アンリエッタの代わりの居室。
康一とアンリエッタ、二人はこの時間帯に来るはずの者を待っていた。
優雅にお茶しながら。
「あ、このお菓子オイシイですね」
「ええ、このお茶と合うので一緒に出しているのです」
コーラを飲んだらゲップするぐらい間違いなく、由花子が見たらブチ切れる光景。
だがこの世界に由花子は存在しない。
そして康一は純情であるのだがそういうことにあまり機敏な性格でもなかった。
結果なんだかいい雰囲気になってしまっている。
コンコン…
そんな二人の間に割って入ったドアのノック。
「来たみたいですね」
「そのようです」
コホン、とアンリエッタは咳払いをして声を整る。
そして自らが着るドレスに菓子の欠片が付いていることに気が付き、急いで払い落とした。
「どうぞ。お入りください」
ガチャリと、ゆっくりドアが開いた。
「今のところ報告は以上です」
「ご苦労様でした。下がって頂いて結構です」
ピシッとした敬礼をして退出する、硬い雰囲気のいかにも軍人な感じの男。
「やっぱり、イマイチよく分からない感じなんですよねー」
うなりながら康一が言った。
「ハイ。昨夜の侵入者、なぜ私を狙ったのか。
身元、名前、動機、どれをとって見ても何も分からずじまい。
結局先ほどの報告では、おそらく何処かからの雇われ者なのではという程度しか…」
口をつぐみ黙り込む二人、そんな静かな部屋に廊下の喧騒はよく聞こえた。
「どうしたのでしょう。ドアのすぐ外で誰かが話しているようですが」
「オカシイですね。僕、ちょっと様子見てきます」
そう言ってドアを開く康一。
ドアを開けた目の前に報告に来た衛士と、もう一人の衛士がいた。
「どうかしたんですか?」
「あ、いや…」
部屋から出てきて尋ねた康一。
もう一人の衛士が軽く会釈をして立ち去ってから、少し驚いた様子を見せて衛士は答えた。
「今ちょうど報告が入りまして、侵入者とおぼしき者が泊まっていた宿が見つかったとのことです」
丁寧な口調で話す軍人。
「ではその宿をなるべく秘密裏に調べてみましょう」
いつの間にか近寄って話しを聞いていたアンリエッタ。
「そーですね。なるべく秘密にして調べないと他の仲間がいたらバレちゃいますし」
「そのとおりです。では出来るだけ少人数を派遣して調べてみてください」
衛士にアンリエッタが向き直り命令する。
ハッと敬礼をして衛士が去っていく。
アンリエッタは一息つこうかと窓を開き空気を換えたとき康一が言った。
「アンリエッタさん。今の話に出た宿屋、僕も行ってきていいですか?」
「………ハ?」
口を半開きにして変な声が漏れた。
「コーイチさん、今何と仰いましたか?」
たっぷりと沈黙してからアンリエッタが聞き返す。
「いやだなァ、僕も行っていいかって聞いたんですよ」
康一が普通に何気なく言うので、アンリエッタは一瞬別にいいのかもしれないと思ったがすぐに思いなおした。
「何を言ってるのですか!ダメに決まっているでしょうッ!」
「え、何でですか?」
「危険だからですッ!」
「なら大丈夫ですよ。自分の身は自分で守れますし」
グッとアンリエッタは詰まった。
そうだった。自分が呼び出した使い魔はスタンドという能力を持ち、一人でメイジを倒してしまう力を持っているのだった。
「それにこれだけアンリエッタさんを守る人がいるんじゃあ、僕の仕事なんにもなくなっちゃいますし。
だったら今の内に勉強がてら色々城の外のことも勉強しておいたほうがいいと思うんです。
ずっとこの城にこもってるわけにもいかないんで、いい機会なんじゃないかな~と」
反論する余地は全くないようにアンリエッタには思えた。
康一の言っていることはもっともだった。
それに康一は人間と言っても使い魔であり、主人である自分とは対等であり分身でもある。
その康一が自分の意見を主張しているのだから、耳を傾けるのも主人の役目だ。
「…分かりました、確かに私の近くばかりにいては視野が狭くなりがちでしょう。
見聞を広めることもコーイチさんにとっては大事なお仕事ですわね」
アンリエッタはにっこりと笑った。
「ではそのように話しをつけておきましょう。お気をつけてください」
「ハイッ!」
康一とアンリエッタ、二人はこの時間帯に来るはずの者を待っていた。
優雅にお茶しながら。
「あ、このお菓子オイシイですね」
「ええ、このお茶と合うので一緒に出しているのです」
コーラを飲んだらゲップするぐらい間違いなく、由花子が見たらブチ切れる光景。
だがこの世界に由花子は存在しない。
そして康一は純情であるのだがそういうことにあまり機敏な性格でもなかった。
結果なんだかいい雰囲気になってしまっている。
コンコン…
そんな二人の間に割って入ったドアのノック。
「来たみたいですね」
「そのようです」
コホン、とアンリエッタは咳払いをして声を整る。
そして自らが着るドレスに菓子の欠片が付いていることに気が付き、急いで払い落とした。
「どうぞ。お入りください」
ガチャリと、ゆっくりドアが開いた。
「今のところ報告は以上です」
「ご苦労様でした。下がって頂いて結構です」
ピシッとした敬礼をして退出する、硬い雰囲気のいかにも軍人な感じの男。
「やっぱり、イマイチよく分からない感じなんですよねー」
うなりながら康一が言った。
「ハイ。昨夜の侵入者、なぜ私を狙ったのか。
身元、名前、動機、どれをとって見ても何も分からずじまい。
結局先ほどの報告では、おそらく何処かからの雇われ者なのではという程度しか…」
口をつぐみ黙り込む二人、そんな静かな部屋に廊下の喧騒はよく聞こえた。
「どうしたのでしょう。ドアのすぐ外で誰かが話しているようですが」
「オカシイですね。僕、ちょっと様子見てきます」
そう言ってドアを開く康一。
ドアを開けた目の前に報告に来た衛士と、もう一人の衛士がいた。
「どうかしたんですか?」
「あ、いや…」
部屋から出てきて尋ねた康一。
もう一人の衛士が軽く会釈をして立ち去ってから、少し驚いた様子を見せて衛士は答えた。
「今ちょうど報告が入りまして、侵入者とおぼしき者が泊まっていた宿が見つかったとのことです」
丁寧な口調で話す軍人。
「ではその宿をなるべく秘密裏に調べてみましょう」
いつの間にか近寄って話しを聞いていたアンリエッタ。
「そーですね。なるべく秘密にして調べないと他の仲間がいたらバレちゃいますし」
「そのとおりです。では出来るだけ少人数を派遣して調べてみてください」
衛士にアンリエッタが向き直り命令する。
ハッと敬礼をして衛士が去っていく。
アンリエッタは一息つこうかと窓を開き空気を換えたとき康一が言った。
「アンリエッタさん。今の話に出た宿屋、僕も行ってきていいですか?」
「………ハ?」
口を半開きにして変な声が漏れた。
「コーイチさん、今何と仰いましたか?」
たっぷりと沈黙してからアンリエッタが聞き返す。
「いやだなァ、僕も行っていいかって聞いたんですよ」
康一が普通に何気なく言うので、アンリエッタは一瞬別にいいのかもしれないと思ったがすぐに思いなおした。
「何を言ってるのですか!ダメに決まっているでしょうッ!」
「え、何でですか?」
「危険だからですッ!」
「なら大丈夫ですよ。自分の身は自分で守れますし」
グッとアンリエッタは詰まった。
そうだった。自分が呼び出した使い魔はスタンドという能力を持ち、一人でメイジを倒してしまう力を持っているのだった。
「それにこれだけアンリエッタさんを守る人がいるんじゃあ、僕の仕事なんにもなくなっちゃいますし。
だったら今の内に勉強がてら色々城の外のことも勉強しておいたほうがいいと思うんです。
ずっとこの城にこもってるわけにもいかないんで、いい機会なんじゃないかな~と」
反論する余地は全くないようにアンリエッタには思えた。
康一の言っていることはもっともだった。
それに康一は人間と言っても使い魔であり、主人である自分とは対等であり分身でもある。
その康一が自分の意見を主張しているのだから、耳を傾けるのも主人の役目だ。
「…分かりました、確かに私の近くばかりにいては視野が狭くなりがちでしょう。
見聞を広めることもコーイチさんにとっては大事なお仕事ですわね」
アンリエッタはにっこりと笑った。
「ではそのように話しをつけておきましょう。お気をつけてください」
「ハイッ!」