ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

第二話 【使い魔フーゴ;主人からの第一指令】

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匿名ユーザー

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「言ってる事は……よくわかったよ…
 だけどはっきり言わせてもらう…」

”彼”、いや…『パンナコッタ・フーゴ』の顔には興奮気味なのか
玉のような汗が浮かんでいるし、唇もブルブル震えている。
目も躊躇いがち。心ここにあらずと言った様子だったが
ついに決心した彼は、目の前の少女と向かい合って叫ぶ。

「ど~して!ぼくが君の下着を洗わなくちゃならないんですかーッ!?」

彼の手には小さな布が握られていた…。


『紫霞の使い魔』

第二話 【使い魔フーゴ;主人からの第一指令】


「やっぱり理解してないんじゃないの!?案外頭が鈍いのね、あんた!」
ネグリジェ姿のルイズがベッドに腰掛けて 怒鳴り散らす。
「わかっていますよ!ここがぼくの居た世界じゃないことは!」
フーゴの指さした先には地球ではありえない『二つの月』…。
しかも、『草原』においても人が宙を浮く様を見せつけられてしまったのだ。
無いと信じていた『鏡の世界』に引きずり込まれたこともあったので
ここが『魔法の世界』だと認める事はできた。受け入れたくはなかったが…。

「あんたのいう『ぼくの居た世界』のほうがわからないけどね…。
 ま、いいわ。続けなさい…」
上から見下すような態度に心の天秤が傾くが、まだ耐えられた。
「それでっ!貴女達が『魔法使い』だという事も!
 ぼくが『使い魔』になったのも
 帰る方法も無いことも、理解できました!!」
彼の『左手』には奇妙な文字が描かれていた。契約の印『ルーン』。
『珍しい形』といわれたが、そんなことは些細な事。
”フーゴ”が”ルイズ”の『使い魔』になった証であることが重要なのだ。
使い魔は死ぬまで変えることができない。
つまり、彼が帰れるとすれば『物言わぬ屍』になってから…。
帰還計画は遙かに絶望的である。

「なーんだ。よくわかっているじゃない…。偉い…偉い…」
やるきの欠片もない、だらけた拍手を送るルイズ。
送られた方のフーゴは当然イイ気がするわけない…。
その証拠に、こめかみがピクピク動き始めている。
「けれども!何でそれが君の洗濯物を洗うことになるんですか!!」
しかし、理性が必死に殺意を押さえてくれたおかげで
『まだ』会話を続けることができた。

「そこまで解っていて何で『消去法』ができないのかしら?」
ルイズは、『やれやれだぜ…』と言いたげな様子で指を折り曲げながら話し始めた。
「あんたみたいな露出狂じゃあ
 1,『主人の目となり耳となること』はできなかったし
 2,『主人の望む物を探してくること』もできそうにないし
 3,『主人を敵から守ること』は絶対不可能だわ!
 というよりもそんな格好しているあんたの方が
 圧倒的に『女性の敵』よッ!この変態男!」

フーゴの手が痙攣でも起こしたかのように震え始め、
その閉じられた口の裏で、歯が両顎に押しつぶされかけながらも
彼はじっと耐えて聞いていた。

「そんなあなたでも掃除、洗濯みたいな雑用ぐらいはできるでしょ!
 それぐらいやって貰わなくちゃ、わたしが困るのよッ!」

突然だが、時限爆弾が目の前に置いてあると仮定してほしい…。
そこには お決まりの『赤』と『青』、二本のコードがある。
残り時間は刻一刻と削られていく…。
早くどちらかを切らなければならない。
普通は爆破コードがどれなのか不明なのだが
今回はわかっている!
『赤』を選べば爆発し、『青』を選べば爆弾解除。
そう聞けば、大体の人は『青』を切るだろう…。


でも自分が『狂気の爆弾犯』だとしたら…?
『切れ!』というのならば当然『赤』を切るしかないッ!
己の中の殺意が囁くままに…

そう!『いつものフーゴ』ならば間違いなく『赤』を選ぶはず!
だが彼は…

「り…了解しました…。ご主人…様」

『青』を選んだ!

(そうだ…耐えるんだ…。元の世界に戻るとしても!
 このままこの世界に残るとしても!
 しばらくはここで生活していくしかないんだ…。そのためにも
 この『忌まわしき自分の欠点』は乗り越えなければならないッ!)

「やっとわかったようね…。」
ルイズが優越感に満ちた笑みをうかべた。
「じゃあ洗濯物はまかせたわ。
 あんたの寝床は…この毛布で充分ね。
 あと、朝はちゃんと起こすこと!いいわね!」
「…了解しました」

その言葉を聞き、ルイズは満足げにベッドに潜る。
彼女が小さな指をパチンと鳴らすと、辺りは闇に包まれた。

フーゴも毛布を被って床へ横になり
この昂ぶった心を落ち着ける事にした…



が、無理だった。しばらくすると『怒り』は収まりつつあったが
代わりに『不安』という感情が浮かび上がってきた。
自分のことではなく、仲間に対する『不安』…。

彼らには『亀』があるが、敵に見つからないという保証は
…無い。今も危険と隣り合わせで過ごしているのだ。
果たして、今も無事でいるのだろうか?
そう考えると異世界にいるとはいえ…いや、絆を断ち切ったといえ
『平和な夜』を過ごしている自分が嫌な奴のように思えてきた…。

ふと、ベッドの方を向くと『新しいボス』が寝息を立てているのが見えた。
まだ中学生くらいなのだろうか?とても小柄で華奢な体つきをしている。
もはや彼女への『怒り』は湧いてこなかった…。
彼女にしてみれば召喚されてきたのが『ただの人間』だったのだ。
機嫌が悪いのも仕方がないことだろう…。
そもそも初めて出会ったばかりで、うち解けあうほうが無理な話。
こういうのは少しずつ分かり合っていくものだ。

(『死』か『殺』の狭間で悩んでいたぼくに
 この子は『生』の道を開いてくれたのだ…。
 この世界で新たな繋がりをつくっていくためにも!
 そして、この『新しいボス』から『信頼』を得るためにも!
 『使い魔』として、できる限りのことをしよう…!)


そう考えたフーゴは暗闇の中から起きあがり、洗濯物を抱えて部屋を後にした。

To Be Continued…

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