ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの来訪者-3

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育郎が目を覚まし、窓の外を見てみると、どうやらまだ夜明けと言った様子である。
ベッドの方を見ると、ルイズがすやすやと寝息を立てている。
「こうしている、と普通の女の子なんだけどな…」
この少女が魔法使いで、しかも自分をこの世界に呼び出したとはとても思えない。
だが事実は事実。
「とりあえず洗濯でもしよう…」
昨日ルイズが脱いだ下着を、服でくるんで持ち、部屋の外に出る。


ちゅうちゅう(大佐、侵入に成功した)
「うむ、よくやった。そのままミッションを遂行するのじゃ」
職員用宿舎の、とある一室の前で、窓から部屋の中を伺う老人がいた。
その視線の先には、彼の秘書たるミス・ロングビルの部屋に潜り込んだ、
彼の使い魔のネズミがいる。
ちゅうちゅう(大佐、目の前に齧りかけのチーズがある。食べてもいいか?)
「ふむ、時間をかけたかけたくない、無視して進むんじゃ」
ちゅうちゅう(食欲を持てあます)
「よいかモートソグニル。このミッション…
 『ミス・ロングビルは黒に限るぞ計画』の困難さと重要性を良く考えるのじゃ。
 今からお前は、黒いパンツ意外をかじり、下着を使い物にならなくすると言う、
 変われるものなら変って欲しいミッションを必ず成功させねばならん」
ちゅうちゅう(駄目だ大佐、我慢できない)
「むう…早く済ますんじゃぞ」
ちゅうちゅう(了解した…なに!?大佐、まずい!)
「どうしたんじゃモートソグニル!?モートソグニィィィィィィィィルッ!!!!」
「あの、すいません」
「どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
部屋の中を覗くのに集中していたため、突如声をかけられ、飛び上がらんばかりに驚く。
すぐさま振り向いて凄い勢いで弁解しだす。

「ち、違う!違うんじゃ!
 こ、これはミス・ロングビルの部屋に入り込むいけない妖精さんが見えて、しかたなく…
 だから内緒に!って」
そこまで言って目の前にいる少年が自分が見たことのない人間であると気付く
(い、いかーん!見回りの衛兵かと思えば全然知らん顔じゃぞ!?
 これならボケたフリをしとくんじゃった!)
「あの、ちょっと聞きたい事があったんですが…」
「き、聞きたい事!?なんじゃね?遠慮呵責なく聞きたまえ!いやもう、バンバンと!
 ほらはやく、ワシの気が変らんうちに!」
「はぁ…」
少年の言葉に過剰に反応し、うやむやにしようとするが、そうは問屋が卸さなかった
「ミスター・オスマン…」
声と共に『ゴゴゴゴゴゴゴゴ』と効果音が聞こえてくる程の殺気が襲ってくる!
「な、なんじゃね?」
後ろを振り返ると、理知的な顔をした女性がパジャマ姿で立っていた。
「そのいけない妖精とはこのハツカネズミではないでしょうか?」
ひょいと、手に持っていたネズミ捕りを持ち上げ、罠に掛かったネズミを見せる。
「う、うむ。ミス・ロングビル、たぶんそのネズミを見間違えたんじゃろ…」
なるべく威厳を持って答えようとするが、声が震えている。
「そうですか、ところでこのネズミはオールド・オスマンの使い魔ではありませんか?」
「何を馬鹿な事を言っとるのじゃ!
 ワシのモートソグニルを、そのような薄汚いネズミと一緒にするでない!」
「ネズミさん、YESなら尻尾を振ってください。貴方はモートソグニルですよね?」
「………」
「………ほ、ほれ、ただのネズミが答えるわけ」
「正直に言ったらネズミ捕り用に買ったチーズを全部上げます」
ちゅう!(YES!YES!YES!YES!YES!YES!YES!YES!!)
「OH MY GOD!!(このネズ公、なんて勢いで尻尾をふりおるんじゃ!)」

「オールドオスマン…」
あまりの迫力に、オスマンはケツの穴にツララをブッ刺された気分を味わっていた。
(このアマ…ワシをやる気じゃ!『マジ』じゃ!
 秘書のクセにこのワシを始末しようとしている…
 こやつにはやるといったらやる………『スゴ味』があるッ!)
「あの…」
「「ん?」」
その声に二人が振り向くと、この状況についてこれず、困惑した表情をする少年がいた。
「えーと…どなたでしたっけ?オールド・オスマン」
「いや、わしも知らんよ。おお、そうじゃ!少年よ何か聞きたい事があったんじゃないかね?
 ならこのミス・ロングビルに聞くがよい。ワシは用事を思い出したんでここらでサラバじゃ!」
「あ、オールド・オスマン!」
飛んで逃げる老人を追いかけようとするが、自分がパジャマ姿であることを思い出し踏みとどまる。
悔しげに空を見上げた後、コホンと咳払いをしてから、少年に向きなおる。
「あの、聞きたい事があるとの事ですが?」
「はい…その、洗濯できる場所がどこにあるのか、あのおじいさんに聞きたかったんですが…
 すいません、なんだかお邪魔しちゃったみたいで」
「いいんですよ。こちらこそお見苦しい所を…ところで貴方、見かけない顔ですがどなたです?」
「えーと、僕は………使い魔、だそうです」

「まさか貴方が噂のミス・ヴァリエールの使い魔だったなんて…」
「噂…ですか?」
「ええ、平民が使い魔だなんて前代未聞ですもの。あ、あそこが水場です」
「すいません、わざわざ案内までしてもらって」
「いいんですよ、私も洗濯物が貯まってましたし」
そう言って微笑む。
「そうですわ、せっかくですから、一緒に洗って差し上げます」
「そんな、そこまでしてもらうわけには…」
「遠慮なさらずに、魔法を使えば早く終りますから」

桶の中で回転する洗濯物を感心した顔で見る育郎。時折
「まるで洗濯機だな…」「そうか、魔法が機械の変わりなんだ…」
等とつぶやいている。
それを見て密かにほくそえむミス・ロングビル。
ミス・ロングビルは唯の親切心で育郎を手伝っているわけではない。
(ふふふ、もしかしたらラ・ヴァリエール家のお宝の情報が得られるかも)
ミス・ロングビルとは世を忍ぶ仮の姿。
土のフーケ
彼女の正体は、今世間を騒がす怪盗なのである。
とはいえ、流石にそう簡単にいくとは思ってはおらず、半分以上は好奇心であるのだが。
「ところで貴方はどちらから召喚されたのですか?」
「信じてもらえないかもしれませんが…僕はどうやら異世界からきたみたいです」

(ひょっとして東方からきたの?)
流石に異世界からの来たなどと言われても信じられないので、彼女はそう判断した。
東方といえば、いまや交流もない秘境である。
嘘か真か、東方伝来という触れ込みの『お茶』という飲み物も結構な値で取引されている、
つまりお金になる。
「あの、イクロー君…こう呼んでかまいませんよね?
 疑ってるわけじゃないですが、何か証拠はありませんこと?」
「証拠…ですか?」
なにせ着の身着のまま逃げていた身である。
所持品といっても少々の現金以外大した物は持っていない。
(そういえば聞いた事がある…
 紙幣の印刷は偽造防止のために最新技術が使われていると…
 特に日本の紙幣は世界トップクラス!もしかしたら…)
そう考えてズボンのポケットの中か数枚の紙幣を取り出す。
「これ、僕の世界で使われているお金何ですけど…」

(こ、これはいったい!?)
出された札を見てフーケが驚愕する。
人物像に緻密に書き込まれた紋様と見たことがない文字。これだけらならまだ良い、
問題は真ん中にある、角度を変えると浮かび上がる顔と、同じように角度を変えると、
紋様まで変わる光る部分である。
魔法のアイテムかと思ったが、ディティクト・マジックでも魔力は感じない。
なにより驚かされるのは、まったく同じ絵が数枚存在している事である。
自分でも錬金するのは不可能な代物なのに、それを大量生産するなど…
一般人為や唯のメイジならこの特殊性に気づく事はないだろう。
しかし土のトライアングルメイジにして、多くの宝物を見てきた彼女には、
これが普通の代物ではないと看破する事が出来たのである。
「あの、ロングビルさん?」
「ああ、はい…ちょっと、これだけでは私にはわかりかねますね」
「そうですか…」
「…少し調べてみたいので、一枚預からさせて頂いてもよろしいですか?」
「ええ、いいですよ」
(ラッキー!もーけー!)

「それじゃあイクロー君、またねー!
 あ、そうそう、貴方が異世界から来たってあんまり言わない方が良いわよ!へんな誤解を招くから」
そう忠告をして、勿論本心は『他人に儲け話を知られたくないから』なのだが、
とにかくルンルンとスキップしながら去っていくミス・ロングビルを見て育郎は
(なんて親切な人なんだろう…)
と思ったが、それはまあそれだけの話。


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