ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔は刺激的-10

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匿名ユーザー

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 トリステイン魔法学院。その頂点に立つ老人、オールド・オスマンは地図を見ながら悩んでいた。
「ここが良いかの?それともここか?」
 何枚もの地図を机の上に広げ、オールド・オスマンは難しそうに頭を悩ましていた。 
 地図を見る表情は真剣そのもので、彼を知る者たちが見ればド肝を抜かすであろう光景である。
 オスマンが悩んでいると学院長室の扉がノックされた。
「誰かの?」
「私です。オールド・オスマン」
 扉の向こうから聞こえてくるのは、彼の秘書であるミス・ロングビルの声。
 オスマンは入室を促し、一礼してミス・ロングビルは学院長室に入るとオスマンの元へ歩み寄る。
「心は決まったかの?」
 オスマンが語りかけ、ミス・ロングビルは頬を朱に染め恥ずかしそうに頷く。
「大切に……して下さい」
「おお、おお、勿論じゃとも」
 オスマンはミス・ロングビルに近づきその身体を抱き寄せる。ミス・ロングビルはオスマンに任せるままに
 身体を預け、二人は愛しそうに抱き合う。
「おお、ミス・ロングビル。ハネムーンはどこがいいかの?」
 ミス・ロングビルは潤んだ瞳でオスマンを見つめる。
「あなたと一緒ならどこでも構いませんわ。」
 ミス・ロングビルはそう言って、オスマンの首に手を回し、顔を引き寄せる。
「それから……もう、ミス・ロングビルではありませんわ」
 二人の唇が触れ合い―――   


 オスマンは眼を覚ました。いつもと変わらぬ室内。使い魔のネズミと自分以外には誰も居ない。
「え~夢じゃった。正夢にならんかの~」
 オスマンは欠伸をして一人呟く。その時、学院長室の扉がノックされた。
「誰じゃ?」
「私です。オールド・オスマン」
 扉の向こうから聞こえてくるのは、彼の秘書であるミス・ロングビルの声。
 夢で見たものと同じことが起きてオスマンは心を振るわせた。
「失礼します」
 ミス・ロングビルが学院長室に入り会釈し、オスマンの元へ歩み寄る。
「とうとう結婚してくれる気になったか?!」
 オスマンが机から身を乗り出し、ミス・ロングビルに期待を込めて問いかける。
 ミス・ロングビルは太陽のように微笑み頷く。
「オールド・オスマン。寝言は寝てから言ってください。それともまだ寝てらっしゃるなら
 起こして差し上げましょうか?二度と眼が覚めないかも知れませんが」
 現実は非情だった。
「バッチリ目覚めておる!それでどうしたんじゃ?」
 ミス・ロングビルは頷くと、少し焦りながら報告を始めた。
「中庭で、昨日二年生が召喚したばかりの使い魔が暴走して学園に被害を与えています。
 現在、ミスタ・コルベール、ミスタ・ギトーにさっき戻ってきましたミセス・シュヴルーズが
 対処しておりますが戦況芳しくなく、他の教師たちが『眠りの鐘』の使用許可を求めています」
「アホか。たかが暴走した使い魔を止めるのに秘宝なんぞ使えるか。それに戦況とは大げさな……
 教師たちに自分たちで何とかするよう伝えなさい」
 オスマンがウンザリしたように答える。しかし、ミス・ロングビルは動かない。
「学院長。まず、ご自分の眼でご覧になって下さい」
 ミス・ロングビルは毒舌だが、学院長である自分の命には逆らわない。一部の例外を除いてだが。
 その彼女が真面目な顔で答えるのを見て、オスマンは杖を振るう。すると、学院長室の壁にかかった
 大きな鏡に事件が起こっている中庭が映し出された。

「コッチヲ見ロォ~!」   
 キャタピラを唸らせ突進してくる使い魔にコルベールは炎を浴びせかける。
 しかし使い魔が爆発し炎が吹き散らされ、その爆風でコルベールも吹き飛ばされた。
 無傷のまま、その使い魔は倒れたコルベールに向かって尚も突進する。
「フギャーッ!!」
 ミセス・シュヴルーズが作り出した赤土のゴーレムが、猫のような植物に近づく前に打ち砕かれ、
 なんとか近づいたゴーレムも猫のような植物に触れられずに砕け散っていく。
 そして、猫のような植物はミセス・シュヴルーズに狙いをつけた。
「おんぶして。ねっ!おんぶして」
 ギトーの背中に取り付いた使い魔が囁きかける。ギトーはなんとか引き剥がそうとするも
 無理に剥がそうとすると背中も剥がれた。使い魔は彼の耳元で囁きかける。
「人に『背中』見せれば……ねっ。ぼく離れてそっち行く!見せるだけ!」
「こりゃ凄いの」
 中庭で起きている惨劇にも動じずにオスマンはのん気に顎鬚を摩る。
「早く『眠りの鐘』の使用許可を!」
 ミス・ロングビルは苛立ち声を荒げる。しかし、オスマンは椅子に腰掛けミス・ロングビルに向き直り、
 のんびりとした口調で言い聞かせるように語りかけた。
「まあの、これ位なら何とかするじゃろ。彼らに任せときなさい」 
「……ですが!」
 尚も食い下がるミス・ロングビルに鷹のように鋭い視線を浴びせ、それだけで黙らせる。
 ミス・ロングビルは観念し、一礼して学院長室を後にした。 

 中庭で惨劇が繰り広げられる中、ルイズは自分の魔法を浴びて倒れたトリッシュを見下ろしていた。
 左足が爆発に巻き込まれ苦痛の表情を浮かべて蹲るトリッシュに近づき、楽しげな顔で見下ろしながら
 杖の先端をトリッシュに向けて突き出す。
「貴族が上で平民は下。これが正しいあり方なの」
 トリッシュはルイズの言葉に反応せずに蹲ったまま震えている。ルイズは蹲り震えるトリッシュの頭を
 足で踏む。勝ち誇った表情を隠そうともせず勝利者の愉悦に浸る。
「普通の決闘だと相手を殺さずに杖を折ったら勝ちなんだけど、アンタは平民だしね」
 震えてなにも答えないトリッシュを見て、怯えていると感じたルイズは更に調子に乗る。
「そうね。アンタが『お許し下さいルイズ様。二度と逆らうようなことは致しません。どうかご慈悲を』って
 言うなら命はとらないであげるわ。どう?私って優しいでしょ」
 しかし、トリッシュは尚も震えて動かない。ルイズが答えないトリッシュに苛立ち顔を覗き込もうとする。
「ちょっとルイズ!やり過ぎなんじゃない?その子平民なんでしょ」
 キュルケが見かねてルイズに声を掛けるが、ルイズはキュルケを睨む。邪魔するなと言うことだ。
 両手を挙げて恭順の意を示すキュルケ。呆れて物も言えないようだ。
「アンタ!なんとか言ったらどうなの!!」
 我慢できなくなったルイズが蹲るトリッシュの顔を見てやろうと、踏み付けていた足を上げる
 足が離れた瞬間、トリッシュは顔を上げる。怯えていると思っていたトリッシュの顔が笑っていた。 
「アンタなら絶対にやると思ったわ。近づく手間が省けたわね」
 ルイズが驚き呪文を唱え杖を振る。だが、それよりも早く―――
「スパイス・ガール!」
 杖を持つ手が弾かれ、その勢いでルイズは転倒する。怒りのままに杖を振ろうとして、弾かれた手に
 眼が留まった。白魚のような細い指が五本とも歪に曲がり皮膚を破って白いものが飛び出している。
「なに…これ……?」
 呆然とするルイズに脚を引きずりながら近づき、その顔にトリッシュは蹴りを叩き込む。
 仰向けになって倒れたルイズの胸に踵を打ち込み、地面に釘付けにする。
 まだ呆然としているルイズを見下ろすトリッシュ。一瞬にして立場が逆転していた。

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