ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

第四話 【そいつの名は『ゼロ』】

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匿名ユーザー

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(やっぱりやりすぎだったかしら…)
ルイズは己の使い魔を見て考える。
食堂から出てきたあとから、ずっと元気がない『平民』
…パンナコッタ・フーゴのことを。
教室の床に座り込み、膝を抱えて譫言を呟いているばかり…。
あの食事は『主人』と『使い魔』の違いを理解させるために
用意させたのだが、それが予想以上に効いてしまっているようだった。
粗末な食事。当然不満がでてくるだろうが、そこに寛大な主人が
施しを分け与え、主従関係を強固なものにするという計画だったのだが…。
まさかあれを我慢できるだなんて誰が想像できるだろうか!?
(何とかしないといけない!…のかな?)

ルイズは少々複雑な感情を抱いた…。


『紫霞の使い魔』

第四話 【そいつの名は『ゼロ』】

「皆さん。春の使い魔召喚は、大成功のようですわね」
中年の女教師 ミセス・シュヴルーズは教室を見回すと、満足そうに微笑んだ。
視線の先にはサラマンダー、バグベアー、スキュア、カラス、大ヘビ、フクロウ、
人食いリス、カタツムリの殻を背負った犬、レザーブーツを履いた猫、
耳が ケンカか なにかで 虫に喰われた葉のように 欠けている ネズミ
服が  趣味か なにかで 虫に喰われた葉のように 穴だらけの 人間。
………人間?

「おやおや。変わった使い魔を召喚したものですね。ミス・ヴァリエール」
シュヴルーズがとぼけた声で言うと、教室は笑いの渦となった。
「ゼロのルイズ!召還できないからってその辺歩いてた露出狂連れてくるなよ!」
小太りの少年がガラガラ声を張り上げて嘲りの言葉を浴びせる。
「違うわ!きちんと召喚したもの!こいつが来ちゃっただけよ!」
ルイズが立ち上がり、『床のモノ』を指さして反論する。
当の本人は、
「ぼくのは違う…ぼくのはファッションなのに……」
別方面の中傷に対して傷つく。もはや怒る気力もないようだ。
「嘘つけ!『サモン・サーヴァント』ができなかったんだろう?ゼロのルイズ!」
「なんですって!わたしを侮辱するの!?かぜっぴきのマルコルヌ!!」
「ぼくは風上のマルコルヌだ!かぜっぴきじゃないぞ!記憶力もゼロなのか!」
「あんたなんか『かぜっぴき』で充分よ!喋らないで!風邪が移るから!」
売り言葉に買い言葉…。二人とも段々ヒートアップしてきたようだ。
「ゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロゼロ!!!」
「風邪風邪風邪風邪風邪風邪風邪風邪風邪風邪風邪風邪!!!」

いつまでも続くかのように思われたケンカだが、所詮 人生は有限である。
フーゴがルイズのマントを(力なく)引っ張って、椅子に座らせ
シュヴルーズがマルコルヌと一部の生徒に粘土を食べさせることで
子供じみた不毛な争いは終結した。
「どんな理由があろうとも、お友達の悪口をいってはなりません。
 それでは授業を始めます」


「──このように、『土』系統の魔法は皆さんの生活に密接に関係して───」
(コイツ随分元気になってるじゃない…)
床にいる自分の使い魔を横目で見て、ルイズは思った。
そう、フーゴはさっきの落ち込んだ様子から一変していた。
こう見えても彼の最終学歴は『中学中退』。
大体必要なことは独学で勉強したが、やはりまだまだ学びたい年頃である!
それが初めて聞く事柄なら尚更だ。
窮屈な空間ではあるが、聞いた授業の内容を手帳に書き記している。
最も、書いている文字(?)はルイズにはまったく読めないが…。
それよりも まず、彼に授業内容が理解できているのだろうか?
(ま、どうせメモを取ったところで無駄だけどね~)
そもそも、魔法が使えるのは貴族のみ。
『平民』であるコイツが勉強したところで できるわけ…

そう考えていたルイズの顔が曇り、
不意にトラウマが甦ってきた…
手が止まる。思考が止まる。時が止まる。
{{わたしは?わたしはどうなの?わたしは…}}
息が詰まる。胸が詰まる。言葉が詰まる。
{{わたしにそんなことを言える資格が…?}}

「どうかしたんですか?」
『使い魔』に声をかけられ、時が動き出した。

「大丈夫よ。なんでもないわ」
気丈に振る舞うルイズだったが、その顔色は冴えない。
「本当ですか?何処か悪いのなら…」

「そこ!授業中の私語は慎みなさい!」
中年女教師からの叱責が飛ぶ!
「「す、すみません!」」
見事にハモった。
「そうですね…それだけの余裕があるのでしたら
 貴女に この『石』を『錬金』してもらいましょう。ミス・ヴァリエール」

その瞬間!鼓膜が劈くようなブーイングの嵐が巻き起こった!
「先生!『ゼロのルイズ』にやらせるなんて危険です!」
「『ゼロのルイズ』にやらせたら『終わり』って恐怖だけがあるんだよーッ!」
「おまえならできるッ!やれーッ!やるんだーッ!ルイズゥ!」
青ざめた顔で応援するヤツもいるが口の中に何かが見えた。あれも使い魔か?

ハッキリ言って、フーゴには皆が何を恐れているのか解らなかった。
わかるのは彼女のあだ名が『ゼロのルイズ』だということぐらい…。
しかし、『危険』というのは一体?

ルイズは少しうつむいたが、立ち上がり叫んだ!

「やります!わたし やります!」
教室に響く リンとした声。そして 絶望と落胆の声…。
されど 彼女の決心は変わらず、緊張しながらも教室の前に進んでいった
フーゴの目にはその姿がとても凛々しく思えた。
そうだ。せっかく『主人』が魔法を使うのだからぼくも見て──


(何コレ…?)
立ち上がったフーゴとは対称的に生徒達は全員机の下に潜り込んでいた。
二重の意味で、授業を受ける姿勢ではない。異常である。

「そんなところで何してるんですか?」
とりあえず一番近くにいた生徒に聞いてみるが…
「いいからお前も伏せろ!危ないぞ!」
…『危ない』??
「えっ?それはどういう意…」
とりあえず言われたままに しゃがむと…!

ドッッグオオオォォォォォォンンンン

ギャグマンガでしか見たことがなかったような大爆発!
屈んでいたフーゴの頭を爆風がよぎった!
木片が飛び!窓ガラスが割れ!使い魔たちが暴れ出す!

「なっ!『石』が…いきなり爆発したぞ!?」
突然起きた出来事に対応し切れてないフーゴ。
まさか!?『ゼロのルイズ』というのは…!?
話していた生徒が忌々しげに口を開いた…。

「近づくなよ……『ゼロのルイズ』が『魔法』を使うとき
 何者も そばにいてはならない……」


立ちこめていた爆煙がはれ、中から煤だらけになったルイズが現れた。
服はビリビリ、机はボロボロ、教師はピクリとも動いていない…。
そんな悲惨な状況を見まわした彼女の一言。

「ちょっと失敗したみたいね」

コレだけの惨事を引き起こしておいてそれはないだろう…。
いつも魔法が失敗するから『ゼロのルイズ』。
フーゴは そのあだ名の意味をようやく理解した。
そして…朧気ではあるが、自分が彼女に『召喚』された理由も…。

周りのもの全てを巻き込み、破壊尽くしておきながら
自分自身『だけは』何事もなかったかのように君臨する。
その姿は…


───彼女の可愛らしさとは縁遠いはずなのだが───

忌まわしいほど醜い『アイツ』と重なって映った。


フーゴは痛み出した頭を押さえ、静かに呟いた…。

「…なんてこった……!」

To Be Continued…

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