ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

使い魔は刺激的-3

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匿名ユーザー

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 朝!マリコルヌ・ド・グランドプレの新しき人生の始まりである!!

 普段より二時間ほど早く起き、ベッドで未だ眠っているトリッシュを起こさぬように細心の注意を払いながら
 タンスの奥深くに仕舞ってあった秘密の品を取り出してカバンに詰め込み、そっとドアを開いて廊下に
 誰も居ないことを確認すると足音を立てないように歩き、寮を後にした。
 朝もやが煙るトリステイン魔法学院の隅にあるヴェストリの広場まで辿り着き、周りに人影がないことを
 何度も確認して広場の隅の地面に穴を掘り、部屋から持ち出したカバンを開ける。
 カバンの中にはフリルの付いたドレスや、リボンに彩られたスカート等々、女物の服がカバン一杯に詰め込まれていた。
 その一品一品を名残惜しそうに触りながら掘った穴へと放り込む。
「コレなんか手に入れるのに苦労したよなぁ」 
 手に持ったのは学院の女生徒用の制服。魔法の掛かった扉を解除し警報の魔法の無効化等を行ないながら
 全ての罠を掻い潜り、備品庫から盗んできたものだ。
 無論、盗んだ事がバレないように全てを元の状態に戻したことは言うまでもない。
 カバンに入っている服は全て、自分の倒錯した趣味を満足させる為に何度も危ない橋を渡って揃えた
 品々である。自分の全てと言っても過言ではない。
 心の声が『捨てるこたぁーねー、トリッシュに着せてやんな』と囁くが、サイズが違うし、それに昨日までの自分に
 別れを告げるためにも捨てねばならなかった。
「これで良し」
 盗みで培った隠蔽技術を最大限駆使して地面を元通りに戻し、マリコルヌはヴェストリの広場の入り口にまで
 歩みを進め、もう自分にも何処に埋めたのか判らない地面の方を向き、
「アリーヴェデルチ(さよならだ)」
 今まで世話になった服たちに感謝と別れを告げ、マリコルヌは広場を後にした。
 その姿をモグラだけが見つめていた。

 昨日の自分に別れを告げたマリコルヌが次に向かった先は厨房であった。トリッシュの朝食を用意させる為である。
 朝早くから厨房は貴族たちの朝食の準備で忙しそうに人々が働いている。それを見ながら
 なかなか声を掛けれずにマリコルヌが厨房の入り口で立ちすくんでいると、後ろから声を掛けられた。
「お、おはようございます。如何なされました?」
 マリコルヌが振り向くとそこには黒髪のメイドがマリコルヌを怯えた眼で見つめていた。
「いや、ちょっと話があって…」
「申し訳ございません!」
 突然黒髪のメイドは頭を下げ謝ってきた。その声が大きかったので厨房内の料理人たちもマリコルヌに気付いた。
 黒髪のメイドとマリコルヌに厨房中の視線が集まる。
「ちょっと待って!なんで急に謝るんだよ!」
 そう言ってからマリコルヌは気付いた。朝早くからわざわざ貴族である自分が厨房を訪れたのである。
 何か不作法があったとメイドが恐れ、魔法の使えぬ平民が貴族に対し必要以上にへりくだるのも無理はなかった。
「シエスタがどうかしたんですかい?」
 巨漢の料理長がその手に包丁を持って、背後に立ちマリコルヌを見下ろしていた。
 マリコルヌを包丁で傷つけようとする意図で持っていた訳ではなく、料理の最中に思わず持ってきてしまったのだろうが
 包丁を持ち背が高くガッシリとした体格の料理長にビビッたマリコルヌは、しどろもどろになりながらも
 何とか用件を伝えることに成功した。

「しかし、使い魔に人の食事を与えるんですかい?」
「僕の使い魔は君たちと同じ平民なんだ」
「えっそうなんですか?」
 驚くメイドと訝しげな視線を送る料理長。料理長の男、マルトーは大の貴族嫌いでマリコルヌが使い魔と言えど
 平民に貴族と同じ食事をさせるなど信じられなかった。
「その使い魔平民なんでしょう?犬っころと同じメシでも食わせときゃいいじゃないですか」
「貴族だろうと平民だろうと(好きな人には)変わりない!」
 自分の皮肉に対し、『変わりない』と断言したマリコルヌにマルトーと厨房内の料理人、そしてシエスタは驚いた。
 今まで貴族は平民のことなど奴隷か動物程度に思っていると考えていたからである。
 彼らが今までに会った殆どの貴族は事実そうであったし、ここに居る貴族の子息たちもそうであった。
 だが、目の前の小太りの貴族は『変わらない』と言った。月までぶっ飛ぶ衝撃をその場に居た平民たちは受けた。
「判りやした。用意させていただきます」
「うん、よろしく頼むよ。それから君、シエスタって言ったよね?」
「は、はいっ!何でしょうか?!」
「もう一つ、お願いがあるんだけど…」
 固まるシエスタに向けて神妙な面持ちでマリコルヌは語りかけた。

部屋に手荷物を携えて戻ってきたマリコルヌは、まだトリッシュが寝ているのを見てベッドに近づいた。
 寝苦しかったのか、単に寝相が悪いのかトリッシュの太ももが露になったのを見て、心の中で
 始祖ブリミルに感謝しつつ、荒い鼻息を抑えながらトリッシュを揺さぶる。
「ト、トリッシュ、もう朝だよ。」
「う~……ん…」
 ゴロリとトリッシュは寝返りを打つ。その拍子で胸の谷間がマリコルヌの眼に飛び込んできた!
(ウオオオッ!良いんですか?!朝からこんなんで良いんですか?!)
 思わず床の上でブリッジをカマして、悶え打つマリコルヌ。
(ウオッ!ウオッ!ウオッ!ウワオオォォォッ!)
 ブリッジが限界まで達しマリコルヌは床に崩れ落ちた。その後しばらく息を整えて再度トリッシュを起こそうとする。
「朝だよトリッシュ。朝食に間に合わないよ」
 何故か先ほどとは打って変わり、太ももや胸の谷間に興奮しないキレイなマリコルヌに変貌していた。 
「あと5分~、5分だけでいいから~」 
「ダメダメ、早く起きて」
「ん~、ミスタ、水、フランス製のミネラルウォーターじゃなきゃダメよ
 ジョルノは着替え取ってちょうだい」
「フランスってのは知らないけど水と着替えだね」
 マリコルヌは朝変えておいた水差しから新鮮な水と、調達した着替えをベッドの脇に置く
「さーさー起きた起きた」
「わかったわよ…アンタ誰?」
『トリッシュ、マリコルヌデス。昨日ノコトヲ思イダシテ』
「僕だよ。君の主人のマリコルヌだよ」
 スパイス・ガールとマリコルヌに言われてトリッシュはやっと思い出した。夢ではなかったのだ。
「そこの洗面器に水を汲んでおいたから。着替えはここね。それじゃ僕は部屋の外で待ってるから」
 そう言ってマリコルヌは部屋を出て行った。

「夢なら良かったのに…」
『トリッシュ、スグニ朝食ト言ッテマシタ。朝食ヲ抜クのは身体ニ良クアリマセン』
「そうね…おなかも減ってるし」
 スパイス・ガールに促され、しぶしぶベッドから降りて顔を洗う。
「そう言えば着替えを用意したとか言ってたけど…」
 ベッドの脇に置かれた、マリコルヌが用意した服を手に取り顔をしかめる。
「ナニ?このダサいズボン」
『トリッシュ、ソレハ「ドロワーズ」トイウ下着デス』
「下着ィ~?!マジこれ穿くの?!信じらんない…」 
 身だしなみに気を使うイタリア人で女のトリッシュにとって、二日続けて同じ下着を穿くことに抵抗があり、
 用意された物が新品であったのも後押しして、仕方なくドロワーズを穿くことにした。
「それでコレね…」
 着替えたトリッシュは何処から見てもメイドそのものであった。さすがにカチューシャとエプロンは付けなかったが。
 部屋を出た後、外で待っていたマリコルヌの言い訳を聞きながら食堂へと案内された。


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