ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

「The Story of the "Clash and Zero"」 第1章 オレは使い魔 前編

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第1章 前編

「あんた誰?」

値踏みするように、自分を覗き込む少女が問いかける。

…君こそ誰だ? ここはどこだ?
体を起こし、質問に質問で返そうとしたが……身体が応答しない。
目を開き、首を少し動かして、視野を確保するのが精一杯であった。
(身体が…重い…… 今敵に襲われたら… 楽に…逝けるな……)
何よりも男落胆させたのは、大切な相棒…”友”が自分の隣にいないことであった。


何の返答も無い。
(もしかして私… ”死体”を召喚しちゃった!? …でも、目は開いてるし…首もすこし動いてる? …ケガでもしてるのかしら?…)
少女は自分が召喚した生き物の安否を確かめるため、”それ”のそばに近寄り、まじまじと観察してみた。

どうやら初見通り、人間の男性らしい。
「黒地に、細い白い縞模様(ピンストライプ)」の変な服を着ている。肩には、鎧の肩当ようなモノを着けている。
(傭兵か兵士? まぁ、貴族ではなさそうね…)
呼吸に合わせ、身体が上下している。
(良かった… 生きてる… …ケガらしいケガも見当たらない…)
(”死体”なんか召喚した日には、「”使い魔のライフポイントがゼロ”のルイズ」って呼ばれかねないもんね…)

自嘲気味に、安堵の気持ちを心の中で呟いた後、今度は首から上を改めて見てみる。

髪をいくつかに束ねて、植物の房のような髪型。額には、黒いバンダナを巻いている。顔立ちはなかなかの男前…だと思う。
男は一生懸命、目をぐるぐると動かしている。意識はあるようだ。
(…平民が使い魔だなんて気に入らないけど… 出てきたものはしょうがないわ・・・)
少女は人生で(まだ十数年ではあるが、それでも)トップ3に入るほどの譲歩と妥協をしてのけた。
(…やっぱり何事も最初が肝心よね? 御主人様としての威厳を見せ付けないと…!!)


(ここはどこだ?)
自由の利く目を最大限使い、少しではあるが首も動かし、辺りを確認してみる。
…どうやらヴェネツィアの広場ではないらしい。なにやら少女以外にも、沢山の人の気配がする。
(…確かにオレは…・・・ヴェネツィアで死んだはず……だよな)
何故ティッツァが隣にいないのか。何故生きているのか。何故ヴェネツィアから移動しているのか。何故…。
疑問はたくさん有るが、それよりも、今現在何をするべきかを考えなくては……。

先ほど自分に声をかけてきた少女が、近くに寄ってきていた。
……オレを観察してるらしい。
(まさか、コイツが”新手のスタンド使い”ってことは……)

最初に目に飛び込んできたのは、桃色がかったブロンドの、綺麗な長い髪である。
大地に仰向け状態のまま、動けぬ自分から見上げると、背景の青空のせいで、より桃色が映えて見えた。
顔だって整っている。美人というか、美少女というか。とりあえず、十分”有り”である。……色気は感じられないが。
(あと何年かすりゃもっと”化ける”な……って、そんな場合じゃねーな)
微妙に緊張感が無くなっている。いや、集中力と思考力が下がってきている。
(このまま目をつむったら楽になりそうだ……)
緩やかに、穏やかに”生”を終えるときは、こんなカンジなのだろうか……。

男の顔前に可愛い小さな顔が移動してきた。
「…もう一度聞くわ。 あなた誰? 名前は?」
落ちついた調子で、問いかける。
(…多分……スタンド使いとは違うな……答えても問題なさそうだ・・・)
少女の考えた”余裕のある威厳”を感じたからか、男が沈黙を破った。
「………スクアーロ…」

消え入りそうな声。スクアーロの全身全霊を込めた主張であった。
「そう、”すくあーろ”ね? どこの平m「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民呼び出してどうするの?」
誰かが、少女の威厳ある対応を横から完全にぶったぎる。それを受け、少女以外の人間が笑う。

「ちょ、ちょっと間違えただけよ!」
少女は怒鳴るが、周りの人間は気にしていない。それどころが、さらに追い討ちをかける。
「間違いって、ルイズはいっつもそうじゃん」
「ルイズの失敗率は世界一ィィィッ!!」
「さすがはゼロのルイズだ!」
誰かがそう言うと、人垣がどっと爆笑した。

少女の名前はルイズというらしい。
(やっぱり平民の使い魔なんて嫌!)
…ルイズは先ほどの譲歩と妥協をあっさり撤回した。
「ミスタ・コルベール!」
ルイズはスクアーロに背を向け、怒鳴った。
すると、中年の男が前にでてきた。……生え際は完全に後ろへ下がっていた。むしろ無い?

ルイズはミスタ・コルベールに怒鳴りながら、コルベールはミス・ヴァリエールを諭しながら、会話をしている。

「もう一度……!!」
「それは……」
…なにやら、召喚だの儀式だの、果ては使い魔なんて単語が出てきた。
「でも平民を使い魔にするなんて聞いたことがありません!」
ルイズがそう言うと、再び周りがどっと笑う。ルイズは人垣を睨みつけるが、笑いは収まらない。
「…たとえ彼が平民でも、君の使い魔になってもらわなくてはな」
「そんな……」
ルイズはがっくりと肩を落とした。
「さあ、儀式の続きを…」
「えー、彼と?」
ルイズとコルベールは、まだ話し合っていたが、ルイズの勢いは完全になくなっていた。

(……平民てオレのことか? …使い魔になる?オレが?)
聞こえてくる会話と自分の状況を何とかすり合わせ、導き出した答えは納得できないものであった。
というか、理解できない代物であった。
(そもそも使い魔ってなんだ? 契約?書類でも書くのか?)

スクアーロが、脳内で謎と疑問軍団と戦っていたとき、ルイズがスクアーロの方に向き直った。
「ねえ… あんた…聞こえてる?」
「……何とかな」
そう。と一言いうと、ルイズはスクアーロの左手真横に、立て膝の状態で構える。
「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」
貴族?またとんでもない単語が出てきたな…。
ルイズは諦めたように目をつむる。
手に持った、小さな杖をスクアーロの目の前で振った。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
朗々と、呪文らしき言葉を唱え始めた。
すっと、杖をスクアーロの額に置いた。
そして、横たわったままのスクアーロの唇を奪う。
ズキュウーーーz___ン
それはまるで、王子様が眠れるお姫様へのキスするかのように。…配役は逆だが…。

「終わりました」
スクアーロから唇を離し、ミスタ・コルベールに告げる。
ルイズは顔を真っ赤にしている。どうやら照れているらしい。
…まさか初めてのキスじゃねぇよな?
スクアーロの予想は的中していたが、それを確認するほど野暮ではなかったし……。
「誰にでも、初めてはある」ということだ。

「『サモン・サーヴァント』は何回も失敗したが、『コントラクト・サーヴァント』はきちんとできたね」
コルベールが嬉しそうに言った。
「相手がただの平民だから、『契約』できたんだよ」
「そいつが高位の幻獣だったら、『契約』なんかできないって」
すかさず野次が飛び、ルイズがそれに噛み付くように反撃してゆく。
…よくやる……。
ルイズと巻き毛の子をコルベールが宥めていた。そのとき、スクアーロの体が妙に熱くなった。
「うぐァァ! ぐうううう!」
仰向けの体勢から、体を丸め、何とかこらえようとする。だが……。
熱い!これはまるでッ!……そうッ!あの時のッ!ナランチャにッ!エアロスミスで撃ち込まれた時と同じッ!全身に機銃をブチ込まれた感覚と同じだッ!!

スクアーロが何かをこらえている様子を見て、語りかける。
「すぐ終わるわよ。『使い魔のルーン』が刻まれているだけよ」
余りにも事も無げに告げるルイズを睨みつける。
「あのね」
「なんだッ!」
「さっきからあんた……。平民が貴族にそんな口利いていいと思ってんの?」
うるせぇ!と怒鳴りつけてやろうとした瞬間、熱さが消え、体は平静を取り戻した。
「ふぅ……。」
熱さが引くと、今まで言うことを聴かなかった身体が素直になった。むしろ絶好調といっても良い。
最高に「ハイ!」ってやつかアアアア?

コルベールが近寄り、スクアーロの左手を確かめる。
「珍しいルーンだな。…なかなか興味深い」
そんなに興味深いなら、テメーのその光るデコに、オレがじっくり刻んでやろうか!?
さっきまでの諦観的・悲観的な気持ちから一転、強気なセリフを思いつくほど”息を吹き返した”。

「…それでは皆、教室に戻りましょう」
少しだけ名残惜しそうにしながら、スクアーロの左手から視線を外し、二・三歩歩くと宙に浮いた。

飛んだ…のか……?  …ッ! スタンドかッ!
さっと身構える。しかし……。
(水がッ…!? 水がねぇッ!)
慌てて周りを見渡すが、水溜りすらない。さらに他の生徒と思わしき連中も一斉に宙に浮く。
(全員スタンド使いかッ!? いや、いくら何でもそれはありえねぇッ!?)

「ルイズ、お前は歩いてこいよ!」
「あいつ『フライ』どころか『レビテーション』さえもともにできないんだぜ」
「その平民、あんたの使い魔にお似合いよ!」
口々にそう言って笑いながら飛び去っていく。
自分への攻撃でなく、純粋に移動手段であることに安心するとともに、思いもしない光景にかなりの衝撃を受けた。
警戒を解き、飛んでゆく人間?を見送ることしかできなかった

二人きりになって、ルイズは大きなため息をつきながら、大声で怒鳴った。
「あんた、何なのよ!」
それからはただただ一方的にルイズがまくし立てた。

なんで、私の使い魔が平民なの?グリフォンとかドラゴンがよかったのに!どっからきたの?何その格好?その変な髪型は意味有るの?

…質問というか、今までの鬱憤を晴らすかのごとく、身振り手振りで「疑問と要望」をぶつけてくる。
そんなルイズに何の反応もしないスクアーロ。何か考え事でもしているようだ。
返答しない使い魔のそっけない態度に、さらに燃えつきるほどヒート!!…アップしようとするルイズ。

そんな御主人様を、使い魔はいきなり抱きしめた。

「ちょ、ちょっと1? な、なにするd 「色々言いたいことはあると思うが、オレたちが最初にすべき事は…」
「互いの理解を深めること。 それには”コレ”が一番早い……」
スクアーロは目を閉じ、ルイズにキスをしようとしたが……。
次の瞬間、スクアーロの大事な部分は無言で蹴り上げられた。
薄れ行く意識の中で、スクアーロは友に「反省と考察?」を述べた。

…やっぱり慣れないことはするもんじゃないな……。
ティッツァーノ… ここがどこだかわからねぇが……。
かなりヤバイところってことと……。 
ここの女の子は可愛いが…気が強くて…攻撃的ってことは確実だぜ……!

うずくまり、微笑を浮かべながら気を失う使い魔と、赤面しつつ、怒りに体を震わせながら使い魔を見下ろす御主人様。
…なんとも空の『青』に『赤い顔と桃色の髪』が映え、大地の『緑』に『黒い服』が良く馴染んでいた……・

第1章 オレは使い魔 前編終了

To Be Continued......

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