ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔は刺激的-8

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匿名ユーザー

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 昼食が終わり、トリッシュは一人中庭で椅子に座り紅茶を啜っていた。マリコルヌは今はいない。
 モンモランシーと一緒に部屋に引き篭もるギーシュを呼びに行った為だ。
 昼からの授業はなく、呼び出されたばかりの使い魔たちと親睦を深める時間に当てられている。
 これもメイジとしての教育の一端なのだろう。
 周りを見ると、猫のような植物に何かで打ち抜かれる者、溶かされて消えていく主人を笑う人型の生物、
 ラジコン型の使い魔と追いかけっこをする者、背中を剥がされ死んでいく者など、午後の暖かな日差しが射す中庭で
 それぞれが使い魔たちと楽しそうに遊んでいる。
「トリッシュ、お待たせ」
「や、やあ。コンニチワ」
 マリコルヌとややぎこちないギーシュが手を振りながらトリッシュの座るテーブルへとやってきた。
 目の前に座ったギーシュの頬が真っ赤に腫れていることにトリッシュは気付きなんとなく聞いてみた。
「アンタ、なんで顔が腫れてんの?」
「ああ…これはだね……」
 ギーシュは言い辛そうに口をモゴモゴと動かす。実際に喋り辛そうだが理由は他にあるようだ。
 それに一緒に迎えに行ったはずのモンモランシーがいないことにトリッシュは気付いた。
「二股がバレたんでモンモランシーと、もう一人の子に殴られたんだよ」
「マ、マリコルヌ!アレは違うんだよ!そう!ケティが勝手に勘違いして……」
 マリコルヌが代わりに答え、ギーシュがしどろもどろに言い訳する。
「サイテー。人間のクズだわ」
 冷ややかな視線と共にトリッシュは冷たく言い放ち、それを聞いたギーシュは崩れるようにテーブルに突っ伏し、
 ブツブツと何かを囁く。良く見ると肩を震わせ泣いているようだ。
「僕の…見せ場が……フラグが…………うう…」
 トリッシュとマリコルヌは余りに哀れなその姿を見て、ギーシュをそっとしておいた。

「申し訳ございません!」
 少し離れた席で黒髪のメイドが桃髪の少女に謝っていた。
「またあの桃髪か…怒られてるメイドってシェスタ?って人じゃないの?」
「シエスタだよ。いい加減に人の名前覚えようよ。ちなみに怒ってるほうがルイズね」
 マリコルヌのツッコミを無視して、トリッシュは怒鳴り散らすルイズと謝り続けるシエスタを見る。
 シエスタがなにをしたかは知らないが、ルイズの叱責は段々とエスカレートしていった。
 それを見かねたルイズの使い魔(名前はマリコルヌも知らない)が二人の間に入って止めようとするも
 股間を蹴られて撃沈する。
「あの使い魔もアンタも!貴族に対する礼儀ってものを知らないようね!!」
「申し訳ございません!何卒お許しを!」
 ルイズは“生意気にも貴族と同じ席についてた!”や“私を無視した!”など、叱責の殆どがシエスタではなく
 誰かの使い魔に対するものだった。要するに八つ当たりでシエスタがイジメられているのだと、トリッシュは理解した。
「アンタ、風邪っぴきと親しいみたいだけど色目でも使ったの?」
「そのようなことは……ございません」
「本当に~?そうねアンタの髪ってカラスみたいな汚らしい色してるもの。出来る訳ないわよね」
 ルイズが言った言葉に、頭を下げて怯えていたシエスタの顔に怒りとも悔しさともとれる表情が現れた。
 漸く怒りが収まったのかルイズはシエスタの表情に気付かずに、自慢とする桃色がかかった金髪を掻き揚げて
 跪いたシエスタを見下ろし立ち去ろうとする。
 しかし、ルイズの行く手に一人のメイドが立ち塞がった。
「アンタ、ちょっと待ちなさいよ」
 今まで様子を見ていたトリッシュだった。

 目の前に立ち塞がったトリッシュを見るもそれを無視してルイズは、股間を押さえ悶絶している使い魔を
 蹴飛ばして起こすと今度その使い魔を罵倒し始めた。
「アンタ聞いてんの?」
 トリッシュが問いかけるが、ルイズは無視して言い訳する使い魔の股間に蹴りを入れ、またも悶絶させる。
 ルイズの肩を掴んで振り向かせよう手を伸ばすと、シエスタがトリッシュの手にしがみつき、
 懇願する眼でトリッシュを抑える。
「シエスタ。アンタあの女になにやったの?」
「え…?、その、紅茶を……」
 トリッシュがテーブルを見る。テーブルにはケーキとティーカップが置かれ、ティーカップから僅かだが
 紅茶が零れていた。これをルイズは怒ったのだろう。
「判ったわ。アンタは離れてて」
 困惑するシエスタを引き離しトリッシュはティーカップを手に取ると、使い魔を罵倒するルイズの頭に向けて、
 その中身をブチ撒けた。
「うきゃ!あちちちち!!ちょっといきなりなにするのよ!!ヤケドしたら如何するつもり!!!」
「ワザとやったんじゃね~わ。寛大なお貴族様なら許してくれるでしょ?」
 いきなり紅茶をかけられたルイズは当然のように怒るが、トリッシュは悪気がなさそうな顔で言い訳をする。
 その顔を見て更にルイズは怒り出した。
「アアア、アンタ、貴族に対する、れれ、礼儀ってモノを、しし知らないようね」
「知ったことじゃね~わよ。なんで私がアンタに『敬意』を払わなきゃいけね~わけ?」
 沸騰したヤカンのように顔を真っ赤にしたルイズがトリッシュを睨む。トリッシュもその視線を真っ向から受け止める。
「れれ礼儀を知らないって言うなら、わわ私が教えてあげるわ!けけけ決闘よ!!」
「ちょ!ちょっと待ってくれ!」
 今まで傍観していたマリコルヌがルイズを止めるが、時、既に遅くルイズは『ヴェストリの広場』で待つと
 言い残し足早に立ち去り、その後を回復した使い魔が追いかけていった。

「マズイよトリッシュ!いくらルイズが『ゼロ』って言ってもメイジなんだ!僕も一緒に謝るから許してもらおうよ!」
 必死に説得するマリコルヌを見てトリッシュは首を振る。
「だったら、僕が決闘するよ!使い魔の不始末は主人の不始末でもあるんだ!」
 今度は自分が戦うと言い出したマリコルヌの肩に手を置いて、トリッシュは澄んだ瞳で見つめる。
「それはできないわ。私が売ったケンカなんだから」
 尚も食い下がるマリコルヌを放って、トリッシュはシエスタに向き直る。シエスタは怯えた表情を見せ、
 マリコルヌと同じくトリッシュを止めようと口を開きかけるが、トリッシュはそんなシエスタに微笑みかけ、
 それを見たシエスタは思わず口を閉ざしてしまった。
「シエスタ。お願いがあるんだけど」
「は、はひ?あ…なんでしょうか?!」
「着替えとお風呂を用意しておいて」
 そう言って困惑するシエスタとマリコルヌを残して、トリッシュはルイズの待つ『ヴェストリの広場』に向かった。
「どうしよどうしよ……ギーシュ!君も止めてよ!!」
 未だにテーブルに突っ伏したギーシュに頼むも、心ここに在らずと言った感じで何かを囁いていた。
「ふふふ…香水の壜さ…これを拾えば……フラグが……うう…」
 妄想に耽るギーシュをそっとしておいて、マリコルヌはトリッシュの後を追いかけていった。


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