ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ディアボロの大冒険Ⅱ-14

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匿名ユーザー

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フーケの声を聞いても、自分の方に歩いて来るゴーレムを見ても、ルイズは動く事が出来なかった。
『ディアボロが自分を庇って死んだ』その事実が体から気力を奪い取っている。
今のルイズの頭に浮かんでいるのはディアボロと過ごした日々。
我侭ばっかりだった自分に怒りもせず、何で一緒に居てくれたんだろう?

そう思った瞬間
ルイズは立ち上がり『破壊の杖』の代わりに己の杖を抜く。
呪文を唱え、魔力を込め、自分が出きる唯一の魔法を解き放つ。

解き放たれた爆発がゴーレムの鉄の足を襲った、しかし、傷一つ罅一つ入らない。
それでも、ルイズは止まらずに魔法を放ち続ける。
「小虫が足掻くわねぇ」
無駄な努力をするルイズを嘲笑うフーケ。
絶体絶命なルイズ。
その瞬間

「考え方を変えて使え…と言った筈だがな…」

静かな声が響き剣閃が、ゴーレムの足に走った。
今まさに歩き出そうとしていた所に決まる、完全に完璧な不意打ち。
「え!?」
無様に転倒するゴーレムと肩から落下するフーケ。
受身を取りながら、攻撃を受けた個所を見ると―――

信じられない者が居た。陥没した地面から普通に立ちあがっているディアボロが居た。
相変わらず、腕や足からは骨が飛び出し、腹からは内臓が駄々漏れ、人間の原型を留めているのが不思議な姿
なのに。

「そんなに驚いた顔をしてどうしたんだ・・・・・・え?フーケ」

声は全く平静で、負傷など感じていないかのような足取り
その場に居た誰もが一生忘れないだろう悪夢じみた光景。
「馬、鹿な!?」
あの状態で人間が生きていられるはずが無い、ましてや動く事など不可能なはずだ。
だが、今現在ディアボロは動いている。
人生で始めて感じる未知の恐怖に、ゴーレムを動かす事も忘れてフーケの体が震え出す。
その隙を逃すディアボロでは無かった。

「フーケを捕まえるチャンスだぞ?」

ハッと気付いた時にはもう遅い。
傍らに立っていたルイズから魔法の爆発をくらって、フーケは吹き飛ばされ木の幹に激突して意識も吹っ飛ばされた。フーケ編完である!
「良くやったな」
気楽に喋るディアボロに走って来たルイズ
「そんな事言ってないで!速く学院に戻らなきゃ!」
痛々しげな目でディアボロの傷を見る。目からは涙が溢れている。
シルフィードから降りて来たキュルケとタバサもそれに続く。

「そんなに酷い傷では無い……フーケを縛り上げて戻るぞ」
煩げに手を振って答えるディアボロだが。
その言葉を無視する3人に抱え上げられて強引にシルフィードの背中に乗せられた
「学院に戻って」
タバサの命令にシルフィードが一鳴きすると、そのまま全速力で飛んで行く。

「相棒……大丈夫なのか?」
「心配いらんと言っているが……あいつ等も心配性な事だ。この世はアホだらけなのか?」
手足の骨がぶち折れて内臓がはみ出てるのに、平静すぎるデイアボロが異常なのだが。
それに突っ込みを入れる者や物はこの場には居なかった。

(ロードローラー並だったな……)
シルフィードに揺られながらも、つらつらとそんな事を考えるディアボロ。
まあ、腹減りもヤバイ所まで来てたから早く戻れるなら良いだろうと考え直し。
(取り敢えずは、万が一に備えて応急処置だけはしておくか)
エニグマの紙からフー・ファイターズのDISCを使用して傷を治す。
プランクトンで治る傷なのかと誰もが疑問に思うが、傷は治っているので問題は無かった。
ルイズ達の心配とは程遠い不死身ぶりを見せているディアボロであった。

学院に戻ってからディアボロは、きゅいきゅいと鳴いて煩いシルフィードを放って医務室に寄らずに厨房に直行した。
そんなディアボロに遅れる事数時間。
学院に戻ってきたルイズ達3人が見たのは、厨房で元気に食事をするディアボロの姿。
「ええ!?大丈夫なのディアボロ!?」
「問題は無い。と言っただろう」
厨房に着いた時には傷は自然治癒していたのである。
適当に答えて無傷の体を見せるディアボロ。
常人なら数ヶ月はベッドで昏睡状態のはずだが、医務室の治療が完璧だと思って強引にルイズ達は疑問を拭った。

そして、学院長室でオスマンが事の顛末を聞いていた。

「ミス・ロングビルが土くれのフーケじゃったとはな……全く気付かなかったわい!」
「そうですな学園長」

お前等実は気付いてたんじゃね?との視線を物ともせずにオスマンはルイズ達を褒め出した。
フーケは衛士に引き渡され、破壊の杖は無事に宝物庫に収まり一件落着である。
そしてオスマンは、ルイズ達にシュヴァリエの爵位申請を宮廷に出した事を告げた。
「本当ですか?」
キュルケとルイズは喜びの声を上げた。が一瞬後ルイズの表情だけ固くなった。
「オールド・オスマン。ディアボロには何もないんですか?」
「貴族ではない平民の変態では、な」

平民はともかく、変態は関係無いと思う。
そんなこんなな感じで、ルイズとオスマンが話しているが、正直ディアボロにとっては如何でも良い事である
「……シュヴァリエとは何だ?」
取り敢えず、朝からシュヴァリエが何なのかを聞きたかったので、ここぞとばかりに質問してみる。
「知らないの?王室から与えられる爵位よ、最下級のものだけど。
 シュヴァリエは他の爵位と違って、純粋な業績に対してのみ与えられる爵位だから
 私達のような年齢で与えられるなんて驚きよ。」

無い胸を張って、そう誇らしげに語るルイズ。ディアボロも疑問が解けて満足気だ。
それを見ながら、オスマンは手を叩いた。

「さてと、今日の夜はフリッグの舞踏会じゃぞ?
 この通り『破壊の杖』も戻ってきて、予定通り執り行う事が出来て万々歳じゃよ。
 今日の舞踏会の主役は君たちじゃ、用意をしてきたまえ。」

三人は一礼するとドアに向かった。だがディアボロだけ部屋から出て行こうとしない。
疑問の視線を向けるルイズに手を振ると。
「先に行け……私はちょっとした用がある」

ルイズの疑問はまだ解けていないようだが、取り敢えず頷いて部屋を出て行った。

「何か、私に聞きたい事がおありのようじゃな?」
「ガン…何とかとは何だ?」
そう問い掛けるディアボロの目の前で、いきなり明後日の方向を見て口笛を吹き出すオスマン。
あからさまに怪しい。
「ふん?まあ、良い……次の疑問だが。あの『破壊の杖』は何処で拾ったものだ?」
「……何でそんな事を聞くのじゃ?」
疑問文に疑問文で返すオスマンを見て、こめかみを引き攣らせるディアボロ。
「あれは私の元居た世界の武器だからだ……それが気になってな」
「『元居た世界』?……なるほど、それなら納得できるのう」

オスマンは溜め息をつくと、遠い目をして語り出した。

森を散策中にワイヴァーンに襲われた事。
そんなピンチのオスマンを『破壊の杖』を使って助けた男が居た事。
怪我をしていた男を学院に運び込んで治療したが死んでしまった事。
最後に残った一本を『破壊の杖』と名づけて宝物庫にしまい込んだ事。
そして、男がうわ言のように繰り返したのが『ここはどこだ。元の世界に帰りたい』だった事。

そこまで喋り終えてディアボロを見詰めるオスマン。

「きっと、彼は君と同じ世界から来たんじゃろうな……」
「…………」
「そして…おぬしの最初の疑問じゃが、そのルーン……」
「これがどうかしたのか?」
ディアボロが自分の左手にあるルーンをオスマンに向ける。
「それはガンダールヴの印じゃ……伝説の使い魔の印じゃよ」
「ガンダールヴ?」
「そうじゃ。その伝説の使い魔はありとあらゆる武器を使いこなしたそうじゃ。
 曰く神の盾……もしくは……神の左手ガンダールヴという」
疑問が全部解けたので、そのまま学院長室から退出しようとするディアボロ。
ルイズが何故そんな伝説の使い魔として召喚できたのかは、如何でも良い疑問として片付ける。
ドアを開けようとした時、後ろからオスマンの声が聞こえた
「恩人の杖を取り戻してくれて……ありがとう……!改めて礼を言うぞ
 お主がどういう理屈で、こっちの世界にやって来たのか、わしなりに調べるつもりじゃ。じゃが……」
「?」
「何も解らなくても、恨まんでくれよ?なに、こっちの世界も住めば都じゃからな」

帰る手段はあり、帰る気も無い、そんなディアボロはオスマンの言葉を如何でも良い事として聞き流す。
彼にとっては理屈が解ろうが解らまいがどちらでも構わないのである。



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