ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

第2章 ゼロのルイズッ! 前編

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第2章 前編


「Buongiorno!(おはようございます!)」

爽やかな朝、爽やかな挨拶を、爽やかな笑顔で、爽やかな使い魔が、御主人様へ申し上げる。
……返事が無い。ただの屍(?のようだ。
「朝ですよ! 起きて下さい!私の可愛い御主人様!」
「…おーい。 …朝ですよー」
「早く起きないと食べちゃうぞー(性的な意味で)」
「……(まだ夢の中か? オイ)」
少しイラっときたが、我慢々々。これもコミュニケーションの一つだ。

『やりたい事をやりたい時にやる』
『”明日”のため”今日”我慢する』
『両方』やらなくちゃあならないってのが『人間』のつらいところだな。
大きな『矛盾』も、楽しめればそれで良し!

とはいうものの、流石に無反応は面白くなく、ちょっとだけ悪戯することに決めた。
「朝ですよー」 プニ (お やわらかい…)
幸せそうに眠っている御主人様の頬をつつく。
「…うにゃ」
!?
「…朝ですぜー」 プニプニ
「…うにゃあ」
(こ、こりは!?)

お も し ろ い !

「朝朝朝ー」 プニプニプニ
「…うににゃあ」
(もう起きてんじゃねぇのか? これ…)
でも反応が”おもしろい”ので、もっと続けることにした。
「右からつつく。 左からつつく。 つまり……挟み撃ちの形になるな」 プニー
「…ぷー…」
「あぶなァーい! 上から襲って来るッ!(小声)」 鼻を上からプニー
「…むー…」
(絶対起きてるし、絶対”わざと”だ…。 しかし…)
何だこの感情は? こう、心が満たされるというか… 癒されるというか…
自分に新たな嗜好が生まれ出る瞬間に戸惑う。

「うーん…」
(お? 流石に起きるか?)
寝返りをうっただけで、起きようとしない。
「…やれやれだぜ?」
両手の人差し指を、御主人様の頬へ近づける。
「オラ オラ オラ オラ」
プニプニプニプニプニプニ……
「…UUU、UREEYYYYYYYYYッ!!」
まるで、人間を辞めたかのような咆哮でベッドから飛び起きるルイズ。
「何すんのよ! もっと普通に起こしなさいよ!」
両手で頬をさすりながら、使い魔を怒鳴る。
「スイマセェェン……。 余りにも”可愛らしい”寝顔だったのでつい……」
遊んでしまいました。
「……ま、まあ、素直に謝ったから今回は許してあげる! でも、次はちゃんと起こしなさい!」
ほ~んの少しだけ嬉しそうな顔で、簡単に許すルイズ。

…もしかして「可愛らしい」って言ったから? だとしたら…。
なんて不憫な子……。 オレがもっと褒めてあげないと。
「可愛い」程度で満足したらもったいない。
この娘は御世辞抜きで可愛いのだから。
もっと輝いてもらうためには、少々のことで満足してはイカン!

『自信』を持つことは、強く美しく生きていくためには欠かせないのだ。…自信過剰は困るが。

わずか1秒弱で御主人様への感想と決意を固めたスクアーロだった。
そんな使い魔を尻目に、背伸びをして目を覚ましているルイズ。
「ウーン…… そんじゃ、服」
椅子にかかった制服を、ルイズへ手渡す。
ネグリジェを脱ごうと、裾を掴んだ。そこで動きが止まる。
「…あっち向いてなさい」
スクアーロに命令する。 ……恥ずかしくないんじゃ?
「いいから! あっち向いてて!」
「へいへい」
「返事は『ハイ』! 次、下着! クローゼットの一番下の引き出し!」
言われた通り、引き出しを開ける。
その中から”今日の気分”で選び出すスクアーロ。
(色気のあるヤツがないな…)
少しションボリしながら、選び終える。
「とっとと渡しなさい。 こっちを見ずに」
「相手を見ずに、物を渡すのはマナー違反だと…」
「うるさい」
しぶしぶ下着を投げ渡し、次の指示を仰ぐ。
「着せましょうか? 服」
「…いいわ。 自分でやる」
「そんな! フツー、使い魔とか召使いに手伝わせるだろ!?」
「自分を知れ… そんなオイシイ話が…… あると思うのか? おまえの様な(スケベな)使い魔に」
「…ヤッダーバァァァ…」
声にもならない声で、心の叫び(?をゴミ箱になげかけるスクアーロであった。

部屋を出ると、赤い髪の”bella donna:ベッラ ドンナ”がいた。   bella donna(伊:美人)
特に胸がグンバツな美女が。
「おはよう。ルイズ」
ルイズは顔をしかめると、嫌そうに挨拶を返した。
「おはよう。キュルケ」
「あんたの使い魔って、これ?」
何故か自分の隣にいるスクアーロを指差す。
スクアーロは、手をキュルケの腰へまわしつつ、キュルケの手にキスをする。
「Buongiorno! あなたほどの『炎のように激しく、熱を持った美しさ』は初めてです。 お嬢さん♪」
「あら? お上手ね。 わかってるじゃない?あんたの使い魔さん♪」
「ダァッシャッ!!」
キュルケが言い終えると同時に、使い魔へA・猪○ばりの延髄蹴りを決めるルイズ。
さん付けにランクアップしたことを喜ぶ暇も無く、床を泳ぐ鮫。
「あらあら」
「ごご、ごめんなさいね? まだ躾がなってなくて。 すす、すぐに床に寝てしまうのよ。困ったものだわ」
肩を小刻みに震わせながら、使い魔に止めを刺す寸前のルイズ。
どこと無く全身にオーラを纏っているような……。
「だけど、『平民』を使い魔にするなんて、やるじゃない”ゼロ”のルイズ?」
怒りのスーパーモード状態のルイズを目の前にしても、動じることも無く挑発するキュルケ。
(後頭部とか首はヤバイだろ。常識的に考えて…)
瞬時に当たり所をずらして、即死だけは防いだスクアーロ。だが当然、床の上に寝ている。
「でも、どうせ使い魔にするなら、こういうのがいいわよねぇ~。 フレイムー」
のそのそと、赤い何かがキュルケの部屋と思われるドアから出てくる。
「! …これって、サラマンダー?」
ルイズが悔しそうに尋ねる。
そうよー。火トカゲよー。と自慢するキュルケの足元で、フレイムと呼ばれたサラマンダーが行儀良くしている。

「…Buongiorno……。 使い魔どうし仲良くやろうや」
「きゅるきゅる…… きゅるきゅる?」
「…ありがとよ。 元気いっぱいだぜ?」
なんとなくだが、意思疎通に成功したことに満足するスクアーロ。
フレイムとの挨拶を終えた鮫はぼんやりと、タイプの違う2人の美女のおしゃべり(?を聞く。
「―――あなた、お名前は?」
御主人様同士の会話が終わり、ゆっくりと起き上がろうする平民使い魔へ問いかける。
「スクアーロ。 オレのクニで”鮫”って意味だ」
「すくあーろ? 珍しい名前ね」
「だろうな」
「ま、よろしくね。使い魔さん。 じゃあ、お先にし・トゥ・れいィィィ~」

…キュルケがとっびきりのギャグを披露しながらいなくなると、ルイズは拳を握り締めた。
「ぐーやーじ~~! (さっきの”し・トゥ・れいィ”も”ゼロ”と”れい”をかけて馬鹿にしてんだわ!)」
「別にいいじゃないか。 気にしたらイカンよ?」
「よくな~いッ! メイジの実力をはかるには使い魔見ろって言われるぐらいよ!」
「『平民』と『サラマンダー』では比較にならない?」
「当然でしょ! 人間同士でいえば『平民』と『貴族』ぐらい違うわよ!」
「……(他の『パッショーネ』のメンバーなら、ぶっ飛ばされてんぞ?)」
未だ興奮冷めやらぬルイズに問う。
「なあ、さっき話してた微熱とかゼロって『二つ名』ってやつか?」
「……そうよ」
「ふーん」
「……聞かないの?」
「何を?」
「二つ名の由来」
「君が教えてくれるなら」
「……。 ……行くわよ」
(やっぱり。さっきの会話からじゃあ、あんまりいい意味じゃなさそうだよな)

ご機嫌ナナメの御主人様の後を、さっきのダメージの後遺症か、ナナメに歩きながらついて行く。
(やっぱり自信を持たせないと。)
この娘には色々頑張ってもらわなければ…。
帰る方法を調べてもらうっていう大事な仕事があるからな。
それに何より……。

「美人は笑顔が一番ッ! これは真理だッ!」

……今の鮫には親衛隊だった頃の獰猛さは全く感じられない。
……異性に対する貪欲さは増しているが……。




「The Story of the "Clash and Zero"」

第2章 ゼロのルイズッ! 前編終了


To Be Continued ==>

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