ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

外伝2『風の吹くまま、気の向くまま』

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匿名ユーザー

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m9yvkps今日は『虚無の曜日』。いわゆる休日だ。
学院の生徒達も休みをエンジョイし、それはルイズも例外ではない、
はずだったが。
「出!て!けェ――――ッ!」
バタンッ!と乱暴にドアが閉められた。
ドアの前には廊下に閉め出された帽子がふわふわしていた。

『変な帽子みたいな使い魔』(今回出ずっぱり)

帽子が部屋から追い出されたのは、特に悪さをしたわけでもなく、
読書している横でふらふらしているとルイズの気が散るから。
つまりほとんど言いがかりであった。
しかし帽子は特に困ったふうもなく、風の吹くまま、気の向くまま、
ふわふわと廊下を漂っていった。

フワフワフワフワフワフワフワフワ(Now Transferring...)フワフワフワフワフワフワフワフワ

「わかりましたぞォォォォォォッ!」
帽子は今、猛ダッシュしているコルベールについていっていた。
というよりコルベールが走ることで起こる旋風に巻き込まれていた。
自分の大発見で興奮しているコルベールは、一緒に移動している帽子にも、
宝物庫をこじ開けようとしているミス・ロングビルにも気づかず、
学院長室へと駆け込んだ。もちろん帽子も一緒に。
「わかりましたよ!オールド・オスマン!」
「おや、ミスタ・コンスタンチンノープル、どうしたんじゃね?」
「コルベールだっつってんだろがァァァァァァァァァ!!」
飛び込んだ勢いそのままにコルベールはドロップキックを放った。
オスマンは紙一重でかわし、かわりに『遠見の鏡』が粉々になった。

「お前なにしてんのォォォ!?わしの薔薇色の覗きライフがァァァ!!」
「やっとわかったんですよ!あの帽子のルーンの正体が!」
オスマンの嘆きを華麗にスルーし、コルベールは言った。
「あのルーンは伝説の『ガンダールヴ』のものだったんだよ!」
「な、なんじゃって――――!!」
その発言には流石のオスマンも驚いた。
「それは本当か!?コンスタンチンノーブルくんッ!」
「さっきとほとんど同じじゃないですかッ!?コルベールですよッ!」
そう言いつつコルベールは古い本と一枚の帽子の絵を取り出した。
そこに描かれている二つのルーンは、確かに一致している。
「ふぅむ、確かに・・・ところでこの絵は君が描いたのかね?ものすごく上手いけれども」
「え?はあ、そ、そのとおりです」
嘘である。本当は食堂で拾ったのだ。
「しかしなぜ落ちこぼれのミス・ヴァリエールの使い魔に、『ガンダールヴ』のルーンが・・・」
「『ガンダールヴ』・・・あらゆる『武器』を使いこなし、
 呪文を唱える始祖ブリミルを守ったという伝説の使い魔・・・」
考え込んでいる二人の上で帽子が人知れずふわふわしている。
そして二人は、はたと気づいた。

「「あれ?帽子って武器使えなくね?」」

「駄目じゃん!全然駄目じゃん!『ガンダールヴ』なのに武器使えないって全然駄目じゃん!
 おぬし本当にちゃんと調べたのか!?その絵そこら辺で拾ったんじゃないのかね!?」
「ギク!」
「なんじゃ『ギク!』って!図星か!?このバカハゲ教師!
 頭皮だけじゃなく脳ミソまでツルツルになったか!
 そんな役に立たない脳ミソはくりぬいてかわりにゆで卵でもつめとけ!」
「言ったなエロジジイ!いつも名前を間違えやがって!!
 今日という今日は消し炭にしてくれる!『マジシャンズレッド』!!」
下で取っ組み合いの喧嘩を始めた二人を尻目に、帽子は窓から外に出て行った。


フワフワフワフワフワフワフワフワ(Now Transferring...)フワフワフワフワフワフワフワフワ

外に出た帽子は『ヴェストリの広場』へやってきた。
西側にあるこの広場は日当たりが良くないため、人もあまり来ない。
ギーシュ決闘イベント以外特になにもないところである。
しかしその日は珍しく、ベンチのところに二人の人物がいた。
その二人は、帽子がベンチに乗っかったのにも気づかずに話し合っていた。
「実はね、ちょっと悩みがあるんだよ・・・」
そう言ったのはルイズと同じクラスのマリコルヌだった。
その隣では、包帯グルグル巻きで車椅子に乗ったギーシュが話を黙って聞いている。
「ミス・シュヴルーズの最初の授業でさ、ぼくの顔に何か刺さったんだよ。
 しかもその後頭になにかがいっぱい当たったし。まあそれは関係ないけどさ。見てくれよ」
そういってマリコルヌはほっぺたに貼ってある大きな絆創膏をはがした。
「このとおり、傷穴がふさがらないんだ」
そう言ったマリコルヌの頬には大きな穴が開いていた。明らかに口の中まで貫通している。
それを見て、初めてギーシュが口を開いた。
「・・・モゴ」
しかし包帯が邪魔で喋れなかった。それでもマリコルヌは理解したらしい。
「治癒の秘薬かい?試してみたよ。他にも治療してくれたメイジが、
 いろいろやってくれたんだけど・・・駄目だったよ」
「・・・ムグ?」
「痛みは無いんだ、幸いにもね。でも食べ物や飲み物がこぼれるし、
 なにより気持ち悪いだろう?ギーシュ」
「・・・ムムグ」
「・・・ありがとう、ギーシュ・・・」
マリコルヌは少し涙ぐみながら、ギーシュに礼を言った。

「なんか打ち明けたら気が楽になったよ!」
マリコルヌはそう言うと背伸びをした。
「そうだギーシュ。『ジャンケン』しないか?
 なぜか近頃『ジャンケン』したくてたまらないんだ」
しかしギーシュはモグモグ言いながら首を横に振った。
「そうか・・・包帯が邪魔でできないよな。すまないギーシュ。
 それにしても『ジャンケン』したいなあ」
そう言ってマリコルヌは、悩みもなくなって久しぶりに心から笑った。

そのとき一陣の強風が吹き、ベンチの上の帽子を天高く舞い上げていった。
帽子の休日はまだつづく。


外伝2『風の吹くまま、気の向くまま』完ッ!

――次回、帽子の前に立ちはだかる巨大な青い影ッ!




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