ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

Start Ball Run-1

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目覚め――、というものは、いつも清々しく、心地良くて気持ちいいものでなければならない。
そう、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは思っている。
小鳥のさえずりが穏やかに眠気を覚まし、朝の涼やかな日差しが活力を与えてくれるような、さわやかな朝の目覚め。
そういうもので、なければならない。
だがしかし。今日の朝と来たら。
「どうして……。私を悩ますようなことばかりしてくれるのよ」
そう、目の前の使い魔に零す。いや、もう愚痴る。貴族として下品な物言いはしてはいけないことなのだが。
「や、やあ。おはようルイズ」
目の前の少年が、顔を引き攣らせて片手をあげながら、何とかしてこれから急直下性格が反転するだろうご主人様のご機嫌直しをする。
少年の首には、太い首輪がはめられていて、さらに太い鎖が壁にしっかりと繋ぎとめられている。
「才人……。どうして止めないのよっ!」
「い、いや、俺起きた時には、もういなかったし」
苦笑いを浮かべつつ、頬を掻いて弁解をする少年ではあったが。
その隣には――、彼がつけられている鎖より、さらに二回りほど大きなものが、三本。
その全てが、途中から、失われている。

この部屋の主である、ルイズ、と呼ばれた少女の趣味――にしては、随分恐ろしい風景であったが。
この鎖の先には――、間違いなく、彼女の使い魔が、括りつけられていた。
これほどの拘束を解いて我が家のように外出するなど、一体、どのような怪物なのかと、知らぬ者が見れば驚くだろうが。
それが、一見、変哲には、あまり見えない――いや、見方によっては見えなくもないが――成人の男性が、一人で成した。などと。
誰が信じてくれよう。
失われた鎖の先端。その先は力で引きちぎられたものでもなければ、鋭利な刃物で切り離されたものでもない。
――磨き離された。と言うほうが、しっくりくる。
彼の持つ“技術”によって、鎖は分けられたのだ。
「才人!! 命令よ! 今すぐあいつを捕まえてきなさい!」
「い、いや無理だってルイズ! 俺一人じゃ無理! 絶対無理!」
「うるさーーいっ! 主人の命令は聞きなさいよ駄犬がぁーーっ!」
ルイズ、と少年に呼ばれた少女が少年を蹴り飛ばす。
才人、と呼ばれた少年が少女に蹴り飛ばされる。
彼らと、実に奇妙な縁で関わることになった、一人の男。
その男は、曰く、使い魔。
少年――平賀才人と時を同じくして、同時に召還されたイレギュラーであり、運命共同体。
その、男の名は。
「さっさと戻ってきなさいよお――っ!! ジャイロォ――ッ!!」
さわやかな朝の日差しを透きとおす窓を乱暴に開け放し、少女の叫びと共に、騒々しく一日が幕をあける。

Start Ball Run

これは、――彼が、走り出す物語である。


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