ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

第三話 【”労働基準法違反疑惑”浮上】

最終更新:

familiar_spirit

- view
だれでも歓迎! 編集
わたしは 目測でも10メイルはある大きな扉の前にいた。
この扉の向こうに居るモノ…。わたしは其奴と戦う宿命にあるのだ!
決意を固め、その門に手をかけると 意外なほど簡単に開いた。
と同時に、むせかえる程の強烈な熱風が襲う!
目の前にいたのは、『炎髪灼眼』の女…。
と言っても、当然褐色肌のほうだが。
女が感極まった様子で喋り始めた…。
「やっときたわね。おめでとう
 このゲームをかちぬいたのは、あなたがはじめてよ…!」

そうね…これはゲーム。つまりこいつを倒してハッピーエンド!
よくも今まで むむむ、胸のこととかでバカにしてくれたわね!
今日こそ!このわたしの魔法でバラバラにして……

そう思った瞬間!突然背後から伸びた『チェック柄の腕』が
わたしのマントを引っ掴み、無造作に放り投げ─────

意識を取り戻したとき、目に映ったのは…


「おはようございます。『ご主人様』」
わたしの毛布を握っている露出狂の姿だった。


『紫霞の使い魔』

第三話 【”労働基準法違反疑惑”浮上】

「服ーッ」
「はい」
フーゴが椅子に掛かっていた制服をルイズに渡す。
その動作はキビキビとしており
彼の雰囲気と相まって、まるで秘書のようだ。
「下着ーッ…は、そのクローゼッ……」
「はい」
言い終わらないうちに下着を一番下の引き出しから取り出す。
ルイズは少し不思議そうな顔をして受け取った。

実は、こんな事もあろうかと昨日洗濯から戻った後、夜中の内に
部屋においてある物を把握しておこうと調べておいたのだ!
洗濯の時もそうだが、男が女の持ち物を漁るというのは
なんというか……その…フフ……
まぁそれは別として、昨日まで『ボスの娘』を護衛していたので
彼も女物の下着程度なら免疫がついていた。ここまでは予想通り!
あとは『今の主人』が着替え終わるまで後ろを向いているだけ…。
そう考え、背を向けていたフーゴに計算外の『指令』が飛ぶ!

「服、着せてーッ」
「………はい…?」

フーゴは一瞬 自分の耳が壊れたのかと思った…。
この間、ある女性に『服を脱げ』といわれたが それから三日もしないうちに
別の女性から『服を着せろ』と命令されるとはおもってもみなかった!
「じ、自分でやってください!」
恥ずかしさからか、声を荒げるフーゴ。
「貴族は下僕がいる時は自分で服なんて着ないのよ。
 別にわたしの体を見せたいってわけではないんだからね!
 早くしないと朝御飯ヌキにするわよ!」

着替え終わったルイズとまだ顔が赤いフーゴが部屋を出ると
壁に並んでいる 似たような三つのドアの一つから
ナイスバディのグラマーでセクシャルな女(死語)が現れた。
「おはよう。ルイズ」
「…おはよう。キュルケ」
ルイズがあからさまに嫌そうな顔をする。
「あなたの使い魔って、その平民?」
「そうよ…」
人の心の傷をえぐっておいて愉快そうな笑みを浮かべるキュルケ。
(やっぱりコイツ 夢の中だけでも『始末』するべきだったわ!
 いや…『現実』のヤツならば、まだ今からでもそう遅くは…)
物騒なことを考え始めたルイズだったが、
すでにキュルケの興味は『その平民』に移っていた

「あら…結構イイ男じゃない!『ゼロのルイズ』にはもったいないわねぇ」
「うるさいわね」
「でも、『恋人』としては悪くないけど『使い魔』としては失格ね…。
 どうせなら使い魔はこういうのじゃなくちゃね~。フレイムー!」

主に呼ばれて、ドアの影から赤い大トカゲが這い出てきた。
「なんですか、これ?恐竜か何かですか?」
見たこともない生き物に興味を示すフーゴ。
こういった『奇妙な存在』は見慣れているためか、動揺はしていない。
「これって、サラマンダー?」
憎々しげに尋ねるルイズ。
この女が立派な使い魔を召還したことが気に喰わなさそうだ。
「そう、火トカゲ。見て?この尻尾の炎。ここまでのはそうそういないわよー」
まるで 二人に見せつけるように自慢するキュルケ。
いや…『一人に』だろうか?
「そりゃよかったわね」
「素敵でしょ?あたしの───」
二人が会話している間、フーゴは『火トカゲ』フレイムをみて 物思いに耽っていた。
(これからの日々。こんなのと戦わなくちゃいけないときが来るのか?
 もしその時『自分の能力』はどこまで『使わずに』いられるのだろうか…
 できることならば、このままずっと………)

「ねぇ、あなたの名前は?」
いきなり声をかけられ、フーゴは自分の世界から引き戻される。
「あ…はい。パンナコッタ・フーゴです。フーゴと呼んでください」
「フーゴね?わかったわ。じゃあ、お先に失礼~」
そういうと『炎髪灼眼の女』は使い魔と共に、颯爽と去っていった…。

「むっかつくわーーー!!あの女!サラマンダー召還したからって!!
 何でわたしは『露出狂じみた平民』なのよ!!」
「露出狂じゃ ありません!ファッションです!」
ついに抗議したフーゴだったが、『どっちだって同じよ!』と一蹴されてしまった。

『アルヴィーズの食堂』に足を踏み入れた瞬間、フーゴは圧倒された!
豪華な飾り付け!豪華なテーブル!豪華な料理!
まさに中世貴族の絢爛たる世界だった!
「どう?ホントならあんたみたいな平民は一生入れないのよ!
 感謝してよね!」
と、ルイズがその小さな鼻をフフンと鳴らす。
「いやぁ…まったく、すごいですねぇ…」
と、フーゴが率直に感想を述べる。食卓の御馳走から目が離せない。
とりあえずルイズの為に椅子を引き、座らせると
自分も隣の席へ…

─── フーゴの動きが止まる ───

突然硬直した彼の視線を辿ってみると
床に皿が落ちて…いや、『置いて』あった。
皿の中には、肥料喰った方が栄養になるんじゃないか?というようなスープ…
その端には、スポンジの方が食べやすいんじゃないか?というようなパン……

─── そして時は動き出す ───

意識が地獄の底から戻って、彼自慢の頭脳が動きだした。

(まさか…ぼくの目に入っている『コレ』が
 これからぼくの口に入っていくんじゃあ…ないですよね?)

自分はなんて恐ろしいことを考えているんだ!?
こんなことがあるはずがない!これは『妄想』だ!
主人に『目の前の光景』を否定してもらおうと振り向いた!

すると ルイズもこちらに顔を向けて、彼の様子を眺めていた。
その瞬間!フーゴは絶望した!なぜなら!
彼女の顔には、初めて見る満面の笑みと
───微かな悪意が浮かんでいたのだ。


「「「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ。
  今朝もささやかな糧を我に与えたもうたことを感謝いたします」」」

食事前の祈りを捧げ…
ルイズや他の生徒が食事を始めたが、彼は微動だにしなかった。
『エサ』を前に、ただその場にじっと立ちつくしていた。


{{なぁ…どこまで耐えるつもりなんだ?パンナコッタ・フーゴよ…}}

自分の心の中に巣くう『赤』──殺意──がざわめく…

{{テメーは本当に良くやっているよ…それこそ『人が変わった』みてーにな…
  だが!あの小娘はなんだ!?そんなテメーをあざ笑っているじゃねーか!!
  尽くしても尽くしても…一切報われていない。いや、尽くす義理もねーだろうが!!
  無理矢理呼びだされて!コキ使われて!それでもバカにされ続けて!
  テメーは『自分』という物を無くしちまったのかよ!!
  あのデブのポルポが言っていたことを思い出せ…ヤツがお前に話したことを!}}

(ああ…しっかり覚えているよ……)

フーゴがゆっくりと屈み、皿を持った…。

{{この世で最も大切な事が『信頼』であるのなら…}}
( 最も忌むべき事は『侮辱』する事である…)

皿を手に持ったままルイズの元へいく…。
ルイズも他の生徒も誰も気付いてはいない…

{{『侮辱』するという行為に対しては!命を賭ける!!}}
( 殺人も!神は許してくれる!!)

背後に立っているというのに、この少女は気付くことなく食事を続けている…。
フーゴはだんだん『赤』と『自分』の境界が薄れていくの感じ始めた。
そして、その手にした皿を高々と持ち上げ…

( コイツは!オレを『侮辱』した!!)

その桃色の頭へ振り下ろ────

[[それでいいのかい?パンナコッタ・フーゴよ…]]

頭の中で『赤』ではない、もう一つの声…『青』が囁く。

[[『欠点を改める』といっておきながら……
  お前は自分で誓ったことも破るようなヤツだったのか?]]

深紅にまで染まった自分の心が冷めていき…

[[お前が人間扱いされてないだって?それはお前の思い上がりじゃないのか?
  逆に考えるんだ…『あのままだったら始末されていた』って考えるんだ…]]

(始…末……?)
フーゴの手がゆっくりと降りていく。

[[お前は自分を基準にして考えすぎなのだ!
  本来ならば死んでいたかもしれんというのに…。
  かつての仲間達はつらい思いをしているだろうに…。
  そして今!ろくに食事を摂ることだってできないだろう!
  彼らのことを考えれば、食事抜きにされても文句は言えんぞ!
  たった一日で何が分かり合える?恥を知れ!
  変われ!変わるんだ!パンナコッタ・フーゴ!!]]

心の中の紳士──理性──によって『怒り』は静まった…。

フーゴは再び皿を持ち上げると、スープを一気に喉の奥に流し込んだ。
己の鬱憤を飲み込むかのように…!
そして 飲み干した後 苦しげに肩で息を吐いた……。


「座って食べたらどうなの!?マナーも知らないのかしら!!」

いつの間にか食事を終えたルイズが目の前に立っていた。

「ほらぁ。授業が始まるわよ!来なさい!」

『主人』が食堂から足早に去っていく。
それを見て、フーゴもゆっくり歩き始めた…。

(変わるんだ…!今までの自分から!あの『凶暴な自分』から…
 そう誓ったからには貫き通すんだ!パンナコッタ・フーゴ!)

しかし、彼は まもなく身をもって知ることとなる。
人間は…生まれ持った『サガ』から、決して逃れられないということを…!

To Be Continued…

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー