ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔ファイト-3

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匿名ユーザー

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 第一回最強おっぱいトーナメント――優勝者キュルケ――を終え、ほくそえむ。
 これは面白い。ただの眼鏡は願い下げだけど、この眼鏡なら使い魔にする価値がある。
「ミスタ・コルベール。わたし、この眼鏡を使い魔にします」
「納得してくれたかね。それでは儀式を続けなさい」
 野次馬どもがまた笑った。そりゃそうよね。眼鏡使い魔にするメイジなんて天地開闢以来初めてだろうし。
 甘い甘い、浅慮浅慮。見た目で良し悪しを判断する愚物どもよ、笑わば笑え。最後に笑うのはこのわたし。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
 ブリッジをつまんで両手でささげもった。生涯の相棒となるであろう相手は太陽の光を受けて輝いて見える。
「五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え……」
 ここで詠唱は中断させられた。眼鏡が手から落ちた。
 はじめは汗か何かで手が滑ったのかと思った。でもそんなわけない。しっかり持っていたもの。
 次に思ったのは、落としたらやばいってこと。割れたら終わる、とも思った。
 時間よ止まれ、と思った。でも止まらない。眼鏡が地面めがけて落ちていく。
 手を伸ばしたけど、しょせんはわたしの反射神経、どう考えても届かない。
 眼鏡は地面に落ちて砕け散る直前でフレームを伸ばし、見事に軟着陸した。
 二本のフレームを交互に動かし、小刻みだが素早く駆けていく。
「えっ」
 伸ばした手が行き場を失い、中途半端な位置で停止した。
 わたしを含めた一同、口を半開きにして眼鏡が消えていく様を見守るだけ。
 振り返ることさえせずに、眼鏡は茂みに消えていった。
「ちょ、ちょっと! 何!? 何なの!?」

 わたしは大馬鹿だ。こんこんちきだ。後から考えれば本当によく分かる。
 特殊な眼鏡だったってことは知ってたんだから、動くくらいは予想しなくちゃいけなかったのに。
 眼鏡、眼鏡、どこへ消えた。怒ったりしないから帰ってきて。本当に。お願いだから。
 呆然としていたクラスメイト達も、ようやく現状が笑うに値する状況だと気づいたらしい。
 またドカン。笑い声。誰も手伝ってくれないから、わたしは一人で草原を走り回る。
 偉大なる始祖ブリミエルよ。これは好奇心に従い他人の裸を見るだけに終わらずランキングまでつけてしまったわたしへの罰ですか?

 結局眼鏡は見つからなかった。
 わたしは延々と草原の中を這い回っていたせいで膝が擦り切れそうに痛い。
 疲労も極地、足腰ガクガク、目ぇ見開いてたせいで頭も痛くて医務室のベッド直行コース。
 あの眼鏡め。どこかに逃げたのか。それとも誰かがこっそり持っていったのか。
 ふん、どっちにしたってすぐに見つかるだろうけど。魔法で探すそうだから。
 次会った時は覚えてなさいよエロ眼鏡。
 皆は眼鏡を探すわたしを少しばかり不審に思っていたみたいだ。
 嫌だ嫌だとゴネていたのに、いざ無くなってみれば必死で探し回る。そりゃ怪しいよね。
 でもあれは特別な眼鏡。ただの眼鏡じゃない、わたしの使い魔。必死で探すだけの価値がある。
 コルベール先生にだけは言うべきだったのかもしれないけど、やっぱり言えないこんなこと。
「眼鏡をかけたら皆が素っ裸でそこにいました。ウヒヒヒ」
 はい、アウトー!
 キュルケはわたしの視線に気がついていたみたいだし、モンモランシーの虫刺されも聞いた。
 ただ服が消えて見えただけじゃなく、それにかこつけたウォッチングはバレバレになる。
 貴族の子弟にあるまじきこと。淑女としての地位は失墜、阿婆擦れのそしりは免れない。

 翌日には噂になってるんだ。わたしの二つ名がゼロからむっつりに変わってるんだ。
 わたしのような美少女が好色だなんてことになれば、思春期全開の連中を喜ばせてしまうじゃないの。
 肉コルヌあたりに「よう、むっつりルイズ! 今日も元気に欲求不満か?」なんて言われるんだ。
 ああ、なんてこと。考えるだけでハラワタが煮えくり返る。むっつり助平を馬鹿にするな。
 そもそもおかしいと思うのよね。世間の風潮ではオープン助平の方がいいみたいになってるじゃない?
 でもね、そんなことはないと思う。心の中でだけ助平なんて慎ましやかでしょ。
 オスマンの爺さん見れば分かるように、性犯罪なんてみんなオープン助平がすることなんだから。
 自己を抑圧したむっつり助平が犯罪に走るなんてことをしたり顔で言う自称事情通がいるけど、それって見当はずれもいいとこ。
 そもそも犯罪に走った時点ですでにそれはむっつりじゃないっていうのね。
 むっつりっていうのは墓の下に入るまで、自分の中だけで空想を完結させるからむっつりっていうの。
 誰かに迷惑をかけたりするのはマコトのむっつりじゃない。ただの外道だ。
 むっつりとはそんなものじゃない。もっと大きくて、自由で、豊潤で……ビバむっつり助平。
 ということを機会があれば熱弁してやろうと思っているけど、幸いにしてその機会には恵まれなかった。

 医務室の扉がノックされた。
「どうぞ」
 抑えた口調ながら内面はかなり興奮してたりする。
 誰だろ誰だろ。コルベール先生かな。先生だったら眼鏡捕まえたってことだよね。うっひょう。
「ルイズさん。教えてほしいことがあるのですが……」
 扉の向こうから出てきた顔はわたしの予想外だった。というか予想以下だった。
 ほとんど話したことのないこいつに比べればキュルケやマリコルヌやモンモランシーの方がまだましだ。
「なにかしら……」
 あ、やばい。名前思い出せない。ええっとなんだっけなんだっけ。グラモンは確実なんだけど。
 いつも阿呆とか呼んでるから名前忘れちゃった。
「……ミスタ・グラモン。あいにく体調が悪いからお役に立てるとは思えないけど」
「それで私の聞きたいことというのはですね」
 聞いてないよね? わたしの話聞いてないよね? 婉曲的な拒否とか分かってないよね?
 ベッド脇の椅子に腰掛けてるけどわたしの許可もらってないよね?
 むう、噂通り油断のならぬ男よ。こいつに騙された生徒もかなりいるって聞いたぞ。
 今のわたしってばちょっと弱ってるじゃない。気をつけないと危ないね。
「あなた、眼鏡を召喚しましたね」
「……ええ」
「その眼鏡をかけた時、何かおかしな物が見えたりはしませんでしたか?」
 ん……んん? この男……?


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