ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ディアボロの大冒険Ⅱ-16

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匿名ユーザー

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夜も更けて頭上には、月が二つ輝くだけのヴェストリ広場。
人っ子一人居る筈が無いその場所に一人の男が居た。
その名はギーシュ・ド・グラモン。武勲で知られるグラモン家の四男である。
静かに夜空を見上げる顔からは何の感情も読み取れない。
そのまま瞑想を続けるギーシュの耳に足音が聞こえた

「来たね」

そう言ったギーシュの視線の先、そこにはこちらに歩いてくるディアボロの姿。
「ふん?あの時に言ったはずだがな……逃げる必要が私には無い、と」
ホールに居た時に聞いたギーシュの言葉を思い出すディアボロ。
(『ヴェストリ広場で待って居る』か・・・・・・ククク)
ディアボロはそのままスルーしても良かったのだが、何やら面白そうなので行く事にしたのであった。
まずは手始めとばかりにギーシュをおちょくってみる。
「それで?新しい芸でも見せるのか?それとも、馬鹿の一つ覚えのようにつまらない人形劇を繰り返すか?」
嘲りの声を向けられてもギーシュの静かな顔が変わらない。
その目から何かを感じ取ったディアボロ。
「どうやら・・・・・・本気のようだな」
「ああ、これは僕の・・・・・・ギーシュ・ド・グラモンの命を賭けた決闘だ。
 遊びだとは絶対に言わせない!」
続いて振られる薔薇の造花とワルキューレの言葉、それに応えるように青銅の女騎士が現れる。

ディアボロを見つめるギーシュに思い返されるは、自室で寝込んでいた時に見ていた夢―――
その夢の中にはここではない別の世界から、自分を慰める『自分達』の姿があった。
『殺されずにすんだから良かったじゃないか』『死ぬよりはマシだよ』『ワルキューレを全滅させられただけだから安心しなよ』
優しく、本当に優しく、子供に言い聞かせるように語ってくる『自分達』

それを聞いたギーシュは吐き気がした。

自分を慰める『自分達』の姿にでは無く・・・・・・それを聞いて安心する自分自身に
しょうがなかったと、自分に言い訳をして敗北を認める事、それが死ぬよりも辛い事に今更ながら気づいた。
そう思えば後は簡単だった。
善は急げとばかりに、ベッドから跳ね起きて図書室へ赴く
そこでギーシュは必要な物を探しながら、グラモン家の家訓である『生命を惜しむな、名を惜しめ』の意味をやっと理解する事が出来たと感じた。

「いけッ!ワルキューレ!!!」

そのままワルキューレをディアボロに突っ込ませる。
ワルキューレは武器を振り被って目前のディアボロに叩きつけようとした。
が、ディアボロに当る一瞬前に、そのワルキューレはデルフリンガーで逆に叩き切られた。
何の抵抗も無く、縦に一刀両断されて鯵の開きのような姿になるワルキューレ。

「面白くなる・・・・・・と思ったが期待外れだったか?」

呆れたように呟くディアボロ。
彼の目には今のギーシュの行為は、ワルキューレを一体無駄にしたとしか思えない。
だが――――

「油断は良くないよ!」

ギーシュの叫びと同時に、両断されたワルキューレが何の前触れも無しに『破裂』した。
そして四方八方にに撒き散らされる砂、砂、砂の嵐。
至近距離に居たディアボロはその砂をまともにくらってしまい、視界が暗闇に閉ざされた。
それを見るギーシュが新しいワルキューレを生み出す。
こちらに走ってくるワルキューレの足音を聞いても動かない。動けないディアボロ―――目潰しと同時に足元が泥濘になり、次の瞬間石に変わったからだ。
足が動かずに目も見えないディアボロは・・・・・・ワルキューレの攻撃を無防備でうけるしかなかった。

ザクッ!ズグッ!とヴェストリ広場に肉を裂く音が響く。
そのワルキューレの攻撃をくらっても構わずにディアボロは剣を振る、しかし、斬っては離れ、突いては離れる完璧なヒットアンドアウェーを見せるワルキューレ達には当らない、当るはずがない。
数を少なくする事によって連携の精度を上げた部分もあったが、今のワルキューレからは何かの凄みも感じる。
「右だ相棒!って、そこ違う!俺から見て右だよ!」
デルフリンガーの指示も虚しくフルボッコにされるディアボロ。
と言うかぶっちゃけデル公の指示は邪魔にしかならない、混乱するだけである。

誰がどう見てもギーシュの圧倒的優勢。なはずだが。
顔から流れる嫌な汗をギーシュは止める事ができなかった。
目を潰され、足を固められ、インテリジェンスソードの指示も全くの無駄にしかなってない状況。
ピンチのはずだ。
だと言うのに。

―――――今のディアボロの顔に笑みが浮かんで来ていると言うのは何故なのか?
「……っ、ふ」
ディアボロの口から息が漏れ。
そして、酷く唐突に彼は笑い始めた。
「ふ、ふふふふ。は、ははっははははははははは!!!!!」
傍から見れば、それは確実にディアボロが狂ったとしか思えない。
だが彼は満面の笑みを浮かべ、面白い物を見たかのような笑いを発している。
何も見えない目で、夜空を見上げながら少年のように笑っている。
何かを言いたげなデルフリンガーを鞘に収めると、ギーシュの方を向く。

「はは、はははははははははは!はは、は、は、は!面白い!何とも面白い!
 自分の最善を尽くして敵を仕留めようとするとは!かつての裏切り者達を思い出すぞ!」

奇妙なダンジョンの敵とは違い、ディアボロの能力を把握して冷静に対策を立ててくるギーシュ。
自分のスタンドを知って尚、闘志を失わずに策を張り巡らせてきたブチャラティやジョルノがディアボロの脳裏に浮かんでくる。

「侮辱してすまなかったギーシュ!私も遊ぶのは止めにしよう!」

その言葉と同時に――――紙から取り出したDISCを頭にINするディアボロ。
背筋に冷たい物が走るギーシュ。あれはヤバイ何か分からんがとにかくヤバイ。
今までのギーシュなら何も感じずに余裕をかましていただろう
だが成長したギーシュに迫り来る脅威を感じられないわけが無かった。
だからと言って今のギーシュはこの決闘から逃げる選択肢を選ばない。

「……ワルキューレ!!」

恐れを叫びで吹き飛ばし命令する最後の強襲、ワルキューレが狙うはディアボロの頭部と心臓。
しかし、そのギーシュの号令も空しく。
人間の動体視力では捉えきれない速度で、ディアボロの体から出て来た『何か』が
周りに居た全てのワルキューレを『消滅』させた。

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!』

常識を超えた豪速のラッシュの直撃―――欠片すら残さずに塵となるワルキューレ達。
破壊に一瞬遅れて、辺りの大気が震え、雷のような破砕音が響き渡った。
それが意味する事は、攻撃が音の速さを超えていたと言う単純明快な真理
砂で潰された目が直り、石で固められた足を抜け出、鞘に収めたデルフリンガーを引抜いて動きだすディアボロ。
優勢な状態から、一転してピンチになるギーシュ。
だが、彼にはまだ切り札があった。

(そうだ、それで良い!そのままこっちに近付いて来い!)

ディアボロが来る前にその『罠』の準備は完了していた。
罠。とは、ディアボロとギーシュの間にある何の変哲も無い地面にある。
緻密な前準備の成果により、踏んだ瞬間に足元から長さ2メイルもある青銅の剣が飛び出すと言う物。
ワルキューレで倒せるならそれで良い。
もしも、倒せなかったとしても罠を踏ませれば良い。
ギーシュは今度こそ勝利を確信した。
しかし――――――

「罠か!本当に楽しませてくれるなギーシュ!」

図星をズバリ言い当てられたギーシュが顔面を蒼白にさせられる。
ハッタリかと思ったが、ディアボロは罠がある場所だけを横移動で避けてこっちに向かって来ている
考えている事を読まれたとしか思えないギーシュ。

「何故!?何故分かったんだ!?」

大嫌いな努力と頑張りを使って、何の痕跡も残らないように偽装したのである。
それに時間は夜中、どんなに注意深く見ても絶対気付かれないはずであった。
だが、現にディアボロは罠の存在を見破っている。
ほぼ至近距離まで近付かれて魔法を使う暇も無い、万策尽き果てたギーシュ。誰が見ても敗北は必至。
しかし、ギーシュの目の中で燃えている闘志はまだ消えてない。
後ろに跳んで距離を離し、次の策を考えるまでの繋ぎとしてワルキューレを作成する。
そこまで考えたが、その隙が無い。
振り被られるデルフリンガーを見ながらも、ギーシュは諦めずに勝利へ繋がる方程式を考える。

(右、左、背後、どれを選んでも次は回避できない!なら!)
振り下ろされるデルフリンガー
それを見ながらギーシュは……

ディアボロに全体重をかけた体当りをしたッ!!
腹に突き刺さるデルフリンガーの味に、口から苦い物を吐きそうになるが、根性で押し留める

「ふん?」

感心したようなディアボロが押された先には、苦心して作ったギーシュの罠!
ズブンッ!
地面から突き出される2メイルの長剣がディアボロに突き刺さる!
「僕……の勝……ちだ」
酸素不足と激痛でギーシュの意識が朦朧とする中、自分のやった行為の結果を見届けるべく長剣が突き刺さったディアボロを見る。
確かに長剣が突き刺さっている、だが、次に見た物はギーシュの予想を軽く上回っていた。
「さすがだ……ギーシュ・ド・グラモン」
体を断ち切るような格好で刺さっているのだ、それは致命傷と言うしかないだろう…なのに
自分の体に刺さった長剣を引抜く―――と言うより、長剣に刺さった自分の体を引抜いているディアボロの姿。
「な……に?」
断続的な睡眠と覚醒への葛藤が激しいギーシュには、それを言うのが精一杯だった。
思い出したかのように、胃を通って、喉を通って、口から吐き出される血液。
倒れて、地面の土に口付けをするギーシュ。
「あっ……あっ……」
無理矢理に立ちあがろうとし、力が入らない手足を蛞蝓のように動かす。
だが、ギーシュのそれは地面に頬を擦り付けるだけの無駄な運動にしかならない。
そうこうやっている内に、ディアボロが長剣から脱出した。
こちらはギーシュと違って、血の一滴さえも吐き出さずに平静な顔を崩す事も無い。

ディアボロが生きている、ならば戦わなければ、杖を拾って、魔法を唱え、勝利へ繋がる行為をしなければ

そんな事を考えている内に、ディアボロが近付いてくるのが朦朧とするギーシュの視界に映った。
「あ、あ、ああああああああああっ!!!!!」
腹に刺さったデルフリンガーを引抜かれて口から情けない悲鳴が漏れる。
自分はこれからトドメを刺されるだろう、そう何と無しに確信した。
しかし、次にディアボロが取った行動もギーシュの予想を軽く上回っていた
腹部に衝撃、と、同時に何かが詰め込まれるような感覚
それを感じながら、ギーシュは今度こそ完全に気絶した。

目の前に倒れているギーシュを見る一人と一振り。
ギーシュの腹部に傷は無く、服が破れているだけだ。
そして、ディアボロが感嘆したように呟く。

「何が何でも勝とうとする『執念』………見せてもらったぞギーシュ」
「やれやれ…相棒も困ったもんだな」

そう言って、ギーシュから歩き去って行くディアボロ。
夜空に輝く月と星だけがそんな二人の決闘の決着を静かに見詰めていた。


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