ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの来訪者-7

最終更新:

familiar_spirit

- view
だれでも歓迎! 編集
その日の朝、
「う~ん、もうちょっと~」
「はやく起きないと遅刻するよ」
「何いってんのよ~今日は虚無の曜日だからやすみ~」
等と言う事があった2時間後、
「何で起こさないのよ!今日は買い物に行くつもりだったんだから!
 これじゃ帰る頃には真っ暗になってるじゃない!」
育郎は馬に乗りながら、何時ものようにルイズの理不尽な怒りを受けていた。

「それで、買い物って?」
3時間程馬に乗った後、ついた街の門のそばにある駅に馬を預け、
映画のセットのような街並みを歩きながら、育郎が隣を歩くルイズに尋ねる。
「剣よ」
何故か80年代なビキニアーマーを纏ったルイズが、剣を抜く様が頭をよぎった。
何かが色々足りない気がした。何が足りないかはよくわからなかったが。
「…似合わないんじゃないかな、君には?」
「はぁ?なんで貴族の私が剣なんて持たなきゃいけないのよ?
 あんたのに決まってるじゃないの」
「僕の?」
「そうよ!」
ビシッ!っと育郎を指差して続ける、
「昨日の一件であんたが馬鹿力なのはわかったわ!
 けど、やっぱりそれだけじゃ私の使い魔として不満なの。
 剣でも持てば少しはマシになるでしょ?」
いらないと反射的に答えそうになるが、もしもの時、あの力を使わずとも良くなる
かもしれないと考えなおす。
「すまない…でもお金は大丈夫かい?」
「あのねぇ、私は由緒正しい『貴族』なのよ?剣の一本や二本どうってことないわ。
 アンタに渡した財布の重さでわからない?」
言われてみれば、下僕が持つ物と言われて持たされた財布は、ヘルメットだったら
母さんです…と言ってしまいそうな程ずっしり重かった。
「スリには気をつけてよね。これから行く所は物騒なんだから」
そう言って入った狭い路地裏は、なるほど如何にも危ない雰囲気が漂っている。
「ルイズ、危ないから離れないで」
育郎が差し出した手を、不思議そうな顔をしてルイズは見る。
「何、これ?」
「いや、危なそうだから手をつないだ方が」
一瞬の沈黙の後。
「な、なに言ってるのよ!私は貴族なのよ!危険なんてあるわけないじゃない!
 それにね、平民が気安く貴族にさわろうとしないの!」
そう怒鳴ってどんどん先に進むルイズであった。


武器屋の親父はなんともたるんだ顔で、パイプを吹かしながら暇を潰していた。
最近は土くれのフーケなんぞという盗賊があらわれたせいで、貴族が下僕に剣を
持たせようとする事がはやってると言われているが、実際は傭兵を雇うことが多く、
思われているほど儲かってるとは言いがたいのだ。
「どこぞの物を知らない貴族でもこねーもんかな…思う存分ぼったくってやるのに」
「そんな美味しい話あるわけねーだろ」
誰もいない所から声が上がるが、親父は特に不思議がる事も無くその方向に言い返す。
「うるせーぞデル公!だいたいテメーはいつも客にいらん事を」
「おっと親父、客が来たみたいだぜ」
「なぬ!?それを早く言えデル公!」
早速顔を引き締め、この界隈に相応しい悪党面にかわる。
「もっと愛想のいい顔しろよ…」
「うるせえな!荒くれども相手にゃ舐められたら終わりなんだよ!
 ていうかおめえ、客のいる間だけでいいかちゃんと黙ってろよ!」
「ヘイヘイ」

薄暗い店の奥を見ると、こちらを見て胡散臭げな顔をする店主の顔が見えた。
しかしルイズが貴族と気付くと、表情は一変し営業トークを繰り出す。
「いやー若奥様、うちにこられるとはお目が高い!」
「これなんてどうですかい?業物ですぜ」
「もっと太くて大きいのがお望みで?ちょっと待っててくだせえ。
 奥からとっておきを持ってきやすんで」

(おい、親父。舐められたら終わりじゃなかったのかよ?)
(うるせーデル公!世間知らずの貴族なんて、適当におだててりゃいいんだよ)
(そーいうもんかね?)
「ねえ、まだ見つからないの」
「へえ若奥様、いますぐに!いいか、絶対しゃべるんじゃねえぞ?」

「さあ、どうですかい若奥様!かの高名なゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿の作。
 太くて硬くて暴れっぱなし!店一番のビッグマグナムでさ!
 魔法がかかってるから青銅だろうが鉄だろうが青銅だろうが青銅だろうが一刀両断!
 まあ、その分お高くなりやすが…」
見れば宝石が散らばり、見事な細工も施され、いかにも名剣という感じである。
「おいくら?」
「ルイズ…こんな高そうなもの」
「いいのよ!ほら、いくらなの!?」
高価そうなので、思わず育郎が止めようとするがルイズは聞こうとしない。
「へい!エキュー金貨で二千!新金貨で三千でさ!」
あまりの値段にルイズが文句を言おうとしたその時、誰もいない方向から声がかかった。
「おいおい、親父。そんなナマクラ押し付けといて、ボリすぎだろう!」
武器屋の親父の顔色がさぁっと青くなる。
「てめ、デル公!黙ってろって言っただろ!い、いやあのですね」
「まさか貴方、貴族を騙そうとしたんじゃないでしょうね!」
「い、いえいえ、滅相にございません!」
主人を詰問するルイズをよそに、育郎が声のした方に近づく。

「誰かいるのかい?」
「いるのかい?じゃねーよ、おめえの目の前だろ?おでれーた!
 こんなヌケてて剣を降ろうってか?冗談じゃねえぜ!」
「まさか…『君』なのか!?」
「そうだよ、このトンチキがッ!」
しかして、育郎が見つけた声の主は錆びの浮いた剣だった。
「剣がしゃべるなんて…」
「それってインテリジェンスソード?」
主人と言い争っていたはずのルイズが、いつの間にか傍に来て『剣』を見ていた。
「そうでさ若奥様!世にも珍しい意思を持つ魔剣、インテリジェンスソード!
 どこのアホ…もとい、魔術師が始めたんでしょうかね?剣をしゃべらせるなんて。
 とにかくこいつは口は悪いは客に喧嘩は売るわ…デル公!お客様に失礼だろうが!
 これ以上失礼な真似をしたら、貴族に頼んでてめえを溶かしてやるぜメーン!」
「うるせえクソ親父!逆にお前のタマ○ンをちょん切ってやるぜメーン!」
「なんだと!なら俺はてめーのそこ以外を切り刻む!」
顔を真っ赤にして『剣』に近づく主人を育郎が止める。
「なんですかい?」
「ちょっと待ってください…ルイズ、この剣を買おう」
「え~~~!やーよ、なんかメーンとか言ってるし」
顔、声共にこれ以上ないぐらい嫌そうにするルイズ。
「このまま溶かされたら可愛そうじゃないか…」
「いいじゃない別に。メーンとか言ってるし」
「それにほら、僕はこの国の事を良く知らないから、何かの時はこの剣に聞けるし…」
「でもねぇ…メーンとか言ってるし」
「あの、いいですかい?」

何とかルイズを説得しようとする育郎を見て、主人が声をかける
「それなら厄介払いの値段込みで百で結構なんですが…
 あ、それとうるさいようでしたら、鞘に入れると黙りやすんで」
「じゃいいわ…メーンとか言ってるけど、買ったげる」
「ヘイ、毎度!」
「ありがとう、ルイズ!」
「い、いいのよ。安かったし…メーンとか言ってるのがあれだけど…」
金貨を渡して、剣を受け取ると、『剣』が早速喋りだした。
「にしてもおめえ、人が良いよな。剣に可哀想はねーだろ」
「まったくね、メーンとか言ってるのに」
「よろしく、デルコー」
「ちがわ!デルフリンガー様だ!この…」
急にデルフリンガーが押し黙る。
「どうかしたのかい?」
「おでれーた、こいつはおでれーた…てめ『使い手』か?」
「使い手?」
「いや、それだけじゃねーな…はーこりゃスゲーや。おでれーた」
「………わかるのか?」
「ま、俺は『剣』だからな。使う奴の事ぐらいわからーな」
「なによ、二人でこそこそと。またメーンとか言ってるの?」
「いや、なんでもない…デルフリンガー、その…」
「わーってるよ、嬢ちゃんには内緒にしといてやる」

「なー、相棒…」
馬に乗って帰りの道を急ぐ育郎にデルフリンガーが話しかける。
「なんだい?」
「いやな…どうってことねーんだが…」
少し戸惑いながらデルフリンガーが口を(?)開く。
「あのな、相棒…相棒がスゲーのはよくわかったんだが…」
「?」
「なんだか俺いらねーんじゃねーかって気がしてきてな…」
「………」
「な、何とか言ってくれよ相棒!?」


「そろそろ店閉まいにするか。おい、デル公…っていねーんだったな…
 まったく、あいつの厄介払いが出来て、百ももらえたんだから今日は万々歳だぜ」
武器屋の親父が、つい何時ものクセで誰もいない店の中で喋りだす。
「それにしてもあれだな、随分と長い付き合いだったぜ…ったく
 あいつのせいで何度儲け話が駄目になったか…」
何時もならここでデルフリンガーが反抗してくるのだが、もう彼はいない。
「へっ、随分静かになっちまったもんだ…」

武器屋の親父は自分の部屋へ行き、2時間眠った…
そして……目をさましてからしばらくして…
デルフリンガーが居なくなった事を思い出し………泣いた………


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー