーシュに慌てて手を差し出した。
「も、もういいですから行きましょう、ギーシュさま。ラ・ロシェールの森へ行く前に日が暮れてしまいますわ」
「…いいだろう。今日はケティに免じて許してやる」
そう言うとハンカチを取り出してゆっくりと頬を拭く。そしてこれまた芝居がかった仕草で立ち上がる。
そのとき彼のポケットから壜がころんと落ちた。
ギーシュは慌ててその壜を拾おうとしたがそれよりも早くケティが壜を拾い上げた。
「ギ、ギーシュさま…これはモンモランシーさまの香水…」
「誤解だよケティ。いいかい、僕の心の中に住んでいるのは君だけ…」
ケティはポロポロと涙を流すと必死に弁解しようとするギーシュの頬を思いっきりひっぱたいた。
厩舎の前の広場にまるでブ厚い鉄の扉に流れ弾丸があたったような音が響く。

「この味は!ウソをついている味ですわ!さようなら!」
そして泣きながら走り去っていった。


しばらくの気まずい沈黙の後、ジョニィは何事もなかったようにスローダンサーの手綱を引いて水場に向かおうとした。
しかし、ギーシュの怒りは収まらない。怒りの矛先をジョニィに向けて叫んだ。
「待ちたまえ!君のその馬のせいで一人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね?」
ジョニィにしてみればとんだ言いがかりである。二股かけてるこいつが悪いのだ。
「よく解らないけど二股かけてる君が悪いんだろ。僕のせいじゃあない」
皮肉めいたジョニィの言葉にギーシュの怒りは頂点に達した。
怒りに震える手で胸ポケットの薔薇を握りジョニィに突きつける。
「…君はどうやら貴族に対する礼を知らないようだな。よかろう。君に礼儀を教えてやろう」
「はあ!?だから僕は悪くないだろ?」
その言葉にギーシュは「ふん」と鼻で笑うとまた芝居がかった仕草で肩を竦めて見せた。
「所詮『歩けない使い魔』じゃあ僕の相手にはならないか。ゼロが召喚したからどんな使い魔かと思えば…主人に似て役立たずなうえに腰抜けとは」
「………」
安い挑発だった。普段のジョニィなら乗ったりはしなかっただろう。
「…いいぜ。やってやるよ」
だが、気が付くとそう言っていた。


許せなかった。
自分が歩けないのは事実だしそうなったのも僕の責任だ。
どう言われても仕方がない。
しかし、彼はルイズも役立たずだと言った。
ルイズは自分なりに悩んで…努力して…『生長』しようとしている。
他人に認めてもらおうと頑張っている。
見捨てられる事は怖い事だから…兄を溺愛する父親に見捨てられ…下半身不随で世間にも見捨てられた僕にはそれがよく解る。
その心を知らないヤツが必死に頑張っているルイズを役立たずと言っているのだけは許せない。

ジョニィの言葉ににやりと笑うとギーシュは「ヴェストリの広場にこい」とだけ言って去っていった。

ギーシュの姿が完全に見えなくなると、シエスタが青い顔で呟いた。
「ジョ、ジョニィさん…。あなた…殺されちゃいます…メイジと戦ったりなんてしたら…」
そう言うと、だーっと逃げ出してしまった。
(僕の馬を場房に戻してもらいたかったんだけど…仕方ないか)
ため息をついてジョニィは厩舎への道を戻り始めた。

スローダンサーを馬房に戻すと厩舎の壁に鉄の板が立掛けられているのが目に入る。


しばらくして厩舎からでてきた彼の手の中には二つの鉄球が握られていた。

To Be Continued =>

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