ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

本気男-4

最終更新:

familiar_spirit

- view
だれでも歓迎! 編集
三階に上がると、甲高いキャンキャン声が聞こえてきた。聞き間違えるわきゃあねー、
あの小うるさい小娘―ルイズの声だ。使い魔の俺がいないことでわめき散らしているようだ。
(ヤバイぜ・・・このままじゃあ使い魔の心得『粗相したらとりあえずご飯抜き』が発動する・・・!)
どう言い訳をすべきか考えながら部屋に近づくと、俺は自分の勘違いに気づいた。
(・・・もう一人、誰かが部屋にいやがる・・・)
わめき声の合間にもう一つ、小娘ほど大声ではないもう一つの声が聞こえる。
われらが御主人様はそいつと『口論』、っつーか口ゲンカしてるらしい。
「あー、ただいま戻りましたぜェー。御主人様よォー」
そういってドアをくぐると、はたして部屋の中には小娘以外にも人がいやがった。
だが俺の予想に反していたのは、一人じゃなく二人だったこと、そしてでっかいトカゲもいたことだ。
(うおッ!ちょッ!ケツに火がついてんじゃねえか!!)
いやな記憶が蘇り、反射的に頭をガードする。
「あらあら、そんなに怖がらなくてもいいのよ。つ・か・い・ま・さん」
妙に扇情的な格好をしたボンッ!キュッ!ボンッ!の赤髪の女がそう言った。
「ちょっと!キュルケ!あんたなに勝手にむぎゅ!」
「わたしはキュルケ、『微熱』のキュルケよ。よろしく使い魔さん」
そのボンキュは小娘の口を押さえながら、そう名乗った。こいつ小娘の扱い慣れてやがるな。
それにしてもスゲェなこいつの胸。服の上のボタンを外しているので谷間がばっちり見えるぜー。
 ・・・しょおがねーだろおぉぉぉ!男なんだからよぉぉぉ!
そこに巨乳があればついつい目が行く。俺だってそーする。誰だってそーする。
まあ他のやつらはやけにストイックだからな。こんなときもクール決めてんだろうがよー。
「あ、ちなみにあっちで本読んでるのがタバサよ」
あっちとやらを見てみれば、メガネをかけた青髪のチビがベッドに腰掛て黙々と本を読んでいた。
 ・・・自己紹介されてんだから会釈ぐらいしろよ、礼儀に反するぜ・・・

しかし、どーでもいいことだがこいつら髪の毛がカラフルな連中だよなー。小娘もピンク色だしよー。
(あと黄色と緑がそろえばメローネが観てた『パワーレンジャー』だな)
と、心底どーでもいいことを考えていると、
「けど本当に使い魔が人間とはねー、流石『ゼロ』のルイズってことかしら」
そうボンキュは言うと高笑いを始めた。
「わたしだって好きでこんなオヤジを使い魔にしたわけじゃないわよ!!」
だから俺はオヤジじゃねーっつーの。
「本当の使い魔っていうのはこういうのをいうのよ、ねーフレイム~」
ボンキュはさっきのトカゲを呼び寄せそう言った。なるほど、そいつはフレイムっつーのか。
それからボンキュはフレイムについて説明っつーか自慢を始めた。
要約するとフレイムは火トカゲもしくはサラマンダーっつー生き物で火竜山脈のはブランド物らしい。
俺はフレイムを観察してみる。大きさはワニを二匹重ねたぐらいでかいが、キョロキョロ動く目や
ちょこまかした動きはトカゲそのものだな。結構おとなしそーだしよー・・・
だからしっぽをこっちに近づけてんじゃあねぇ!!踏み潰して亀の餌にすんぞ!ド畜生がァァァ!

「じゃ、お先に失礼~。いくわよ、フレイム」
俺がフレイムと心温まる交流をしてる間に話は終わったみてーだ、ボンキュがメガネとフレイムを連れて出て行った。
(あばよ~、フレイム~)
バシッ!
「おふッ!」
俺が心の中で手を振っていると、いきなりケツを蹴られた。
「なんであのバカ女の使い魔がサラマンダーでわたしのがこんなオヤジなのよ~!!」
八つ当たりかよ。あとオヤジじゃねーって。こだわるぜ?俺はよォー。
その後まだ寝巻き姿の小娘を着替えさせてやって(メロ(ry)、俺達は食堂に向かった。
俺が小娘を起こしそこねたことは、あのボンキュへの怒りで気づかなかったようだ。
おかげさんで飯抜きにならなくてすんだんだけどよォー、
「・・・おい・・・これが飯かよ・・・小娘・・・」
床の上に置いてあるうっすいスープと粗末なパンを指差して、俺は呻いた・・・

―――――――――――――――――――――――――――

「そうよ。本当なら平民がこの『アルヴィーズの食堂』で食事なんか出来ないんだから。
 わたしが特別にここで食べることを許可してあげるんだから、感謝しなさいよ」
わたしはきっぱりはっきりそう言ってやった。こいつってば昨日みっちり使い魔ってものを
躾けてあげたのに、もう口調直ってるし!今朝だって起こすのが遅かったからキュルケのバカ女に
起こされたし!その上使い魔のことで散々バカにされたし!なによりこいつオヤジだし!
それでもご飯抜きにしなかったのは、こうやってきちんと自分の立場ってヤツをこいつの脳ミソに
刻み付けてやるためッ!この先ッ!二度とッ!逆らう気をッ!起こさないようにッ!
「ふん!さっさと食べなさいよ」
そう言ってわたしはテーブルに向き直る・・・筈だった。

ゾ ワ ッ

(!!!)
体が動かなくなった。ピクリとも。蛇に呑まれたカエルみたいに。
目だけ動かして、ホルマジオを見た。あいつはさっきと変わらず床のスープを凝視して立ち竦んでいる。
 ・・・いや。違う。その目はスープではなく、こちらを見ている。わたしと同じように目だけで。
その目には『何か』が込められている。でもそれが『何か』はわからない。怒りでも悲しみでもない。
今この食堂はメイジ達が朝食に集まる、一番騒がしい時間帯の一つだ。
でも今のわたしにはなにも聞こえない。ただ自分の心臓の音だけが頭に響く。
ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン
「・・・な・・・に・・・!なんかッ!文句あんのッ!!」
無理矢理そう叫んだ瞬間、首筋に鋭いナイフを突きつけられた気がした。


ドスッ!

「しょおおぉぉがねーなああああ~~~。ま、たまには粗食もいいもんだ」
そう言ってそいつは勢いよく床に腰を下ろすと、パンをスープにひたして食べ始めた。
そのとたん体が動くようになる。
「・・・!・・・ハァッ・・・ハァッ・・・ハァッ・・・」
ドッ・・・ドッ・・・ドッ・・・ドッ・・・ドッ・・・ドッ・・・ドッ・・・
まだ動悸が収まらない。呼吸が荒い。
(なによ・・・なんなのよ!今の!)
さっきのあいつの目を思い出す。わたしの知らない『何か』が込められた、あの目。
その目で見つめられてわたしは、ある『感情』に支配されて身動きできなかった。
それは・・・『恐怖』。
(なんでよ!なんで貴族のわたしが平民なんかに恐怖しなくちゃなんないの!?)
わたしは頭を振って無理矢理その考えを打ち消し、
さっきの恐怖を忘れるため猛然と食物を口に押し込んでいった。


―――まだこのとき、わたしは気づいていなかった。
―――朝食前の『祈り』を、まだしていなかったことに・・・


to be continued...


おまけ

『マジレンジャー』だッ!
二度と間違えるなッ!
『パワーレンジャー』でも『マジオレンジャー』でもないッ!

―――メローネ、心の俳句―――


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー