ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

愚者(ゼロ)の使い魔-13

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浮遊大陸とでも言うのだろうか、それがアルビオンを最初に見たおれの感想だ。
空にが地面が浮かんでいるのだ。飛行船が必要なのも頷ける。
「アンリエッタからの手紙は城にあるんだ。悪いけどご足労願うよ」
そう言われてはこっちもそうするしかない。
ちなみにルイズの返答は「分かりました」だった。あの変な状態は終わったらしい。

城に着き手紙を返してもらうためにウェールズの部屋に行く。
その間にあった会話によるとウェールズはこの内乱で名誉のために負けるつもりらしい。
バッカじゃねえの?名誉なんか捨てて逃げればいいのに。

部屋の中はとても質素だった。
ウェールズは机の引き出しから小箱を取り出し、自分のネックレスについている鍵で箱を開けた。
中には手紙しかなかった。アレがアンリエッタからの手紙だろう。
さて、どうやってアレを奪い取ろうかな。

なるべく穏便に、かつバレないように済ませたい。
アレが何らかの手札となる力を持っていてもまだ戦力が足りない。
なので犯人として疑われるのはマズイのだ。
今はまだ力を蓄え、ある程度対抗できるようになってからあの手紙は意味を持つ。
そのためにも『いつの間にか無くなっていた、それも何処で無くしたか分からない』という状況が一番良い。

「殿下は姫様と恋仲であらせられたのですね?」
「昔の話だ」
「トリステインに亡命なされませ!」
「それはできない」
さっきからルイズとウェールズの話は堂々巡り、終わらせたのはノックの音だった。

「パーティーの準備が整いました」
パーティー?いいね、おれも参加しよう。

パーティーはかなり豪勢だった。
理由としては、
敵は明日の正午に攻撃を開始する。だがこちらには勝ち目が無い。
だから今日最後のパーティーを開くことにしたのだそうだ。
そして明日には死ぬのだから全部使っちゃおうという考えらしい。

実に良い。死ぬ気のないおれにとっては実に良い。

だがそう楽しんでもいられない。今がチャンスだからだ。
おれはパーティー会場を抜け出し、ルイズの部屋へ直行する。
そしてルイズの鞄から例の手紙を抜き出す。
持ちにくいだろうとの配慮でウェールズが封筒に入れてくれたのだが、これがおれにとってのチャンス。
目的の方を少し折り曲げてデルフの鞘の隙間に入れる。
この前気づいたのだが鞘にはそれくらいのスペースがあるのだ。
そしてちょろまかしてきた別の封筒をルイズの鞄に入れて、ミッションコンプリート。
さあパーティー会場に戻ろう。

ルイズの部屋を出てパーティー会場に意気揚々と戻る途中でウェールズに出会う。
「おや?君は、ヴァリエール嬢の使い魔の犬じゃないか。こんな所でどうしたんだい?」
ウェールズに会ったが大丈夫。普通に言い訳が出来る場所だ。
「えーと、ちょっと夜風に当たろうと思ったんだが道に迷っちゃって」
「ああ、そうなのかい?僕もそうしようと思ってたんだ。ついて来ると良い」
やぶへびだった。
まあいいや、なんとなく気になる事もあるし聞いてみよう。

ウェールズの案内でテラスに出る。
「ふー。やはりここは風が気持ち良いな、でもここの風を感じるのもこれが最後だと思うとちょっと感慨深いね」
「よく笑えるな」
会話を楽しむ気はないのでいきなり直球を投げる。
「え?」
「明日死ぬのによく笑えるなって言ったんだ。怖くないのか?」
これが聞きたい事。明日死ぬなんて事になったら普通ではいられないのにコイツは笑っている、それが分からない。
「そりゃ怖いよ。死ぬのが怖くないわけないだろう?」
「なら何故逃げない?」
「守るべきものがあるからさ」
「名誉とか誇りとかか?捨てちまえよそんなもん」
「そういう訳にはいかない。王族である以上これは義務なんだ。それにもう逃げる場所なんて無いしね」
コイツはさっきのルイズとの会話を忘れたらしい。
「トリステインがあるだろ」
「それをすると貴族派がトリステインに攻め込む理由を作ってしまうだろう?そんな事はしたくない」
その言葉でおれは何でコイツの何が気になったのかが分かった。

―――同じなんだ。

コイツとおれは同じ事をしている。正確にはおれの取った行動と同じ事をしようとしてる。
自分の大切な者のために自分の命を捨てる。おれは仲間でウェールズは恋人。
それをなんとなく感じたから話をしてみようと思ったんだ。きっかけは偶然だったけど。
そしてコイツの気持ちがおれには分かってしまう。
だからおれにはコイツを止められない。

「どうしたんだ?」
おれの感情の変化を感じたのかウェールズが心配そうに聞いてきた。
「いや、なんでもない……アンタの気持ちは分かった…存分に死んで来い」
これしか言えない。
だって無理矢理亡命させる事は、おれにとってあの時ポルナレフを見捨てる事に等しいからだ。
何もできない自分が情けない。
「…分かった。明日は存分に戦って死ぬ事としよう」
察してくれたようでおれには何も言ってこない。
その顔には誇りと覚悟と満足があった。
あの時の自分を見れたとしたらこんな顔なのだろうか。

そんな考えを打ち破る音がした。戦闘の音だ。
「この音は!?」
ウェールズも気づいたらしい。
「パーティー会場からだ!行くぞ!」
どうやら敵は明日の決戦予告なんて守る気は無かったらしい。
おれたちは会場に向かった。

会場では白い仮面をつけた男にルイズが捕まっていた。
「イギーか…」
倒れているギーシュが状況を説明してくれた。

パーティーを楽しんでいたら、いきなり仮面の男×4が窓を突き破って突入してきて城の人間を殺し、
今は他の三人はどこかに行き、残った一人がルイズに手紙の在り処を聞いている。
キュルケとタバサは外で一緒に攻め込んできた兵士の相手をしているらしい。

なるほど。つまりおれ達はアイツを倒して脱出しなくちゃいけないって事か。
おれはデルフリンガーを鞘から抜き、戦闘体制に入った。

To Be Continued…

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