ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

帰還! 魂の還る場所

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匿名ユーザー

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帰還! 魂の還る場所

日食が終わり――太陽がその姿を現す。
アルビオン艦隊の沈んだ空は、まさに青一色。どこまでもどこまでも晴れ渡っていた。
その青い空の中を、彼等は、彼女等は探す。
あの竜は何処。竜の羽衣は何処。承太郎とルイズは何処。
そして――すでにこの空にはいない事を知る。

「とりあえずトリステイン軍が勝ったけど、これから本格的に戦争が始まるわね。
 トリステインにいると危ないかもしれないけど……どうする?
 よかったら私と一緒にゲルマニアに来ない? 疎開ってやつよ」
「いい」
「あら、そう? どうして?」
「しばらく学院で待ってみたい」
「……そう、そうね。それも悪くないわ。私もつき合う、文句は無いわよね?」
「うん」

「どうしたんだい? なぜそんなに泣いているんだい?」
「ごめんなさい。今は、泣きたいんです。泣かせてください」
「……女の子の涙を止めるのも、薔薇の役目だ。
 彼が行ってしまってさみしいのも解るが、なぁに、きっとすぐ――」
「いいえ、きっと、もう、あの人は……帰ってきません。
 お爺ちゃんの故郷へ行ったんです。二人で行ってしまったんです。
 もう、私達の手の届かない所へ……遠い遠い……月がひとつの空へ……」
「……友達が泣いているのに、何もできないというのは、つらいなぁ」
「ありがとうございます。私を友達と呼んでくれる皆様がいらっしゃるから、
 私はあの人を待ち続ける事ができます。できると思うんです」

こうして――ハルケギニアでの物語は終わった。
では、承太郎とルイズは――?

 真っ白い光の中から飛び出した先は、空だった。
「うっ……?」
「気がついたか、ルイズ」
承太郎の膝の上で目を覚ましたルイズは、周囲を見回した。
「……ここ、どこ? タルブの村?」
「下を見てみな」
見てみる。
変な形の建物がいっぱい並んでいて、灰色の道の上を色取り取りの箱が走ってる。
これは、何だろう。どこだろう。ハルケギニアにこんな街並あったっけ?
「日本だ。やれやれ、何とか無事帰ってくる事ができたらしい」
「あ――そ、そうなんだ。よかった、よかった」
それってつまり自分も異世界に来ちゃった訳で……どうしよう?
かなり頭が混乱していて、ろくに物事を考えられない。
喜ぶべきか、悲しむべきか、怒るべきかも解らない。
そんなルイズを膝に乗せたまま、承太郎はゼロ戦を降下させる。
「ジョータロー、どこ行くの?」
「学校の校庭に着陸させる。燃料タンクをやられたからな、
 あんまり長くは飛べねーし、近場で広い場所は学校くらいだ」
「学校って、あんたの通ってた学校?」
「そうだ。ラッキーなのかアンラッキーなのか、俺の故郷の街の上に出てきたらしい」
そう言って承太郎は、一際大きな建物のある場所へゼロ戦の機首を向ける。
トリステイン魔法学院ほどの大きさはないが、どうやらそれが学校らしい。
校庭の隅へと車輪を下ろしたゼロ戦は、速度を落としながら校庭の反対側まで走る。
「ちょっと、ちゃんと止まれるの? ……って、何してるの?」
見れば、承太郎はメモ帳を取り出し、何かを書き込んでいた。
「陛下じゃあなく、国の所有物になるだろうが、
 これでシエスタの祖父の魂は故郷に還ってきたって事になるかな」
そう言うと承太郎はメモ帳のページを一枚めくると、風防を開けてルイズを担ぎ上げた。

「ちょっ、何すんのよ!?」
「騒ぎに巻き込まれるのはゴメンなんでな。とっとと逃げるぜ」
空いた座席にメモ用紙を放ると、承太郎はゼロ戦の前に回り込んで、
スタープラチナで受け止めてブレーキをかけた。
おかげで校庭の反対側を突き抜けずにすむ。
「さて、さっさとズラかるとするか」
「きゃっ、わあ!」
目立つルイズの桃色の髪を隠すべく、承太郎はルイズの身体を自分の学ランで覆った。
それはある意味抱き合うような形でもある。
そして一目散に校庭から走り去り、近場の竹林へと逃げ込んだ。

学校では、授業中突然校庭に降りてきた戦闘機の姿に生徒達が大騒ぎを始め、
授業どころではなくなってしまった。
しかもパイロットらしき黒ずくめの男は、とっととどこかへ逃げてしまった。
服装が学生服っぽかったように見えたが、みんな校舎から見ていたため、
正確な服装を把握する事はできなかった。
警察に通報しつつ、ゼロ戦の様子を見に来た教師達は、
コックピットの座席に落ちている一枚の紙きれを発見する。
そこにはこう書かれていた。

『天皇陛下ヨリ預カリシ零戦ヲ 遅レバセナガラオ返シシマス 海軍少尉天田史郎』

後日、第二次世界大戦中行方不明になった天田史郎少尉の存在が明らかになり、
時代を越えて還ってきた謎の戦闘機として日本中に知れ渡る大ニュースとなった。

どうやら平日の昼間らしく、住宅街を歩く人影はほとんど無かった。
たまに通る車からも、承太郎はうまく陰になってルイズの髪を隠す。
ルイズは日本の建築物やコンクリートの地面に驚きつつ、
案内されるがまま空条家へと向かう。
貴族の屋敷に比べると小さいが、他の一般家屋に比べると広い敷地を持つ空条家を見て、
実は承太郎もこの世界じゃそれなりの家柄の人間なのではと見直したりもした。
久方振りに我が家へと帰宅した承太郎は、とりあえずルイズに玄関で靴を脱がせ、
スリッパを履かせた後、居間へと案内する。
「とりあえずここで待ってな。茶でも淹れてきてやる」
「あ、あの。ジョータロー……」
居間から出て行こうとする承太郎を、ルイズは不安げに止めた。
「わ、私、帰れるかな……? ハルケギニアに」
「……さあな……もう一度日食に飛び込めば帰れるかもしれねーが……正直解らん。
 とりあえず小型飛行機の類ならじじいを頼れば調達できるだろうし、
 スピードワゴン財団って組織の協力も仰げば何とかなるかもしれん」
「そ、そう」
「……すまないな、巻き込んじまって」
承太郎の謝罪なんていうとんでもないものを聞かされたルイズは、
大慌てで返事を考え、思いつくがままに喋る。
「こ、こんなのヘッチャラよ! それに、あんただって、その、
 召喚された時は結構余裕見せてたじゃない?
 だったら、ご主人様の私も、これくらい余裕よ余裕! あははのはよ!」
「……そうだったな。光の中で怖くないとか言ってたのを忘れてたぜ」
「あっ……」
突如硬直するルイズ。あの時、ええと、何て言ったっけ?

『ジョータローと一緒なら、何が起こったって怖くないんだから!!』

うわ、恥ずかしい。
何か愛の告白にも聞こえない事もないような気が少しだけどするかもしれない。
「あ、ああ、あれは、あれは、その……」
「……何だ? あの時はよく聞こえなかったんでな、聞き間違いや、
 聞き逃した部分があるんだったら、今言い直してくれて構わねーぜ」
「え――と、わ、私は虚無の担い手なんだから、何も怖くないって言ったの!」
「そうか」
咄嗟に嘘をついたルイズだが、承太郎はそれで納得したようだ。
いや、もしかしたら、本当は全部聞こえていたのに、イジワルしてるのでは。
何だかムカムカしてきて、何か言い返すものはないかと思考をめぐらせる。
(……あ、そういえば)
ピコリーンと閃いた。
「そういえばあんた、あの光の中で、私の事を『ご主人様』って呼ばなかった?」
今度は承太郎が固まる。そして回想する。

『やれやれだぜ。意外とご主人様らしいところもあるじゃねーか……ルイズ』

「何かの聞き間違いだろう。俺はそんな事……一言も口にしてねーぜ」
ルイズはあの時の言葉を全部覚えているのかいないのか、
不適な笑みを浮かべて承太郎の背後に忍び寄ってきた。
「確かに聞こえたと思うんだけどなー。あんたが『ご主人様』って言うの。
 それって何? つまり、ついに認めたって事よね?
 私が『ご主人様』で、ジョータローが『使い魔』だって事を!」
「……妙な勘違いをするんじゃねー。
 だいたいここはハルケギニアじゃないんだ。使い魔なんて存在しねー」
「でも、使い魔のルーン消えてないじゃない。まだ私の使い魔って証拠よ」
言われて左手を見てみると、ガンダールヴのルーンはしっかりと刻まれたまま。
これはこれで便利な能力だが、どうしたものか。
――と、突然承太郎は脂汗をかき始めた。

「ど、どうしたの?」
「……気分が悪い。どうやら……今頃タバサの茶が効いてきたようだ……」
「え!? だってあんた、おいしいって言ってたじゃない!」
承太郎は知らない事だが、彼がタバ茶七号を飲んだ時、
ガンダールヴのルーンが反応していたのだ。
ゼロ戦を武器として反応していたのか、タバ茶七号を武器として反応していたのか、
それは些細な問題なのでどうでもいい。
重要なのはガンダールヴの力でパワーアップした承太郎の身体は、
タバ茶七号の持つ色々なパワーと奇妙にブレンドして、受け入れる事に成功したのだ。
だからガンダールヴの力が切れて時間の経った今、
タバ茶七号の猛威が承太郎の身体を襲っていた。
「うっ……」
「ちょ、ちょっとジョータロー!?」
突然足がふらつき出した承太郎は、手近にあた棚を掴んで身体を支えようとするが、
引き出しを思いっきり引っ張っただけに終わり、
その中にあった無数の紙(?)を撒き散らせながら倒れこんだ。
「ひゃあっ!?」
ルイズの上に。

195cm、82kgの体重に押し潰され、ルイズは目を回す。
承太郎もタバ茶七号の後遺症で頭痛を感じながら、何とか起き上がろうとする。
両手で上半身を持ち上げ、膝を使って立ち上がろうとして、
偶然――四つん這いの姿勢になる。
その下には、ルイズ。
その周囲には、写真。
……写真?

「う、うーん……うん?」
何度もまばたきしながら、ルイズは自分の周囲にばらまかれている紙に気づいた。
それを手に取って見てみる。絵、というにはあまりにも精密すぎる絵があった。
「こ、これは……念写した、俺の写真?」
承太郎が呟く。
ルイズは写真を見て、顔を真っ赤にする。
背景は空。青い地面(シルフィードの背中)に座り込みながら、
承太郎の左腕に抱きついてスヤスヤと眠っている自分の姿。
彼等の周囲に散らばっているのは、承太郎の写真ばかりであった。
しかもルイズ、シエスタ、キュルケ、タバサと一緒の写真ばかり。
承太郎は絶句した。
そして、ルイズは承太郎に押し倒されているような体勢になっていると気づき、
顔をトマトのように真っ赤にして悲鳴を上げた。
その悲鳴を聞きつけたのか!
玄関の方からドカドカと二人分の足音がやってくる。
「承太郎!? 帰ってきたの!?」
「何じゃ今の悲鳴は! いるのか、承太郎!」
お母さんとお爺ちゃんとの感動の再会――にはならなかった。

ホリィは見た。ジョセフも見た。
承太郎がー念写に出てきた女の子の一人をー家に連れ込んでー押し倒し中ー。
「か、帰ってきて早々……真昼間から……何て事……」
「ろ、ロリ……ロリコンじゃと!? OH MY GOD!!」

こうして空条承太郎とゼロのルイズの冒険は終わり――。
何だかよく解らない事態に陥った。
あまりにも滅茶苦茶な状況に、冷静で優れた判断力を持つ承太郎も、
誤解を解くだとか事情を説明するなんて行動を取れず、ただ一言こう呟いた。

――やれやれだぜ。




エピローグ

王女アンリエッタ
兵を率いて出陣した事によりゲルマニア皇帝との婚約は解消されるも、
まさかの大勝利により国民から持ち上げられ女王に就任。
その後もトリステイン王国を率いてレコン・キスタを相手に戦争を繰り広げる。
敗北寸前まで追い込まれるもガリア王国の策謀により戦争は終結。
傷ついた自国を憂い、国民が平和に幸せに暮らせる国造りに粉骨砕身する。

雪風のタバサ
戦争終結後もトリステイン魔法学院に在学。
コルベールの開発したタバコの宣伝のため『煙草王誕生!』なる歌を作曲。
タバ茶ナンバーズも日々改良を重ね、ついにタバサ特製はしばみ茶八〇号を完成。
その味はあまりの凄まじさのため飲んだ者は精神に異常をきたすほどだが、
逆に精神に異常がある者が飲むと正常に戻るため二回飲めば一周して元通りになる。
数々の画期的なタバ茶開発の功績によりはしばみ草愛好会の開発部に誘われた。
タバ茶八〇号を『とある女性』に飲ませたタバサは、失った幸せを取り戻したらしい。

微熱のキュルケ
戦争終結後、色々あってコルベールへの愛を燃やすようになる。
彼のためにタバサにタバコの宣伝ソングを作曲してもらい、キュルケは作詞を担当。
宣伝ソングの効果もあり紙タバコ『ツェルプストー・サラマンダー』は、
ハルケギニア全土で紙タバコブームを巻き起こす。
ツェルプストー家の財力はゲルマニアでも最高のものとなった。
その後はコルベールと釣り合う女性になるためメイジとしての勉学にも励む。
タバサとは学院卒業後も連絡を取り合い、互いに生涯の親友といえる関係を築く。

炎蛇のコルベール
戦争終結後、ツェルプストー家が全面バックアップにつき、
紙タバコやエンジンのみならず様々な機械を発明する。
『煙草王』『発明王』『コッパゲ』という名を歴史に残すほどの活躍を見せる。
色々あって教え子のキュルケに惚れられてしまうが、
彼女が学院を卒業するまでは一切相手をしなかったという。教師の鑑だ。
でも卒業後は不明。
何だかんだで幸せな人生を送る。

青銅のギーシュ
タルブの村の英雄として祭り上げられ、シエスタからも尊敬されるようになる。
そのせいでモンモランシーから「今度は平民のメイドなんかに」と誤解を受けた。
学院卒業後は、承太郎達と共に送った冒険が忘れられなかったらしく、
ハルケギニア中を旅して回り人間的にもメイジとしても成長。
クイーン・ワルキューレの他に、様々な形態の開発にも成功している。
ゲッター・ワルキューレ。ジェネシックワルキューレ。ゴッドワルキューレ等。
しかしどれもこれも色物ゴーレムばかりで、あまり強くなかったと言われている。
だがタルブの村では竜の羽衣に代わり、
全種類のワルキューレの銅像が寺院に奉られるようになったそうな。
その中にスターダスト・ワルキューレと呼ばれる銅像があり、
ギーシュの友人が操っていたゴーレムがモデルと言われているが真偽は定かではない。

シエスタ
トリステイン魔法学院でメイドを続け、休暇には実家に帰るという日々を送る。
時々キュルケ、タバサ、ギーシュとコルベールがヨシェナヴェを食べに厨房を訪れ、
コック長のマルトーも彼等と交流する事で貴族への偏見を緩和させる。
特にギーシュからご贔屓にされる事が多かったため、
モンモランシーから誤解を受け一時期目の敵にされるが、
ギーシュ達三人がシエスタをかばい、貴族と平民の身分を越えた友情で結ばれる。
承太郎との思い出を生涯大切に抱き続けた。

ゼロのルイズ
桃色の髪は目立つという事で、来日早々黒く染められる事になる。
スピードワゴン財団にハルケギニアへ帰る方法を探してもらいつつ、
秘密裏に設立された魔法研究部門への協力。
地球における科学の発展に触れ、数ヶ月ほど田舎物丸出しなんてレベルではなかった。
帰るめどが立たないためフランス系アメリカ人という国籍をスピードワゴン財団が捏造。
晴れて地球人となる。
しかし日本語しか理解できないため、数年間空条宅に居候をしつつ、
日本語の文字を覚えた後は大学に通い地球と日本の常識や知識を勤勉に学んだ。
メイジであるためスタンドは見えるがスタンド使いではないため、
スタンド使いは引かれ合うという法則に該当せず日常生活は平和。
ハルケギニアに残した家族や友人達の元へ帰ろうと、
始祖の祈祷書やスピードワゴン財団を利用し様々な努力をした。
しかし帰るチャンスが訪れた時、帰るべきか帰ざるべきか三日三晩悩んだという。

空条承太郎
スピードワゴン財団が報告してくるスタンド関連の事件解決に協力しつつ、
真面目に勉強をし某一流大学にを卒業、晴れて海洋冒険家となった。
後にアメリカ国籍の女性と結婚し女児を授かる。
だが海洋冒険家とスタンド使いという境遇が承太郎に平穏な生活を許さず、
妻子の待つ家にほとんど帰れなかったため、円満な家庭を築けず離婚してしまう。
だが後年、DIOの意志を継ぐ邪悪が動き出し、娘とその仲間の協力を得て戦う。
スタープラチナとガンダールヴの能力、そして娘のスタンドと、
彼女が母親から受け継いだもうひとつの能力に助けられ、
時を加速させ新世界を目指したスタンドに辛くも勝利を収める。
この戦いにより父への愛情を取り戻した娘に、気性の激しい元妻との仲を取り持たれ再婚。
今度こそ幸せな家庭を築いたようだ。


   第一部 スターダストファミリアー 完

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