ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

第一話『やんだ風のち異世界』

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「風はやんだんだ・・・」
「死んでいたオレを生き返らせてくれたもののためには命を懸けれる」
「ウェザーもそうだったんだ。ウェザーは刑務所を脱獄して生き返ったんだ。俺にはわかる。だから彼に対してあれこれ考えるな、彼はこの数日幸福だった」
「ウェザーはすでに救われていたんだ」
「ウェザー・・・もう一度・・・もう一度話がしたい・・・あなたと、そよ風の中で話がしたい」


「あんただれ?」
男が目を開けるとそこには桃色の髪をした少女が覗き込んでいた。
なるほど、ここはあの世か。この子は天使と言うわけだ。なら・・・ここは・・・『天国』なのか?だとしたら悪い冗談だ。俺はあの天国オタクと闘い、死んだのだ。散々『天国』は否定してきた。なのに奴ではなく俺が辿り着いてしまったわけだ・・・

男は一人で何か納得しているらしく自分の手を見下ろしているだけだ。
しかし一方で少女は納得できないでいた。
何で?何で私は『使い魔召喚』で平民を呼び出してしまったのだろうか?しかもこの平民私の問いにも答えやしないし!頭は何かモコモコしてるし!角生えてるしッ!帽子?帽子よねそれェッ!
「や・・・やった・・・ルイズ。平民だ!ついにルイズが呼び出した使い魔は平民だぞッ!」
「さすがゼロのルイズッ!」
「平民を召喚してドースンだよこのクサレ脳ミソッ!」
周りを囲んだ少年少女たちの嘲笑と冷笑。そのふたつの笑いの間に生じる真空状態の圧倒的大爆笑空間はまさに歯車的笑いの小宇宙!けっこう呑気してた男も周りの少年少女たちが一瞬巨大に見えるほどの爆笑圧力にはビビった!
「うるさーいッ!ちょっと間違っただけよ!ミスタ・コルベール!」
ルイズと呼ばれた少女がコッパゲに掴みかからん勢いで怒鳴った。
「もう一度だけ召喚させてくださいッ!」

ルイズは正直この願いは通らないだろうと思っていた。しかしッ!
「フム・・・あと一回やれば気は済むんですね?」
意外ッ!それは肯定に近い答えッ!
にわかにルイズの顔が明るくなる。
「じゃあやらせてくれるんですね!」
「だが断る」
このコッパゲ、まさに外道!人を天国まで持ち上げておいて一瞬で地獄に叩き落とすなんて・・・これが今流行りの『ヘル・アンド・ヘブン』ってやつなのッ?
「これは決まりだよ。二年生へ進級するための春の使い魔召喚はとても神聖なものだ。一度呼び出した『使い魔』は変更できないッ!『平民』だろうが『勇者王』だろうが、呼び出したのならば彼が君の『使い魔』だッ!」
ルイズはまだ何か言いたげだったがコッパゲの次のセリフで完全に沈黙した。
「何勘違いしているんだ・・・お前の儀式はまだ終わっちゃいないぜッ!」
そうだ、まだ残っている。そして儀式が完了しなければ私は二年生にはなれない。いや、それどころか退学になるかもしれない・・・
ルイズは渋々「はい」とだけ言うと、キョロキョロしているモコモコ頭の男の前に立った。
「ちょっとアンタ、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだからね!」
偉そうにふんぞり返るルイズ。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」

少女が何か言っている。貴族?何を言っているんだ?天使じゃないのか?あれか、大天使とかの格付けのことか?
男があれやこれやと思考しているスキにルイズは
ズキュウーーーz___ン
キスをしたッ!触れるだけの、しかし確かなキスをッ!
「・・・話が見えない・・・何のマネだ?」
「何って、『コントラクト・サーヴァント』じゃない」
だからそりゃなんだと言おうとした途端、男の左腕に激痛が走った!まるで火がついたようだッ!
「ぐぅああぁぁぁぁッ!」
「大袈裟ね、すぐ収まるわよ」
言うとおり熱はすぐに引いた。かわりに混乱は一層増したがな。なんだ?何が起きたんだ?スタンド攻撃なのか?いや、死んだ俺には無意味だ。ならなんだ?まさかまた『ボヘミアン・ラプソディー』か?ここは何かの物語の中なのか?
左手を押さえているとあのコッパゲがその左手を取って眺める。
「フム・・・珍しいルーンですな」
言われて自分も覗いてみると、確かに何かが刻まれていた。
「さてと、何はともあれ『サモン・サーヴァント』はこれにて終了です。皆教室に戻るぞ」
するとコッパゲが宙に浮いたではないか!だけではない!周りの奴等も一斉に宙に浮いたのだ!
「『ジャンピン・ジャック・フラッシュ』ッ!?また『無重力』か?」
「は?『魔法』に決まってるでしょ」
いつの間にか桃髪の少女が背後に立っていた。上から見下ろすようにしてこちらを覗いている。
「もー最悪!何で平民が使い魔なの~?しかもファーストキスだったのに~!」
「そうか。俺は初めてじゃないが」
「関係無いわよッ!」
顔が赤い。怒っているのか?
「で、結局アンタは誰なの?」
男は一瞬、ほんの一瞬だけ逡巡したが、こう答えた。
「ウェザー・・・ウェザー・リポートだ」
「顔が近いわよッ!」


ヘビー・ゼロ 第一話『やんだ風のち異世界』


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