ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

第六話 『低気圧のち信頼』

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第六話 『低気圧のち信頼』

ルイズの教室爆破という『罪』に対する『罰』は魔法を使わずに教室の清掃することだった。と言っても・・・
「魔法・・・使えなかったんだな」
「うるさいわねッ!早く片付けなさいよ!」
比較的無事だった机に座り込んで怒鳴るルイズ。
「なぜ俺がやらなけりゃあならないんだ。これはお前への罰だぞ」
「主の不始末は使い魔の不始末でもあるのよッ!」
「ずいぶんと横暴なんだな・・・メイジってのは」
するとルイズの頬がひきつった。
「何よ?嫌みのつもり?」
・・・そんなつもりはなかったがどうやらルイズの機嫌をそこねたらしい。
「なぜそうなる」
「だってそうじゃない!私が魔法成功率ゼロのルイズだってわかっててメイジだなんて言うんでしょ?ハンッ、そりゃお笑いよね。魔法が使えもしないメイジだなんてね!」
「・・・そんなつもりはなかった」
「嘘よ!わかってるんだから!アンタもわたしを見下してるって!ゼロのルイズなんかの使い魔なんて御免よね?」
大分ナーバスになっているな・・・まともに話しも出来そうにない。が、このまま放っておくこともできない。
「落ち着けよ。お前だって努力してるんだろう?大器晩成なのかも知れない・・・」
「晩成っていつよ!五十年先?百年先?そりゃあ努力したわよ!教科書は暗唱できるくらい繰り返し読んだし、魔法だってそれくらい唱えてきたわ!でもできないのよ!わかる?良家に生まれながら魔法一つ使えない、周りの期待だけが重くのし掛かるの。
でもいつしかそれすらなくなるわ・・・私は生まれてからずっと『ゼロ』のルイズなのよ!いいえ、わからないでしょうね。平民のくせに『魔法』が使えるアナタなんかには!」
一気に心の中を全部吐き出して疲れたのか肩で息をしている。
・・・そういうことか。ルイズは俺とギーシュの決闘で見た『ウェザー・リポート』の能力を魔法と勘違いしているらしい。魔法の使えぬ自分が呼び出したのが魔法を使える者だった・・・ジレンマだな。

ウェザーは壁から背を離すとルイズに歩み寄る。近づいて気付いたが、ルイズの目が赤い。
「・・・何よ」
目をこすりながらふて腐れている。
「お前が俺に『コントラクト・サーヴァント』をした時、お前の眼には『決意』が溢れていたな・・・あの時お前は絶対に成功させようとする自分を信じていたはずだ。だが今のお前にはそれがない・・・お前は自分が信じれなくなっているんだ」
「無理よ・・・もう無理なんだわ・・・何度やったって失敗、爆発、失敗、爆発の繰り返し。わたし自身でさえ信じられないのに、誰がわたしを信じるのよ」
「なら俺が信じよう」
ルイズは思わず呆けた顔でウェザーを見上げてしまった。
「お前が自分を信じられないのなら、俺がお前を信じるさ。ルイズ、お前は魔法を使えるようになる・・・必ずだ」
そんなことを真顔で言うウェザーに、ルイズは思わず恥ずかしくなり、顔を背けた。
「・・・だったら証拠を見せなさいよ。私を信じるって言う証拠を」
「わかった」
あっさり引き受けたウェザーは教室の真ん中を指差した。ルイズがそこを見ていると、後ろから一陣の風が吹きゴミをそこへ運んだのだ。
「今の・・・アンタがやったの?」
「そうだ。だが魔法ではない。これは『スタンド』と言って生命エネルギーが生み出すパワーある像だ。・・・もっとも、スタンドはスタンド使いにしか見えないんだがな」
ルイズはよくわからない顔をしている。当然だろう。実物を見てもらえれば早いんだがそうもいかない。
だからウェザーはさらに踏み込んで話すことにした。

「『スタンド』はスタンド使いごとに全く違うものになるし能力も様々だ・・・俺のスタンド『ウェザー・リポート』、能力は『天候操作』だ。今は訳あって力の一部が失われているがな」
「じゃあ今の風も・・・?」
無言を肯定と受け取ったルイズが考え込む。しばらくして、顔をあげた。
「それが証拠?」
「自分の手の内を明かすのが何を意味するかは、メイジもスタンド使いも変わらないだろう?」
ルイズを見つめたまま両手を広げて見せる。
「俺はお前を信じる」
そう言うとルイズは机から飛び降りて背を向ける。耳が赤い気がするが気のせいだろうか。
「あ、アンタなんかに言われなくたってわたしは絶対魔法を使えるようになるんだから!わかったら掃除するわよ!このままじゃお昼ご飯抜きになるわよ!」
「掃除はお前の罰だろ」
「っ・・・二人の方が早いからよ!わたしは教室のゴミを集めるからウェザーは窓ガラス持ってきなさい!」
「・・・わかった」
ルイズを残して廊下に出た。
ウェザーは廊下を歩きながら考える。
自分はなぜほとんど見ず知らずのルイズに「信じる」などと言ったのだろうか?哀れみ?気まぐれ?どちらも違う気がした。しかし何かはわからない。
ウェザーがこの理由に気付くのはもう少し先のことである。
「そう言えばアイツ・・・俺のことを『ウェザー』と呼んだか?」
考えても思い出せないので考えるのをやめた。

やまないと思っていた雨はすっかりやんで、昼時の陽光が水溜まりに反射して宝石のように輝いていた。

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