ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

奇妙なルイズ-18

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ルイズ達が目指しているのは、港町ラ・ロシェール。
トリステインから馬を走らせれば二日、空に浮かぶ大陸『アルビオン』への玄関口として知られている。
港町とは言っても海に面しているわけではない、いや、空を海に例えれば間違いではないが。

そのラ・ロシェールの酒場で、アルビオンへ行こうとする傭兵達が集まり、前祝いをしていた。
「アルビオンの王さまはもう終わりだね!」
「ガハハ!『共和制』ってヤツの始まりなのか!」
「では、『共和制』に乾杯!」
そう言って乾杯しあう傭兵達、彼らは元はアルビオンの王党派についていた傭兵達だが、王党派よりも良い待遇で貴族派が雇ってくれると知って、王党派を裏切った。
彼らは王党派を離脱すると、貴族派に付いて各地の傭兵達を集めた、この酒場に残っている傭兵達は、言わば連絡役なのだ。
ひとしきり乾杯が済んだとき、酒場に仮面を付けた男が現れた。
男は傭兵達に近づき、料理の並ぶテーブルの上に重そうな袋を置く、すると重みで口が開き、金貨が顔を見せた。
「働いて貰うぞ」
傭兵達はその男を不審に思ったが、袋に書かれているマークがアルビオン貴族派のものだったので、にやりと笑って頷いた。
 

一方、魔法学院を出発したルイズ達は、ワルドの乗るグリフォンの早さに驚いていた。
ロングビルとギーシュの乗る馬は、途中で二回も交換した、しかしワルドのグリフォンは疲れを見せずに走り続ける。
長時間馬を駆るのは乗り手にとっても大きな負担だが、ワルドとグリフォンはまったく疲れた様子を見せない。
「ちょっと、ペースが速くない?」
ワルドの前に跨ったルイズが言った。
ルイズはワルドと雑談を交わすうちに、学院で見せるようなくだけた口調に変わっていった、ワルドがそれを望んだためでもある。


「ギーシュもミス・ロングビルも、へばってるわ」
ワルドが後ろを向くと、ギーシュはまるで倒れるような格好でへばっている、ロングビルは明らかに表情に疲れが出ている
「ラ・ロシェールの港町まで、止まらずに行きたいんだが……」
「普通は馬で二日かかる距離なのよ、無理があるわ」
「へばったら、置いていけばいい」
「そういうわけにはいかないわ」
「ほう、どうしてだい?」
ルイズは、困ったように言った。
「だって、仲間じゃない。それに……」
何かを思い出そうとして、結局そこで口をつぐんだ。
ルイズの頭に、古い宮殿での記憶が引き出される。
ある目的を持って二手に分かれたが、それが二人を見た最後だった。
三人いるはずの別チームが、再会したときは一人に減っていた。
炎の使い手と、砂の使い手、その二人を助けられなかったことをずっと悔やんでいる。
その記憶に引きずられたルイズもまた、仲間と離れるのは怖いのだ。

「やけにあの二人の肩を持つね。もしかして、彼はきみの恋人かい?」
「あ、あれが…? 冗談じゃないわよ」
ルイズは苦虫をかみつぶしたような顔をした。
「ならよかった。婚約者に恋人がいるなんて聞いたら、ショックで死んでしまうからね」
「お、親が決めたことじゃない」
「おや?ルイズ!僕の小さなルイズ!きみは僕のことが嫌いになったのかい?」
過去の記憶と同じおどけた口調で、ワルドが言った。
「何よ、もう、私、小さくないもの。失礼ね」
ルイズは頬が熱くなるのを誤魔化すように、頬を膨らませた。


グリフォンの上でワルドに抱きかかえられながら、ルイズは先日見た夢を思い出していた。
生まれ故郷の、ラ・ヴァリエールの屋敷で、困っているときは、いつもワルドが迎えにきてくれた。
だが、そこに現れる白金の光、光は徐々に人型をして、屈強な戦士を思わせる姿に変わる。
薄いブルーの色をしたその戦士に抱きかかえられ、ワルドと対峙するルイズ。
その夢が何を意味するのか、今のルイズには分からなかった。

途中、何度か馬を替えたので、ルイズ達はその日の夜中にラ・ロシェール付近にまでたどり着くことができた。
町の灯りが見えたので、ギーシュとロングビルは安堵のため息をついた。
「待って!」
不意にルイズがワルドを制止した。
「どうしたんだい?」
「誰かいるわ…2……3人…」
そのとき、不意にルイズ達めがけて、崖の上から松明が投げこまれ一行を照らした。
「な、なんだ!」
「馬から下りなさい!」
慌てて怒鳴ったギーシュに、ロングビルは指示を飛ばす。
突然の事に驚いた馬が前足を上げたので、ギーシュは馬から落ちてしまう、そこに何本かの矢が飛んできた。
もの矢が夜風を裂いて飛んでくる。
「奇襲だ!」
「伏せなさい!」
ギーシュがわめくと同時に、ロングビルは地面を練金して泥の壁を作った、スカッと軽い音を立てて矢が突き刺さる。
ワルドは風の魔法を唱えて身の回りにつむじ風を起こし、矢を防いてでいたが、攻撃に転じようとしたときに別方向から一陣の風が吹いた。
同時に、ばっさばっさと羽音が聞こえた、その音に聞き覚えのあったルイズが崖の上に目をこらすと、六人ほどの男達が風の魔法に巻かれて崖から転がり落ちてきた。



「ほう」
感心したようにワルドが呟くと、がけの上から落ちた男達は地面に体を打ち付けてうめき声を上げた。
そして空には見慣れた幻獣…タバサの乗るシルフィードが姿を見せていた。

「シルフィード!」
ルイズが驚いて声を上げると、シルフィードは地面に降り、その上からキュルケが地面に飛び降り髪をかきあげた。
「お待たせ」
ルイズもグリフォンから飛び降りキュルケに怒鳴る。
「お待たせじゃないわよ! 何しにきたのよあんたたち!」
「あーら、助けにきてあげたんじゃないの。朝がた、あんたとギーシュが馬に乗って出かけようとしてるもんだから、急いでタバサを叩き起こして後をつけたのよ」
キュルケはシルフィードの上に乗ったままのタバサを指差した。
寝込みを叩き起こされたとは言え、パジャマ姿は何か面妖だ。
「キュルケ、あのねえ、これはお忍びなのよ?」
「お忍び? …まさかギーシュと駆け落ち?」
ルイズは笑顔になりながら杖を抜いた、その仕草にキュルケが冷や汗を流す、やばい、怒ってる。
こんな場所で爆発を起こされてはたまったものではない、これにはキュルケも謝った。
「ま、まあ冗談よ!勘違いしないで。あなたを助けにきたわけじゃないの」
キュルケはグリフォンに跨ったままのワルドににじり寄り、しなを作った。
「おひげが素敵なお方ね、あなた情熱はご存知?」


ワルドは、側に寄ろうとするキュルケを手で押しやる。
「あらん?」
「助けは嬉しいが、婚約者に誤解を受けると困るのでね、これ以上近づかないでくれたまえ」
そう言ってルイズを見つめる。
「こ、婚約者?…ふーん、ルイズにねぇ…」
キュルケはルイズを冷やかしてやろうかと考えたが、気が乗らない。
ルイズに微妙な戸惑いがある、と感じたからだ。
しばらくしてから、男達を練金の手かせで拘束し、尋問していたロングビルとギーシュが戻ってきた。

「子爵、あいつらは物取りだと言っていましたが」
「ふむ……、なら捨て置こう」
ギーシュの報告を受けて 先を急ごうとグリフォンに跨るワルドをルイズが制止する。
「ルイズ、どうしたんだ?」
「あいつら、グリフォンに乗ったワルドを見ていたはずだわ。それなのにたった三人で襲ってくるなんて…ねえ、キュルケ、上空から見ても三人だった?」
「あたしが見た限りじゃ三人よ、ね、タバサ」
タバサは無言で頷く。
「何か気になることでも?」
ロングビルの質問に、メイジ4人をたった3人で襲う野党がいるだろうか?と、ルイズが答える。
「貴族派に嗅ぎつかれているのかもしれんな…どちらにせよ、ラ・ロシェールに一泊するしか無い、朝一番の便でアルビオンに渡ろう」
ワルドは一行にそう告げた。
ルイズは腑に落ちないものを感じながらワルドに手を引かれ、グリフォンに跨った。
キュルケはシルフィードの上に乗り、本を読んでいたタバサの頬を突っつく、出発の合図らしい。

目の前の峡谷には、ラ・ロシェールの街の灯が怪しく輝いていた。

そしてルイズの中にいる『誰か』が、ワルドに対する警戒心を強めていた。

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