ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

影の中の使い魔-1

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
雲ひとつ無い空、まさに快晴と呼べる日だったがルイズの心は暗かった。
トリステイン魔法学院から少し離れた草原に黒いローブをまとったメイジたちと使い魔が集まっている。
照りつける太陽が、彼らと同じ数だけの黒い影を作っていた。その中にルイズもいた。
そう今はサモン・サーヴァントの真っ最中。
学生たちは使い魔が現れるたびに、歓声を上げては好き勝手な感想を言い合っている。
ここまで少々手間取った生徒はいても、完全に失敗した生徒はいない。そしてとうとう最後のルイズの番となった。

「最後が『ゼロ』かよ。帰るの遅くなるなコレ」
「ここ危ねーな。離れとこー」
「召喚を失敗するに…おれの『魂』を賭けるぜ」
「グッド」
みんな好き勝手なことを言っている。ルイズはそんな雑音をかき消すように自分に言い聞かせた。
(大丈夫。私にだってできる。『信頼』するのよ自分を)

そう『信頼』だ。人が人を選ぶに当たって最も大切なことは『信頼』すること。
それはメイジと使い魔の関係にも言えることだろう、とルイズは思っている。
(自分を信じることもできないメイジに、使い魔も仕えたくないでしょ)
ルイズは杖を握る手をさらに強める。そして眼を閉じ、集中力を高めていく。
これから召喚されるのがドラゴンだろうが吸血鬼だろうが平民だろうがそんなことはどうでもいい。いやよくないか。
まぁいいや。私が呼び出す使い魔を私は信頼する。そして使い魔から信頼されるために私は自分を信じる。
身体の奥底から力が湧いてくるのを感じる!眼を見開く!呪文を叫ぶ!
一瞬の静寂

そして爆発

青空に向かって黒煙が昇っていく。
25回目の爆発によりいつもより大きめにできたクレーターの回りから、いつもより大きめの生徒たちの歓声があがる。
「すげぇぇ!今の爆発逆にすごくね!?」
「使い魔が月までぶっ飛ぶこの衝撃!」
「だ…だめだ…恐ろしい…声が出ない…ビビっちまって…ヒッ…息がッ!ヒッ!」
真っ白に燃え尽きてしまった生徒もいるようだ。
(そう簡単に成功しないのぐらい想定範囲内よ。そう!コーラを飲んだらげっぷが出るっていうくらい想定範囲内じゃ!)
ルイズは多少動揺しながらも、まだ熱気を帯びている前方のクレーターを見据える。
これ以上草原をぶっ飛ばし環境破壊をするのもためらわれるので、さっき作ったクレーターの上に狙いを定めて、26回目の挑戦をしようと構える。
「ちょっと。ルイズ。あれクレーターの真ん中、何かあるわよ」
後ろから声をかけられ集中力が途切れてしまう。振り向くとキュルケがクレーターの方を指差している。

何かあるって、あの爆発に巻き込まれたらみんなヤムチャになるだろう。常識で考えて。
そう思いながらもよく見てみると、煙と砂ぼこりでまだよく見えないが確かに『何か』がある。
小さな箱のような……いやでもあれ使い魔じゃないだろ。常識で考えて。
「キュルケ。ちょっと取ってきてよアレ」
「なんで私が」
「熱いし。微熱でしょあんた」
「微熱でも熱いものは熱いのよ!それになんであたしがあなたの言うこと聞かなきゃならないのよ!」
「ちっ」
すでに褐色の肌なんだからもうちょっとぐらい焼けてもいいだろうに。常識で(ry

それは箱ではなかった。片手にすっぽりと収まる程度の大きさの長方形の物体。
丸みを帯びたラインや曲線を重ねたような装飾。そして金属特有の鈍い銀色の光沢が不思議な雰囲気をかもしだしていた。
しかしそんなことよりもルイズを驚かせたのは、それを触った時熱さを感じなかったことだ。
今ルイズはクレーターの真ん中にいる。一応立ってはいられるが汗が吹き出るのを感じる。
しかしこの物体は触ってもひんやりと冷たかった。
(ただのガラクタではなさそうね……)

「どうしたんです、ミス・ヴァリエール? サモン・サーヴァントが成功したんなら早く契約をしてください」
コルベールから声をかけられ、ルイズは手元から視線をはずした。太陽の光をその禿頭で嫌がらせのように反射してくる。
「これは成功したといえるんでしょうか?」
ルイズは思わず握っていた奇妙な物体をコルベールに見えるように掲げた。
しかしそれはコルベールの後ろにいる他の生徒たちにも見せつけることになってしまったようだ。
「なんだ!?『ゼロ』のルイズがとうとう成功したみたいだぞ!」
「でもなんだあれ……生き物じゃないじゃん(笑い)そこらへんに落ちてたの拾っただけだろ(笑い)」
「さすがは『ゼロ』のルイズ!俺たちに(ry」

(うるさい。あんたたちには聞いてない)
ルイズは多少イラっとしつつ無視することに決めた。
コルベールが禿頭をかきながら答える。
「契約の儀式をしてみれば分かるのではないかね?ルーンが出ればそれが使い魔。出なければたまたまそこに落ちていたガラクタだろう」
言われてみればそうだ。ファーストキスから始まる~と昔の偉い人も言っていた。
(もしこれが使い魔だったらどうしよう。箱って……箱が使い魔なんて聞いたことありません!とか言えばやり直しさせてくれるのかな。
いや、どうせ『この使い魔の儀式は神聖で伝統があるから』とかなんとか言うにきまってるわ。でも箱って……いや箱ではないみたいだけど)
どうかルーンが出ませんように。そう祈りながら唇を近づける。

ルーンでました。しかもコルベールも見たことないレアなルーンだって。
(逆に考えるのよルイズ!とりあえず留年は免れた。ルーン出てよかったじゃないって考えるのよ)
ルイズがなるべくポジティブに考えようとしているところに、回りから容赦ない嘲笑とヤジが飛ぶ。
「はははははははは!本当にアレが使い魔なんだ!」
一番笑っているのはかぜっぴきのマリコ…リヌ?だ。その少し横でキュルケもニヤニヤしながらこっちを見ている。

「君たち。もう教室に戻るから準備をしなさい」
コルベールがなんとかまとめようとしているがなかなか言うことをきかない。
ルイズは短く嘆息すると使い魔?をいろいろいじくってみる。
インテリジェンスソードなんてのもこの世にあるくらいだ。もしかしたらコレも……あ、動いた。
いじくっているうちに物体の上部分(どっちが上か下かもよく分からないが)が横にスライドされるように動いた。
中には小さな突起物がある。その突起物には穴が開いていて、何かがそこから出てくるように思える。
ただのガラクタであって欲しくない。その一心でルイズはさらに調べてみる。
「君たち!いい加減にしなさい!遠足に来てるんじゃないんですよ!使い魔の儀式と言うのは……」
コルベールがまだ何か言っているがルイズはもはや聞いてない。

なにか空気の漏れてる音がする……それにちょっと臭い……あ、ここ押せる……
「うわッ」
思わず上げたルイズの声に最初に反応したのはキュルケだった。
「燃えてるじゃない!」
あまりにストレートな感想のとおり、ルイズの手から火が吹きだしている。

「ミス・ヴァリエール!?火の魔法を!?」
続いてコルベールも驚きの声を上げる。単に火に驚いたのか、ゼロのルイズが魔法を使っていることに驚いたのかは分からないが。
もちろん最も驚いていたのはルイズだった。使い魔から急にすごい勢いで火が出てきたのだ。
皆の注目がコルベールから再び自分に集まっているのを感じる。
「この火は私の魔法じゃありません。この使い魔から」……そうルイズが言おうとしたとき、声が聞こえた。

それはルイズの背後から聞こえた。本当に背中の、すぐ後ろに立っているんではないかというような場所から。
まるで洞穴の奥底から聞こえてくるような奇妙なくぐもった声。とても人間のとは思えない感情の感じない声。
ルイズはその声の発した言葉の意味をすぐに理解することはできなかった。
だがこの声は危険だということ感じていた!

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………  

  「おまえ…………『再点火』したな!」


 と べ continued・・・・

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー