ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの予報図-3

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「で…だけど、本当にアンタ、何も思い出せないわけ?」
「ああ、本当だ」

ここは、ルイズの部屋だ。ここが『トリステイン』の『魔法学院』ということは教えてもらった。
さっぱり意味がわからん。ルイズの話のことじゃない。
俺はどこにいて、何をしていて、なぜここに来たのか?
ルイズの話では、『召喚』というのはこの世界のどこかから『使い魔』というのを連れてくるらしい。
困った事に、オレの故郷はさっぱり思い出せない。
故郷なら知り合いもいるだろう。そうすればきっと名前だってわかるのに……。
そこで、先ほどのルイズの質問と相成ったわけだ。


「でも困ったわね…アンタを『使い魔』とするのに『下僕』とか『犬』じゃあ呼びにくいし…
 人前ではカッコがつかないわ……」
「じゃあ…そうね、喜びなさい!
 このルイズ・ド・ラ・ヴァリエール様が名付け親になってあげるわ!」
「名付け親?」
「そうよ! フフン! わたしのネーミングセンスの見せ所ってワケね!」
ルイズはそう言ってちょっとの間考え込んだ。
「そうね…『トリステインに吹く熱風』と言う意味の! …う~ん、イマイチ、今の忘れて」
ルイズはベッドから立ち上がって窓の側に行く。空は底抜けの碧さだった。
「いい天気ね……」
「ああ…」
「よし、決めた、決めたわ。アンタの名前は『ウェザー』…ウェザーよ」
ウェザー……『天気』か…。


「けど貴族の使い魔になるんだから苗字も必要ね……。ヴァリエールの名はあげられないけど…」
そう言って窓の外を見つめるルイズ。空の蒼と薄桃の髪が対照的だ。
「ウェザー…ウェザー・ブルースカイ……」
今度はこっちを見てきた。けどまた窓のほうに顔を向ける。
「いえ、違うわ……そう、これよ、『ブルーマリン』……アンタの名前よ」
「ウェザー……ブルーマリン?」

「そうよ、ウェザー…『ウェザー・ブルーマリン』、わたしの使い魔」
ウェザー…ウェザーか……いい名前だ。
「ありがとうルイズ。いい名前だ。気に入った」
俺は心から礼を言った。嘘偽りは無い。が、ルイズにはそれが気に入らなかったみたいだ。
「ちょっと! 平民の、それも使い魔の分際で! 貴族を呼び捨てにするとは何事よ!」
どうやら自分の名前を呼ばれたのが気に食わなかったみたいだ。
「いいこと!? わたしを呼ぶ時は『御主人様』というのよ! わかった!?」

「アンタは名前の無い俺に素敵な名前を付けてくれた。この名前はオレの宝物だ。
 だからオレのほうもアンタの事を名前で呼びたい。……ダメか?」

「なな…何よ、宝物なんて言っちゃって……当然でしょ! 貴族が名付け親なのよ!
 け、けど、そそ、そこまで言うなら、な、名前で呼んだって構わないわよ? ありがたく思いなさい!」
「ああ、ありがとう。ルイズ」

「陽が暮れてきたな……」
夕焼けが部屋を赤く染める。
窓の側に立っていたルイズの顔は、夕日よりいっそう赤く見えた。


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