ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

誕生! 空前絶後の女王騎士!

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誕生! 空前絶後の女王騎士!

「感激だわ。覚えててくれたのね」
さっきまでの某ブ男みたいな仕草をやめて、フーケは長い緑髪をかき上げた。
「まさか脱獄していたとはな……」
「親切な人がいてね。私みたいな美人はもっと世の中のために役立たないといけないと、出してくれたのよ……それがこの彼。私の新しい相棒よ」
フーケが指差すと、ゴーレムの反対側の肩に黒いマントのメイジが立っていた。
先程から口を利かず、白い仮面で顔を隠す男だ。
「おせっかいな野郎もいたもんだ。で、何しに来やがった? まだ殴られ足りねーのか?」
「素敵なバカンスをありがとうと、あなた達にお礼を差し上げに参りましたのよ」
フーケの双眸が鋭く光り、瞳が殺意の色に塗り変わる。
ニィッと不気味に唇の端を釣り上げると、巨大ゴーレムの剛腕が窓を狙った。
その一撃はベランダを粉々に破壊する。
今回のゴーレムの身体は錬金せずとも素で岩だ、破壊力は十分!
承太郎は咄嗟に背後に跳んで下がり、ルイズを脇に抱えながら階段を駆け下りた。
すると一階の食堂もまた戦場と化しており、メイジと傭兵が戦っていた。
メイジはワルド、キュルケ、タバサ、そしてギーシュだ。
彼等が食事をしているところを傭兵の一隊が強襲したらしい。
多勢に無勢なのか、いかにメイジでも苦戦をしいられているようだ。
キュルケ達は大きなテーブルを盾にしている。
傭兵達はキュルケ達が姿を現した瞬間に矢を射るつもりらしい。
承太郎はルイズを連れて、キュルケ達の隠れるテーブルに滑り込んだ。
「あらダーリン、そんなに急いでどうしたの?」
「脱獄したフーケがお礼参りに来やがった」
「そうみたいね。吹きさらしの向こう、何か見覚えのあるゴーレムの足が」
「説明不要だったようだな」
「ダーリン、どうする?」
「フーケの他にもう一人、仮面のメイジがいる。 恐らくそいつがフーケを脱獄させたんだろう……。
 そして俺達の妨害に来た。アルビオン貴族派の刺客と見ていいな」
「僕も同感だ」
ワルドが承太郎の言葉に続く。
「フーケはともかく、仮面のメイジというのは気にかかるな。
 何系統のメイジなのか、実力すら解らない。
 だがこのまま手をこまねいている訳にもいかない。
 いいか諸君、このような任務では半数が目的地にたどり着けば成功とされる」
こんな時でも本を広げていたタバサが、
パタンと本を閉じて杖を自分とキュルケに向ける。
「囮」
それからルイズと承太郎とギーシュとワルドを差す。
「桟橋へ」
ワルドが問う。
「時間は?」
「今すぐ」
「解った。裏口に回ろう」
ワルドは早速行動に移ろうとしたが、ギーシュが「待ってくれ」と制止した。
「タバサ、君はたった二人でここを足止めする気か? フーケもいるんだぞ」
「あのねギーシュ、私達は予定外の戦力なのよ?」
答えたのはキュルケだった。
「あんた達がアルビオンに何しに行くのかすら知らない。
 だからここに残るのは、そんな私達が適任って訳よ。解った?」
「ああ、よく解った。だが女の子だけに囮を任せたとあってはグラモン家の名が泣く。
 ジョータロー、すまないが僕もここに残る。ルイズを守って依頼を果たしてくれ」
相変わらずキザだがちょっと格好いい事を言うギーシュに、
キュルケはちょっと感心して、タバサも驚いたようにギーシュを見ている。
「……解った、ここは任せるぜギーシュ」
一番最初にギーシュの意志を受け入れたのは承太郎だった。
ギーシュは任せろとばかりに力強くうなずく。

「……死ぬなよ」
「もちろんだ。死んだら姫殿下とモンモランシーに会えなくなるからね」
軽口を叩いてギーシュは承太郎が安心して行けるよう心掛けた。
承太郎もそんなギーシュの思いやりを汲み取り、小さな微笑を返す。
「わおっ、ダーリンの笑顔なんて初めて見たわ」
「貴重」
キュルケとタバサも、どうやらギーシュが残る事を受け入れたようだ。
「ねえ、ルイズ。勘違いしないでね? あんたのために囮になるんじゃないから」
「わ、解ってるわよ!」
最後にキュルケがルイズをからかって、行動開始。
桟橋の下見をしているワルドが先陣を切り、低い姿勢で通用口へ向かう。
その際タバサが風の防護壁を張ってくれたため、傭兵の矢はすべて弾かれた。

承太郎達が無事裏口へと抜けた事を確かめたキュルケは、さっそくその場を仕切った。
「さあ、歌劇の始まりよ。ギーシュ、厨房にある油の入った鍋をゴーレムで取ってきて」
「お安い御用だが、いったいどうする気だい?」
「意外と根性のあるあなたに、私が頭を使った戦い方を伝授して上げるわ」
ギーシュの作ったワルキューレが厨房に向かうと、傭兵に矢を射られた。
鉄の矢と青銅のゴーレム、当然矢は突き刺さるが行動に支障は無い。
油の鍋をゲットすると、それを入口に向かって投げるよう指示された。
「了解……って、君、こんな時に何してるんだ?」
手鏡を覗き込んで化粧を直しているキュルケを見て、ギーシュは呆れ気味に言った。
「歌劇の始まりと言ったじゃない? 主演女優がすっぴんじゃ……しまらないでしょ!」
ワルキューレが鍋を投げ、油が巻き散り、それ目掛けてキュルケは杖を振った。
油が引火して宿屋の入口付近が炎に包まれる。
傭兵がひるんだ隙にキュルケはさらにさらに炎を強めるよう魔法を使った。
そんなキュルケに矢が放たれたが、再びタバサの風が矢を弾く。
「名も無き傭兵の助演男優の皆様! どうぞ微熱の炎と躍ってくださいな!」


「ったく。あの程度の炎で大騒ぎだなんて使えない連中ね。所詮金目当ての傭兵か」
「しかし、分散させる事はできた。我等の役目は果たされたのだ」
毒づくフーケを仮面のメイジがなだめた。しかしフーケは納得いかない模様。
「私はあいつ等のせいで恥をかいてるから、ここらでしてやりたいのよ」
「好きにしろ。俺はラ・ヴァリエールの娘を追う。合流は例の酒場で」
「やれやれ……承ったわ。じゃ、後でね」
仮面メイジはゴーレムの肩から飛び降り闇夜へ溶けるようにして消えた。
残されたフーケは頬を撫でる夜風の心地よさを感じつつ、眼下で炎から逃げ惑う雑魚傭兵どもを見下し、ゴーレムを動かした。
「その程度の炎で私のゴーレムを相手にする気? フフフ。貧弱! 貧弱ゥ!」
岩で構成された巨腕が振り上げられ、宿屋の入口目掛けて突き放たれた。

キュルケの炎により傭兵が逃げ出したところで、ギーシュは自分の出番だとばかりにワルキューレを追撃させようとした。
だがそのワルキューレは粉砕される、宿屋の入口ごと、フーケのゴーレムの腕に。
「にゃにぃーッ!?」
「あちゃあ。あの業突く張りの『おばさん』がいるの忘れてたわ」
キュルケが呟くと、物凄い怒声が放たれた。
「誰が『おばさん』だ! この『小娘』がァッ!」
「わお、地獄耳」
素直に感心しつつ無くなった宿屋の入口で仁王立ちするゴーレムをキュルケは見上げた。
プンスカプンなんてレベルじゃないほどフーケが怒り猛っている。
「どうする?」
キュルケはタバサを見た。タバサは首を振る。
巨大ゴーレムに自分達の魔法が通用しない事は以前の戦いで重々承知していた。
承太郎が思いっきりぶち壊してくれたおかげで、自分達の活躍する場も生まれたが、破壊されたゴーレムをさらに破壊するのと、無傷のゴーレムを破壊するのとでは、難しさは天と地ほどの差があって然りである。
しかも今度は土じゃなく岩だし。


「諸君! 真の貴族である我々には、敵に背を見せるという選択肢は無い!
 突撃だ! トリステイン貴族の意地を見せてやるゥ!」
「落ち着きなさい馬鹿ギーシュ。策も無く突っ込んで勝てる相手?」
「僕は一度フーケにやられている! 『借り』は返さなくてはならない!
 薔薇の棘の義務として女の子を守らなければならない!
 それに……僕には奴を倒すための秘策があるのだ!」
「秘策、ねえ」
期待という感情を微塵も込めずキュルケは呟き、タバサを見た。
「どうする?」
タバサは小さくうなずいた。やらせてみよう、という事らしい。
「GOサインが出たわ。ギーシュ、やっちゃいなさい」
「任せたまえ。出ろぉぉぉおおおッ!! ワルキュゥゥゥレッ!」
ギーシュはゴーレムの前に飛び出しつつ薔薇の杖を振った。
花びらが舞い、六体のワルキューレが現れる。
本当は七体まで出せるが、さっき一体やられてしまった。
「あら坊や、そんなおもちゃで私の相手をするつもり?
 そんなちっぽけなゴーレムでまともに戦えると思ってるの?」
挑発的にフーケが嘲笑う。だがギーシュは余裕の笑みを浮かべていた。
「ウイごもっとも。だがこちらもあの時から成長しているのだよ」
「成長ですって? それは素敵なジョークね」
「これから君にとても『ゾッ』とする事をお見せしよう」
「まあ、どうぞ」
ギーシュは薔薇の造花を振り上げた。
するとそれを合図に、ワルキューレがジャンプする。
そして三体が地面に着地する。二体が三体の上に着地する。
最後の一体が三体と二体の上にさらに着地する。


「ファイナル……フュゥゥゥジョンッ!」
ギーシュが叫ぶと、青銅のゴーレム達の身体がドロリと溶け融合した。
巨大な青銅の塊となったワルキューレは、次第に巨大な人を形作る。
それは実に身長三メイルはあろうかという巨人だった。
「クイーン! ワルッ! キューッ! レェェェエエエーッ!!」
背景が爆発するほどの勢いでギーシュは名乗りを上げた。
クイーンワルキューレがスピアを振り回してポーズを取る。

   ジャッキィィ―――――z______ン

「待たせたな土くれのフーケ! 僕の新たな魔法で相手をしよう。
 優雅で気品あふれる薔薇の結晶……悪を討つ『レディ・オブ・レディ』……。
 クイーンの称号に相応しい美しさと強さを誇る、空前絶後の最強ゴーレム。
 その名も『クイーン・ワルキューレ』! これが! これがッ! これがァッ!!
 僕のォ! 新しいィ! 魔法のォオッ……力だァァァァァァーッ!!」
「踏み潰せ」
メメタァ
「クイーン・ワルキューレー!」
所詮、三メイルの青銅製ゴーレム。
普通のワルキューレよりは強いだろうが、相手は土くれのフーケのゴーレムだ。
身長は三十メイルvs三メイルとその差十倍。体重はさらに差があるだろう。
結果、クイーンワルキューレは呆気なく踏み潰されグチャグチャになった。
「なっ、何をするだァ――――ッ! 許さん!」
やっぱりね、と呆れ顔のキュルケ。
どうでもいいとった風のタバサ。
ニヤニヤと嗜虐心たっぷりの笑みを浮かべるフーケ。
「ヘイ! 青銅の坊や!」
その瞬間! フーケは再び『電波を受信』した!
「今からあなたのタマキン……踏み潰してやるわーッ! メーン!」
ぶはははは、と品の無い笑いをするフーケを見て、キュルケは呟いた。
「何て……卑猥な……女なの……」
土くれのフーケとの戦いはまだ続く。でもすぐ終わる運命にある。

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