ゼロの奇妙な使い魔 まとめ

ゼロの来訪者-2

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橋沢育郎、17歳。
彼は半年前まで、ただの高校生だった。
だがあの日、家族旅行で交通事故にあったあの日から彼の人生は一変した。
秘密結社ドレス
彼の体に何らかの処置を施し、恐ろしい力を与えた存在。
生物兵器、サイボーグ、超能力者…それまで現実に存在しているとは思いもよらなかった存在が、
ドレスの命で彼に襲い掛かってきた。
たった数日の事である。
故に彼はある程度非常識な事に耐性があった、しかし
「つまり…ここは地球じゃなく、魔法使いが住んでいる国という事か…」

非常識にも程がある

そう思わずにはいられない育郎であった。

「それ、本当なの?あんたが異世界から来たって」
目の前のピンク色の髪をした少女が胡散臭げに口を開く。
彼女の名前はルイズ、魔法を使える一族、すなわちこの世界の支配者階級である貴族であり、
育郎を『召喚』して、この世界に連れてきたと言っている少女である。
「信じろって言っても難しいだろうね、僕だってあの月がなければまだ半信半疑だったと思う」
窓の外に浮かぶ、2つの月を(今夜何度目なるだろう?)見て答える。
召喚された後、目の前の少女と会話をしてわかったことは、ここが剣と魔法…もとい、魔法が支配する
ファンタジーな世界であり、自分はこの少女の『使い魔』として『召喚』されたという事。

彼女曰く、使い魔とはッ!
ひとつ、素敵なり!
ふたつ、決して主人の命に逆らわず!
みっつ、決して主人のそばを離れない!
よっつ、あらゆる敵から主人を守り、しかも敵の能力を上回る!
そしてその姿は主人(ルイズ)のように美しさを基本形とする。

「そんな使い魔を求めてたってのに、なんであんたみたいな平民が出てくるのよ!」
「そんな事を言われても…」
「しかも異世界って何よ、異世界って!ファンタジーやメルヘンじゃないんだから!」
「僕から見れば、この世界がファンタジーやメルヘンなんだけど…
 ひょっとして他に、鏡の中の世界なんてのもあるのかもね」
「あるわけないでしょ!」

あるよ

とにかく育郎の方でも、自分がこの世界の住人ではなく、魔法が存在しない…とこの数日の経験から
言い切れなくなったが、その話をするとややこしくなるので、とにかく魔法が存在しない世界から来たと伝えた。
しかし自分同様、異世界から来たという話をほいほい信じるわけもなく、今もこうやって、彼女は疑惑の視線を
自分に向けているというというわけだ。
「それで…『使い魔』だっけ?僕を元の場所に戻す魔法はなんてのは」
「ないわよ!というか戻せる者ならとっとと戻して、とっくに新しい使い魔呼んでるわ!」
この少女、先程からとにかく怒鳴りまくっている。
(でも、しかたないか…)
一方的に呼び出されて怒鳴られながらも、育郎はそう考えた。
なにせ話を聞いてみると、『使い魔』の『召喚』はとても神聖なもので、呼びされる使い魔が、その魔法使いの人生を
決めると言っても過言ではないとまで言われているらしいのだ。
「どうして?何で?よりによってこのアタシの使い魔が平民なのよ!」
「ごめんね」
「へ?」
予想外の言葉に、今日一日全開だった怒りゲージがゼロになる。
「えーと、今なんて?」
「すまない…どうやら君に迷惑をかけてしまったようだ」

これはどういうことだろう?
混乱する頭でルイズは考える。
自分が怒鳴っている事は、はっきり言ってただの八つ当たりである。理不尽極まりない。
この平民が反抗しようものならムチを一振り

口で(そんなはしたない事言えないわ!)をたれる前と後ろにサーをつけろ!

等といってネチネチいびり倒し、ストレスを解消するつもりだったのに。
しかし今、目の前の平民の口から出た言葉は何?

ごめんなさい

ひょっとして謝っている?
いや、待て、素数を数えて落ち着くのよルイズ…ゼロ、ゼロ、ゼロ
誰がゼロよ!ていうか素数じゃないし!
それはともかく
相手は平民、つまり貴族たる私には絶対服従。
何もおかしい事はない、おかしい事はないのだが…
(なんか、何時もと違うような…)
平民が貴族に謝る時はかならず脅えなり、反抗なりの感情が見えるはずだ。
しかし目の前の平民は、脅えも反抗もなく、ただ自分の非を認めて(そんなものないのだが)謝っている。

「どうかしたのかい?」
「え?ああ、うん…つ、使い魔としての心構えは良いようね、寛大な心で許してあげるわ」
無理やりそう思い、思考を目の前の現実に戻す。
「それで…どうしてもその…君の使い魔にならなきゃ駄目かい?」
「…当たり前よ」
使い魔の召喚はやり直しは聞かないのである、使い魔が死ねば新たな使い魔を償還できるようになるが、
さすがにそんなことをやる気にはならない。

「そうか…」
育郎は、自分のことを考えてみた。
自分の父と母は交通事故で(正確には違うのだが)死んでいる。
他に家族は居ないが、友人達は自分を心配しているかもしれない。
そして彼がなによりも気がかりなのは、ドレスから一緒に逃げ出したスミレという少女の事である。
目の前の少女より一回り小さく、歳も…確かまだ9歳のはずだ。
予知能力を持っていたせいでドレスに捕まり、ひょんなことから捕らわれた自分を解放してくれたのである。
最後のあの時、彼女はあの爆発から逃げ出せたのだろうか?
無事だとしたら自分のことをさぞ心配しているだろう…

そして、彼は決心して口を開いた。
「わかった、君の使い魔になろう…けど、できればだけど、僕を元の世界に返す手段を探してくれないか?」
「…できればね、わたしだって平民の使い魔なんてごめんだもの。」
 で、あんたが出来そうな事って…」
「え、なんだい?」
「主の目となり耳となり…駄目ね、なにも見えない。後は…」
一人でブツブツと続けるルイズ。
「だから何が」
「アンタが使い魔として出来る事よ!無理だと思うけど、一応聞いてみるわよ。秘薬を見つける事って」
「秘薬?」
「やっぱり無理ね…となると後は一番重要なことなんだけど…主人を守る事。でもアンタじゃ無理ね。
 犬ぐらいには勝てそうだけど、幻獣はもちろん、並みのモンスターにだって勝てそうにないもの」
「………」
自分の身体に宿る力を使えば、おそらく彼女の言う幻獣やモンスターを倒す事などたやすいだろう。
そして多分魔法使いにも…自分が闘った巨漢の超能力者ぐらいの力がなければ相手になりはしない。

「…そうだね」
だが、あえてその事を言うつもりはなかった。
自分の中に眠る力を使えば、スミレのように、この少女に迷惑をかけてしまうかもしれない。
ここが魔法の世界でも、住んでいるのは人間なのだ、ドレスのような組織が自分を狙ってこないとは言い切れない。
「だから、あんたに出来そうな事をやらせてあげる。洗濯、掃除、その他雑用」
「わかった。得意とは言えないけど、頑張ってみるよ」
「うむ、素直でよろしい。じゃあ眠くなったからあたしは寝るわね。ほい、あんたの毛布」
ボロボロの毛布を投げてよこす。
「ありがとう」
「あ、そうそう、あと…」
もぞもぞと自分の服を脱いでいく。
「じゃあ、これ、明日になったら洗濯しといて」
顔色一つ変えずに、ルイズが無造作投げてよこした服や下着をまとめて適当なところに置く育郎。
「うん、それじゃあおやすみ」
「はいはい、おやすみ」
ルイズはベッドに、育郎は床の上で毛布にくるまる。
こうして、橋沢育郎の記念すべき使い魔生活第一日目は終わりを迎えたのであった。

ちなみに
彼が目の前でルイズが服を脱ぐ事に何も反応しなかったのは…ルイズが知れば怒り狂っただろう…
彼女を小学校高学年ぐらいだと思い込んでいたためである。




「洗濯もしないお嫁さんなんて最低よね」
一方そのころ、育郎が心配していた少女スミレは誰言うことなく、そんな言葉をつぶやいていた。


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