ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

白銀と亀の使い魔-12

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「明日は虚無の曜日とか言って休みだってな。」
あれから数日がたったある日、ポルナレフが唐突に切り出した。
「そうね…て、なんであんた知ってんの?」
「ギーシュが言っていた。明日の虚無の曜日にモンモランシーとか言う小娘と街に行くとかな。」
(あれ?あいつ昨日ケティと仲良さ気に喋ってなかったっけ?
さてはまた…)
ルイズは昨日目撃したことを思いだし、ギーシュにまたあの不幸が起きないよう心の中で祈った。
「で、お前明日用事あるか?」
ルイズは少し考えて
「特に無かったと思うけど…」
と答えた。
「ちょうどいい。なら、明日その街に案内してくれ。」
「ハァ!?」
ルイズは素っ頓狂な声を上げた。
「何であんたの為にせっかくの休日を潰さなくちゃならないのよ!ギーシュ達に案内してもらいなさいよ!」
「男女の恋路を邪魔するのは無粋だ。」
ポルナレフが意外と真面目な事を言う。
「じゃあ今まで決闘してきた相手は?一人一人当たっていけば…」
「ギーシュ以外、誰も目を合わせようとすらせん。」
今度はちょっと淋しそうに言った。変に寂しがり屋らしい。

「…」
「だからお前しかいないんだ。頼む。」
ポルナレフが手を合わせて懇願した。
「…分かったわよ。しょうがないわね。」
ルイズがやれやれといった感じで言った。
「で、何しに行くの?買い物?」
「そうだ。」
ポルナレフが首を縦に振る。
「お金は?」
「ある。世話にはならん。」
「ふーん…」
何も知らないルイズは、どうせ厨房の手伝いかなんかで貰ったんだろうと思った。


その次の日の朝、学院から二人は馬に乗って出発した。
ポルナレフは馬に乗ったことは無いが、ラクダには乗ったことがある。
ラクダの方がよっぽどよく揺れる(らしい)のでポルナレフは馬に乗ってもさしたる苦痛は無かった。
「街まで馬で片道3時間だったか?」
ポルナレフはルイズの方を向いて尋ねた。
「ええそうよ。…てあんた何で知ってるの?」
「メイドのシエスタという娘に聞いた。まったく、シエスタはいい娘だ。
こんな俺にも何かと親切にしてくれる…まさに女性の鏡だな。きっと将来、良妻賢母になるだろう。夫になる奴はかなりの幸せ者だ。」
ルイズは、(ふーん…そんなメイドがいるのねぇ)と感心した。
「そうそう、平民同士だからかもしれんが、厨房の奴らは気のいい奴らばかりでな…」
ポルナレフはルイズに厨房の人々の事を話した。
平民とあまり交わったことの無いルイズにとってそれは新鮮な話だったが、あまり興味は無く、たまに相槌を打つだけで殆ど聞き流していた。
やがて二人は城下町に着いた

「…狭いな。本当にこれで大通りなのか?」
ポルナレフがトリステイン城下町きっての大通り、ブルドンネ街の人込みを歩きながらぼやいた。
「狭いかしら?人込みは否定出来ないけど、大通りってこれぐらいじゃない?
それより、どこに行くのかいい加減教えなさいよ。」
ルイズが先を歩くポルナレフを追いかけながら言った。
「武器屋にな…」
「武器屋?」
「ああ。いつも決闘の時ナイフ使ってるだろ?あれは少し訳があって本来使ってはいけないものなんだ。
金が出来たからその代わりとなるような剣を買おうと思ってな。」
ポルナレフはルイズにそう言ったが、この時、半分しか理由を話してなかった。
本当の理由はチャリオッツを使うときにナイフより剣の方がリーチが長く連係が効く、と考えたからだ。
「それで場所は分かるの?」
「確かピエモンの秘薬屋とか言う店の近くにあるとかマルトーが言っていた。地図も有るんだが、まだ地理が分からなくてな…
すまないがちょっと見てくれないか?」
ポルナレフはルイズにマルトーの描いた地図を渡して、先を歩くよう促した。
ルイズは異世界から来たとか言うポルナレフが一週間と少しで常識的な知識や金を手に入れていたのには
舌を巻いたが、まだ地理が分からないと聞いて少し優越感に浸った。

やがて店は見つかり、二人は羽扉を開けて中に入った。そしてポルナレフは店の奥から出て来た店主に話しかけた。
「レイピアを探しに来た。出来れば丈夫な物を頼む。」
ポルナレフはそう言うと袋を取り出した。先日オスマン達から巻き上げた金である。
「へぇ、分かりやした。で、あのお嬢さんは…」
店主が店内を見て回っているルイズをちらりとみる。マントの留め具に描かれている五芒星に気付いたらしい。
「私の主人だ。ただ連れ添いに来てもらっただけだ。」
そうポルナレフが言った
「そうでっか。そういえば最近下僕に剣を持たせる貴族が増えてやすね。自分から求めてくるのは珍しいけど。」
「ほう…そうなのか?」
「えぇ。何でも最近は貴族の宝物を狙ったメイジの盗賊が出るらしくて…」
「『土くれのフーケ』とやらか?」
「よくご存知で。その土くれに備えるためとかなんとか。おっと失礼。少しばかし見てきまさあ。」
しばらく待つと店主がやけに装飾が施されたレイピアを持って来た。
「しかし旦那、今時レイピアなんて使う人なんかいませんぜ。せいぜい貴族様の装飾品でさあ。」
「…」
成る程、確かに店内にレイピアは中々見当たらない。あってもどれもが華美な代物だらけだった。
実戦で使えるかどうか非常に怪しい物ばかりである。
「ちなみにそれは幾らだ?」
「へぇ2000エキューで。」
ポルナレフの所持金は500エキューしかない。明らかに足らなかったし、法外な値段だということも気付いた。
「ちなみに安いので幾らだ?」
ポルナレフが今度はかなり下手に出た。
「そうですなあ…そこの壁に立て掛けてあるので大体400エキューですな。」
店主が指差した先にはさほど装飾が華美でないレイピアが壁に立て掛けられていた。
見た所錆びてはいないし、そこそこ丈夫そうだ。
「それじゃあ、あれをくれ。」

ポルナレフは店主にそう言って袋の中から金貨を取り出して支払おうとした時、
「俺にさわんじゃねえ!貴族の娘っ子!」
いきなり店内でそんな声がした。ポルナレフが思わず振り返るとルイズが一本の剣を握っている。
「やい!デル公!お客さんにそんなこと言うんじゃねえ!」
店主が剣に向かって叫んだ。ポルナレフには何がなんだか分からなかった。
「ひょっとしてこれインテリジェンスソード?」
ルイズが驚いたように言った。
「何だ?その『インテリジェンスソード』というのは?」
「へぇ、魔法がかけられていて、意志を持って喋る剣のことでさぁ。」
「ほう…」
ポルナレフは多少興味を持ちルイズの方に歩いていくとその剣を手に取った。
こちらはさっきのレイピアと違い、刀身に錆が浮いている。喋るだけの駄剣か、と思っていると、
「…おでれーた。おめえ『使い手』か?」
剣が驚いた様に言った。
「『使い手』?」
「そうだ。どうだい?レイピア使うんならマンゴーシュはいるだろ?長すぎるし片刃でマンゴーシュには到底向かないが、俺を使わないか?
お前さんならきっとマンゴーシュ、いや、むしろ変則的な二刀流として使いこなせる。」
「…成る程な。レイピアと大剣の変則的二刀流か…面白いかもな。」
「そうよ。だから俺を……」
「だが断る」
「ナニィ!?」
「すまないが意思を持つ剣というのにトラウマがあるんでな。しかも片刃というのが、な。」
そういうと剣を元の位置に戻した。

「ちょ、ちょっと待って!お願い話を聞いてね、ね!」
「…」
ポルナレフがうざそうに剣を見る。
「ほら、手足はないけど歌えるぜ!♪アア~オ~~~ンン~~トォ~~…」
「……」
ポルナレフがますますうざそうに見る。どうやら今度はインドでのトラウマを思い出したらしい。
それに気付いて、
「頼みます。買ってください。このデルフリンガー、一生のお願いです。トラウマだなんて言わないでね、ね?」
遂に剣は遜りはじめた。
その態度にポルナレフもさすがに哀れに思い、店主に聞いた。
「…このデルフリンガーとやらは幾らだ?」
「…100エキューでいいでさぁ。」
ポルナレフは袋から残りの金貨を全て出すと店主に渡した。
「じゃあ『あいつ』も頂こう。」

「何でそんな剣買ったの?装飾が殆どないレイピアと錆が浮いた口の悪いインテリジェンスソードなんてあまりにも趣味悪いわよ。」
店を出て大通りに戻ってからルイズが言った。
「人に趣味が悪いとか失礼だぜ、なあ相棒。」
鞘から少しだけ刀身が出ていたらしい。デルフリンガーが喋った。
「相棒と呼ぶな。」
パチンと完全に鞘に収め、(「あ、ちょ、待って…」)
「…まあ、レイピアは俺の最も得意な武器だ…ただこいつは余りにも哀れ過ぎてな…金にも余裕はあったし。」
と言って鞘に収めたデルフリンガーを見た。錆さえ落とせば使えるかと思ったが、マンゴーシュの代わりにはならないだろうしやっぱり無理だなと思い直した。
「ところで案内したんだからそれなりに御礼ぐらいはするんでしょうね?」
ルイズがずいっとポルナレフに詰め寄る。
「悪いが剣を買ったので持って来た金が無くなってな…まあ、普段から世話してやっているんだ。礼なんて別にいらんだろ。」
「な、ななな、何よそれ!私の休日潰してそれは無いんじゃない!?」
ルイズはポルナレフの『礼なんて無くて当然だろ』という態度に憤慨した。
「それじゃあ街で貴様の買い物でもしておくんだな。俺ももう少し町を見ておきたいしな。」
そう言うと、怒鳴るルイズを無視してポルナレフは通りを歩いて行った。


To Be Continued...

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