ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

新章! 日食の終わり

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スターダストは砕けない



新章! 日食の終わり


日食が終わり――太陽がその姿を現す。
アルビオン艦隊の沈んだ空は、まさに青一色。どこまでもどこまでも晴れ渡っていた。
その青い空の中を、彼等は、彼女等は探す。
あの竜は何処。竜の羽衣は何処。承太郎とルイズは何処。
そして――青空の中、タルブの村に向かって降りてくる竜の羽衣を発見する。

「あら残念、どうやら失敗しちゃったみたいねぇ」
「でも、彼の望み通り村は守れた」
草原の上で目を回しているシルフィードに寄りかかりながら、
キュルケとタバサは竜の羽衣を眺めていた。
ワルドとの空中戦で、もう精神力をかなり消耗してしまっていて、そのワルドもどこにいるやら解らないときた。多分逃げられたとキュルケは思う。
「でも、ま、一応私達も役に立ったわよね? 褒美とかもらえるかも」
「……私はこの件から手を引く。関わる気は無い」
どうやらトリステインとアルビオンの戦争に介入した事を知られたくないようだ。
タバサがそうなら、自分だけ同盟国だからってちゃっかり褒美を――何て、浅ましい考えは綺麗さっぱり捨てるべきだと思った。
「それじゃ、私達の事を村人に口止めしとかないとね。
 あの二人はさすがにそうはいかないでしょうけど」
「……来る」
キュルケは空を見た。竜の羽衣はもうすぐそこまで来ている。
でもタバサは森の方を見ていた。

草原は広いため、ギーシュとフーケの戦いで焼けてしまったのはほんの一部だ。
シルフィードが落ちた場所は火で焼かれていない綺麗な場所で、そこに向かってシエスタが走ってきた。
「ミス・ツェルプストー! ミス・タバサ! よくご無事で……!」
「あら、シエスタじゃない。あなたこそ無事だったのね、よかった。
 ところでギーシュは? 生きてる?」
「はいっ、森の所で休んでます。相当お疲れの様子で……」
「ところで、ジョータローの援護に夢中で見てなかったんだけど、土くれのフーケはどこに消えたの? ギーシュが倒した訳じゃあるまいし」
「やっつけましたよ、ギーシュ様が」
笑顔全開でシエスタが言うと、キュルケは引きつった笑みを浮かべた。
「ははは、こやつめ。うろたえるな小娘ー。これは孔明の罠よ。かかったなアホめ」
「落ち着いて」
タバサに杖で頭を小突かれて、キュルケは正気を取り戻した。
「……いやっはははは……あはは……マジ?」
「ギーシュ様があんなにお強いだなんて、私、感動しちゃいました」
今、キュルケのプライドというやつが相当ヤバい事になっていた。

質問。微熱のキュルケは土くれのフーケと一対一で戦ったら勝てますか?
答え。いいえ勝てません。同じトライアングルでも実力が違いすぎます。

質問。青銅のギーシュはドットメイジですが土くれのフーケに勝てますか?
答え。勝ちました。

「あ……あり、あり、あり……」
「アリーヴェデルチ?」
「ありえな~~~~~~イッ!!」
キュルケの絶叫が空に吸い込まれていくのと入れ替わりに、竜の羽衣がタルブの草原に着陸した。


「…………」
竜の羽衣の風防を開ける承太郎。爽やかな風が入ってきた。
だが、表情は固い。さっきからずっとだんまりだ。
「あ、あの……ジョータロー。次の日食に、またやってみましょう」
「……そうだな…………」
ルイズは知っている。次の日食まで十年以上かかると。
承太郎も知っている。実はコルベールから説明を受けていたから。
元の世界に帰る、たったひとつのチャンスを失って、鋼の精神力を持つ承太郎もさすがにガックリときていた。
そんな承太郎を、何とかして励ましたい――とルイズは思った。
「あの、ジョ……」
「ジョータローさーん!」
ルイズが声をかけようとした途端、竜の羽衣に向かってシエスタが走ってきた。
それを見た承太郎は安堵の笑みを浮かべて、竜の羽衣から降りる。
するとシエスタは力いっぱい承太郎の胸の中に飛び込んで、承太郎も抱き返しはしないもののしっかりとシエスタを受け入れた。
「よかった、ジョータローさんが無事で……よかった……!」
「……タルブの村の連中は、無事か?」
「はい、はいっ……ジョータローさんやギーシュ様達のおかげです」
「そうか……」
それを聞き、承太郎は今回の戦いが無駄ではなかったと思った。
帰れなかった事は残念だ。だが、守りたいものを守る事はできた。

――花京院。アヴドゥル。イギー。……ウェールズ。

今は亡き戦友に思いを馳せる。
確かな達成感を手に、承太郎は拳を握り締めた。



(なななな、何よ何よ。何よ! 何でシエスタと抱き合ってんのよ!
 そりゃ、タルブの村が襲われたって聞いた時は、私も心配したけど。
 でで、でも、抱き合うなんて、そんな、そんなの……)
竜の羽衣に取り残されたルイズは顔を真っ赤にして二人を睨みつけていた。
ああしかし、二人はそれに気づかない。
「……ごめんなさい、私達を助けるために……元の世界に帰れなくなってしまって」
「気にするな……俺が好きでやった事だ」
「ああっ! ジョータローさん……!」
ラブロマンス展開中。と、ルイズの目には映った。
だから、ルイズは、竜の羽衣から、華麗に――。
「オラァッ!」
さすがに後ろに目はついていないらしく、承太郎の後頭部にルイズの飛び蹴りが炸裂。
「ぐうっ!?」
「きゃっ!?」
ああしかし、その衝撃で承太郎が倒れ、シエスタが下敷きに。

ルイズ・フランソワーズ。
大噴火大決定。

「何押し倒してんのよぉぉぉぉぉぉっ!!」
「てめーこそいきなり何しがやるッ!!」
こうしてルイズと承太郎の怒鳴り合いが始まり、シエスタは呆然とそれを眺め、その様子を見て呆れながらキュルケとタバサが近づいてきた。
それから村に戻って負傷したギーシュと再会し、村人総出で村を救った英雄達を称える宴が始まった。
もちろんヨシェナヴェにはしばみ草を入れて。

「うぐっ……うう……」
「大丈夫ですか? ジョータローさん」
みんなが宴で盛り上がってる中、承太郎は気分を悪くして部屋で寝込んでいた。
付き添いのシエスタが、薬草と水を持ってきてくれた。
「ああ、すまないな……」
「いえ。でも、急にどうしちゃったんです?」
「……多分……アレが後から効いてきたんだろう……」
「アレ?」
承太郎の言うアレとはタバ茶七号である。
実はタバ茶七号を飲んだ時、ガンダールヴのルーンが反応していたのだ。
ゼロ戦を武器として反応していたのか、タバ茶七号を武器として反応していたのか、それは些細な問題なのでどうでもいい。
重要なのはガンダールヴの力でパワーアップした承太郎の身体は、タバ茶七号の持つ色々なパワーと奇妙にブレンドして、受け入れる事に成功したのだ。
だからガンダールヴの力が切れて時間の経った今、タバ茶七号の猛威が承太郎の身体を襲っていた。
「例えるなら……腹の中でアクの強い親父二人が大喧嘩をしているような気分だ」
「どういう気分ですか」
「二度とあいつのお茶は飲まねー」
こうしてせっかく開かれた宴を、承太郎はベッドの上ですごす事となりましたとさ。
そして――。
「さあさあミスタ・グラモン。どうぞ一杯」
「あはは! なかなかいけるね、このワイン!」
「うちの村自慢の一品でさあ。さあ、こっちには魚料理のシャシミがありますよ!」
「へえ、生で食べて平気なのかい? どれどれ……ふむ、うンま~~い!」
「おーい! ミスタ・グラモンにジャンジャン料理を持ってきてくれ! ワインもだ!」
「いやあ、貴族として当然の事をしたまでなのに、悪いねえこんなにしてもらって」

竜の羽衣を操った承太郎がいない今、
土くれのフーケを倒したギーシュが村一番の英雄だった。
キュルケとしては、自分も命懸けで戦ったのに納得がいかないようだ。
タバサはそんな事どうでもいいらしく、
はしばみ草の入っている料理をピンポイントで食していった。
もちろんヨシェナヴェに入っているはしばみ草も忘れない。
ルイズはというと、シエスタが承太郎の看病に行ったのが気になって、もう無茶苦茶にワインを煽っていた。

そんなこんなで夜も更けて、酔いに勢いを任せてキュルケがギーシュに決闘を申し込み、フーケに勝利した事でかなりいい気になっちゃってたギーシュは堂々と決闘を受け、七秒ほどで手を火傷して杖を落とし、十三秒目からキュルケの拳でコテンパンにされ、三十秒も経った頃にはノックダウンしてそのまま朝まで眠りについたそうな。
成長してもギーシュという人間の本質は変わらないのかもしれない。
そう、なぜなら彼は『ポルナレフポジション』なのだから!!
(能力が微妙故に強敵に勝利したり最後まで生き残ったりする子。 例を挙げれば空間を削り取ったり、セックスと叫んだりする人達の事である)

そして後日――シエスタの休暇が終わった頃、タルブの村に王室の衛士がやって来た。
捕虜にしたアルビオン軍から得た情報で、竜の羽衣の存在を突き止めたのだ。
恩人達の事をペラペラ喋っていいものかと村人達は悩んだが、ギーシュ達貴族が村を守ってくれたんだから、話してもいいだろうと判断した。
こうして竜の羽衣と、それに乗っていたらしいルイズとその使い魔の存在が判明。
国を指導すべく戴冠し、女王となったアンリエッタは、あのアルビオン艦隊を壊滅させた白い光もルイズ達の仕業だろうと思い、下手に騒がれる前に二人を城へと呼んだ。

ルイズと承太郎。
あの二人からいったいどんな話を聞かされるのか?
アンリエッタは期待と不安にさいなまれながら、二人が来るのを待った。

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