ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの兄貴-21

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
ニューカッスル―王軍最後の拠点でもあるこの城は岬の突端に聳えるようにして建っている。
雲に隠れつつ大陸の下を潜り込むように進路を取る。制空権は反乱軍旗艦『レキシントン』が押さえておりこの船では相手にすらならないらしい。
「あの艦の反乱が全てが始まった。我々にとって因縁の艦さ。このまま雲中を進み
   大陸の下からニューカッスルに近付く。そこに我々しか知らない秘密の港がある」
その言葉どおり大陸の下には直径300メイル程の穴が開いている場所がありそこをハリアーのように垂直に昇っていく。
しばらく昇ると白い光るコケに覆われた鍾乳洞に出る。
これが港らしくもやいの縄が飛び岸壁に引き寄せられるようにして係留され木でできたタラップが取り付けられた。
老メイジが現れウェールズと会話をしているがその様子と会話を見てプロシュートが検討を付ける。
(ハナっから死ぬ気か。この腑抜け野郎がッ!)
自分達チームならどんな状況に追い込まれようが死ぬつもりで行動したりはしない。
『死ぬ覚悟』は常にしているが、最初から『死ぬつもり』なぞ毛頭無い。
どんな、劣悪な状況であろうとも常に相手のノドに食らいついてきた。
だからこそ暗殺という死亡率が高い任務でもあの時まで9人全員欠ける事無くやってこれたのだ。
キュルケとタバサの方はその辺りの事は多少慣れているらしいが、やはり明日全滅する軍を見て迷いのあるような目をしている。
そして、ルイズの方も『敗北』という言葉に顔色を変えている。
ウェールズ達が明日死ぬかもしれないというのに心底楽しそうに笑っているのを見てそれが理解できなかった。
「さて…手紙だったね。私の部屋に保管してある。付いてきたまえ」

ルイズとワルド、そして多少イラついているプロシュートと共にウェールズの自室に向かう。
ちなみにキュルケとタバサはトリステインの者ではないという事から別の場所に居る。
「下手に関わるとロクな事にならないからねー」
「同感」
もう片足突っ込んだとこまで関わっているのは気にしない。

ウェールズが椅子に座り机から宝石が散りばめられた小箱を取り出しネックレスの先に付いている鍵でそれを開けた。
蓋の内側にはアンリエッタの肖像がある。
その中からボロボロになった手紙を取り出す。スデに幾百と読まれてきたであろう手紙をもう一度だけ読むと
手紙を丁寧にたたみ封筒に入れルイズに手渡した。
「これが姫からいただいた手紙だ。この通り、確かに返却したぞ」
「ありがとうございます」
「明日の朝、非戦闘員を乗せた『イーグル号』がここを発つ。それに乗ってトリステインに帰りなさい」
ルイズがその手紙を食い入るように見ていたが、やがて意を決したかのように口を開いた。
「あの……殿下。さきほど港で栄光ある敗北とおっしゃっていましたが…王軍に勝ち目はないのでしょうか?」
「我が軍は三百。それに対する敵軍は五万。勝つ可能性など万に一つもありはしない。我々にできる事は勇敢な死に様を連中に見せつけるだけのことだ」
「殿下の討ち死にされる様も、その中には含まれるのですか?」
「当然だ。私は真っ先に死ぬつもりだよ」
そのやりとりを見ていたプロシュートだが
『真っ先に死ぬつもり』
これを聞いた瞬間動き出していた。
(腑抜け野郎がッ!テメーが先に死んで後は他人任せかッ!?このマンモーニがッ!!)
上に立つ者である以上、最期の最期まで指揮を取る必要がある。
暗殺チームもそうだ。リゾットが居なければチームなぞとうの昔に瓦解している。
それだけ皆のリゾットに対する信頼は厚かったし、その信頼に答える事ができる能力をリゾットは持っていた。
そして、その責任を負うべきはずの者が『真っ先に死ぬ』などという事は責任を放棄して逃げ出しているとしか受け取れない。

だが、プロシュートがウェールズに肘撃ちをブチ込もうとするが次のウェールズの言葉でそれを中止する。
「…ここで我々が『誇り』を見せなければ、我々の為に戦い死んでいった兵達になんと言って詫びればいいか分からないからね」
『誇り』…自分達暗殺チームが二年前にソルベとジェラードをボスに殺されてから今まで失っていたものだ。
それを失っていたからこそ『誇り』を見せるという事はプロシュートにもよく理解はできた。
もちろん、『真っ先に死ぬ』などという事は論外だが、ひとまずこの場は抑えておく事に決めた。

鉄拳制裁をしようとしていたプロシュートに気付かずにルイズが一礼に口を開いた。
「殿下…失礼を承知で申し上げたい事がございます」
「なんなりと、申してみよ」
「…この任務をわたくしに仰せつけられた際の姫様のご様子…そして先ほどの小箱の内蓋の姫様の肖像
   手紙に接吻なさった際の殿下の物憂げなお顔といい…もしや、姫様とウェールズ皇太子殿下は………」
「恋仲であったと言いたいのかね?」
「そう想像いたしました。とんだご無礼を、お許しください。してみるとこの手紙の内容とやらは……」
「恋文だよ。君が想像しているとおりね。彼女が始祖ブリミルの名において永久の愛を私に誓っているものだ。
  この手紙が白日の下に晒されればゲルマニアの皇帝は重婚の罪を犯した姫との結婚を破棄し同盟は成り立たなり一国で貴族派に立ち向かわなくてはなる」
「殿下、亡命なされませ! トリステインに亡命なされませ!」
ワルドがよってきてルイズの肩に手を当てるがそれでも収まらない。
「お願いであります。わたし達と共にトリステインへいらしてください!」
「それはできんよ」
「…姫様の願いだとしてでもですか?姫様のご気性からしてご自分の愛した人を見捨てるとは思えませぬ!
   おっしゃってくださいな殿下!姫様は、たぶん手紙の末尾にあなたに亡命をお勧めになっているはずですわ!」
「そのような事は一行たりとも書かれていない」
ウェールズは首を振り言葉を紡ぐ。
「私は王族だ、嘘はつかぬ。姫と、私の名誉に誓って言うがそんな事は書かれてなどいないよ。アンリエッタは王女だ。自分の都合を国の大事より優先させたりはしない」
だが、それは嘘だ。苦しそうな口調でそう言っている。ブチャラティでなくとも一発で嘘と分かる。
「……君は正直な女の子だな。ラ・ヴァリエール嬢。正直で、真っ直ぐで、いい目をしている。
   だが、そのように正直では大使は務まらんよ、しっかりしなさい。…しかし、わが国への大使としては君が適任かもしれないな」
「明日にも滅ぶ政府は誰よりも正直だ。なぜなら守るべきものが『名誉』以外にないのだから
  そろそろパーティの時間だ。君達は我らが王国が迎える最後の客人だ。是非とも出席していただこう」
ルイズとプロシュートは外に出たがワルドだけはその場に居残った。

パーティは城のホールで行われた。簡易の玉座が置かれそこに現在のアルビオンの王『ジェームズ一世』が鎮座している。
明日滅ぶとは思えないような華やかさだ。
「諸君。忠勇なる臣下の諸君に告げる。
 いよいよ明日、このニューカッスルの城に立てこもった我等王軍に、反乱軍『レコン・キスタ』の総攻撃が行われる」
「この王に、諸君等はよく従い、よく戦ってくれた。
  しかしながら明日の戦いはこれはもう、戦いではなく一方的な虐殺であろう。朕は忠勇な諸君等が傷つき斃れるのを見るに忍びない」
老王が半ばウェールズに支えられる形で演説を始め、1~2度咳をすると再び言葉を繋げた。
「従って朕は諸君等に暇を与える。長年、よくぞこの王につき従ってくれた。
  熱く礼を述べるぞ。明日の朝、巡洋艦『イーグル』号が、女子供を乗せてここを離れる。諸君等もこの艦に乗り、忌まわしき大陸を離れるがよい!」
王により出された暇。つまり自分を見捨てて逃げろと言っている。
だが臣下達の中にそれを享受する者は一人も居ない。むしろさらに老王への忠誠が高くなっているようだった。
感慨深げに目頭を押さえた老王の言葉と同時に辺りが喧騒に包まれた。

キュルケはパーティという事もありそれなりに楽しみ、タバサは亜空の瘴気と化したかの如く料理を食べ進めている。もう今にも『ガオン!』という文字が現れそうだ。
ルイズは死を前にした貴族達が明るく振る舞っているという事に感じるとこがあったらしく、その空気に耐え切れずその場から居なくなりその後をワルドが追う。
一人になったプロシュートは料理を食らうわけでもなくワインを飲んでいた。

「ラ・ヴァリエール嬢の使い魔の……」
「…プロシュートだ」
「そうか、しかし人が使い魔とは珍しい」
「フン…一つ聞くがハナっから死ぬ気か?」
ここで『そうだ』とでも答えようものなら間髪入れずに肘撃ちが飛んだのだがウェールズは違う風に受け取ったらしく笑いながら答え

「案じてくれているのか私達を!君は優しいのだな」
「…オレ達チームの他のヤツなら、例えどんな状況になろうとも死ぬことを前提に行動したりはしねぇ
   『たとえ腕を飛ばされようが脚をもがれようとも』最期まで相手のノドに食らい付こうとするッ!」
プロシュートが語気を強める。一線を越えればすぐにでも『この腑抜け野郎がッ!何だ!?そのザマは!ええ!?』と言いつつ殴りかねない。
「誇りってのはオレにもスゲーよく分かる…オレ達チームも二年前それを失ったからな…
   だが、それでも『栄光』を掴むために戦った。『死ぬ覚悟』は常にしているが『死ぬつもり』で行動した事なんて一度も無いんだからな」
「守るべきものがある、その大きさが死の恐怖を忘れさせてくれる」
「…誇りか?」
「それもあるが……我々の敵である『レコン・キスタ』はハルケギニア統一をしようとしている。『聖地』を取り戻すという理想を掲げてな
  理想を掲げるのはいい。だが奴等はその過程で流されるであろう民草の血を考えず、荒廃するであろう国土の事を考えていない」
これはプロシュートも思うところがあった。娘を奪うという目的のために列車の乗客を広域老化に巻き込んだ事があるからだ。
「だからこそ勝てずとも、勇気と名誉の片鱗を見せつけハルケギニアの王家は弱敵ではないと示さねばならぬ。
   奴等がそれで『統一』と『聖地の回復』という野望を捨てるとも思えぬが…それでも我々貴族が先に立ち勇気を示さねばならぬ」
「……『覚悟』はできてるみたいだな」
「はは…覚悟ができていなければ、ここに居やしないよ」
「自暴自棄になって死ぬ事しか考えていないマンモーニなら蹴りくれてやろうと思ったがその必要は無いようだな」
「怖いな…そうだ、一つ頼まれてくれないか。
  アンリエッタに会ったら『ウェールズは勇敢に戦い、勇敢に死んでいった』と」
「オレが生きていればな」
「頼む」
それだけ言うとウェールズは座の中に戻っていく。

残されたプロシュートはまだ微妙に痛む左腕の事を思い出し治療場所を探そうとするがそこに後ろからワルドに肩を叩かれた
「…わざわざ左肩叩くって事は喧嘩売ってんのか?テメー」

「ああ、怪我をしていたんだったな。だがきみに言っておきたいことがある。明日、僕とルイズはここで結婚式を挙げる」
「ここでか?」
「僕達の婚姻の媒酌を、あの勇敢なウェールズ王子に頼みたくなってね
  皇太子も快く引き受けてくれた。決戦の前に僕達は式を挙げる。きみも出席するかね?」
「オレ個人の任務はあいつの護衛だからな」
「ルイズなら僕が守る。それに君が残れば帰れなくなる」
「…オメーらはどうすんだ?」
「私とルイズはグリフォンに乗って帰る」
プロシュートは押し黙ったままだがワルドはそれを肯定の意と受け取ったようだ。
「では、君とはここでお別れだな」

薬を貰って痛みが和らぎ寝る場所を探すため廊下を歩いていると窓を開けて月を見ている人影を見付けた。
「なにやってやがる」
「あの人達…ウェールズ皇太子はどうして死を選ぶの?姫様が…恋人が逃げてって言ってるのに」
そう言うルイズは半泣き状態で目から涙が零れ落ちていた。
「色々守るもんがあるんだとよ」
「…なによそれ。愛する人より大事なものがこの世にあるっていうの?」
「オレが知ったこっちゃねぇがな。少なくとも覚悟はできてたみたいだぜ」
「…もう一度説得してみる」
「止めとけ」
「どうしてよ」
「あの目はオレ達が組織に反乱を起こした時の目と同じだ。だからオメーがどう説得しようと止める気はないだろうよ」

「それでも…!」
「なら、気絶させてでも連れ帰るか?オメーにそれをやるだけの覚悟があんのならやってやってもいい」
その案を本気で考え込むがさらにプロシュートが続ける
「だが、オレの見たところあの王子はそれで連れ帰ったとしても
   自分一人無様に生き残ったと思い命を絶つタイプだな。その責任に耐えれるなら何時でも言いな」
「…早く帰りたい」
そう呟とさらに涙が頬を伝い地に落ちる。
「そういやオメー明日ワルドと結婚するんだってな」
「……え?」
「…聞いてねーのか?決戦前に皇太子を媒酌に式挙げるって言ってたんだがな」
「…聞いてない」
「覚悟も決めさせねーうちにやらかすのもどうかと思うが…
  まぁいい。オメーとワルドの問題からな…オレが口を出す事でもない」
それだけ言うと短く「寝る」といい去っていく。徹夜してたのだから当然眠い。
(本人に知らせてないってのが妙だな…気になる事もある…カマかけてみるか)

後に残されたルイズは明日急に行われる結婚という事自体を半ば受け入れられずにいる。
「……あいつが言う覚悟ってどういう事よ?」
それだけ呟くがギャング的『覚悟』をルイズが理解する事はまだできないでいた。

翌朝、非戦闘員は船への乗り込み、戦闘員は戦闘準備をする中プロシュートがワルドを見付けた。
「ここを出る前に話がある」
「式の準備で忙しいんだが…まぁいい聞こうじゃないか」
「人が居ない場所が都合がいいんでな…」
それだけ言うと来いと促し人気の無い場所へワルドを連れて行く。
「さて…話と言うのを聞こうじゃあないか
   よもや僕とルイズの結婚に反対してるとかいう話じゃないだろうね?」
「いや…結婚するにあたって受け取ってもらいてぇもんがあってな…」
「ほう…」
その言葉と共にワルドに近付き肩に手を当て何でもないかのように言い放った。
「『グレイトフル・デッド』っつーんだが『直』に受け取ってくれよ」
その瞬間、閃光の二つ名に相応しいスピードでプロシュートの手を振り払いワルドが離れた。
「おいおい…オレはオメーに受け取って欲しいもんがあっただけだぜ?逃げるこたぁねーだろうがよ」
「……貴様…何時から気付いた!」
「ハン!…自白したのはテメーだぜ?おい」
「なんだと…!?」
「オレはオメーに『グレイトフル・デッド』と言った事はねーし
  オメーを直接掴んだ事も無い。ルイズ、キュルケ、タバサを除けば知ってるのは…『土くれ』と『白仮面』だけだぜ?」
もちろんスデに死亡しているギーシュは員数外だ。
「この前は直が効かなかったみてーだが…その慌て振りからすると今は効くみてーだな…」
だが、そこに別の方向から声が聞こえる
「この前はというのは正しくないな」
後ろを振り向こうとするがその前に風に吹き飛ばされた

壁に打ち付けられ立ち上がるが再び正面を見据えるがそこに居たのは…全く同じ顔した人物…二人のワルドだったッ!
「カハ…ッ!…双子…か?随分と狡い真似を…してくれるじゃあねーかよ…」
「双子か…そんなチャチなものと比べないで貰いたいな。
   風のユビキタス(偏在)……。風は偏在する。一つ一つが私自身でありそれぞれが独立した意思を持つ」
そうして分身が懐から取り出した仮面を被る
なるほど、と理解した。魔力で作られた分身である以上、分身に老化が通用しないという事だ。
だが、今回は本体はそこに居る。広域老化で本体もろとも巻き込めばいいだけのことだ。
「おっと…酒場で見せたやつを使うつもりかな?止めておいたほうがいい
   私だけではなく城の防衛を担っている貴族達まで巻き込んでしまっては、すぐに我が軍が雪崩れ込んでくる事になる」
射程半径200メートルにも及ぶグレイトフル・デッドの長大な射程。敵組織を纏めて壊滅させるという攻め向きの能力であり
味方が射程内に多数居る状況下では逆に不利に要因になっていた。さすがに五万という数を相手にするにはスタンドパワーが足りないし流れ弾の危険性もある。
軽く舌打ちをする、広域範囲が使えないなら本体に直を叩き込み分身を消すしかない。そう考え持ってきたデルフリンガーを握る。
「兄貴…あいつ敵だったのか!?」
「そうみてーだな、覚悟決めろよデルフよォーーー」
覚悟を決め接近すべく駆け出そうとするが意外な言葉がワルドからもたらされた。
「フッ…聞けば君はアンリエッタに『「反乱」が「愚かな行為」で「赦せない」だと?』と言ったそうじゃないか
   君が元居た場所でも僕達と同じような事をしていたんだろう?そこでだ、僕達に加わる気はないか?君のその一人で何千人も相手にできる能力は正直欲しい」
「……オレにルイズを裏切れって事か?」
「違うな、ルイズは僕と結婚する。つまり僕の仲間になるわけだ。君が裏切るって事にはならないさ」
「…なるほど…な」
そう低く呟くプロシュートの声をワルドは了承と受け取った。
「了承したなら、礼拝堂に来たまえ。そこで式を行う」

「……どうやら…本気で死にてーようだな」
絶対零度の声でそう言い放つ。
「オレ達チームが組織を裏切ったのは組織がオレ達の信頼を裏切ったからだ…
   分かるか?ええ、おい…?オメーはオレ達が裏切った組織と同じ事をやってんだ…そんな連中にオレが従うと思ったら、もう老化が始まってんぜ?」
その言葉に悪鬼のような形相でプロシュートをワルドが睨む。仮面をしていて分からないが多分、分身も似た様な感じだろう。
「…たかが平民に世界を手に入れる機会を与えてやったというのに、まぁいい!ルイズさえ手に入れば目的の一つは達せられるッ!!」
「兄貴!『エア・ハンマー』だ!」
「「デル・イル・ソル・ラ・ウィンデ…」」
本体と分身二つの声が重なり同時に魔法が詠唱されようとしている。
吹き飛ばされたせいで間合いが開いている。後ろは壁、横は回避できる程のスペースは無い。
ならば正面へ突っ込み詠唱が終えられる前に攻撃する。だが、『エア・ハンマー』の詠唱は本来殺傷能力がある呪文より短い。
こちらの射程に達するまえに空気が爆せた。
『エア・ハンマー』の同時詠唱。その威力は練兵場での手合わせで見せたものより遥かに上だ。
それを理解した瞬間風の塊をモロに食らい吹き飛ばされ壁に体の左側から打ち付ける。
風の塊に吹き飛ばされている途中背骨が軋み壁に打ち付けられた瞬間、視界が赤く染まり全ての音が途切れた。
口や体中から血を流しピクリとも動かない。
「…言ったはずだ、本物のメイジには勝てないと」
そう吐き捨てるように言うと分身が消えワルド一人だけになる。
「少々手間取ったが…礼拝堂へ行かなくてはな」

プロシュート兄貴 ― ?


戻る<         目次         続く
+ タグ編集
  • タグ:
  • 第五部
  • プロシュート

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー