空は晴天、風は微風。
そんな中、トリステイン魔法学院の2年生たちは各々が召喚・契約した使い魔たちと戯れていた。
……ただひとり、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールを除いて。
そんな中、トリステイン魔法学院の2年生たちは各々が召喚・契約した使い魔たちと戯れていた。
……ただひとり、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールを除いて。
「大見得を切った以上、この子よりすごいのを召喚できるのよね、ルイズ?」
ルイズを囲む生徒の輪の中、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーは、
その豊満なボディを揺らしながら挑発的な言葉をルイズに投げかけた。
傍には先程彼女が召喚したサラマンダーがいる。彼女の言うこの子というのはこのサラマンダーのことだ。
「当然でしょ」
ルイズはそんなこと簡単だわ、と鼻をフンと鳴らす。本当に自信があるのか単なる強がりなのか。
彼女を見守る他の生徒たちはみな顔を寄せ合い、
「本当にできるのか?」「また爆発するのがオチよ」「ゼロのルイズだもんな」などと好き勝手に喋っている。
ルイズを囲む生徒の輪の中、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーは、
その豊満なボディを揺らしながら挑発的な言葉をルイズに投げかけた。
傍には先程彼女が召喚したサラマンダーがいる。彼女の言うこの子というのはこのサラマンダーのことだ。
「当然でしょ」
ルイズはそんなこと簡単だわ、と鼻をフンと鳴らす。本当に自信があるのか単なる強がりなのか。
彼女を見守る他の生徒たちはみな顔を寄せ合い、
「本当にできるのか?」「また爆発するのがオチよ」「ゼロのルイズだもんな」などと好き勝手に喋っている。
周囲がざわつく中、ルイズは呪文を唱えはじめた。
「宇宙の果てのどこかにいるわたしのシモベよッ。神聖で美しく、そして、強力な使い魔よッ!
わたしは心より求め、訴えるわ……我が導きに、答えなさいッ!!」
言い終わると同時に杖は振り下ろされた。すると、とてつもない音とともに煙が舞った。
「宇宙の果てのどこかにいるわたしのシモベよッ。神聖で美しく、そして、強力な使い魔よッ!
わたしは心より求め、訴えるわ……我が導きに、答えなさいッ!!」
言い終わると同時に杖は振り下ろされた。すると、とてつもない音とともに煙が舞った。
ドゴォォォオオオオン
辺り一面が煙に巻かれ、何も見えない状態になった。
生徒たちは皆煙に喉をやられ咳き込んでいる。
しかしただひとり、モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシだけはある一点を見つめていた。
「大丈夫かい? モンモランシー」
傍にいたギーシュ・ド・グラモンが彼女に声をかけた。
「あ、あれ……」
煙が段々と晴れてゆく。モンモランシーの指さすその先にはルイズが立っていた。
そして、そのルイズの傍には――召喚されたのであろう、ひとりの男が倒れていた。
生徒たちは皆煙に喉をやられ咳き込んでいる。
しかしただひとり、モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシだけはある一点を見つめていた。
「大丈夫かい? モンモランシー」
傍にいたギーシュ・ド・グラモンが彼女に声をかけた。
「あ、あれ……」
煙が段々と晴れてゆく。モンモランシーの指さすその先にはルイズが立っていた。
そして、そのルイズの傍には――召喚されたのであろう、ひとりの男が倒れていた。
「にッ、人間?」
「ねえあの格好は……平民?」
「ああ、平民だね」
「プッ……クスクス」
「アハハハハハハ」
生徒たちの間に、ドッと笑いの渦が巻き起こる。
一方、笑いの種になっている平民を召喚してしまったルイズは、顔をしかめている。
「ハァ……あんた、誰?」
『あん?』
ルイズは溜息混じりに倒れている男に向かって話しかけた。
男はキョロキョロとあたりを見回しながら上半身だけ起き上がる。随分と体格のいい男だ。
「あんた、どこの平民よ」
『何言ってンだ?』
「……もしかして、言葉が通じないの?」
ルイズの眉がひそめられ、また溜息が出た。先が思いやられる、そんな表情をしている。
「あはははは、ルイズ、あれだけ大見得切っておいて……平民だなんて……あは、あははは」
生徒の群れをかき分けて、キュルケがルイズの元にやってきた。
笑いすぎたのだろう、目には涙が浮かんでいた。
「ちょっと間違えただけよッ!!」
ルイズは頬をふくらませてキュルケにかみつく。しかし、内心焦っているのも確かだ。
何せ、魔法の力も何もない、ただの平民を召喚してしまったのだから。
「ねえあの格好は……平民?」
「ああ、平民だね」
「プッ……クスクス」
「アハハハハハハ」
生徒たちの間に、ドッと笑いの渦が巻き起こる。
一方、笑いの種になっている平民を召喚してしまったルイズは、顔をしかめている。
「ハァ……あんた、誰?」
『あん?』
ルイズは溜息混じりに倒れている男に向かって話しかけた。
男はキョロキョロとあたりを見回しながら上半身だけ起き上がる。随分と体格のいい男だ。
「あんた、どこの平民よ」
『何言ってンだ?』
「……もしかして、言葉が通じないの?」
ルイズの眉がひそめられ、また溜息が出た。先が思いやられる、そんな表情をしている。
「あはははは、ルイズ、あれだけ大見得切っておいて……平民だなんて……あは、あははは」
生徒の群れをかき分けて、キュルケがルイズの元にやってきた。
笑いすぎたのだろう、目には涙が浮かんでいた。
「ちょっと間違えただけよッ!!」
ルイズは頬をふくらませてキュルケにかみつく。しかし、内心焦っているのも確かだ。
何せ、魔法の力も何もない、ただの平民を召喚してしまったのだから。
「あははははははは!」
笑い声はなおも続く。「流石ゼロのルイズ!」「馬鹿みたい!」などの馬鹿にした声も聞こえた。
『うおッ! ナイスバディなカワイコちゃん!』
召喚された男の目は、キュルケの胸に釘付けになった。無理もない、彼女のバストは94もあるのだ。
「ッ、うるさい!!」
声を出した途端、男はルイズに一喝されてしまった。その声の大きさに驚き、男はもう一度コロリとひっくり返る。
彼女はかなりいらついていた。
「ミスター・コルベール、もう一度召喚させてください!」
ルイズは先生であるコルベールにそう言った。
しかし、コルベールの返答は「NO」。召喚は神聖なもの、一度しか行えないことになっているからだ。
「そんなあ~……」
『何を喋ってるんだ。それにオレは見せもんじゃあねーぞッ』
頭を振りながら、また上半身だけ起き上がる男。
『って、あれ? 何でオレ生きて……若返ってるんだ?』
キョロキョロと自分の手を見たり身体を見たりと挙動不審な動きをする。
それを見て、また周りからクスクスと笑い声が聞こえてくる。
『さっき見事に大往生したっていうのによーッ。……もしかして、ここ、天国とか?』
「あんた、何ブツブツ言ってんのよ! ちゃんと言葉喋りなさいよね! この平民!」
ルイズはまたも男を叱りとばす。しかもペシンと杖を鞭のように額に当てるおまけ付きでだ。これは痛い。
『ッ! てめえ、何しやがる! 女の子だからといって手加減するほど、この……!』
喋っている途中だが、ルイズの両手により顔をつかまれる。
『ッて! いきなり首を引っ張るんじゃあねーぞ! 痛いだろうが!』
「黙りなさい! ……か、感謝しなさいよね! 平民が貴族にこんなことされるなんて、普通はありえないんだから!
あんたをわたしの使い魔にしなきゃならないから、仕方なく……そう、仕方なくよ! 仕方ないんだからね!!」
『は?』
ルイズは顔を真っ赤にさせ、照れ隠しなのか随分と早口でまくし立てるように喋る。
一方、男は「何だ?」とばかりに頭にクエスチョンマークを浮かべている。
笑い声はなおも続く。「流石ゼロのルイズ!」「馬鹿みたい!」などの馬鹿にした声も聞こえた。
『うおッ! ナイスバディなカワイコちゃん!』
召喚された男の目は、キュルケの胸に釘付けになった。無理もない、彼女のバストは94もあるのだ。
「ッ、うるさい!!」
声を出した途端、男はルイズに一喝されてしまった。その声の大きさに驚き、男はもう一度コロリとひっくり返る。
彼女はかなりいらついていた。
「ミスター・コルベール、もう一度召喚させてください!」
ルイズは先生であるコルベールにそう言った。
しかし、コルベールの返答は「NO」。召喚は神聖なもの、一度しか行えないことになっているからだ。
「そんなあ~……」
『何を喋ってるんだ。それにオレは見せもんじゃあねーぞッ』
頭を振りながら、また上半身だけ起き上がる男。
『って、あれ? 何でオレ生きて……若返ってるんだ?』
キョロキョロと自分の手を見たり身体を見たりと挙動不審な動きをする。
それを見て、また周りからクスクスと笑い声が聞こえてくる。
『さっき見事に大往生したっていうのによーッ。……もしかして、ここ、天国とか?』
「あんた、何ブツブツ言ってんのよ! ちゃんと言葉喋りなさいよね! この平民!」
ルイズはまたも男を叱りとばす。しかもペシンと杖を鞭のように額に当てるおまけ付きでだ。これは痛い。
『ッ! てめえ、何しやがる! 女の子だからといって手加減するほど、この……!』
喋っている途中だが、ルイズの両手により顔をつかまれる。
『ッて! いきなり首を引っ張るんじゃあねーぞ! 痛いだろうが!』
「黙りなさい! ……か、感謝しなさいよね! 平民が貴族にこんなことされるなんて、普通はありえないんだから!
あんたをわたしの使い魔にしなきゃならないから、仕方なく……そう、仕方なくよ! 仕方ないんだからね!!」
『は?』
ルイズは顔を真っ赤にさせ、照れ隠しなのか随分と早口でまくし立てるように喋る。
一方、男は「何だ?」とばかりに頭にクエスチョンマークを浮かべている。
「……我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ……」
一度深呼吸して落ち着いてから、ルイズは何かしらの言葉を口にする。
そして彼女はぐいと男の顔を引き寄せ、男の唇に自分のそれを重ねた。
『ッ!?』
唇を離しルイズが離れた途端、男の体から蒸気が溢れる。
『ぐっ、何を……てめえオレに何をしやがった!』
男は苦しそうに左手を押さえる。その左手にはとてつもない熱が集まっていく。
そして同時に光る文字――ルーンが手の甲に浮かび上がった。
気絶しそうなほどの熱さ、痛み、衝撃。しかしそれらは全てしばらく我慢していると治まった。
一度深呼吸して落ち着いてから、ルイズは何かしらの言葉を口にする。
そして彼女はぐいと男の顔を引き寄せ、男の唇に自分のそれを重ねた。
『ッ!?』
唇を離しルイズが離れた途端、男の体から蒸気が溢れる。
『ぐっ、何を……てめえオレに何をしやがった!』
男は苦しそうに左手を押さえる。その左手にはとてつもない熱が集まっていく。
そして同時に光る文字――ルーンが手の甲に浮かび上がった。
気絶しそうなほどの熱さ、痛み、衝撃。しかしそれらは全てしばらく我慢していると治まった。
『あー……』
「終わりましたね、ミス・ヴァリエール。さあさあみなさん、学院内に戻りましょう」
男が熱の余韻でボーッとしていると、コルベールは生徒たちを建物の中へと移動させる。
わいわいがやがや、生徒たちは次々と建物の中へと入っていった。
「ルイズ、お疲れ様」
「ま、頑張りなさい」
去り際にキュルケとモンモランシーがルイズへと声をかけてきた。
「……」
ルイズはそれをそっぽ向くことで無視をした。クスクスとふたりが笑う。
「終わりましたね、ミス・ヴァリエール。さあさあみなさん、学院内に戻りましょう」
男が熱の余韻でボーッとしていると、コルベールは生徒たちを建物の中へと移動させる。
わいわいがやがや、生徒たちは次々と建物の中へと入っていった。
「ルイズ、お疲れ様」
「ま、頑張りなさい」
去り際にキュルケとモンモランシーがルイズへと声をかけてきた。
「……」
ルイズはそれをそっぽ向くことで無視をした。クスクスとふたりが笑う。
「ミス・ヴァリエール、あなたも早く中にお入りなさい」
「あ、はい」
入り口近くからコルベールが声をかけた。外に残っているのはルイズと男だけ。
「ねえ、わたしの声が聞こえる? 言葉通じる?」
『おいお嬢ちゃん、ここはどこだ?』
「……駄目ね。全ッ然通じないわ。とりあえず、このうるさい口を黙らせなきゃ……」
ルイズは手に持っていた杖を振り、何かしらの呪文を唱える。
「あ、はい」
入り口近くからコルベールが声をかけた。外に残っているのはルイズと男だけ。
「ねえ、わたしの声が聞こえる? 言葉通じる?」
『おいお嬢ちゃん、ここはどこだ?』
「……駄目ね。全ッ然通じないわ。とりあえず、このうるさい口を黙らせなきゃ……」
ルイズは手に持っていた杖を振り、何かしらの呪文を唱える。
ボフン
「きゃっ!」
「うおっ!」
ふたりの間で小さい爆発が起こった。またあたりが煙に巻かれる。ゴホゴホと咳き込むルイズと男。
「っ……てめえさっきから何をしやがる!」
「うるさいわね! あんたはわたしの使い魔なんだから、主人に逆らうんじゃないわよ!」
「使い魔だぁ? 何ふざけたコト言ってるんだてめえ、頭脳が間抜けか?」
「間抜けですって!? 使い魔の分際でなんて口を……ッ!?」
しばらく口論した後、ルイズは気づいた。会話が成立していることに。
呪文は失敗したが結果オーライ、言葉が通じるようになったのだ。
それは男も気づいたらしく、目をパチクリとさせている。
「ま、いいわ。さあ、部屋に戻るわよ。ついてきなさい」
そう言ってルイズは立ち上がり、さっさと建物内へ向かおうとした。
「おい、待てって……」
「いいからこのわたしがついてきなさいって言っているんだからついてきなさい!!」
男はその大声に驚くように、その場から飛び上がる。
そしてそのまま渋々とルイズの後についていく。大きな体格をしょぼんとさせ、なんとも情けない。
「うおっ!」
ふたりの間で小さい爆発が起こった。またあたりが煙に巻かれる。ゴホゴホと咳き込むルイズと男。
「っ……てめえさっきから何をしやがる!」
「うるさいわね! あんたはわたしの使い魔なんだから、主人に逆らうんじゃないわよ!」
「使い魔だぁ? 何ふざけたコト言ってるんだてめえ、頭脳が間抜けか?」
「間抜けですって!? 使い魔の分際でなんて口を……ッ!?」
しばらく口論した後、ルイズは気づいた。会話が成立していることに。
呪文は失敗したが結果オーライ、言葉が通じるようになったのだ。
それは男も気づいたらしく、目をパチクリとさせている。
「ま、いいわ。さあ、部屋に戻るわよ。ついてきなさい」
そう言ってルイズは立ち上がり、さっさと建物内へ向かおうとした。
「おい、待てって……」
「いいからこのわたしがついてきなさいって言っているんだからついてきなさい!!」
男はその大声に驚くように、その場から飛び上がる。
そしてそのまま渋々とルイズの後についていく。大きな体格をしょぼんとさせ、なんとも情けない。
「そういえばあんた、名前は? 平民でも名前くらいあるんでしょう?」
途中、入り口の前で振り向きルイズが尋ねる。相手はとても背が高いので必然的に上目遣いになってしまう。
何だか見下ろされるのはいい気分じゃあない。ルイズはちょっぴり機嫌が悪くなった。
男は背筋を伸ばし、堂々とした態度で言い放つ。
途中、入り口の前で振り向きルイズが尋ねる。相手はとても背が高いので必然的に上目遣いになってしまう。
何だか見下ろされるのはいい気分じゃあない。ルイズはちょっぴり機嫌が悪くなった。
男は背筋を伸ばし、堂々とした態度で言い放つ。
「ジョースター。オレの名前はジョセフ・ジョースターだ」