ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの兄貴-25

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匿名ユーザー

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「遅せーぞ」
「…なんであんなのを普通に食べれるのよ…どっかおかしいんじゃない…?」
「…ほっとけ」
ふらつきながら教室に向かうルイズとその後ろを歩くプロシュートだが
その後ろに今にも「Amen!」と叫ばんばかりに眼鏡を光らせたタバサがそれを見ていた事は誰も気付いていない。

教室に入り座るっているとコッパゲことコルベールが喜色満面の笑顔でなにやら珍妙な物を置いている。

それはおよそ一切のハルケギニアにおいて、聞いたことも見たこともない奇怪な物体であった。

長い円筒状の金属の筒に金属のパイプが延び、パイプはふいごのようなものに繋がり円筒の頂上にはクランクが付き、そしてクランクは円筒の脇に立てられた車輪に繋がっている。
そしてその先には車輪がギアを介して箱とくっついている。

コルベールが肉の芽でも埋められたかの如くニコニコと笑いながら火の魔法の講釈をたれる。
「で、その妙なカラクリはなんですの?」
キュルケが半ばどうでもいいと言った様子で聞き返すが最高に『ハイ!』な状態のハゲは笑いながらその正体を答える。
「うふ…ぐふふふふ…よくぞ聞いてくれました。これは油と火の魔法を使って動力を得る装置です」
どこぞのスーパー漫画家と同じ笑い方でハゲが答える。正直言ってキモイ。
「ふいごを踏み油を気化させ、この円筒の中に気化した油が放り込まれます。
そうして、その円筒の中に火を付けるとぉ~~~爆発を起こしその力で上下にピストンが動きます」
そうするとクランクが動き車輪が回転する。そしてギアを介して箱の中からヘビの人形が出たり入ったりしている。
「見てください!その爆発で生じるエネルギーの発生空間はまさに歯車的技術革新の小宇宙!!」
だが、生徒達の反応はハッキリ言って薄い。むしろ寒い。


「で、それがどうしたってんですか」
ホワイト・アルバムの冷たさの答えにハゲが少し凹むが気を取り直して説明を始める。
「えー、今は愉快なヘビ君が顔を出すだけですが、例えばこの装置を荷車に載せて車輪を回させる。
   すると馬がいなくても荷車は動くのですぞ!例えば海に浮かんだ船の脇に大きな水車をつけて、この装置を使って回す!すると帆が要りませんぞ!」
「魔法で動かせばいいじゃないですか。そんな妙ちくりんな装置使わなくても」
「妙ちくりんと申したか」
ザ・ワールド!
何時もと違う妙に重い声で答えたコルベールに先ほどまでざわついていた教室が一気に静まり返った。
「おほん…!諸君!よく見なさい!もっともっと改良すれば、この装置は魔法が無くても動かす事が可能になるのですぞ!
  ほれ、今はこのように点火を『火』の魔法に頼っておるが、例えば火打石を利用して断続的に点火できる方法が見つかれば……」
咳払いをすると何時もの調子に戻ったコルベールだが『ハイ』になっているのはただ一人である。
生徒達は全員『それがどうした』という宇宙最強の台詞を頭に思い浮かべている時、一人声を上げる物がいた。
「エンジン…形態からして熱機関の火花点火式機関…ってとこだな」
妙に詳しかったりするが、ぶっちゃけギアッチョのたまものだ。
ギアッチョは妙に雑学に詳しいのである。
その手の知識だけならチーム1と言っても過言では無いのだが決まってキレるためギアッチョが雑学を披露しはじめたら周りの物を片付けるというのがチームの暗黙の掟となっている。
「えんじんとな?」
「オレんとこじゃそいつを使って、さっき言ってた事をやってる。ま…そいつじゃ無理だな。
出力が弱すぎるし、基本的な技術が足りねぇ。要はまだまだ発展途上って事だ。…だが独力でこれを作ったのには、いやマジに恐れいったよ」
「分かってくれるのかね…ミス・ヴァリエールの使い魔だったね君は…これで、船や馬車が動いているとは君は一体どこの生まれなんだね?」
「イタリ…ッ!」
イタリアと答えようとするプロシュートの腕に思いっきり肘撃ちをかましたルイズが小さく話しかける。

「…余計な事言うと、怪しまれるわよ」
この世界にイタリアが無い以上説明したとしても理解して貰えまいと思い、この場はルイズに任せる事にした
「ミスタ・コルベール。彼は…えー、その…そう!東方のロバ・アル・カイリエからやってきたんです」
コルベールが驚いたようにして一応の納得をする。メンドイのでプロシュートもそれに話を合わせそこで一応話は収まった。

「さぁ!では皆さん!誰かこの装置を動かしてみないかね?発火の呪文を唱えるだけで愉快なヘビ君がご挨拶!」
もちろん誰も手を上げる者は居ない。その様子に『家族は来ない』と寝ている横で何百回と囁かれた病人の如く肩を落すコルベール。
そこにモンモランシーがルイズを指差す
「ルイズ、あなた、やってごらんなさいよ。土くれを捕まえ、秘密の手柄を立て、あんな使い魔を召喚したあなたなら簡単でしょ」
『あんな使い魔』という言葉に教室が凍りつく。
今でこそ、大人しくしているがルイズの使い魔はギーシュを決闘で斃しているのである。
しかも老化というわけのわからない先住魔法ともいえる力で。
「やってごらんなさい?ほらルイズ。『ゼロ』のルイズ」
プッツン
「貴様程度のスカタンにこのルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールがナメられてたまるかァーーーー!!」
と心の中で叫びながら無言で教壇の装置に歩み寄る。
「止めとけ、オメーの爆発じゃその装置が持たねぇ」
その台詞でルイズの二つ名の由来を思い出したコルベールが半泣きになりながら説得を試みる。
――が、無駄だった。鳶色の瞳がマジシャンズレッドの如く燃えている。


「やらせてください。わたしだって、いつも失敗しているわけではありません。たまに成功、します。止めてもやります」
声が震えているルイズを見てプロシュートは無駄だと悟った。
ギアッチョと同じである。ギアッチョもキレる前には声が震えている。
そう思った瞬間、即座に撤退を決め込みここら辺共に行動しているキュルケとタバサを引っつかみ教室を出た。
出てしばらくすると、爆発が起き窓ガラスが割れ中から悲鳴が聞こえ
「ミスタ・コルベール、この機械壊れやすいです」
という声が聞こえた。
頭を押さえながら教室に入ると、消火に使われた水で教室が水浸しになり椅子や机の燃えカスが散乱していた。
「ギアッチョの方がまだマシだな…」
ギアッチョならキレてもせいぜい机か椅子一つで済むが、この被害はそれを圧倒的に上回っている。
まぁキレる頻度はギアッチョの方が圧倒的に多いのでどっこいどっこいなのだが。
「余計なお世話だったかしら?なにせあなたは優秀なメイジだもんね、あのぐらいの火、どうってことないもんね」
勝ち誇ったようにモンモランシーが言うがルイズは悔しそうに唇を噛み締めるだけだった。

「…ちったぁ学習しろオメーは」
教室の片付けを終え、ここにきて扱い方をペッシからギアッチョに変えようかと思っていたプロシュートが半分呆れたように言い放つ。
「オメーの爆発は使いどころと場所を考えねーと洒落になんねーんだからな
オレの仲間の一人がよく言ってたが能力ってのは使い方次第でいくらでも変わるもんなんだぜ」
「能力って言うけど…だったら、どうしてわたしは魔法が使えないの?あんたが伝説の使い魔なのに…
強力なメイジになんてなれなくてもいい。ただ、呪文を普通に使いこなせるようになりたい。得意な系統も分からずに失敗ばかりなんて嫌」
(スタンド使いがてめーの能力に気付かずに能力が一部暴走してるのと同じ…ってとこか)
それを聞いて、やはりペッシ扱いだなと心でそう思う。

「得意な系統を唱えると体の中に何かが生まれて、そのリズムが最高潮に達すると呪文が完成するって言うんだけど、そんな事一度も無いもの」
「得意な系統がねーんなら自分で探しゃあいいだろ。ロクな道が無いんなら自分で草掻き分けてでも突っ走りゃあそのうち辿りつくもんだ」
もちろん意図は、ヤバイ状況で後退するよりむしろ前に出ればいい結果が出るという特定の世界の法則だが、当然そんな事知らないルイズは別の方にと受け取った。
「系統なんて全部試したわよ!『土』『水』『風』『火』知ってるでしょ!?あんたまでわたしの事、馬鹿にしてるのね!もう知らないわよあんたの服の事なんて!!」
そういって部屋へと駆け出す。
残されたプロシュートは苦笑いだ
「ペッシとギアッチョを足して2で割ったら、ああなんだろうな。試してねーのが一つだけあんだろーによ」
一応ルイズの部屋の前に行くが当然鍵は掛かっている。軽くノックをしても返事は無い。
どうしたもんかと下に目をやると文字が書かれた紙きれを見付けた。
「読めねぇな…やはり文字も覚えないと駄目か」
書置きという手段を取るとは思えないが、一応確認しておく必要はある。
タバサかキュルケあたりに読んでもらうという手もあったが、タバサの部屋は知らないしキュルケは何か色々悪化しそうなので除外した。

厨房の連中なら問題無いだろうと思い食堂に向かうと、シエスタが歩いているのを見付けた。ご都合主義万歳
「よぅ」
「ひゃあああああ」
「……オメーもか」
今朝凄まじく、同じ光景を見たような気がして軽く頭痛がする。
「驚かさないでくださいよ…ってどうしたんです?こんな時間に」
「ルイズの地雷踏んで締め出し食らってな」
「まぁそれは大変ですね…」
「で、そっちは何やってんだ?」

「あ!あの…!その…!珍しい品が手に入ったのでプロシュートさんにご馳走しようと思って厨房に行く途中だったんですけど」
「珍しい…?まぁオレにとっちゃあほとんどが珍しいもんなんだが…」
「東方のロバ・アル・カイリエから運ばれた『お茶』っていうんですけど」
(茶?…珍しいもんでもないだろうが…)
イタリア人であるプロシュートにとって茶とは当然紅茶のことであり、ハルケギニアにも存在するため珍しくもなんともない。
目的地も同じだったため、厨房に向かうとマルトーが出迎えてくれ、茶を淹れてくれた。
「…こいつぁ…紅茶じゃねぇな」
「どうだ、珍しいだろ」
あまり口にする事が無いが、過去数度味わった事はある。
(日本…か、任務で数回行ったきりだが、そん時に飲んだな)
日本への任務は数が少ない上、色々と厄介なのでベイビィ・フェイスの分解で死体も残らないメローネが主に担当していた。
帰ってきたメローネが大量の紙袋や背負った鞄に巻いた厚紙などの荷物をよく持ち帰ってくるので、任務がついでという感じだったのだが。
(確か、メローネのやつそれをびーむさーべるとか言ってたな…どうでもいいが)
とにかくプロシュートも数度行った事はあり、その時に着物を着て飲んだ事はある。
外人が着物というのも目立つと思うだろうが、時期が時期だけにそっちの方が逆によかった。
ただし、もう二度と着たくねぇというのが感想だったが。
「…まぁ懐かしいっちゃあそうだな」
「懐かしい?ああ、プロシュートさんは東方の出身なんでしたね」
懐かしいという言葉が思わず口にでてヤベーと珍しく少し焦る。
「プロシュートさんの国の話、ぜひ聞かせてください」
「おう、そいつぁ俺も聞きてーな」
一瞬言葉に詰まる。さすがにイタリア・ギャングの勢力状況などを話すわけにもいかない。
どうするかと思ったが、まぁ日常生活の範囲で話せばいいと思い茶を啜りながらイタリアの事を話し始めるハルケギニアとは大分違う文化に目を丸くする二人。
とりあえず全面的に信じてくれているご様子。
「凄いですね…」
「スゲーもんだな…」
「まぁ…それだけ厄介な問題もあるがな」
警官や役人の汚職の事など話でも意味が無いので割愛し一通り話を終えると結構な時間が経っていた。

「もう、こんな時間か。俺はそろそろ部屋に戻るがお前さんはどうするんだ?」
「締め出し食らってるからな…まぁ適当な場所で寝る」
「勝手なもんだな貴族ってのは!」
「オレが地雷踏んだからな」
と、そこにマルトーがプロシュートを見ているシエスタを見て、笑みを浮かべながら天までブッ飛ぶような台詞を吐いた。
「…そうだ、使用人の部屋が空いてたな。シエスタと同じ部屋だが…なに問題はあるまい!」
豪快に言い放つがシエスタは真っ赤である。
「マママママ、マルトーサンナニヲイッテルンデスカ」
「ん?嫌だったか?そりゃあ残念だ。それなら俺んとこにくるか?」
「イイ、嫌ダナンテイッテマセン…ケド」
「じゃあ、決まりだ。ほれ行った行った」
もう急き立て二人を厨房から出すが、去り際に一言残す
「ああ、鍵は掛けとけよ?急に誰かが入ってきて色々と見られたくないなら」
メイド・イン・ヘヴン!アドレナリンは加速し脳内妄想は一巡する!
ボッシュウゥゥゥゥっというような音がして茹で上がったシエスタが倒れこんだ。
「あー、ちぃっとばかしからかいすぎたな」
ガハハとヘビー・ウェザー笑いをかますマルトーだがシエスタをプロシュートに預けると真顔になる。
「こいつは、本当にいい娘なんだ…だから…Goだ!Go!」
「表情と台詞が合ってねーぞ…」
「ハッハッハッハッハ!まぁ冗談だ!冗談!それじゃあ頼んだぜ!」

シエスタを部屋に運ぶと、適当な所に寝かせ自分も別のところに横になる。
さすがに教室の掃除なんぞをさせられたため疲労感はあった。
「あのオッサン、誰かに似てると思ったが…ホルマジオだな」
全てがそうではないが、誰かをからかう所がそっくりだと思いそのまま眠りについた。

余談だが、朝起きた時同じ部屋に居るプロシュートを見てシエスタが気絶するという事を三回程繰り返したのだが割愛させて頂く。


「…落ち着け」
「す…すいません…」
やっとこさ落ち着つかせたのだが、昨日拾った紙切れを思い出しそれをシエスタに見せた。
「これ何て書いてあるか分かるか?」
「…ミス・ヴァリエール宛の仕立て屋の請求書ですね…結構な額ですよこれ」
仕立て屋と聞いて昨日プッツンしたルイズが言った台詞を思い出した。
(しょぉ~~~がねぇなぁ~~)
思わず仲間の口癖が思い浮かぶ。
「手持ちじゃ足りそうにねーな…悪るいが頼みがある」
「え、その、はい!プロシュートさんの頼みならなんでも!」


「ふにゃ…わたしの側に…近寄るなぁぁぁぁぁぁぁ!」
どんな夢を見ているのか知らないが某ボスの如く寝言で叫んでいると扉が開き、キュルケが入ってきた。
ちなみにフレイムも一緒だ。
「きゅるきゅる…(これが初登場?遅くないかな?かな)」
グレイトフル・デッドの能力と凄まじく相性が悪いため出番は多分あまりない。合唱。
「おーい、起きなさい」
「うーん…次はいつ…どこから…」
「フレイムー♪」
ボウッ!っとフレイムが炎を吐きルイズの鼻先3セントまで炎を出し炙る。
「くらってくたばれ…かいえ…わきゃあああああ!熱!熱っい!」
「相変わらず寝起きが悪いわねぇ。地震とか起こったら死ぬわよ?」
「ななななな、なに勝手に入ってきてんのよーーーーー!」
「わざわざ起こしにきてあげたってのにその言い草?…ダーリンが居ないようだけどどうしたの?」
10秒ぐらい、どこ行ったのにあの馬鹿使い魔ーーーーー!と心中で叫ぶが脳に酸素が廻ると自分が締め出した事を思い出した。


「なにやってるのよヴァリエール。ダーリンがあなたを励ましてくれたのにそれに逆上して締め出すなんて」
一晩寝て頭が冷めたのか、圧倒的に自分に非がある事を自覚し言葉が出なくなる。
「はぁ…早く謝ってきなさいな。
  彼、結構厳しいけど相手を信頼してるから厳しくしてくれてるのよ?ま…それが分からないから『ゼロ』なんでしょうけど」
キュルケが部屋を出ると、ルイズが着替え食堂に向かう。
「そうよね…あいつも自信を持てって言ってくれたんだから」
そう思うと急に足取りも軽くなる。
とりあえず謝るのは食事を済ませてからでいいやと思い朝食を摂りながらどうやって謝ろうかと考える。
(昨日は、失敗して落ち込んでただけで、ほ、本気で怒ってたわけじゃないんだから!…でもごめんね)
数度考え直し、これだ!と心の中で小さくガッツポーズを取る。
完璧なツンとデレ。脳内に『パーフェクトだウォルター』という幻聴まで聞こえる。
意気揚々と食堂を出てプロシュートを捜し回るが、居なかった。
いい加減叫びたくなった頃ふと目を窓にやるとそこから見えた光景を見てルイズが固まった。

「別に付いてこなくてもいいんだがな」
「いえ…まだ慣れてないでしょうから。マルトーさんの許可もとってありますし」
「あと、落ちねーようにしろと言ったがつかみ過ぎだ」
「へ…?あ、す、すいません!」
と、プロシュートを前に後ろから抱きつくようにして馬に乗っているプロシュートとシエスタの姿を見たッ!
ルイズの目には色々と、その、何だ。背中に当たっている物が見える。というかそこしか見ていない。

「……( ゚Д゚)」
一時間経過
「………( ゚Д゚)」
二時間経過
「…………(゚Д゚)」
三時間経過
「授業サボって何やってるんだ『ゼロ』のルイズ」

「…あ…あ…あ……あんの馬鹿ハムーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

ドッギャーーーーーz_____ン

その日トリステイン魔法学校において一人の若きメイジがヘブンズ・ドアー(天国への扉)を開くことになった。

風上のマリコヌル ― 重ちーのように爆破され死亡
ゼロのルイズ ― 爆破の後片付けでその日、一日を潰す。
兄貴&シエスタ ― 夜頃、学院に帰ってくるもプッツンしたルイズにより締め出し継続。再びシエスタが気絶する事になる。

「まだ…死んでないど…」




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