ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロのパーティ-11

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匿名ユーザー

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あれから貴族達は蜘蛛の子を散らすように才人から逃げていった。
あの、ゼロと呼ばれて切れかかっていたルイズや、心配をして見に来たシエスタすら、才人の5m以内に近寄ろうとしない。

至極当然だ。僕だって近寄りたくない。
才人が近づけば、近づいた分だけ後ずさり。
近づく。
後ろに下がる。
近づく。
後ろに下がる。
駆け寄ってくる。
全力で後ろに下がる。

「おい……、ちょっと待っ……」
「イヤァアアアアアアアアアアア! こっちに来ないでくださいィィィィイイイ!」
「許可しないィィィィィィイイイイイイイ! 使い魔が、私のそばに近づくことを許可しないィィィィィイイイイイ!」
「僕のそばに近寄るなァァァァァッ!」
「こいつはクセェー! ゲロの臭いがプンプンするぜぇーーーーッ! こんな平民には出会った事が無いほどなァ!」

才人は泣きそうになっていた。


僕はさんざんボロクソにいわれて、凹みきった才人を、何とか水場まで連れてくる。
はじめはシエスタが水場までの案内を勤めることになったのだが、上っ面は取り繕っていたものの、今にも泣き出しそうな様子だったので、僕が代わりに才人を水場まで連れて行くことになったのだった。
女性は大切に扱わなくてはならないからな。

「へっ……。どうせ俺はモグラさ……」
「良いから、早く身体を洗ってください」

しかし、今にもキノコが生えてきそうな、この才人はどうにかならないのか。
彼は調子に乗るのも、落ち込むのも早い。しかもどちらも天井知らずだ。
マッハで落ち込み、マッハで立ち直る。
きっと空気の速度を超えてるから、とことん空気が読めないのだろう。
僕はそう、自分の中で結論づけることにした。

身体は洗えるが、パーカーの方はどうしようもないので、洗濯して干すことになった。
勿論、洗濯は才人にやらせる。
替えの洋服なんて持っているわけが無く、上半身裸で、ひたすらに服を洗う姿は、何とも哀れみを誘った。
でも手伝わない。

ともかく、このままではルイズの元に戻ることも出来ないので、僕が学ランを貸してやる必要がある。

「もう、大丈夫だよな……?」

しきりに自分の臭いを嗅ぐ才人。
これを見ていると、どうも貸そうという気が起こらなくなる。
しかし、おいていくわけにも行かないだろう。

「気になるんだったら、コレを使ってください」

僕はズボンのポケットに入れていた、消臭スプレーを才人に手渡した。
秋葉原を歩くのに、常備していた奴だ。
正直、コレ無しで彼処は歩きたくない。

「ああ、サンキュー」

そういってスプレーを受け取り、才人は念入りに身体に吹き付け始める。

そういえば、この世界ではスプレーの換えはきかないんだな。
やむ得ないとはいえ、簡単に才人にスプレーを貸したことに、僕は少し後悔した。
彼がそこの所を、配慮してくれればいいのだが……

「おし、もう大丈夫」

かけ終わったのか、才人は僕にスプレーを返してくる。
残量を確かめるため、軽く振ってみる。
チャポチャポと音がした。
結構使われてしまった様だ。
まだ新品だったのだが。

才人の方を向く。
フローラルな香りが鼻についた。

僕は思いっきりため息をつきながら、才人に来ていた学ランを渡した。

才人は受け取った学ランを見つめ、ぽつりとつぶやく。

「なあ、花京院」
「何です?」
「何で、秋葉原行くのに学ラン来てたんだ?」
「僕は学生ですから。ガクセーはガクセーらしくですよ」
「いや、理由になってないから」

やや身長に差があるためか、僕の学ランは才人には一回り大きかった。
僕にとっては膝下ぐらいまでだが、才人にとっては脛ぐらいまである。
学ランが汚れないか、少しそわそわしながら、僕等はルイズの部屋の方へと戻る。

途中、ルイズの部屋へと向かう螺旋階段を上りながら、才人が何かを思い出したように話しかけてきた。

「そういやさ、聞きそびれたことがあんだけど」
「何ですか?」

僕はどうせまた、空気の読めない事を言うつもりだろうと、聞き流すつもりでいた。

「あの決闘の時、お前から出てきた緑色のアレ、いったい何なんだ?」
「!」
「アレが前言ってた、スタンドって奴か?」

唐突だった。
今、彼はなんと言った?
僕のスタンドが見えた。といったのか?

その一言を聞いて、今までの、スタンドが発現してからの思い出が、すっと僕の頭の中に浮かび上がっていく。



「お、おい。花京院? お、俺、今何か不味いこと言ったのか!?」


僕に気持ちが通い合う人が何人現れるだろうか。
小学校のクラスの○○くんのアドレス帳は友人の名前と電話番号で一杯だ。
母には、父がいる。父には、母がいる。
TVに出ている人や、ロックスターにはきっと何万人も居るんだろう。
自分は違う。
自分にとって、真に心の通い合う友人は現れるのだろうか?

実を言うと、ここが異世界と解った時、ほんのちょっぴり期待をした。
記憶の僕のように、ここなら、ひょっとすれば、僕と真に心が通じ合う友人が出来るかも知れない。っと。

今、目の前の才人は、ずっと僕の目の前にあった、一つの柵を、何も無いかのように越えてきたのだ。
心に、ささやかな期待が生まれた。
何故見えたのか、そんな疑問は、その期待の前では些細なものだ。

「いえ…… 後で、詳しく教えます……」
「そ、そうか……」

ルイズの部屋の前に着く。
僕の心は、いささか弾んでいた。
あの時、ルイズが殺気を放っていたことすら忘れるほどに。

僕らは、部屋のドアを開けた。

鬼がいた。

「随分と、機嫌良さそうじゃない。ご主人様にあれだけふざけたまねをしておいて……」

鬼……この部屋の主、ルイズは右腕に乗馬用の鞭を持って、どっかりとベットの上に座っていた。
正直言って、僕らは目の前の少女にびびっていた。
足がすくんで、体中の毛が逆立ち、全身が凍り付いた。

胃が痙攣し、胃液が逆流してくる。
反吐をはく、一歩手前だ。

「勿論、覚悟は出来ているわよねぇ……」

底冷えがするような声だった。

「「HOLY SHIT! ヤッバアアアイイ!」」
「待ちなさぁ~い!」

結局、あれだけゼロゼロと連呼したことで、僕と才人は3日間の飯抜きを宣告されたのだった。

チャンチャン♪

To be contenued……
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