ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

第一話 【眠りすぎた奴隷】

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匿名ユーザー

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『彼らが”眠れる奴隷”であることを祈ろう………
 目醒めることで…何か意味のあることを切り開いて行く
 ”眠れる奴隷”であることを……』

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第一話 【眠りすぎた奴隷】


かつての仲間の船が見えなくなっても”彼”は岸から離れようとはしなかった。
”彼”には理解できなかった。”あの人”と”彼ら”の行動が…。

”あの人”の言うことは確かに正しい。それは”彼”にも理解できた。
親が子供を自分の都合で殺す。それはきっと、いや…確実に許されないことだ。
だが、自分たちは『聖人君子』でもなければ『栄えある一般市民』でもない。
悪事を働き、法律をやぶる『ギャング』なのだ。
人を脅かし、人を傷つけ、人を殺す…悪人。
どんな綺麗事を吐いたところで それは変わりようのない『真実』だ。
その『ボス』が我が子を殺そうとも、自分たちのような下っ端には関係ないことだった。
なのに、”彼ら”は行ってしまった。何の根拠もありはしないはずなのに。
まるで『正しい道』であることを信じて歩んでいるかのように…。
まるで『間違った道』を進んでいるのが”彼”であるかのように…。

”彼ら”はこれから組織と闘い続ける運命にあるのだろう。
だが、”彼”の運命はどのようなものになるのだろうか?

(このままだと始末されてしまうかもしれない。
 そうならないのならば、始末に向かわされることになる…)

一緒に行くことを拒否してしまったけれども、
長年つきあった”彼ら”と殺し合いはしたくない。それが”彼”の想い。
だからこそ、あの場で船を『見送った』のだ。
たとえ、その場で殺さなければ組織に残れる可能性が『ゼロ』になるとしても…。

(『死ぬ』か、『死なせる』か。
 両方とも選ばないというのは、まず不可能に近い。
 しかし、どちらを選ぼうとも、このままではまずい!
 何処かへ一旦身を隠すべきだ!)

ありきたりではあるが、現実的かつ妥当な結論に達した”彼”は
『ボス』がいるであろう この島からの脱出を試みることにした。
来たときに乗っていたボートは”彼ら”が乗っていってしまったので もう無い。
やはり泳ぐしかないか…と、なにげなく振り返った”彼”は目を見開く。

「なッ!かッ…鏡!?」

いつのまにか背後の空間…というよりも真後ろに光り輝く『鏡』が浮かんでいたのだ。
『鏡の世界』! ”彼”には昨日の敵の姿が思い起こされた。
驚きのあまり、今度は『体ごと』振り向いた。
瞬間!
ズ、ズゴォオオオオオオオ!
その動作の為に触れてしまったのか
”彼”の体が『鏡』に飲み込まれていく!

「バ…バカなッ!ヤツには確かにとどめを…!」

しかし『鏡』は、そんな動揺にはお構いなしに引きずり込んだ。
まるで”彼”を導くかのように…。

”彼”は、この『黄金の精神を持つ者達の冒険譚』から
文字通り『退場』した。


ドッグオォォォォォン
           ォォォォォン
                 ォォン

さわやかな爆発音が、澄みきった青空にこだまする。
だだっ広い草原に集う生徒たちが、今日も小悪魔のようなドス黒い
笑顔で、少女をあざ笑っていく。
汚れを知らない心身を包むのは、白い色の制服。スカートのプリーツは
乱さないように、黒いマントは翻らせないように、ゆっくり歩くのがここでのたしなみ。
もちろん、使い魔を召喚できないといった、はしたない生徒など存在していようはずもない。

約一名をのぞいては。

「野郎の絶望の顔をみろ~~~ッ
 杖を手にしていい気になってた顔が青ざめてるぜ───ッ!!」
「しょせん!『ゼロのルイズ』…
 ルイズには使い魔ごときも召喚できるはずねーのよッ!!」

周りの生徒達からは嘲笑、冷笑、よくても苦笑の表情が伺える。
『ルイズ』と呼ばれた”少女”はそんな野次馬たちの笑い声にめげることなく、
「せいぜい言うがいいわ!あなたたち!私の使い魔が現れたら
 そんな台詞はもう使うこともないでしょうから!!」
と強気に返す。しかし心の中では傷つき、嘆いていた。
(ああ…我らが始祖様……せめてこの儀式だけは失敗したくないんです…
 どんなヤツでも構いませんから、どうかお願いします…。)

その一途な(?)心が天に通じたのか、爆煙の向こうに”何かの影”が見えた。

(ついに成功したのね!『サモン・サーヴァント』に!
 これで 忌々しい二つ名、『ゼロのルイズ』からもオサラバだわッ!
 召喚されたのは ワシ?フクロウ?それともグリフォン?もしかしてドラゴン?)

そう喜んだルイズだったが、『どんなヤツでも』と言ったことを忘れてしまっているようだった。

煙霧の向こうから現れたのは 気絶した一人の男。しかもとても奇妙な格好をしていた。
顔は理知的で中々の美形に見えるのだが、着ている服は上下とも穴だらけ。
しかも直に着ているので、肌や ヘソが丸出しというファッション。いっそ裸の方がすがすがしく見える。
(何なの…こいつ?露出狂の平民?)
「ミスタ・コルベール!もう一度、試験のやり直しを要求します!」
教師に向かって叫ぶルイズ。しかし その願いは、実にあっさりと棄却された
「駄目だ。『サモン・サーヴァント』はこれからのメイジの属性を定めるもの…。
 その属性の象徴たる『使い魔』を変えることは認められない」

(ということは平民を呼び寄せた私はやっぱり『ゼロ』ってこと~?
 まったく冗談じゃないわよ~!?このハゲ!)

この教師が、『より輝ける人物』になることを心の底から望みつつ
ルイズは呪文を唱えた。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ…」

眠っている青年の頭を持ち上げて 瞬間、唇を重ねる。
(ああ…ファースト・キスが露出狂とだなんて……)
「終わりました…」
いろいろな意味がありそうな『終わりました』だが、一応契約の儀式である
『コントラクト・サーヴァント』は完了した。
と同時に、
「うぐぅあああああああああっ!」
全身が灼けるような『痛み』によって男が意識を取り戻した。

その『熱』に身悶え、男は左手を押さえる。
…『左手』?
そう、その手首に巻かれた腕時計が狂うことなく『正常』に動作し、時を刻んでいく。
確かにそれは『左手』だった。
「か……『鏡の世界』じゃ…ない??」

(『鏡の世界』…?)
いきなりトンチンカンなことを言い始めた『使い魔』に
さっきから不愉快続きだったルイズはついに堪りかねた。
「ちょっと!あんた…名前は!?」

いろいろなショックを受け、朦朧とした頭で”彼”は
困惑しながらも己の名を口にする。

「ぼくはフーゴ……パンナコッタ・フーゴです……」


最後の”眠れる奴隷”が目醒めた。


『紫霞(しか)の使い魔』

To Be Continued…

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