ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

プロローグ 這いずる異形、つながる世界

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匿名ユーザー

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プロローグ 這いずる異形、つながる世界


シンガポールのそれなりに高級なホテル。
静まり返ったレストルームに足音が近づく。
宿泊客の報告を受け、ボーイが個室のドアを開ける。
「お客様。長い時間トイレに入っておられるようですが、大丈夫ですか?」
ボーイはそこに異形を見る。単純だが繊細に、力強く形作られた、人間をベースとした異形を。

プロ意識のなせる業か、短い叫びとしたたり落ちるアブラ汗以外の全てを内に押し込めながら
速度最優先の足音が遠ざかっていく。ドアを閉め忘れてはいたが、そこまで望むのは酷というもの。
そして
一連の物音が、異形――切り刻まれた長身の男。じきに切り刻まれた男の屍になるだろう――の意識を覚醒させる。
男は動き出す。血に染まった胴体を前に。ちぎれかけた腕を前に。刺し割られた顔を前に。
便座から床に崩れ落ちる。男はそれでも前に進む、床に頭をこすりつけながらも。肉体は本能に支配されている。

突然に、開け放たれたドアに代わり輝く鏡のようなものが立ちふさがった。音も無く発生したそれを這いずる男は認識できない。

男は世界から、ゆっくりと姿を消した。



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